白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。原作では防人がいるのは大赦ですが、この作品では白鳥さんのいる時代を軸にしているので大社の防人になる。ややこしくて偶にごっちゃになる。


前回のあらすじ(?)

歌野「後半まさかの夢オチぃ⁉︎」
雪花「一体いつから、ここが現実だと錯覚していたのかにゃぁ?」
水都「違う……。それワンピースの台詞じゃない」



第十八話 勇者御記

 歌野たちは気を失っているNo.4を縄で拘束した。

 

「ただの縄で捕まえておけるかな? 簡単に引きちぎられると思うんだけど」

「でも歌野ちゃんのそれで捕まえとくわけにはいかないでしょ?」

「別にいいわ雪花ちゃん。もう戦闘は無いと思うから」

「それもそうだね」

 

 チラッとNo.12とNo.29を見る。

 

「それとも、仇討ちとか、する?」

「「……ひっ」」

 

 槍を二人へ向けて雪花は笑う。

 

「……や、やりません」

「わ、私も……」

 

 防人二人は両手を上げて降伏の意を示す。

 

「結構結構」

「まぁ、私たちもすっごいタイアードだからっ」

 

「……縄だけで充分ですよ」

「……?」

 

 No.29は歌野たちの方へ歩いてくる。

 

「No.4の能力は、休息や気を失っている、いわゆる非戦闘時には元の一速(ローギア)に戻るんです。その状態では縄を引きちぎるほどの力はありません」

「そうなんだ」

「それにギアの上昇はある程度動いてないとできません。これは本人が言っていた事です」

「ちょ、ちょっとNo.29⁉︎ 敵になんで……」

「No.12……。今ここにいるのは、北海道の旭川市を統治する新しい統治者です」

「「え?」」

 

 その言葉に歌野と雪花は驚く。

 

「私たちがぁ⁉︎」

「はい。ここを統治していたNo.4をあなたたちは倒した。ですので執政の権利はあなたたちへ移ったのです」

「ちょっと待って! 私たちは別にこの街の統治者になるために戦ってたわけじゃ無いわっ。この街の人たちが悪政に苦しんでいるからそれをやめてもらいたくて戦ってただけで」

「ですが、No.4が墜ちた今、次の統治者が必要になります」

「……確かにそうね。ここまでやってポイ捨てとか、無責任な事はできないわっ」

「でも、私たちは四国に行きたいのであって……」

「うん、わかってる。……歌野ちゃんたちを統治者にはしないよ」

 

 そう言いながらも雪花は深く考え込んだ。

 

(んー、私個人としては歌野ちゃんと()()()()()()から、統治者になりたくないし……。かと言って市長たちに権力戻すのもなんか癪に触るし……)

 

「No.4が反省してくれて、真っ当に統治してくれたら良いんだけど……」

 

 ポツ っと呟いた一言にNo.29が反応した。

 

「おそらくですけど、No.4に言えば従ってくれると思いますよ? 貴女たちが勝利したんですし、何か望めばその通りにしてくれるはずです」

「えっ? No.4が? さっきまであんなだったのに?」

「No.4は、自分より強い人には従う人なんです。昔、まだ能力者じゃなかった時に、防人のリーダー争いで、後にNo.1となる楠芽吹さんに挑んで負けた事があるんです。それからあの人は大人しくその人の指示に従ってました」

 

「……そーなんだ。悪党なのに筋は通すんだねー」

「……い、いえ、私たち防人は悪党では無いのですが……。一応」

 

 雪花の冗談(だと思いたい)で、軽い笑いが起こったが、また うーん と頭を悩ます歌野たち三人。

 

 すると、水都が閃いた。

 

「……! なら、No.29さんが次の統治者になればどうですか?」

「えっ、私が、ですか?」

「それアグリー♪ いいと思う! 貴女はこの街の状況を一番近くで見てきた。それに、今までのやり方が間違ってるって思ってたんでしょ? No.4さんに怯えて従ってたって感じだし」

「それは、そうですが……」

 

 歌野もその意見に同意し、さらに雪花も賛成した。

 

「だねー。今更大人たちに権力戻すのも癪だったし、やっぱり大社で統治するのがいいかもね。もちろんやり過ぎはダメ。あくまで一人の統治者は貴女だけど、旭川市のみんなで話し合うことを忘れないようにしなきゃ」

