ピンクパイナップル? ストロベリーショコラ?
前回のあらすじ
旅の途中、楠芽吹と遭遇。彼女の目的は"七武勇"三好夏凛を倒すことだった。彼女の目的に協力する代わりに野菜を購入してもらう事を取り付け歌野たちは三好夏凛の捜索を開始するのだった。
歌野と雪花は岩手から秋田へ跳び、秋田から山形へ跳ぶ。
1時間ごとに別行動を取り、あらかじめ決めていた場所へ集合して情報を共有。これを繰り返していた。
「……ふぅー。最初っから思ってたけど、見つかるもんじゃないよねー」
ずっと跳び回り続けていた雪花は地面に腰を下ろした。
「当然だけど人っ子ひとりいないわ」
「……もうすぐ日が暮れる。次の別行動を今日の最後にしよう」
「そうねっ」
二人は東へ跳び、宮城へ向かった。
ーー芽吹と水都はというと、歌野たちが芽吹と出会った場所で一日中待機していた。
三好夏凛の捜索に機動力が劣る二人はついていっても意味がないからだ。二人を抱えて移動しても効率の低下に繋がるので、待っていた方が良いだろう。
幸い、芽吹は勇者ではないが星屑程度なら楽に倒せるので水都の護衛にはうってつけだ。
「……ねぇ、楠さん。聞いてもいい?」
「何を?」
待っているだけでは暇なので水都は話しかけた。
「勇者じゃないのに星屑を倒すことができるってことは、その刀も防人装備のひとつなの?」
「そうよ。大社は勇者の野菜を食べた人たちを研究して、その力の一端を非能力者の武器へ伝達させる事に成功したの。その結果、誕生したのが防人装備。私の持っている刀や皆が持ってる銃。それに戦闘服とかね。……まぁ進化体には歯が立たないけど」
「そうなんだ」
「バーテックスに対抗できる装備自体は、防人の
「防人の前身?」
水都はその言葉に疑問を抱く。
大社が作った戦闘部隊は防人が初めてだとばかり思っていたからだ。
「防人の"元"となった組織があるの?」
「……それを答える前に私からも聞いていい? 貴女さっき、星屑って言ったわよね?」
「……う、うん。言った」
何かまずいことを言ったか、と水都は若干不安になる。
「バーテックスには進化体の奴と、そうじゃない奴がいる。後者の、いわゆる雑魚の事を『星屑』と呼ぶのは確か。でもそう呼んでいるのは大社の関係者だけの筈なのよ。それも本部の、ね」
「……!」
「貴女……いや、貴女達かしら? 大社と関係があるの? もしかして大社本部に所属してた人?」
水都はどう説明すべきか分からず、頭を悩ませた。
「うーん……。結論を言うと関係者、なのかな? 私とうたのんは諏訪出身で当時私は、諏訪支部に何度か足を運んでお母さんの手伝いとかをしてた」
「そこで星屑の名前を? なら、貴女のお母さんは本部に勤めた事がある?」
そこで水都は首を横に振る。
「ううん。星屑って名前を聞いたのは旅の途中で……。千葉にいた時にひょんなことからある女の人に出会って……」
「女?」
「名前は分からなかったけど、多分私たちと歳は離れて無いと思う。ピンクの髪でちょっと褐色肌をした子だった」
「……そう。誰かしらね」
楠本人も知らないとなると少なくとも防人では無いようだ。
「……で、さっきの質問の答えだけど、本部の関係者以外には教えられないのよ。いくら大社支部でもね」
「本部と支部ってだけで?」
「そう。それに詳しい事は私も知らされていない。悪いわね」
「ううん。別にいいよ……。ならこれは聞いていい?」
「何?」
「どうして、大社の人たちは私たち、"外の人"を四国へ行かせないようにするのか」
「……」
芽吹は暫し沈黙してから……。
「外の人を皆入れたら、四国内で問題が起こるから。住む土地とか食べるもの、とかね。でも、この人は良くてこの人は駄目って選別してたら反発する人が出てくる。だから外の人へは援助だけしてるって、本部の神官からそう聞いたわ」
そう言ったが、何か含みのある言い方だった。
「……楠さんはそれが本当だって思ってないの?」
「神官の人達が言った事に間違いは無い筈よ。でもそれだけ? って思う。土地や食料も確かに全国の人達へ与えられるとは思わないけど、それにしては全く人を入れようとしない大社の姿勢は違和感だった」
