ロード トゥ ウエスト編。またの名をRe:イーストジャパン編ともいう。諏訪帰郷編ともいう。七武勇始動編ともいう。……またの名ありすぎ。
長らくベンチを温められていた神世紀の勇者共がやっと重い腰を上げるようです。
前回のあらすじ
北海道でやるべきことを終え、歌野たちはまた、四国を目指す旅を再開させる。新しい仲間、秋原雪花とともに……。
『世界が……、そうだっ! 自由を求め、選ぶべき世界が目の前に広々と横たわっている……。終わらぬ夢が彼女たちの導き手ならばっ、越えてゆけ! 己が信念の旗の元に!』
第二十話 300万の勇者
歌野たち三人は旭川市をおさらばして、北海道を南下する。
勇者は異常な身体能力により、高速に移動することができるので、自分らの足で先を急ぐのだ。
ちなみに、水都は勇者ではないため、歌野に抱えられて移動している。
「……うたのん、重くない? 疲れは?」
「ナッシング♪ みーちゃん一人くらい楽勝よん。っていうより、みーちゃんは軽すぎるからもうちょっとガッチリしていた方がいいかもね」
「余計なこと言わなくていいから」
一般的に、"お姫様抱っこ"と呼ばれる形で水都は歌野に抱えられている。
「……なんか、見てるこっちが恥ずかしくなるわー」
「うっ……」
「そうかな?」
雪花に茶化されて少し頬を染める水都と、何食わぬ顔で跳び続ける歌野。
「ーーっ! あ、待って」
「……? どうしたの、雪花」
雪花は歌野を呼び止め、一旦地上に降りて立ち止まる。
「疲れた?」
「……いや、折角通ったからお参りしようかなって」
「お参り?」
雪花の指差す方向を見ると、苔にまみれた石塔が目に入った。
その石塔には『碧血碑』と掘られているのが、わずかに見えた。
「これは?」
「"碧血碑"っていう慰霊碑。ずっと昔、戊辰戦争で旧幕府軍が戦った終焉の地がここ、北海道なの。その人たちを弔ってるのがこれ」
「詳しいんだね」
「私、けっこう歴史とか好きなのさ。バーテックス侵攻前は、全国のお城のパンフレットとか眺めて夢を馳せてたよ」
雪花はその慰霊碑を眺めていた。
「手入れする人がいなくなってすっかり寂れちゃったけど、ここには自分の信じるべきものを貫いて最後まで戦った、ある意味では英雄たちの信念の証でもあるんだよ」
「英雄?」
「彼らは、歴史的に見れば賊軍として終わりを迎えちゃったけど、でも信念を胸に戦い続けた彼らを、私は心から尊敬するよ」
苔だらけのその慰霊碑を軽く撫でる。そして、軽く笑って背を向けた。
「さて、そろそろ行こうか。……もしかしたら、ここへ来るのは最後になるかもしれないから、思い出作りのために立ち寄ったけど、もう充分っ。時間取らせたね」
「ううん。全然」
「本当に帰ってこないの?」
水都は、雪花と同級生の子たちのやりとりを思い出していた。
「この旅が終わったとき、雪花ちゃんは……」
「あのね水都ちゃん。このバーテックスが蠢く壊れた世界の中で……、それでも私は、夢に向かって突き進むことは、恥ずべきことじゃ無い……諦めるべきでは無いと思うんだよ……」
「……? どういう……」
突然の話の転換に水都は戸惑うが、構わず雪花は話し続ける。
「私の夢は、この世界をより深く知ること。全国を渡って四国に行って、四国の外と、内とをその目に焼き付けるの。……四国がどうしてバーテックスの侵攻を免れているのか、大社がどうして意地でも外の人たちを拒むのか、その答えをこの旅の中で探していく」
そこで一旦、言葉を区切る。
「……そしたら、北海道に戻るか決めるよ。四国と北海道は何が違うのか、四国の人たちと、北海道の人たちは何が違うのか、なぜ違うのか、その答えを出してから……決めるよ」
「そう……」
「じゃあ今度こそ行こうか。歌野の夢と、私の夢を叶えるために」
「うん」
そして雪花はまた跳躍しようとしたが、歌野は立ち止まったままだった。
「どうしたの? 歌野」
