白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。ここから芽吹が死ぬほど頑張ります。……白鳥さん、早く復活してくれ。


前回のあらすじ
 東郷と園子の力の前に歌野は戦闘不能。雪花は戦意喪失し、改めて矛先は双子座に向けられる。その一方で、芽吹は大社から歌野討伐の為に派遣されたNo.6たちと遭遇。No.6は目的を双子座へ切り替え芽吹と衝突する。



第三十三話 隊長としての意地

 

 芽吹は刀を両手で持ち、No.6へ突っ込んでいく。

 

「アンタたちは手を出さないでよぉ! これはウチと隊長とのバトルなんだからッ!」

 

 No.14とNo.27に退がるように指示する。

 その次の瞬間、No.6が手にしている突起物と刀とがかち合う。

 

「ぐっ……力強いねぇ」

「貴女……その剣みたいなものは何? 装束から出てきたようだけど……」

「ああ、これ? これは……」

 

 鍔迫り合いの中、No.6は不敵に笑う。

 

「ウチの"爪"だよ。剣サイズの、ね!」

「ーーッ‼︎」

 

「……二輪咲き(ドス・フルール)

 

 その時、芽吹はNo.6に()()()()。それも鍔迫り合いの途中にも関わらず。

 

「う"っ‼︎」

 

「キッキキキ! 食らえッ! オーリャリャリャリャリャ!!!」

「ーーがっ、あっ、うッ‼︎」

 

 両手が塞がったままの芽吹は防御姿勢に入れず、タコ殴りにあう。

 そして、怯んだところを蹴り飛ばされた。

 

「……っ」

「キャハッ。不思議? お互いに両手が塞がってたのに、何で殴られてんだ? って……」

 

 よく見ると、No.6の背中から二本の腕が生えていたのだ。

 

「……それが……貴女の能力?」

「おっ、察しがいいねぇ。隊長が去った後、弥勒さんの計らいで指揮官クラスの防人は勇者の野菜を手に入れた……」

 

 すると、背中から生えていた新たな腕の、掌からまた剣状の突起物が生えてきた。

 

「No.3からNo.8まで。あぁもちろん三大将もね。……んでウチの能力は『ハナハナの野菜』。装備した武器からウチの()()()()を花咲かせる事ができる、花咲人間だよ」

 

「……武器? その装束が?」

「っていうか、この防人装備全体だよ」

 

 No.6は両手と背中から生えた腕に一つずつ。合計三本の剣型の爪を持っていた。

 

「知ってる隊長? 装備(チャーム)型ってのはね、どんな物を装備するかで、戦いに様々なバリエーションをもたらす事ができるのよ」

「……貴女が装備した対象が、それって事ね」

「御明察っ。例えば、石ころを装備したとしても、せいぜいウチの目やら耳やら指ぐらいしか咲かない。でも、この防人装束を装備対象として()()にすれば、腕は生える、足も生える……おまけに新しいウチの体も、ね」

 

 すると、お腹の辺りからNo.6の顔が浮き上がる。その()()()は、芽吹に笑いかけた後、消えていった。

 

「装備対象のあらゆる場所から、ニョキニョキって生えるから、ウチは『ニョキニョキの野菜』って名前にしようと思ったけど大社は、この能力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()って拒否られたんだよねぇ……」

 

(気味の悪い能力ね……)

 

「あっ! 今気持ち悪いって思ったぁ? 心外だねぇ」

「……少し疑問があるんだけど」

 

 芽吹はNo.6が防人装束に能力をリンクさせていることはわかった。だが、()()()()()()()に疑問を感じたのだ。

 

「私の知ってる勇者は、槍とかベルトとか……単一の物を装備して能力を使っていた。でも貴女はその制限がないように思えるんだけど?」

 

 防人装束は頭から足まで繋がって出来ている訳ではない。グローブや靴は独立しているし、衣類も上半身と下半身に分別できる。

 

「それじゃあまるで、装備(チャーム)型ではなく、憑依(サーブ)型ね……」

 

「……良いところに目をつけたね。流石隊長」

 

 そう言いながら、No.6は三本の爪剣で芽吹に襲い掛かる。

 

「ーーくっ!」

「装備する対象は、元が一体化していたなら、()()()()()()()()能力は維持され続けるのさ!」

「……⁉︎」

 

 刀一本では捌ききれず、芽吹は少しずつ押されていた。

 

「例えば、大きな鉄に能力をリンクさせた場合っ、それを切り分け、加工し、二本の剣を作ったとしてもッ! ()()()()()()()()()()()()()()()のさ‼︎」

「……ぐあッ!」

 

 三本の爪剣に気を取られすぎたせいで、下から迫る三本の足蹴りに対処できなかった。

 芽吹は蹴り飛ばされ、地面を転がる。

 

「ーーがッ! あッ!」

 

「ウチも同じ。防人装束は、元はひとつの素材から作られてる。だから装束にリンクさせれば装束全体が苗床になり、さもウチの体から生えているようにみえる。装備(チャーム)型でありながら、憑依(サーブ)型の戦い方ができるってこと。知恵と工夫の賜物さぁ!」

