白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。


前回のあらすじ(?)
勇者の野菜を食した歌野。なんと、歌野は勇者になった!

歌野「ゴムゴムのーー」
水都「うたのん、セリフ間違えてるよ」
歌野「あっ。間違えたっ。ゴホンッ。……ムチムチのぉ、銃ーーッ‼︎」

……アレ? ってことは、若葉たち四勇や、未だ謎の集団(といっても誰がいるか大体予想がつく)七武勇も能力者?


第三話 進化体バーテックス

 二人はようやく空港へたどり着いた。

 

「……つ、着いたよ。うたのん」

「……ふぅ〜、疲れたわ〜。着いたらどっと疲れがライザアップよ……」

 

 あの夜の後、寝るに寝れなくなった二人は早くに出発して、朝日が昇ると同時に空港へやってきたのだ。

 しかし、ここに来るまでにも二回ほどバーテックスに襲われた。それを歌野は手にした鞭(?)を使って討伐し続けた。

 

「じゃあ少し休憩しようか。空港内を生活の拠点としている人もいるはずだから。その人たちに飛行機がいつ発つのか聞いておかないといけないし」

「大丈夫? 怪しまれたりしないかしら?」

「大丈夫だと思うよ、聞くだけだから」

 

 そして二人は暫し休憩を挟み、空港内へ入ろうとする。

 

 ……が、二人の予想は裏切られた形となる。

 

「……み、みーちゃん。コレ……」

「う、うん。人が生活していたとは思えない、ね……」

 

 空港ターミナルの入口はどこもかしこも破壊されており、瓦礫が散らばっていた。

 

「酷いわ……。ここもバーテックスにやられたのね」

「うん。でも、つい最近の事だと思う。少なくとも私がこの空港の存在を知っている時は、まだ襲撃されてなかったはずだよ」

「ってことは、一週間くらい前?」

「だと思う。……まずは、周りに誰かいないか探そう」

「だねだね」

 

 二人はターミナル内を歩き回り、生存者を探した。

 この建物は地下から四階まであり、四階には展望デッキがある。襲撃前はそこで離陸着陸する航空機を鑑賞できていたのだが……。

 

「……いないわ」

「でも、うたのん。所々にゴミが落ちてる。瓦礫の上にあるから最近までここにいたんだね」

「もっと探しましょう」

 

 この空港は広大な土地で、似たようなターミナルは少し離れた場所にもうひとつ存在していた。

 二人はそこへ向かうと、わずかな人数だが確かに人がいた。

 

「あっ、見つけたっ!」

「……? 誰だいアンタらは」

 

 おじさんがこちらにやってきた。

 

「も、もしかして大社の人たち、か? 『防人』の応援に来てくれたんだね⁉︎」

「え? え〜と……」

 

 歌野は状況を飲み込めていない。水都も詳しいことはわからないが、どうやらおじさんは水都と歌野を大社の人間だと思っているようだ。

 

「ねぇねぇみーちゃん。さきもりって何?」

 

 歌野は耳元で囁く。

 

「……防人っていうのは、大社所属の戦闘部隊のことかな」

「わぁお。カッコイイ響き」

「バーテックスが現れてから、大社と四勇が結束して討伐していったのは知ってるよね?」

「ええ」

「その時の大社の戦力としてバーテックスを討伐していったのが防人」

「なるほど〜」

 

 水都はおじさんに向き直った。

 

「……すみません。私たちは大社の人間では無いんです。旅のものでして……」

「……? おお、そうだったのかい」

 

 少し、残念そうな顔をした。

 

「まぁ旅の方よ。こっちでゆっくりと休みな。少しなら食料を分けてやれる」

「ホントですか⁉︎ ありがとうございます!」

 

 二人はおじさんの後をついていくと、地下は比較的綺麗でそれなりの人数がいた。

 

「……? 岩尾のおじさん。その二人だれさ?」

 

 その集団の中で、緋色の髪をサイドテールにしている女性が話しかけてきた。見た目的に歌野より数歳年上か。

 

「ナルミちゃん。この二人は旅のものでな。少し、休ませてやってもいいか?」

「……岩尾のおじさん。別に私はここのリーダーじゃないから、そういうのはいちいち許可取る必要なんてないさ」

 