「いえ、ちょっとあのビッグなストーンが気になって……」
「……大きな石?」
碧血碑の数メートル後方にある石、というより岩を歌野は不思議そうに眺めている。
「特になにも無いよ?」
「……ええ。気のせいみたいね。オーケーっ、行きましょうっ!」
歌野は頭を横に振った後、水都を抱えて跳躍した。
「あっ、そういえば雪花っ」
「ん?」
「良いと思うわ。その夢」
「……!」
「お互い叶えられるように頑張りましょうっ! どんな世界だろうと時代だろうと、人が夢を描いて、叶えることは大切で、絶対に無くしちゃいけないものなんだからっ」
No.4があの時言っていたことを歌野は断固として否定する……。
この先、どんな困難が待ち受けようと、絶望の中に立たされようと、夢に向かって突き進むことを諦めたりはしない……。
「人の夢はっ、終わらないわっ‼︎」
ーー歌野たち三人が、北海道を出ようとしている頃。
No.4は
『……はい。こちら大社本部です』
「やっと繋がった。遅ぇんだよ」
『要件はなんですか?』
相手は大人びた女性の声だった。
「大社本部に要請する。新しい勇者の台頭とその危険度の報告だ」
『新しい勇者、ですか?』
「四国を目指そうとしている奴らだ。名は"白鳥歌野"。"秋原雪花"。そして、勇者ではないがそいつらの仲間……名前、なんつってたっけ?」
「……藤森水都って言ってたそうですよ。市長たちが聞いてました」
No.4の後ろにいたNo.12が口を挟んだ。
「"藤森水都"だ。そいつらを、No.4の名において我ら大社防人の"敵"とみなす‼︎ わかったか!?」
『怒鳴らなくても聞こえていますよ。……して罪状は?』
「奴らは防人に危害を加えた。また、四国へ乗り込もうと企んでいる。……七武勇と同じだな。その危険度を考慮して、懸賞金をかけてくれ」
『……わかりました。詳細は改めて報告書でお願いします。その後、三大将や四勇"土居球子"の承認のもと、指名手配をかけます』
「よろしくなっ!」
そこで、通信は途切れNo.4はうすら笑いを浮かべた。
「……派手に負けて反省したかと思ったのに、全然懲りてないんですねー」
「馬鹿言え。アイツらとの約束は守るさ。旭川市の運営はNo.29のもと統治していく。だがな、防人としては話が別だ」
No.4は北海道支部にいる大社写真部が撮影した写真を漁る。
「アイツらは防人に、大社に喧嘩売ったんだ。その落とし前をつけるきっかけをアタシは作った。……賞金首になれば、大社防人のアタシはアイツらとまた戦う理由ができる。もう一度遊べる理由がなっ」
「でも、これじゃあみんな彼女たちを狙いますよ? 取られるかもですよ? No.3とか、三大将とかに」
「けっ。三大将は仕方ないとして、あんな
No.4の手には、リボン付き麦わら帽子を被り大人たちに囲まれて笑顔で応対している歌野の写真が握られていた。
おそらくあの日、畑仕事のあとに撮られたのだろう。
「ギャッギャ、まあいいか、これで」
ニヤニヤしながらNo.4は大社本部へ改めて報告書のデータを送る……。
ーー翌日。
大社本部に数人の少女たちが集まり会議を開いていた。
「今日は、火急の要件ゆえ、急な場で申し訳ありませんでした」
仮面をつけている女性神官が一礼する。
「話はざっと聞きましたわ。新しい勇者が現れ、No.4が管理する北海道を
「No.4がやられたって話でしょ? キキキッ情けない話だよねぇ」
「寝込みでも襲われたの? まっはは」
「クハハッ……。知名度の無ぇ
今、この場にいるのは、八人。
No.4から直接連絡を受け、この会議を開いた張本人である女性神官。
その他には先月、進化体バーテックスに山口支部を破壊され本部へ異動となったNo.6。
大社本部に居を構えているNo.3。
「急な呼び出しだったけど、タマは愛媛だったから楽に来れたっ。……それにしても、勇者の野菜を食べた新たな