 

「……ッ! はぁ……はぁ……。な、なるほどね」

 

(つまり……三好さんは、そうやって……双剣に能力を宿らせている訳ね……)

 

 夏凛が何の能力者かはわからない。が、あの双剣のどちらかではなく、どちらにも能力を宿らせている事に今更ながら気付かされた。

 

「……礼を言うわ、教えてくれて。おかげで三好さんにリベンジする為の重要な知識を手に入れられた」

 

「はっ? リベンジ? どういうこと? 三好夏凛に会ったの? 戦ったの?」

「ええ」

 

「ーー負けたの?」

 

 その言葉に、少し間を置き正直に答えた。

 

「……ええ、あっさり負けたわ。この防人装束がボロボロなのも、三好さんのせいよ。腰の刀も半分折れて、ただ差してるだけだしね」

 

「ーーッ!」

 

 No.6の顔色がみるみる青ざめていく。

 

「……何負けてんのよ

 

「だから私は、己を鍛え直す為に偶然出会った"歌野"と行動を共にして、この世界を見て回ってる。三好さんに追いつく為に。そして、歌野と交わした約束や、貴方達との約束がーー」

 

「ーー腑抜けたこと言ってんじゃないわよォ!!!」

 

「……っ⁉︎」

 

 No.6のいきなりの怒号に、周りの防人や、水都たちも体をビクッと震わせた。

 

「こりゃ何の冗談だよぉ⁉︎ なんてザマだよ⁉︎ あの強くてッ冷徹でッ、完璧だった芽吹隊長(アンタ)がッ! 三好夏凛に負けッ! あろうことか白鳥歌野たち犯罪者共と馴れ合いッ、本来駆逐対象であるバーテックスを守ろうとッ、仲間だった筈のウチらに刃向けてやがるッッ‼︎」

 

「……」

 

「ウチらをほっぽり出しておきながら、自分は生き恥を晒し続けてやがるッ! プライドはねぇのかよ! ウチらが好きだった楠芽吹はァ! 一体どこに行ったんだよ‼︎」

 

 泣き叫んでいるかのように聞こえるその声は、水都や双子座、果てはNo.14とNo.27の胸に重くのしかかる。

 

「白鳥歌野はァ、ウチが弥勒さんから排除するように言われてんだよッ。……それが何だ、ウチらの芽吹隊長がその白鳥歌野に尻尾振ってへり下って……。とことん見損なったよ‼︎」

 

 なぜかNo.6の怒声は、ひどく哀しく、周囲に響き渡る。

 

「……貴女は、あの頃の私はどこへ行ったんだ? と聞いたけど……。そうね、もうその頃の私は居ないわ。三好さんに敗れて死んでしまったから」

 

「……っ」

 

「でも、あの頃の私のままじゃいけなかったのよ……。勝てなかったのよ、三好さんには。何も知らない、本当の強さも分からなかったあの頃の私じゃ……、強いように見せかけていただけ」

 

 思えば、夏凛と研鑽を共にし、防人のトップを競い合おうと誓い合った時が、一番芽吹を強くしてくれた時間な気がした。

 夏凛の剣技を短期間で修得できたのも、強くなれたのも、芽吹が"仲間"と共に居たから……。夏凛を心の中で"信じて"いたから……。

 

 ……もっともそれは、夏凛が何も告げずに芽吹の元を去った事で、粉々に砕け散ってしまったが。

 

「貴女達と居た頃の私は、本当の意味で皆を信頼してなかった。ただ、三好さんに見せつける為に、当てつけのように……。私が貴女より優秀なリーダーだ……って。三好さんにそう思わせる為に、貴女達を利用してたようなものよ」

 

 昔、芽吹は『自分が隊を指揮する以上、防人に死者は出さない』と誓ったが、あれは()()()()()()()()()()()夏凛(周囲)に思い知らせたかっただけ。

 

()()()に分かるのは……あの頃の私は、三好さんを追いかけていただけで、貴女達をちゃんと見てなかったって事ッ」

 

 芽吹は上段から一気に刀を振り下ろした。

 

「はぁぁぁあああ‼︎」

「ーーッぐぐ!」

 

(くっ……。力がっ、さらに強く……っ⁉︎)

 

 芽吹の攻撃を、三本の爪剣を使って辛うじて防ぐ。

 たった刀一本を受けるのに、全身がミシミシッと軋みをあげていた。

 

(たかが刀一本が……っ、重いッ)

 

「ーーでもッ! まだまだだァ‼︎」

「ーーッ⁉︎」

 

 今度はNo.6の腹部から、六本の腕が生えた。

 

六輪咲き(セイス・フルール)ッ!」

 

 その六つの手は芽吹の両腕を掴み、両方の腿を掴み、首に手をかけた。

 

「ーーぐっ……ぁあっ……っんん」

 

 身動きが取れないまま、じわじわと首を締め続けられる。

 

「文字通り手数の多さで相手を翻弄する……。それに絞め技はハナハナの野菜と相性が良いんだよねぇ」

 

「くっ……んんっ……」

 