(そうか。楠さんは勇者の野菜を入場パス代わりに出来ること知らないんだ)
防人は大社と協力して、勇者の野菜を集めている話は何度か聞いた。500万円で売るか、四国への永住権を手に入れるか。それを本部から離れている芽吹は知らないのだ。
(勇者の野菜を集める理由は、防人の
水都はずっと、答えの出ない問いに悩み続けていた。
(諏訪支部に……。お母さんに聞かなきゃいけない事がいっぱいある……)
ーーその頃、歌野と雪花は、本日最後の情報共有を行っていた。
「やっぱしってか、いないよねー。三好夏凛」
「こっちも見つからなかった」
「……ねぇあの話さ。無かったことにして旅を続けない?」
「え?」
「だってさー。半年以上前の情報なんだよ。普通に考えて、居るわけないよ」
「……でも、もしかしたら七武勇のアジトとかがあるかもって……」
「だとしても元アジトだと思う。いる可能性は果てしなくゼロだねー」
「……とりあえず今日はこのくらいでみーちゃんたちの元へ戻ろう」
「……」
雪花はそこまでしてでも芽吹に協力する歌野に疑問を持っていた。
(確かに防人というお得意さんを捕まえるのは良い案だと思うけど、あれ確実にその場で決定した口約束だし……。反故にされそうなのは目に見えてわかるんだけど……)
今、歌野はおそらく芽吹のことしか頭にないだろう。
それが、雪花にとってはおもしろくないのだ。
(あっ。いやいやいや、今私、変なこと考えてたわー。……私を連れ出してくれた歌野に感謝してるからこそ、なーんか妬いちゃうのかね……)
そう思い、苦笑いする。
(今の私がこれなら……。今までずっと一緒にいた水都ちゃんはどう感じてるんだろ? まぁ歌野はあーゆー性格だから慣れちゃってるのかねー?)
そう考えているとーー
「ーーッ⁉︎」
「……‼︎」
ガサガサッ と草木を掻き分ける音が聞こえた。それはもちろん歌野の耳にも聞こえている。
「……雪花」
「また奴らかな?」
雪花は槍を音がした方向へ構えて……。
ガサガサ ガサァッ!
「
「ーーうわあああああああああああああああああ!!!」
「ーーあれぇ⁉︎」
「待ってッ雪花‼︎ 人だわッッ!」
草むらから飛び出してきた少女は驚きのあまり地に伏せる。
「ご、ごめんっ。まさかこんなところに人がいるなんて……」
槍を消し少女に手を伸ばす。
「うへー。怖かったぁ。急に槍を向けてくるんだもん」
「いや、ホントにごめんねー」
「……」
歌野はその少女に見覚えがあった。
「貴女……。千葉にいた子じゃない? ほら、月明かりの下で……」
「えっ⁉︎ 覚えてくれてたの⁉︎ あっははぁ〜ん。うれしいなぁ」
ピンク色の髪と褐色肌をした少女は笑顔を見せた。
「私も覚えてるよっ。"うたのん"ちゃんだったよね?」
「イエス♪ あの時名乗ってなかったから改めて……、私は白鳥歌野っ」
「あー。そういえば私も名乗ってなかったね」
少女は頭を掻きながら笑い、歌野と握手する。
「私は、赤嶺。ヨロシクね」
「赤嶺さんはどうしてここに?」
「旅の途中だよ。……そしたら二人がビュンビュンって跳んで行ってたのを見て何事かなーって追いかけてみた」
「そうなんだ」
「……赤嶺さん。さっきはごめんね、私は秋原雪花」
「秋原ちゃんね。いいよいいよ。無事だったし」
赤嶺は雪花とも握手を交わす。
「さっきの質問ね。私たちは人探しをしているの」
「人探し? まさか、一緒にいた"みーちゃん"ちゃんがいなくなったの?」
「ううん。みーちゃんじゃなくて、七武勇の三好夏凛さんって人」
「へー。あの人かー」
「知ってるの?」
「まぁ七武勇ってみんなある意味有名人だからねー。ついこの前もその三好夏凛も見かけたし」
「「……えっ⁉︎」」
歌野と雪花は赤嶺に詰め寄った。
「み、見たの? 三好夏凛さんを⁉︎」「いつ、どこで? 何時何分⁉︎」
「ま、ま、落ち着いて……」
「あっ、つい……」
少し距離を空けて落ち着こうとする。
「2日前かなあ? 福島に会津城ってあるでしょ? 荒廃してるけど……。そこにいて偶に襲ってくる星屑たちをバシュバシュって感じで倒してた」
「2日前……」