「そうそう。民主主義っていうのだね」

「みんなと、協力……」

 

 少しの間考え込んでいたが、やがてNo.29は大きく頷いた。

 

「わかりましたっ。その任、謹んでお受け致します」

「決まり!」

「グゥレイト♪」

 

 親指を立てて歌野は笑う。

 

「よしよし! これにて一件落着ってことで……、名残惜しいけど、これで北海道ともお別れねっ」

「え……」

 

 雪花は胸の辺りで拳をギュッと握った。

 

「も、もう行っちゃうんだ」

「ええっ。ここでやれることは終わったから、また四国目指して旅に行こうかなって」

「……歌野ちゃーー」

「でもうたのん、北海道からまた飛行機に乗ってイーストジャパンに行くには1ヶ月後になるよ?」

 

 雪花は何か言いかけたが同時に水都と被り、かき消えた。

 

「あっ! そうだった」

 

 歌野はすっかり忘れていたが、自分たちがイーストジャパンの千葉からここ、ノースジャパンの北海道まで乗っていた飛行機は、片道100万の月一便である。

 

「あぁそうだよ……。来月まで待たないといけないんだったわ……。それに、お金も持ってない〜」

 

 悲痛な声をあげながら、地面に跪いた。

 

 

 

 

 

「ーーいや、勇者なんだから普通に足で行けよ」

「……⁉︎」

 

 声がする方を振り向くと、No.4が目を開けていた。

 

「起きるのはやっ!」

「おまえらがごちゃごちゃ話してるから起きたんだ……」

 

 しかし、つい先程までの様子とどこか違う、縛られているせいか大人しい印象を受けた。

 

「……念のため聞くけど、まだ闘るとか言わない?」

 

 雪花の問いに、No.4は下を向いて大きく息を吐いた。

 

「おまえらが望めばな? ……アタシは言ったぞ? 欲しいものがあるなら戦って、勝って手に入れろって。お互い死ぬ気で戦って、最後にアタシは負けた。だから今後はおまえらの好きにしていい」

「……随分豹変してるね。ホントにNo.4なの?」

「うっせ。アタシは自分で言ったことの筋は通すんだ」

「なんか意外……。()()()()()くせに」

「あ、あれは、おまえの夢オチだったんだろぉ⁉︎」

「でも、殺そうとしたんでしょ?」

「あんだと⁉︎」

 

「ーーぷっ。あ、ごめんなさいっ」

 

 雪花とNo.4のやりとりを横で見ていたNo.29はつい、吹き出してしまった。

 

「ちっ。まぁいいや。……とにかくアタシは負けた。これからは好きにやってくれ、新統治者?」

「あっ……」

 

 No.29を見てうっすら笑った気がした。

 

「貴女、どこから聞いてたの?」

「さあってね。……で、話戻すけど、勇者なら自身の身体能力でイーストジャパンまで軽く跳べるだろ? 飛行機なんて使わなくても」

「ーーうぇ⁉︎ リアリー!?」

 

 上ずった声で驚く歌野だけでなく、雪花と水都も同様だった。

 

「そうだよ。勇者の身体能力ナメんな。第一、四勇はバーテックス掃討の時、それで移動してたんだぞ? あと偶に四国外調査の時とか」

「し、知らなんだ。……私、ずっと旭川市周辺しか行ってなかったし」

「千葉までなら 三日で行けるな。……移動だけなら、1ヶ月もあれば中国地方(マリンフォード)の端、山口県まで行けるぞ? まぁ、()()に行けたら、だけど」

「へ、へぇ」

「まぁ、それでも飛行機で行きたきゃ、構わねぇよ。……おい、No.29。コイツらに金払ってやれ」

「あっ、はい」

「お金って?」

 

 歌野は首を傾げた。

 

「忘れてんのか? おまえら天秤座倒したんだろ? その賞金だよ」

「ああっ⁉︎ すっかり忘れてたぁ‼︎」

「……大丈夫かよ」

「い、いろいろあったもんね、うたのん」

「別にお金のために倒したわけじゃないしね」

「でも、もらえるんならもらいましょう。まだ、価格は高いままだし」

 

