前回のあらすじ(?)
歌野「それにしても本当にどこの部位も人間ねっ」
芽吹「体の機能も人間なのかしら……?」
双子座「「じつはここもにんげんなんだよ」」
水都「あっ、あ〜〜! 見せなくてもいいからぁ!」
雪花「ウブだねー、水都ちゃん。子供のなんてかわいいもんでしょ」
水都「そういう問題じゃないんだよぉ……」
双子座「「ひと呼んで"イザナギの剣"/"イザナミの鞘"!」」
園子たち二人は歌野と雪花と思わしき者と戦い続けていた。
「……ねぇ、わっしー」
「ええ……。彼女たちに攻撃が当たってないわっ」
歌野と雪花はユラユラとした陽炎にようにそこへ立っているだけで、園子たちへ攻撃してこようとはしない。
その彼女たちへ、槍で薙ぎ払っても、浮かんだ刃で切ろうとしても
放った矢も同様である。
「どんな能力なの? 体を霊体化させる能力?」
「でもわっしー。二人ともって言うのはないんじゃないかな〜」
「…………」
すると、じっと立ち尽くしたままの雪花(?)は、不敵な笑みを浮かべた。
「ーーっていう夢を視たのかにゃぁ?」
「「ーーッ!?」」
ーーその瞬間、辺りの景色が割れたガラスのように粉々に砕け散った。
「な、なに⁉︎」
「むむむ〜」
先程までいたはずの歌野と雪花の姿はなく、ここには二人しかいなかった。
「……や、やられたっ」
「あれ〜? 私もしかして寝てた〜」
黒髪の少女はすぐに、相手の能力にしてやられたと勘付いた。
「そのっちが寝るなんていつもの事じゃない」
「でも、今回はわっしーも寝ちゃってたんだよね〜?」
「ええ。まんまと出し抜かれたわ。……きっとあの時ね、あの眼鏡をかけた槍使いの彼女。
「私、そんな能力ないよ〜」
「そのっちじゃない」
黒髪の少女は悔しさから歯軋りをして、弓矢を真上へ放り投げた。
「乗ってそのっち。こっちの方が速いし見つけやすいっ。まだ追い付けるはずよっ」
「了解だよ〜。ジェット機"わっしー号"、出発進行なんよ〜!」
いつのまにか、二人の頭上には白の戦闘機が出現し、操縦席へ飛び乗った。
そして園子と、七武勇がひとり……『東郷美森』は歌野たちを追いかけるーー。
「ーーば、バーテックスぅ⁉︎ リアリー⁉︎」
「うんうん、りありーだよ」
「りありー!」
「……意味わかるんだね」
歌野たちは保護した子供の正体を知り、驚愕していた。
「どこからどう見ても人間に見えるよ」
「でも、バーテックスっていう事を念頭においてよく見ると、"それ"っぽさはある……かも?」
雪花も頭の整理が追いついていなかった。
「手配書の写真は? あれとは全然違うようだけど?」
芽吹は一度、進化体バーテックスの手配書を見たことがあった。
その中に双子座の手配書もあったのだが、目の前の彼らとは似つかないものだったのだ。
「楠さん。写真はどんなだったの?」
「人型なのは間違い無いけど、それ以外は人間っぽくなかった。まるで十字架と一体化したような姿よ」
「「あー、それはばーてっくすそのもののふぉるむだね」」
双子座の少年少女は芽吹の疑問に対して説明する。
「いまのぼくたちは」「いまのわたしたちは」
「「ふぉるむをにんげんにしてるの」」
「フォルム?」
「「うんっ。こののうりょくはばーてっくすのすがた、にんげんのすがた、そしてばーてっくすとにんげんのあいだのすがた。このみっつにへんかできるのっ」」
二人は一字一句全く同じ言葉、話すスピードで説明を続ける。
「「でもほかのひとにねらわれるのがいやだから、ずっとにんげんのすがたですごしていたんだ。このすがた、きにいってるからっ。……でもあのひとたちにはばれちゃってた」」
「そうなんだ……。それで追われてたんだね……」
「…………」
「……? うたのん?」
歌野の肩がぷるぷると震えているのを水都は心配そうに見つめていた……が。
「んん〜〜アメイジングッ!」
「えっ」
どうやら杞憂だったようだ……。
「人間みたいなバーテックス⁉︎ なんてアメイジングでエキサイティングなのかしら‼︎」
歌野は双子座の顔や身体を細かく眺める。
「どこからどう見ても人間なのねっ。勇者の野菜がミステリアスなのはわかってはいたけど、私の想像を軽々とオーバーしていっているわねっ」
その様子に水都だけではなく、双子座さえも驚きのあまり、顔が引き攣っていた。
「「か、かわったひと、だね……」」
「そうだねー。貴女たちに言われたくはないけど、歌野は変わってるんだよねー」