(これまた微妙な数字……。もう居ないかもしれない。でも目撃証言があったなら行ってみる価値はある)
「……歌野」
「うん、行ってみよう。もしかしたら七武勇のアジトなのかもしれない。会津城がさ」
「そうだね」
雪花は半ば諦めかけていたが、これを機に希望が見えてきた。
(でも、三好夏凛捜索を始めて一日目で手がかりが掴めるなんて……。歌野の運が良かった? 偶然? ……いや、そんな言葉じゃ片付けられない"何か"を持ってるのかも)
雪花はこの偶然を、歌野の力だと解釈する。これも歌野が持つ特別な力なのかもしれない……と。
「ありがとうっ赤嶺さん。……あっ、何か困った事とかない? お礼に何かしたいなっ」
「……ん〜今はいいや。次会う事があって、その時に悩んでたら協力してもらうっ」
「わかったわっ。本当にありがとうね」
そして赤嶺に背を向けようとしたが……
「あっ。もし良かったら私たちとくる? 旅の邪魔じゃなかったらだけど。……私、赤嶺さんと
「ぅえっ⁉︎ 楠さんだけじゃ飽きたらずぅ⁉︎」
「農業仲間は何人いたっていいじゃないっ」
「んーそうだねー」
少し悩んでいたが、赤嶺は首を横に振った。
「ごめんねー。私は私のペースでゆっくり旅したいからさ。……それに私には仲間がいるから」
「そうなんだ。なら仕方ないね、仲間から引き離すわけにはいかないからっ」
「……あれ、じゃ楠さんはどうなの?」
「楠さんは今フリーでしょ? 三好夏凛さんを倒すまで防人に戻らないみたいだから」
「そうだったねー」
歌野は赤嶺に手を振った。
「じゃあまた会いましょ、赤嶺さん。今度、貴女の仲間たちにも会いたいわっ」
「多分、どこかでそのうち会うかもしれないし、もうあってるかもしれないね」
「そうなんだ。じゃあっ」
「情報ありがとう。またね」
「うん。また!」
雪花も赤嶺に手を振り、赤嶺も笑顔で振り返す。
「でも捜索し始めたその日に情報を手に入れられるなんて、世界は私をメインに回ってると言っても過言じゃないわねっ」
「にゃはは。過言、と言い切れないのがまたね……」
「ふふっひ♪ でしょ!」
そして二人は楠と水都の元へ帰還する。
「…………」
赤嶺は跳び去っていく二人をずっと眺めていた。
「……そう、うたのんちゃんは会ってるんだよ。私の仲間たちにね……」
……と、彼女の背後に白の異形の生物が近付いてきた。
「でもあれか……。分かるはずないかぁ。……
ーー刻は遡りーー
香川のとある地では、若葉とひなたが街をパトロールしていた。
「あ〜。若葉様だあ」「乃木様っ。お勤めご苦労様です」「キャー‼︎ 乃木様〜〜‼︎」「いつもありがとうございます」
「ああ。みんな元気そうだな」
「ふふふ……」
笑顔で応対する若葉と、それを微笑ましく感じているひなた。
……と、そこへ。
「あっ。乃木様だっ!」
「本当だな。調査から戻ってきてたのか」
明るい金髪をしている少女と、黒髪の少女が若葉を見つけ、駆けつけようとする。
「そうだ柚木君っ。乃木様の元まで競争だ」
「また急だな、リリーーっておいっ!」
「"剃"ッッ‼︎」
言うが早いか、リリと呼ばれた小柄の少女はその場から姿を消した。
「ずるいぞっ! ーー"剃"ッ」
柚木と呼ばれた背の高い少女もまた、先程の少女と同様に姿を消した。
「ーーあら若葉ちゃん」
「ああ。二人だろう」
ひなたと若葉が接近に気付いた時、二人は彼女たちのすぐそばに姿を現していた。
「……はぁ、ふぅ。今回は、引き分けだね……柚木君」
「いや待て。お前がフライングして、追いついたんだから私の方が勝ちだろ?」
「はぁ……はぁ……。あ、あのね柚木君。
「……って言ってる割に、息あがってるぞ? 普段からもっと鍛えておけ」
「うぐっ。心外だよ……。これでも鍛えている方なのにさ」
「ふふふっ」
二人のやりとりにひなたは笑う。
「……芙蓉、柚木。また一段と速くなったんじゃないか?」
「……! は、はいっ。これも上里様のご指導の賜物ですっ」
「"剃"はマスターしました。また時間がある時に他の『六式』もご指導願います」
「わかりました。明日にでも稽古を致しましょう」
「「ありがとうございますっ」」