「ーーそれではみなさんついてきてください。お渡ししますので」

 

 No.29に連れられて三人は大社支部に向かった。

 

 

 

 

 

 

「……なんか嬉しそうねっ」

 

 向かう途中で歌野はNo.29の様子が気になっていた。

 

「えっ⁉︎ わ、わかりますか……?」

「ええ。時々ニヤニヤしてたり、足取りが軽かったりだし」

「え……。あはは……」

 

 図星をつかれてやや照れながら頭をかいた。

 

「さっき見たNo.4が……、()に戻ったみたいな気がしまして」

「昔?」

「実はNo.4は、前からあんな性格ではなかったんです。ここの人たちを苦しめる事を笑顔でやるような人では……」

「そうなの?」

「防人が結成されその御役目に就いていた頃は、血気盛んではありましたが同時に、仲間想いの一面もあったんです。特に、楠さんに対してはその強さに尊敬の念を抱いてたと思います」

 

 そこで水都は、たびたび出てくるその名前に気になった。

 

「その"楠"って人は今、どうしているんですか?」

 

 その問いに、No.29は首を横に振った。

 

「わかりません。だいぶ前に遠征に出たっきりなので……」

「たった一人で? 何をしに?」

 

 何かいい辛そうな雰囲気を出していたが、彼女は答えた。

 

「七武勇の、"三好夏凛"さんを倒しにいく、と……」

「三好夏凛?」

「彼女は、かつては大社に所属していたんです。私たちと一緒に訓練していました。ですが、いざ防人として選ばれる時に失踪しまして、その行方を楠さんは躍起になって探してました」

「なるほどねー。それでその人の情報を見つけて旅に出たわけか……」

 

 雪花はうんうん と頷いていた。

 

「そうです。後のことは三人の部下に任せて……。ですが、その三人が防人を牛耳ってから色々とおかしくなっていったんです」

「三人って、No.4が言ってた三大将っていうのだよね?」

「そして、No.4があのような性格になったのは三大将が防人を仕切り始めてからなんです」

 

 話によると、No.4の言動が荒くなったり、他の防人たちの雰囲気が悪くなったのは、楠芽吹が抜け、その後釜を三大将が担ってからだという。

 

 そして……。

 

「その中で特に目立つのはNo.20…いえ、弥勒夕海子。その人が三大将の中心となっています。……その彼女自身も以前とは違う雰囲気でして」

「みろく……、ゆみこ……」

「勇者の野菜を集めて防人に食べさせているのも彼女だと聞いています。その他にも改革を行っているのですが、その意図が全く読めません。……お二人は四国へ向かうのですよね? であれば、必ず大社本部がある中国地方(マリンフォード)を通ります。その際は三大将、特に弥勒夕海子に気を付けてください」

「「……」」

 

 歌野と水都は何も言わず歩き続けた。

 

 同じ大社の防人であるはずなのに、なぜそこまで警戒されているのだろうか……。そこまで危険な人物なのだろうか?

 

 歌野と水都は少しだけ、防人という組織を気掛かりに思った……。

 

 

 

 

 そして、大社支部がある建物へ入り、それなりに長い廊下を歩き続ける。

 

「……そういえば、天秤座の懸賞金っていくらになるのかしら?」

 

 ふと、歌野は疑問に思った事を口にする。

 

「ええと確か……、350万ぶっタマげだと思います」

「でた。そのミステリー単位。……"円"だといくら?」

「うたのん、525万円だよ」

「さっすがみーちゃん。計算早い」

「……私たち子供からするととんでもない額だけど、すぐ用意出来るんですか?」

「出来ますよ。通常は本部から送られるそうなのですが、ここはおかげさまで経済潤ってるんですよ。金まわりが激しいので」

「皮肉だねー」

「ですので1000万円未満なら、すぐ用意できます」

「凄いっ。なら身代金を要求されても迅速に解決できるわっ」

「……? うたのん、何の話?」

「……」

 

 少しの間、沈黙が流れた……。

 

「……あっ、でもさっ」

 

 自分でおかしくした空気を変えようと、改めて歌野は尋ねる。

 

「天秤座、結構強かったんだけど前のより低いのねっ」

「うたのん、それって乙女座のことだよね」

「うん」

 

