ワンピース104巻買いましたが、十一話の前書きで言った謎の答えがわかった気がした。……気がしただけ。
前回のあらすじ
七武勇、三好夏凛の情報を謎の少女赤嶺から聞き、歌野たちは福島の会津を目指す。そして芽吹は会津若松城にいるとされる三好夏凛と因縁の対決を迎えることとなる。
翌日。歌野たちは福島へたどり着く。
「……助かったわ」
「これくらい構わないよー」
芽吹は雪花の背中におぶさり移動してもらっていた。
「……でも、流石に拍子抜けね。人が必死になって足取りを探っていたのに、協力を要請した途端、情報が入るなんて……」
「これはもうディスティニーね♪ 楠さんが私の野菜たちを広めてくれ、って世界が願ってるのよっ」
「楠さんは岩手に来る前に福島にも立ち寄ったんでしょ? その時は確認しなかったの? ここ」
その問いに芽吹は首を横に振る。
「来たわよ。……でも城の外観を見ただけで中までは確認してなかった。……ここには誰もいないだろうって先入観に囚われていたわ」
以前にも芽吹はここへ来たが、人がいる痕跡が無さそう、と結論付けて早々に退散した。
おそらくその時はタイミング悪く、誰も居なかったのだろう。
「……何はともあれ、ありがとね。……秋原雪花、白鳥歌野。それに藤森水都も」
「私は何もしてないから……」
芽吹は少しだけ微笑み、半壊した城へ向かう。
「んー。会津若松城……。昔、パンフレットで見た時は壮大なお城だったのにねー」
「そうね。私も城を見るのは好きだけど、ここまで廃れたんじゃあ流石にやるせなくなってくるわ」
「あれ? 楠さんもお城、好きなの?」
「……父が、大社関連の社殿建造と修復を生業としてる大工だから。その見本として全国の城の写真や模型とかの資料があったわ」
「そうなんだー。いつか見てみたいにゃぁ」
「……」
わずかに口角を上げて微笑んでいた芽吹だが、城に近付くたびに表情は強張っていく。
(ここに、居るかもしれないのね……。三好さん……)
「あの日の
ーー彼女たちの予想通り、この城は半年前からとある少女たちが拠点の"ひとつ"として扱っていた。
カツン、カツン…… と芽吹たちの足音が荒廃した建物内に悲しく響き渡る。
「……! この足音、誰か来たっ」
荒廃した城の中でも比較的安全そうで片付いている部屋にいたひとりの少女が接近に気付いた。
その少女は手に持っていたスマホを見る。
「
スマホをしまって、少女は何もないところから双剣を出現させ両手に持つ。
「……」
すぐに退散しようかとも考えていたが、もし、相手が防人ならば聞いておきたい事があるので、少女は双剣を構えたまま近付いてくる足跡の正体を待つ……。
そして遂にーー
「ーーっ、え……?」
「……見つけた。三好さん」
およそ二年ぶりに、楠芽吹と三好夏凛が対峙する。
「くすの、き……?」
「……ずっと探してたけど、貴女にこんなところで会えるとは思わなかった」
「そう、ね……。私も……」
防人発足のおり、二人でトップ争いを繰り広げ、直前で失踪した三好夏凛とはそれ以来の再会となる。
「楠……。アンタ、なんでここにいるの?」
「……」
芽吹はゆっくりと腰に差してある二本の刀を引き抜いた。
そして二つの刃を夏凛に向ける。
「何で、ですって……? それはーー」
その瞬間、夏凛に向かって突撃する。
「ーー貴女がここに居るからよッッ‼︎」
「ーーッッ⁉︎」
咄嗟に夏凛は双剣を交差して芽吹の太刀を受ける。
「楠⁉︎ 一体何をーー」
「覚えてないのかしらァ! 防人として発足する前日ッ。……貴女は私の前から逃げたしたッ‼︎」
その言葉に何かを思い出したのか、夏凛の表情が歪んだ。
そのまま二人は鍔迫り合いを繰り広げる。
「……あの人が、楠さんがずっと追い続けていた三好夏凛さん」
「凄い剣幕……」
その様を見ている水都と雪花は、その勢いに呑まれていた。
「……? うたのん?」
だが歌野は、ふいに視線を逸らし周りを見渡している。
「どうしたの?」
「ん? 楠さんの決闘が終わるまで邪魔が入らないように警戒してる」
「あっ、そういえば契約内容に入ってたね」
"楠芽吹と三好夏凛の闘いに、バーテックスなどの邪魔が入らないようにする"。
これは歌野が出した芽吹のための条件のひとつだ。
「……この決闘はどっちの勝敗になるかはわからない。でもちゃんと決着が付くように私たちは見守るだけだよ」
「……うん」
「……」
水都も一応、周りを警戒する。
しかし、雪花は周りを気にせず二人の闘いを凝視していた。