「撃退しようとは思わなかったの? 仮にも進化体でしょ?」
「むりだよ。ぼくたちは"ふたご"のとくべつなちからをもっているだけ。……『ふたごのしんくろにしてぃ』だったかな? ……それに、ばーてっくすのすがたはすきじゃないんだ」
「みためきもちわるいし……。へんたいさんみたいだから」
二人は人間の姿を気に入っており、同時にバーテックスの姿に嫌悪している。
一生、人間の姿でいると言っても過言じゃないほどに。
「"バーテックス"が人間の姿が良い? バーテックスの姿が嫌? ……人の言葉を話す以上におかしな
芽吹は嘲笑混じりに口にした言葉に歌野が反応する。
「ちょっと楠さん。そんな言い方はないわっ。この子たちだって……」
「ーーねぇ歌野。大事な話をしようかしら?」
「……」
芽吹の言葉に周囲は重苦しい雰囲気に包まれた。
芽吹の意図するものを双子も入れて、全員で感じたからだ。
「私達は今、世界を揺るがす程の問題を抱えてしまった。人類の天敵であるバーテックスを、それを討伐できる力を持つ私達が保護してしまったという事実」
「そ、そんな大袈裟ーー」
「大袈裟ではないわ、雪花。バーテックスを守るとは、
「「…………」」
双子座の彼らは、先程とは打って変わって暗い表情をする。目に涙を浮かべ、自分たちの運命に絶望する。
歌野たちのこれからの行動によって、自分たちの寿命が決定してしまうからだ。
「……空気を変にして悪かったわ。でも、仮にも大社防人である私だから、早々にこの事を話さなきゃいけなかった……」
「ええ。わかってるわっ。私もこの話は言い出しにくかったから……」
歌野や雪花、水都も『双子座』の件は頭にあった。しかし、いざその議題を話せば"答え"など明白だったような気がして言い出さなかった。
「今、私達に出来る事は二つある。この子達『双子座バーテックス』を"殺す"か"守る"か」
「「……‼︎」」
前者の言葉に双子座の身体はビクッと反応した。
「前者なら、今この場で終わる。そして何事も無かったの如くウエストジャパンを目指す。……後者なら、一生拭えない"十字架"を背負って世界と戦う。……まぁ、まずはさっきの二人と戦い、完全に撃退する必要がある。もし、七武勇が全員で来たら流石に終わりだから……」
そして、芽吹は真っ直ぐ歌野を見つめて彼女に選択を迫る。
「歌野、貴女が決めなさい。この
「……わかったわっ。ならみーちゃん、雪花、それと一応は仲間ってことで、楠さんも交えて四人で多数決をーー」
「多数決じゃない。貴女が決めるの。貴女ひとりで」
「……!」
歌野の言葉を遮った芽吹は人差し指を顔へ向ける。その指は歌野の顔スレスレの距離だった。
「多数決なんか意味ないのっ。どうせ雪花と水都は貴女の意見に従う。そんな事は目に見えてる。だから貴女が決めて、私達に命令するのよ。……この組織のこれからを決める権利と責任は、リーダーにあるんだからっ」
「……‼︎」
その言葉にハッとさせられ、歌野は水都と雪花を見る。
二人とも頷く。歌野の出した選択に、付き従う意思を表すように。
「……その前にこの子たちと話をさせて」
芽吹から離れて双子座の前に立ち、二人と目線を合わせるよう中腰になった。
「貴女たち二人は、人を襲い続けるの? 他のバーテックスのように」
双子座は首を横に振った。
「「ううん。おそわないよ。だってこののうりょくをもってから
「……でもぼくたちは」「……でもわたしたちは」
「「ばーてっくすであるとどうじに、にんげんだから。"にんげんなりたいから"。にんげんはへいきでにんげんをころさない、よね……」」
すると、双子座の目から涙がポロポロとこぼれ始めた。
「「だから……みのがしてください。つぎあったときは、えんりょなくころしていいから……、いまだけは……。せっかく、たすけてくれたのに……"やさしいひと"にであえ……ぐすっ……たのに……」」
深々と礼儀正しく頭を下げて命を乞う。
「「だから……、あなたたちが"いいひと"のまま、わかれたいんです……」」
「ーーじゃあ最後の質問ねっ」
歌野は真剣な顔をしているが、仄かに微笑んでいるように見えた。
そしてそれはどこか、優しさを感じさせるものであった。
「貴女たちは、
「「ーー‼︎」」
その瞬間、一粒一粒溢れていた涙が、堰が外れた川のように一気に流れ出す。
「「はい……っ。たすけてほしいです……!