 歌野が戦った手応えとしては天秤座の方が戦い辛かった。それに、一度命の危機にあったというのもある。もちろん、乙女座と戦ったときも危なかったのだが。

 

「懸賞金の額は、対象の"強さ"ではなく、大社と四勇が判断する"危険度"ですからね。天秤座はNo.4が食い止めていた、という実績から金額は上昇しなかったんです。それに、天秤座は自ら攻撃することは殆どない、とNo.4は言ってました」

「確かに、私たちの時も似た感じだったね」

 

 水都が言っていたように、天秤座は歌野たちの攻撃に対応する形の戦い方だった。

 

「それに、天秤座は"ズシズシの野菜"の力を充分に使えていないとも、言ってました」

「ズシズシ? それが天秤座の能力なの?」

「……能力を名付けたのは大社ですけど」

 

 ズシズシの野菜というのは、重力操作を可能とする能力のようだ。天秤座の場合は、大きな分銅が重力の核となっており、周りの物を引き寄せていた。

 

「充分に使えてないってどういうこと?」

「No.4が言うには、重力の出力を最大にすれば、まわりの土塊を集めて小惑星を作ったり、宇宙空間の隕石を飛来させたりもできるだろうと……」

「……おっかないね、ソレ」

 

 歌野たちと交戦した時は、沢山の岩を分銅に引き寄せた事はあったが、そこまでの規模ではなかったはずだ。

 となると、やはり天秤座は自らすすんで攻撃しない、ある種の"穏健派"だからそこまで大規模な重力操作を行わなかったのだろう。

 

「……でもバーテックスも能力が使えるってのは、不思議な話だよねー」

「そうですね。噂では勇者の野菜は……、っと、この部屋ですね」

 

 No.29は言葉を区切り、目の前の扉を開けた。

 

「現金で用意しますので少々お待ちください」

 

 そう言って部屋の隅にある金庫らしき物を開けはじめた。

 

「525万円も持てるかな? 現金で」

「アタッシュケースがそこにあるから、多分入ると思うよ」

「うわぁ、スケアリー。そんな大金持ってうろうろ出来ないわ」

「あっははっ。警戒しないとねー」

 

 歌野と雪花は雑談をしている中、水都はNo.29がいる場所とは反対方向に歩いていくと、ガラスケースの中に入っている()()()を見つけた。

 

「……これ」

「どうしたのみーちゃん?」

 

 二人も寄ってその紙を見た。

 それは、()()()()()()()が書かれた1ページの紙切れだった。書いている内容は一切不明。ただの落書きにも見える。しかし、保管の仕方は、その1ページをまるで貴重な物であるかのように扱っている……。

 

「ケースを壊さないと取り出せないね。偉い人が書いたものかな?」

「コレなんて書いてあるの? しかも、所々掠れて読めなくなってるし」

 

 書いている文字はチンプンカンプンだが、その紙切れにはこう記されてあった。

 

 

————————————————

 

That day, despair fell from the sky.

Mankind’s natural enemies. It’s “VERTEX”.

It was born by god of heaven coming divine punishment.

I despaired when I saw my friends being eaten.

But, I found “vegetable of hero”.

It’s hope.

 

write by Nogi Wakaba

 

————————————————

 

 

「ーーそれ、勇者御記(ポーネグリフ)と呼ばれるものですよ?」

 

 No.29は金の用意を終え、三人もとへ戻っていた。

 

勇者御記(ポーネグリフ)?」

「私たち北海道支部が大社からの指示で管理しているものです。と言っても原本は大社本部にある書史部が所持しているので私たちが管理する意味はわからないのですが」

 

 その勇者御記(ポーネグリフ)と呼ばれる紙をじーっ と水都は眺め続けていた。

 

「そんなに見続けてどうしたの? もしかして読めるの、みーちゃん?」

「ううん、読めない。けど」

 

 水都はこめかみに指を当てて記憶を辿っていた。

 

「……これ、諏訪(ウチ)にもあった気がする」

 

「……えっ?」

 




勇者御記(ポーネグリフ):歌野たちの世界で起こる出来事を記した日記らしきもの。この世界の核心に迫る情報だと思われるが、読むことが出来ず、また所々検閲されている。


次回 多分ね・・・
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