(決着、か。どちらが勝っても、か。勝敗なんてわかってるんじゃないの? 歌野……)
ーー芽吹と夏凛が鍔迫り合いを始めて1分は経っただろうか、芽吹が動く。
「……どう? 思い出したかしらァ!」
「ーーぐっ」
芽吹はその状態から右足を蹴り上げ夏凛の腹部を狙う。
夏凛はバックステップを踏んで後退しようとしたが一瞬遅かったのか、軽く足が触れた。
「……」
夏凛は赤い服に着いた泥を軽く払う。
「楠……」
「三好さん。貴女がなぜ防人を離れたのか、なんてもうどうだっていい。どうせ教えてくれないんでしょ? ……それでいい。けどね、
「……」
夏凛と芽吹の表情はどちらも歪んでいた。
ただ、夏凛は切なさの混じったものに対して、芽吹は怒りの混じったものであり、それが双方違う表情を映し出している。
「貴女を倒す……。貴女を越えて、私は正真正銘防人のNo.1になるの。それまで私は防人へは戻らない……。そう皆に
芽吹が交わした二つの約束……。
過去に夏凛と交わしたNo.1の座を巡った決闘。その夏凛を倒し、胸を張って防人に帰ること。
「……そう。アンタの想いはわかった……」
夏凛は目を閉じて何かを考えていたが、芽吹の繰り出す刃が目前に迫ると目を開け、それをしゃがんで避ける。
「ーーッ⁉︎」
「なら私も
夏凛は脚のバネを使って一気に双剣を斬り上げる。
「くっ、させるかァァァ‼︎」
夏凛の双剣が胴を斬り裂く直前に、突き出していた双刀の柄を逆に持ち替えて、受け止めた。
「一瞬で⁉︎」
「二刀流、
その状態から体を一気に捻り、回転して夏凛を吹っ飛ばした。
「……凄い。今、回転で竜巻みたいに……」
「あの一瞬で、ね……」
歌野を含めた三人はその様子を固唾を飲んで見守る。
「この程度なのッ⁉︎ 三好さんっ。決着付けるんでしょおお!!!」
双刀を持った両手を対角の腰の位置にくるよう交差させて突っ込む。
「
そこから双刀を一気に横薙ぎに斬り払う。
それを夏凛は真上にジャンプして回避した。
「上にっ、跳んだわねッッ」
ニヤリ と笑みを浮かべて刀の切っ先を地面に垂直してーー
「"
先程、夏凛が見せたように脚のバネを使って斬り上げ、夏凛に追い討ちをかける。
「ーーうッ」
カンッ! と夏凛は双剣で防いだが、衝撃までは殺せず、さらに後方へ飛ばされて着地した。
「ハァ……ハァ……。どう? 三好さん。
「……」
夏凛は何も応えず、立ち上がった。
「楠さんって勇者じゃ無いんだよね?」
「そう聞いてるわ」
「三好夏凛さんって勇者なんだよね?」
「七武勇って言うぐらいだからだね……」
水都は目を疑った。
勇者でもない芽吹が七武勇の夏凛を押しているように見えるからだ。
勇者の野菜を食べた者とそうでない者とは、単純な身体能力から差が存在しているはずなのに、芽吹にはそれを感じさせない程の闘いを繰り広げている。
(きっと……尋常じゃないくらい努力したんだろうなあ……)
それこそ文字通り、血の滲むような努力、だろう……。
「私……芽吹さんに勝って欲しい……」
「え?」
胸の前で両手を握りながら口にする。
「勇者の野菜関係なしに……才能と努力だけで、強大な相手と渡り合って、そして越える姿を見たい……。だから私は、楠さんを応援したいよ」
「水都ちゃん……」
おそらく水都が勇者では無いからだろう。だからこそ、勇者を越えることができる人間に……努力で夢を叶えられる人に、水都は尊敬の念を抱く。
……しかし……
「水都ちゃんには悪いけどね……」
「?」
「勇者はそんなに弱くは無いよ……」
ーー夏凛は芽吹の攻撃を受けながら、その太刀筋を観察していた。
自分が居なくなってから、芽吹がどのように過ごしてきたか……。努力してきたか……。何を見据えているのか。
先程から、芽吹の攻撃を受け流すばかりで夏凛からは攻撃していない。芽吹の体力切れを待っているようにも思える。
芽吹からの攻撃も、最初から一太刀たりとも受けていない……。
「ハァ……ハァ……」
そのことは芽吹もすでに気付いていた。
だからその余裕を無くそうと攻めることをやめず刀を振るい続けている。
「三好さん……三好夏凛ッ!!! 斬り掛かってきなさいよッ。貴女を目指し、追いかけ、そして越える私をっ、その眼に焼き付けなさいよっ! 貴女の本気をっ、私は打ち破ってみせるんだからァァァ‼︎」
芽吹は両手に持つ刀を目の前でクロスする。
「あっ、あれ‼︎」
その構えはバーテックスを目にも止まらぬ速さで斬り裂いた時の構えそのものだった。
「
「……‼︎」
ガギィン!!