歌野はそれを聞いてニコッと笑う。そして双子座を抱きしめて強く頷いた。
「ーーオフコース! ふふっひ♪」
「「うう、うわああああああ〜〜〜ん」」
泣き喚くその姿は、まさに幼い子供のようだった。そしてその涙と生きたいと願う想いは、まさに人間のそれだった。
「みーちゃん、雪花。そして楠さん」
「いいのね? 歌野」
歌野は芽吹の方に向き直る。
「ええ。……もしかしたらこれは無謀な事かもしれない。でも、子供に泣いて"助けて"って言われたら、もう背中向けられないじゃないっ?」
「バーテックスでも?」
「バーテックスでも!」
芽吹はふぅ と軽く息を吐いて微かに笑った。
「……良いわ。それが貴女の決めた事なら、私は従う」
「いいよっ。歌野の指示なら私も全力で従うよ」
「わ、私も。どこまでできるかわからないけど。うたのんとなら……っ」
「……ありがとう、みんな。じゃあ私たちの目標は『双子座』を守りながらウエストジャパンへ向かうことねっ」
「その後は?」
そこで泣き止んだ双子座の二人が同時に手を挙げた。
「「ここからにしのほうにいるはずの、"ぼくたち/わたしたち"のどうるいがいるとおもうから。そこまでつれていってくださいっ」
「仲間のバーテックス?」
「うんっ、つよいんだっ。たぶん、ぼくたちのなかでいちばんっ」
「ぜんしんがほのおになれるおおきなばーてっくすなの!」
「了解っ。何にせよ、ウエストジャパンは私たちの目指す方向と重なるからちょうどいいわねっ」
「「ほんとうに……ありがとうございますっ」」
「よしっ。じゃあ早速ーー」
ーーと、その時、彼女たちの頭上に影ができ、辺りが薄暗くなった。
「「「……えっ?」」」
全員は上を見上げ、
「ーーあ〜。見つけたんよ〜」
「五つの熱源を感知。……うち二つは若干温度が低い。当たりね」
操縦席のレーダーに映っている五人の体温を示したビーコンにより、歌野たちを発見する。
「行くわよ、そのっち」
「うん〜」
すると、戦闘機は姿を消し、園子と東郷は手を繋いでゆっくりと降りてきた。園子の手には先程持っていた特異な槍。東郷はスナイパーライフルを持っていた。
「……ねぇ、撒いたんじゃなかったの?」
「さっきまでの乗り物……。なん、だったの?」
「わからないっ。でも逃げなきゃ。みーちゃん、この子たちお願いねっ。楠さんも一緒にお願いっ」
「うんっ、行こう」
「……了解っ」
水都と芽吹は双子座の手を引いて走り出す。
「私たち二人で追い払うわっ、雪花」
「オッケー!」
「……また私たちに立ち塞がるんだ〜。ふ〜ん」
「そのっち、あの子の槍。気をつけてね」
「わかってる〜。だから私は同じ槍使いとして、この子にするんよ〜。わっしーはもう片方の子をお願い〜」
「ええ」
歌野と雪花も武器を出現させ、戦闘態勢をとる。
「私は諏訪出身、白鳥歌野。農業王になる勇者よっ」
「私は北海道にいた勇者、秋原雪花」
「七武勇……貴女たちの理屈はわかってるっ。でも……それでも私はあの子たちを守るっ」
「へ〜。てっきり知らないと思ってたのに〜、正体を知ってるんだ〜。それでも味方につくの〜?」
「僻地の勇者が考えていることは理解できないわね」
スナイパーライフルのスコープを覗き込み、東郷は自らの名前を口にする。
「私の自己紹介は、まだだったわね。私の名は『東郷美森』。平和な世界のために、邪魔する者は……撃ち抜くッ‼︎」
そして、歌野と東郷。雪花と園子の戦いの火蓋が切られる……。
ーーそしてまた、
「ーーなーんか飛行機見えませんでした?」
「見えた見えた。っていうより戦闘機だったよね? なんか消えたけど」
この地に足を踏み入れる者たちが三人……。
「ねぇ"No.6"。あの辺に何かいましたよ?」
「諏訪に行く前に、ちょっと見ていきましょう。もしかしたら、標的かもしれません」
No.6と呼ばれた女はニヤリと笑った。
「ーーオケオケっ。じゃ行ってみよっか。賞金稼ぎに」
ーー新たな戦いの種が蒔かれ、一瞬にして芽吹くーー
ウエストジャパンへ行く前の大仕事。白鳥さんvs東郷さん。雪花vs園子。そして……。芽吹vs......
次回 そのこの能力