先程柚木が言った『六式』とは、若葉をはじめとする勇者の戦いから、ひなた自身が考案した、
……と言っても六式を全て習得しているひなたを含む"副官"たちはバーテックスと交戦した事はないのだが。
「ーーおーい、わかばあっ!」
「む? 球子と杏か」
四人の元に愛媛にいるはずの土居球子と伊予島杏がやってきた。
「どうしたんだ? 二人共」
「こないだのハクチョウたちの件でさー。大社の方針が決まったんだよー」
「タマっち先輩。ハクチョウじゃなくてシラトリだよ」
「ターマッマッ! そうそう」
「白鳥さんの手配書の事か? また何かあったのか?」
若葉の問いに球子は首を振る。
「あったって言うか、そのしらとりの対処は防人に任せる事になったって言う報告だけだ」
「それだけか?」
「はい、それだけです。それだけならわざわざ真鈴さんに愛媛を任せて来るほどの事じゃなかったんですけど……」
チラッと杏は球子を見る。
「タマがなぁ、香川のうどんを食べたくなったわけだ。だから来た」
「……要はついでか。しかも報告が」
「そうだっ」
やれやれ といった感じでため息を吐く。
「ど、どどどど土居様だよ! 柚木君」
「ああ、知ってるよ」
「そ、そそそれにぃ、伊予島様も!」
「見りゃわかる」
「
「落ち着け……」
「いや落ち着けない! むしろ何で柚木君はそんなに
「って言われてもなぁ」
芙蓉の様子を見ている柚木は、自分の方がおかしいのか? と逆に疑いたくなってくる。
「噂は聞いてるぞっ。ふようとゆずきだなっ」
「ああああ‼︎ 名前をっ、土居様が覚えてくださっているッッ‼︎」
「そうだっ。タマは土居球子! 『ヒトヒトシスターズ』の土居球子だッ!」
「ヒトヒトシスターズ? なんですかそれ?」
柚木は聞きなれない単語を聞き返す。
「タマとあんずのユニット名だ。同じ『ヒトヒトの野菜』を食べーー」
「あーあー‼︎ タマっち先輩っ! 余計な事は言っちゃダメ! っていうかそんなユニット組んだ覚えないよ⁉︎」
「えっ? そうだったのか⁉︎」
初耳だ、と言わんばかりの表情をしている球子だが、初耳なのはむしろ杏の方である。
「それに能力の事はむやみに喋っちゃダメ」
「愛媛だと結構知ってるぞ?」
「それはタマっち先輩がお喋りだからでしょ……」
「……球子、杏。うどんを食べたかったんじゃなかったか?」
「そうだよタマっち先輩。早く行かないとっ、人気なんだからあのお店」
「そうだそうだ。じゃあな四人共‼︎」
「ああ」
「はい」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でした!」
四人と別れ、球子と杏はうどん屋へ向かった。
「……何か台風みたい人ですね。土居様は」
「まぁな。じゃ、私たちも巡回の続きをしなくてはな」
「行きましょう」
「はい、乃木様。上里様。それではまた」
「それではっ」
そして若葉とひなた、柚木と芙蓉はそれぞれ別れた。
「……それにしても大変だな二人は」
「当然さ。ただでさえバーテックスの脅威と七武勇の対応に加えて、新たな勇者が牙を剥くかもしれないって状況なのだからね。
「私らも今以上に手を貸したいが、色々問題もあるしな。四国から出ちゃいけないって言われてるし、それに……」
「……私たちの
「……」
柚木はむっ とした顔のまま沈黙する。
「柚木君は気にしすぎかもね」
「……うるさい」
それから柚木と芙蓉は腹ごしらえにうどん屋へ向かった……。
白鳥さんは幸運を呼び寄せる何かを持っているらしい。
……それ欲しいわ。
六式:若葉たち四勇の戦い方をもとにひなたが考案した六つの戦闘術。理論的にはバーテックスに効果があるという。
土居球子:愛媛の勇者のひとり。白鳥さんをハクチョウと呼び間違える程の学力。……たぶん懸賞金の『ぶっタマげ』の換算もできないと思われる。(なんで制定したのか……)
能力は今は秘密。『ヒトヒトの野菜』と言っていたが……。
伊予島杏:もう片方の愛媛の勇者。頭が良く、よく球子のサポートを行う。多分球子いない方が効率よく愛媛を統治できるかも。
能力は今は秘密。しかし球子が『ヒトヒトシスターズ』と自称していたので……?
次回 柳は緑