城内に刃物が奏でる金属音が木霊した……。
「……な、に」
「……」
芽吹の渾身の一撃は、夏凛の双剣によっていとも容易く止められていた。
……静止した状態の中、夏凛以外の全員が目を疑う。
「そんな、あれは星屑を一瞬して吹き飛ばした技……なのに」
(直線的な攻撃だから軌道が読めた? だから止められた?)
雪花はこの状況を分析しようとするが……。
「猛スピードで突進してくる楠さんの攻撃を静止させた……。つまり、同程度のパワーをぶつけて釣り合わせた事になる」
(それを止まってる状態で……)
「……⁉︎ ……っ」
芽吹の思考は固まり、それに連動するように体も動かなかった。
いや、本人は動いているつもりだ。夏凛の剣を押しのけようと力を込めているつもりだ……。
なのに……。
(う、動かない……。何をしているの? 私は。……何をしたの? 三好さんは……)
「…………」
三好夏凛は何も言わず、芽吹の瞳を見据えていた。
(何も、してない……の? ただ、私と同じ力で押し返しているだけ? ……嘘でしょ?)
一瞬夏凛の、勇者の野菜の能力だと疑った。
そう
(そんな、馬鹿げた話なんて無いじゃない……。私と三好さんは……共に防人のトップを争って……。争える程の実力同士だった筈でしょ……⁉︎)
スッ……と夏凛から双刀を離し、後ろに数歩下がった。
「
たったそれだけの違いで、トップ争いをしていた二人の差は、こんなにも開いてしまった……。
「……楠」
ずっと口を閉じていた夏凛だったが、口を開いた。
「あのねーー」
「たった‼︎ それだけじゃないッッ!!!」
もう一度、夏凛に斬り掛かる。
今度は、両手を上げてVの字を描くように振り下ろした。
「
ガキンッッ‼︎ と、また夏凛に受け止められた……。
「う……ううええああああああああ!!!」
こんな状況を認めたくない一心で……、今自分が考えてしまった事を振り払うために……、芽吹は刀をデタラメに振り回す。
「怒りに身を任せただけの凶暴な剣……」
それを避け、時には剣でいなしながら夏凛は呟く。
「……
そして遂に、夏凛が双剣を地面と水平方向に構えて攻撃のモーションに入った。
(っ! くーー)
攻撃が来る……と頭でわかった瞬間ーー
「
平行に並んだ二本の剣が、目前に迫っていた……。
「あああああっっ」
なんとか、双刀を縦方向に構え防御姿勢をとることで斬られる事は避けた……が。
「フウッ‼︎」
「ーーぐぅはあ!」
僅かに遅れたタイミングで夏凛のキックが芽吹の腹に命中し吹き飛ばされた。
「……! ごふっ、ガハッ。ゴホッゴホッ……」
自分が最初に放った蹴りより遥かに重く、遥かに痛く、芽吹は地面にうつ伏せで倒れ込んだ。
「そんな……楠さんが、一方的に……」
最初の威勢など、とうに失せ、倒れている芽吹に水都の表情は険しくなっていく。
歌野も黙っているが、体が震えているのがわかる……。
「水都ちゃん。あれが、勇者と、そうじゃない者の差だよ」
「雪花ちゃん……」
(まぁ、多分それだけじゃないと思うけどね……)
「……くっ。ハァ、ハァ……」
腹部を押さえて、なんとか立ち上がる。
「これ程の距離だなんて、冗談じゃない……。この遠さはないでしょ……」
……ひとり呟く。
「私は……こんな情けない姿を晒す為に貴女を追ってきた訳じゃない……。こんな目に遭う為に今まで努力してきた訳じゃないッ」
ふらふらになりながらもしっかりと地面を踏み締める。
「貴女に敗ける為にっ、私は刀を振ってきた訳じゃないのよッッ」
叫ぶ芽吹を前に、夏凛は静かに言い放った……。
「……もう、大社に帰りなさい、楠」
後半へ続く……。
言わずもがな、芽吹と夏凛の戦闘は、あの剣士二人みたいだ。
次回 花は紅