 彼女はナルミと言うらしい。

 

「す、少しだけ厄介になります。私、藤森水都と言います」

「私は白鳥歌野。よろしくね」

「ああ。私はナルミ。……外は大変だったろ? 最近は特にバーテックスの襲来が多くてさ」

「私たちもここへ来る時、何度か襲われました」

「ーーッ⁉︎」

 

 歌野のその言葉に周囲の人たちはざわめく。

 

「よ、よく生きてたな……」

「ええ! 大変でしたけど、私、勇者ですから!」

「ちょ、ちょっとうたのん‼︎」

 

 水都は慌てて歌野の口を塞ぐ……が、遅かったようだ。

 

「勇者?」「勇者だって⁉︎」「彼女たちが⁉︎」

 

 ザワザワと色めき立った。

 

「……もごもご。……ぷはああっ。どうしたのみーちゃん?」

 

 歌野は塞いでいた手を取った。

 

「あまり、そういうのは言わない方がいいと思う」

「なんで?」

「なんでって、それは……」

 

 チラッと水都は周りを見た。

 

「……アンタら勇者なのか?」

「い、いえ」

「私、白鳥歌野だけです」

「うたのん……」

「私は大丈夫だから」

 

 歌野はニッコリと微笑んだ。

 

「勇者っていうと……。アレか? 勇者の野菜を食べたっていう能力者、か?」

「ええ、そうです。私はムチムチの野菜を食べましたっ」

 

(うたのん、喋りすぎだよぉ……)

 

「四勇、じゃないよな? いたっけか?」

 

 ナルミは他の人たちへ尋ねる。

 

「いや、四勇にはいなかったはずだぜ」「白鳥歌野さん、って言ったんでしょ? そんな名前の人いなかったわ」

 

 ナルミは手に顎を添えて考えている。

 

「じゃあアンタ、七武勇か?」

「いえいえ、ただの勇者ですよー」

 

「ただの勇者ですって……」「勇者に''ただの''とかあんのか?」「私も七武勇については少しだけ知ってるけど、彼女の名前は無かったな」

 

 また、周りの人達がそれぞれ話し始めている。

 

 ーーすると、天井にあるライトがチカッチカッと赤く明滅し出した。

 

「ーーッ‼︎ みんな、避難だ! バーテックスがまた来たぞ!」

 

「もうか!」「早くない⁉︎」「今までこんな頻度の多さはなかったぞ!」

 

 みんなは口々にして奥へ駆け込んだ。

 

「……今のって」

「ああ。バーテックスが近くまでやってきたんだ。上で見張りをやってるやつが見かけるとこちらに知らせてくれるようになってる」

 

 ナルミはバッグから銃を取り出す。

 

「……! それっ」

「もしかして、倒しにいくんですか?」

 

 水都の言葉にナルミは笑う。

 

「……こんなもんでも一応は大社からもらった防人装備の一種だ。雑魚相手には効く」

 

 ナルミは地上への階段を上がっていくが、途中で振り返る。

 

「……良ければアンタも来るか? 勇者ってんなら力貸してくれ」

「……!」

 

 驚く歌野をよそに水都は、やっぱりと思った。

 

(こういう流れになると思ったから、うたのんが勇者になったって秘密にしておきたかったんだけど……)

 

 水都は不安の中でチラッと歌野を見た。

 

「……わかりましたっ。手伝いますっ」

「う、うたのん⁉︎」

「大丈夫っ。バーテックスならここに来るときに何度か倒したからっ。もう慣れたもんよ」

 

 えっへん、と歌野は胸を張った。

 

(ああ……。やっぱりこうなっちゃうんだ……)

 

 水都の不安は見事に的中した。

 

「うたのん、気を付けてねっ」

「あったりまえ〜」

 

 

 ……そして三人は、地上へ出る。

 

「お疲れ様です。ナルミさん」

 

 おそらくは先程言っていた見張り役の人だろう。

 その人は変わった格好をしていた。全身が白色と黄緑色が混ざったのスーツのような、鎧のような装備。

 手には銃を持ち、顔にはバイザーを付けており首元には『25』という数字が彫られてある。

 