四勇のひとりで賞金首の選定や懸賞金関連で、大社との連携役を任されている土居球子。
そして……。
「本当に困ったものですわ。手に入れた力を誇示したくなるのは人の性というものですのね」
「うん……」
「イヤイヤイヤイヤ、悠長にしている場合じゃないんだよ⁉︎ その人たちが突撃してきたら、誰が私を守るのさあ⁉︎」
防人の中で現在、最も地位が高く最強戦力と名高い"三大将"。
弥勒夕海子、山伏しずく、加賀城雀である。
また、沖縄支部にいるNo.8と京都支部にいるNo.7も招集をかけたのだが、二人は急であったため本日は欠席となった。
「……三人を調べてみたところ、特にこの勇者に関しては千葉支部にて乙女座を討伐していたことが判明しました」
「へぇ! 乙女座倒したの、その
「球子さん、シラトリと読むんですのよ?」
「ターマッマッマ! そうだったのかっ」
「……とにかく、白鳥歌野たち三人の行動には危険性を感じ、No.4は賞金首にかけろと申してきました。そして内二人は勇者……」
「じゃあもう、それ相応な対処が必要ってこと……?」
しずくは静かに呟いた。
「ですわね。四国へ行って神樹様を狙うなんて、不敬にも程がありますわ。この方たちが七武勇と結託して目障りな存在になる前に片付けるのが最適でしょう」
「あー。嫌だなぁ……。怖いなぁ。ねぇ‼︎ もしものときは私を守ってよね⁉︎ "メブ"がいなくなっちゃった今、私を守れるのは二人だけなんだからねっ⁉︎」
「雀は……、自分で守れる……」
「しずくさんの言う通りですわ。それに、いつ帰ってくるかわからない人を待つことなんてできません」
「何言ってるの⁉︎ 私一人じゃ死んじゃうんだからねえええ⁉︎」
雀は夕海子としずくに喚き続ける。
「……少し話が逸れましたわね。では、千葉において乙女座の討伐。北海道において天秤座の討伐と、防人であるNo.4へ危害を加えた白鳥歌野をはじめとするこの三人を危険因子として、名家である弥勒家の次期当主、弥勒夕海子が皆様の合意のもと、承認致しますわ」
夕海子は三人の写真に承認印を押して、手配書を作らせるように指示する。
「白鳥歌野に300万ぶっタマげ。仲間の勇者である秋原雪花に100万ぶっタマげ。勇者ではありませんが、No.4へ危害を加えた一人として藤森水都に50ぶっタマげの懸賞金をかけます‼︎」
そして、会議は終わり各々解散していく。
「ねえねえ。そいつら、ウチが狩ってもいいかな?」
No.6は三大将に提案する。
「貴女おひとりで、ですの?」
「いんや、ウチの部下も含めて。初頭から300万の勇者。なによりNo.4を倒した強さ。興味あるじゃない? ウチの『ハナハナの野菜』の能力で締め上げてやりたいわ!」
「おいおい、ちょっと待てよ。No.4がやられた相手ならその上、No.3の"俺"がいくのが筋だろ?」
話を聞いていたNo.3がその話に加わる。
「No.3。相変わらず男みたいな喋り方はやめてくださいませ。品がありませんわ」
「クハハッ。俺が俺で文句あんのか? それに、そいつの
「……」
しずくはNo.3に指差されたが、何も応えなかった。
「……まあいいですわ。あと、貴女にはここの持ち場がありますから、遠征は無理ですわ。行くなら、山口支部がなくなり、フリーの状態であるNo.6を送り出します」
「やったああ‼︎ キッキッキッー、ザマァみろ砂女」
「ア? テメェ言葉に気をつけろよ?」
するとNo.3の右手が砂に変わり、そこから小さな砂嵐を作り出した。
「ヒエエエ!? ここでの戦闘はダメだよおおお‼︎ 私が死んじゃう‼︎ にげ、逃げなきゃあああ‼︎」
「落ち着いてください雀さん。……No.3もやめてくださいませ」
「アーアー。メンドクセェな」
「貴女もですわよNo.6」
「はいはい。わかってますよ。ウチはさっさと準備しまーす」
No.3はぼやきながら部屋を出ていく。その後にNo.6もヘラヘラ笑いながら去っていった。