「敵の数は?」

「それがですね……」

 

 25の人(おそらく女性)はバイザー越しでもわかるくらい暗い表情をしていた。

 

「進化体……。一体……です。今はおそらくこの辺りにいるかと……」

「ッ‼︎ ……なんてこった……」

 

 マップを見たナルミを重苦しい表情で頭をかいた。

 

「あの、進化体ってなんですか?」

「……? その人たちは?」

 

 見慣れない顔に困惑している。

 

「ああ。彼女たちはついさっきここに来た旅人だよ。……勇者の野菜を食べた能力者らしい」

「ーーッ⁉︎ それは本当ですか⁉︎」

 

 食い入るように歌野と水都を見つめている。

 

「質問の途中だったな。……進化体は、進化体バーテックスのこと。普通のバーテックスは知ってるだろ? 全身真っ白のでかい口したマシュマロみたいなやつ」

「……はい」

 

 マシュマロとは言ってほしくはないが……。

 

「そいつとはまた違う。異形な形をした強化版ってとこかな。普通のやつより、強いんだ」

「奴らは1〜2年ほど前から見かけ始めました」

 

 ナルミの横にいた人が説明を補足する。

 

「私は大社の戦闘部隊。防人所属、『No.25』です」

「な、No.25?」

「はい。我ら防人部隊は基本的に、番号が与えられ、お互い数字で呼び合っているんです。例外として一部の人は正式な名前を名乗れるのですが」

「は、はぁ……」

 

 大社の防人というシステムに二人はまだ理解が追いついていない。

 

「……まあ、私のことは置いときまして。私たち防人はバーテックスを倒せる武器を所持しています。これまでもこの銃で何体も倒すことができました」

「私の持っているコレもそうだ」

 

 ナルミと25は持っている銃を見せる。

 

「しかし、この銃で倒せるのは雑魚だけです。今近くにいる進化体バーテックスはこの銃では倒すことはできません。多大な犠牲を払って追い返せるくらい、でしょうか」

「進化体を完全に倒すことができるのは勇者だけだ」

 

 そこでナルミは歌野に頭を下げた。

 

「頼む。奴らを倒してくれないか? 今の私たちではどうすることもできない。……つい最近にもそれなりの数の雑魚バーテックスがやって来てな。二人負傷した。戦える兵も私たちしかいない」

「……頭を上げてください」

「うたのん……」

「……バケモノを倒す力が私にあるのなら、私しかできないのなら、私がやるしかないわねっ」

 

 歌野はそう言って水都の手を握る。

 

「ゴメンね。心配かけないようにするから……」

「ううん。心配だよぉ。……でも、うたのんが決めたのなら私はもう止められない。だから信じるよ」

「ええ! ありがとみーちゃん」

「絶対帰ってきてね」

「あたりまえっ。私の夢は農業王になるって言ったからね」

 

 それを聞いた二人はポカンとする。

 

「農業王?」

「はい。全ての作物を栽培し農業界の発展とそのトップに立つんです!」

「はっはっは。それは壮大な夢だな」

「あっ。皆さんも農業しませんか? この空港周辺は田畑が多いようですし」

「……そうだな。自給自足も充分にするためには確かに農業はうってつけだ」

「おっ! 興味津々って感じですね!」

 

 歌野は三人に背を向けて走り出す。

 

「ではでは、皆さんが農業仲間になってくれるために。安心して農業ができるために。白鳥歌野、バーテックスを討伐しまぁぁぁすっ‼︎」

 

 

 どこからともなく取り出した棒のようなものを手にして歌野は駆け抜けて行った……。

 

 

 

 

 




 防人部隊は全員で32人。それぞれに番号が振られている。基本的には数字が小さいほど優秀。……ってコレ、『楠芽吹は勇者である』を知ってる人へは釈迦に説法か。
 この作品独自で言えば、例外を除いて番号で呼び合う。番号ではなく名前で呼べるのは、ごく一部の防人だけ……。誰かは……わかるよね?


 次回 対決! 歌野VS進化体
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