「……ずいぶんまとまりがなくなってきましたね」
夕海子の元へ今度は仮面の女性神官が話しかけてくる。
「リーダーというものは簡単にはいきませんわね。まあそこはこの弥勒夕海子に任せておけばーー」
「楠芽吹さんの代わりは大変でしょう。貴女自身の能力的に」
その時、夕海子の表情が少し強張った。
「あらあら? 貴女もわたくしに不満がありますの?」
「いえ別に。ただ、白鳥歌野の懸賞額の高さに思うところがあっただけです」
「……確かに初頭300万は貴女の
悠々と話している夕海子を、女性神官と雀、しずくは黙って見ていた。
「こういう芽は早めに摘んでおいて損はありません。七武勇のひとり、"三ノ輪銀"だって、私たち三大将が早々に対処したから良かったのですから」
その名前に女性神官は少しだけ反応を示したが、何事もなかったかのように部屋の出口へ歩き出す。
「わかりました。話は以上です」
そして、今回の会議で決まった出来事は、全国の支部へすぐさま知れ渡ることとなった……。
ーー香川ーー
四勇乃木若葉は、その日に球子から連絡を受けていた。
「……白鳥さんが勇者? つい最近なったということか」
歌野の手配書を見ながら若葉は衝撃を受けていた。
「まさか、私が彼女に言ったことが原因で四国へ? いや、あの白鳥さんは暴力に走る人とは……」
「若葉ちゃん?」
ブツブツと呟いていた若葉にひなたが話しかけてきた。
「……! ああ、ひなたか。今、球子から連絡がきてな。ほら一年前に話しただろ? 白鳥さんのことだ」
「ええ、覚えてます。若葉ちゃん、凄く嬉しそうに彼女のこと話してましたからね」
「その白鳥さんが大社から指名手配を受けた。しかし、彼女の性格からは想像できないのだが……」
「若葉ちゃん」
ひなたは若葉の肩に手を置く。
「人は変わるものです。勇者の野菜を食べ、白鳥さんは変わってしまわれたのかもしれません」
「……そうか」
若葉はこの結果に落ち込んでいるが、ひなたの目にはその姿が違って見えていた。
「若葉ちゃん。少し嬉しそうですよ?」
「あっ、いやすまない。……白鳥さんがこうなってしまった以上、四勇としての務めを果たすまでだ」
しかし、若葉は口角を上げて安堵したように笑う。
「だが……、白鳥さんが元気でいるのなら、それはそれで嬉しいことだな……」
(あのリボンも大切に持っていてくれたのだな……)
「……」
ひなたはそれをつまらなさそうな表情で見ていた……。
ーー諏訪ーー
諏訪支部で働く神官たちも歌野と水都が賞金首になったことに衝撃を受けていた。
「この手配書っ! さっき本部からデータで送られてきたんだ」
ひとりの神官が三人の手配書を他の神官全員に見せてまわる。
そしてその騒ぎは歌野たちと農業をしていた村人たちにも伝わった。
「なんと⁉︎ 歌野ちゃんと水都ちゃんが犯罪者に⁉︎」
「一体何やったのかしら?」
「神官が言うには北海道支部を襲撃して防人を殴ったって……」
「四国へ旅に出て、どうして北海道にいるんだ⁉︎」
「大社本部の陰謀か……⁉︎」
歌野たちの行動に理解が追いつかない者。何か裏があると勘繰る者など、多々いる。
しかし、彼らは歌野と水都が悪意を持って行ったとは誰も思っていない。
「……きっと誰かを助けようとした成り行きだろう。歌野ちゃんはいたずらに人を傷付けることをしない」
「だな。多分、おおかた大社のやつらが迷惑かけたんだろう?」
「それか勘違いオチってやつだ」
「だな! ……でもまぁ、歌野ちゃんと水都ちゃんは元気でやっとるらしいわ」
「この歌野ちゃんのいい笑顔。楽しそうっ」
諏訪支部内では……。
「……以上が白鳥歌野と藤森水都が指名手配される理由だそうで」
「なるほどね。でもきっと、全部が真実ではないんでしょう?」
「尾ひれはついているものかと……」
神官はとある女性に二人の手配書を見せる。
その女性とは、諏訪支部でも発言権があるうちの一人……。
「元気そうで何よりですな。貴女のご息女は」
「……そうね。
その女性、水都の母親はその写真を見つめていた。
「引っ込み思案で、将来苦労すると思ってたんだけどねぇ。旅に出て、あの子は少しずつ成長していってるんだわ」
一瞬だけ、母親らしい穏やかな表情をしていたが、一人の神官の言葉で、すぐに真剣な表情に戻った。
「……白鳥歌野については我らの
「それはわからないわよ。歌野ちゃんが全て私たちの思惑どおりに動くとは思えない。……だって」
水都の母親は二人の手配書にピンを刺して壁に留める。
「夢か、運命か……。あの二人の想いは、娘の歌野ちゃんに確かに届いていると思うもの……」
ーー奈良ーー
とある神社の境内で赤い髪を後ろでひとつに束ねた少女が武道の鍛錬を行なっていた。
それを眺めているのは彼女より少し背丈が高い黒髪の少女と、黒いシャツで金髪をしたガタイの良い男性だった。
「ーーえいっ! やぁ! とぉ‼︎」
足を力強く踏み締めて一撃一撃、拳を空へ放つ。
「なァ。まだ続けんの? もう1時間ぶっ通しだぜ?」
男性は赤い髪の少女に声をかける。
「はいっ。最近バーテックスの侵攻が減りつつありますけど油断した時に来ますからね」
「大丈夫だよ、ゆうちゃん。今日も来ないから」
「茉莉さんがそう言うなら……。あっ、ありがとうっ」
ゆうちゃん、と呼ばれた少女は茉莉という少女からタオルを渡され汗を拭う。
「……お? 二人とも、
男の指差す方向を見ると、マイクロバスが三人の元へ向かってきた。
バスはそのまま、三人の中の男の方へーー。
キキーッッ‼︎
「うおおあああ!? ……あ、あっぶねェェ!!!」
男が前転して回避したが、突っ立ったままだと跳ねられていただろう。
「ーーちっ。避けるなお前」
「いや死ぬ死ぬッ‼︎ また俺を殺す気だったろ⁉︎」
「今日はたまたまそんな気分だっただけだ……」
「たまたまそんな気分で殺されてたまるかよッ‼︎」
運転手は、頭を掻きながらバスを降りて男と軽く言い合う。
「久美子さんっ。近くにいたボクとゆうちゃんまで危ない思いしましたよ」
「お前たちは轢かないようにしたさ。それに本当は轢くつもりもなかったしな」
「オイオイ、勘弁してくれよォ久美子の姉貴。轢くつもりは、って避けなきゃ終わってたぞ? 俺」
「あーうるさいな。お前が避ければ轢かないようにしてたんだ」
「怖ェ……」
その運転手の女性は黒い長髪に所々ある赤のメッシュが目立ち、なぜか白衣を纏った変わった恰好をしている。
「で、久美子さん。京都支部で何か情報もらえました? ……その手に持っているものは? 」
久美子は三枚の手配書を三人に見せた。
「知らない人の手配書。また結城友奈さんの懸賞金額が上がったのかと思いましたよ」
「誰だ? コイツら」
「これを蓮華さんから?」
ゆうちゃんと呼ばれている少女の問いに久美子は頷く。
「そうだ、
「300万ぶっタマげ、ですか。結構高いですね」
「確かに初頭にしては高いが、結城友奈は今、590万だ。驚くほどじゃない。それに、同じ七武勇の三好夏凛とかいうやつは、初頭で400万だったしな」
「でも、また結城友奈さんの情報じゃなくて良かったよね」
「うん。私と同じ名前だし。顔もそっくりだし」
「俺ァ、初めて結城友奈の手配書見た時、高嶋友奈との違いなんざわかんなかったからなァ」
「お前は今でもわからんだろ」
「そうですね」
「……つ、冷てェ」
「あっはははっ」
そのやりとりを見て高嶋友奈は思わず笑ってしまった。
……本部、諏訪、奈良だけにとどまらず、歌野たちの噂は全国で広まっていく。
しかしまだ、当の本人たちは、この事を知らない……。
白鳥さんが賞金首デビューをはたしました。これで晴れてお尋ね者ってわけだ。
現在、彼女たちのトータルバウンティ:400万50ぶっタマげ。(600万75円)
次回 防人No.1 楠芽吹!