 必死に振り解こうと力を更に込めるが、No.6の空いている腕は彼女の体をより一層強く拘束する。

 

「ーー更にッ、能力で咲かせた体の一部もまた、花咲かせる苗床になるのさ! こんな風にねッ‼︎」

「ーーんんッ!」

 

 芽吹の全身は、新たに生えるNo.6の腕に絡め取られていく。

 

六輪咲き(セイス・フルール)・クラッチッ‼︎」

 

 芽吹は手も足も出せず、背骨を反り返らせ関節技を決められる。

 

「さて……このまま体の骨をバッキバキに折られたいか、この爪剣で串刺しにされたいか、どうする?」

「……っ」

「キキキッ。そうだよねぇ、苦しくて何も言えないよねぇ。……だったらさ」

 

 No.6は本来の手で持った爪剣を上段に掲げた。

 

「ーーすぐに楽にしてあげるッッ‼︎」

 

「ーー‼︎」

 

 その瞬間芽吹は口を大きく開けて、自分の首を絞めている手に思いっきり噛み付いた。

 

「ーーいッッたああ‼︎」

「ーーっはあッ!」

 

 No.6が痛がると、芽吹に絡み付いていた腕の拘束が緩み、その時を狙って無理矢理振り解いた。

 

「……っううああああ‼︎」

 

 拘束を解かれた芽吹は後ずさり、息を整える。

 

「……はぁはぁ、はーふぅ、はー、ふぅ……」

「いっ……ててて」

 

 芽吹が噛み付いた所には明確に歯型ができており、血が滲んでいた。

 相当な力で噛み付いた証拠である。

 

「気付いたんだね。ウチの体の一部ってことは、そこに与えるダメージもウチ自身に影響するってこと……」

「はぁ、はぁ……。え、ええ、そうよ」

 

 呼吸を整え終えた芽吹は、刀の切っ先を向ける。

 

「No.6……。私は、貴女達の元から離れた事……後悔はしてない。三好さんを探しに出た事。敗けた事。歌野達に出会った事。一緒にいる事。双子座(バーテックス)を庇っている事。……その全てがッ、嘘偽りの無い()()()()()()()()ッ! ……それがどんな修羅の道でも茨の道でも、歌野達と共に歩み続ける事で、昔の私には無かった……防人に居ては気付かなかった事が、気付けるかもしれないッ! 強くなれるかもしれないッ!」

 

「…………」

 

 全員が、静止したまま芽吹の言葉に耳を傾けている。

 

「三好さんに勝てるかもしれないッ‼︎ そして、全てが終わり仲間達(貴女達)の元へ帰って来た時、私はッ、胸を張って、正真正銘の防人最強の隊長、楠芽吹として貴女達を導いてみせるッ‼︎ この世界を、バケモノ如きに屈しない、平和なものへと導いてみせるッ!」

 

「……ッ!」

 

「だからそれまで待ってなさいッ!! ーーこれは命令よッッ!!!」

 

 荒げた声は、芽吹の想いは、No.6の胸に……後ろの防人たちに、届いただろうか。

 

「…………なら、今ここで示してよ、隊長」

「……」

 

 今、No.6には防人装束から生えた六本の腕と、実際にある二本の腕。また、同じサイズの爪剣を生やしてそれぞれ手に持つ。合計八本の腕、八本の爪剣がある。

 

「言ったよね? 今いる指揮官クラスの防人は全員能力者。加えて、雀、しずく、弥勒さんの三大将も能力者。そのウチらから見れば、非能力者のアンタは最強から程遠くなってんの」

「そうね」

「だから、もう一度教えてよ? ウチらに。()()()()()()()()()()()、を」

「元よりそのつもりよ……」

 

「ーーふっふふふ」

 

 静かに笑いかけ、No.6は芽吹に突進するーー。

 

「ーーこれで終わりにするッッ‼︎」

 

 八本の爪剣がバラバラのタイミングで芽吹に襲い掛かる。

 それを芽吹は後ろに下がりながらも、僅かな切り傷を受けながらも、苦し紛れでも捌いていく。

 

「かつて二刀流で馳せたアンタも使えるのは一本だけ! しかもこっちは八刀流‼︎ この斬撃たちには勝ち目は無いよねええええ!!!」

 

「ーー武器の数は関係無いのよッッ‼︎」

 

 芽吹は体をその場で一回転させて、その勢いのまま爪剣を弾く。

 

「貴女がタコみたいになっても、イカみたいになっても、私と貴女じゃ力の差が違うッ‼︎」

「ーーくっ」

 

 芽吹の剣幕に押し負け、体をのけ反らせた。

 

「腕が何本生えようとも、剣が何本あろうとも、私と貴女じゃ一本の重みは全く違うッッ!」

「負け惜しみがあああーーッ‼︎」

 

「一刀流・刀狼流(トウロウナガ)しッッ‼︎」

 

 スルリと八つの斬撃をいなして、すれ違いざまに一太刀を入れた。

 

「……がっ! まだだァァァ‼︎」

「……ッッ⁉︎」

 

 背中から新たに生えた腕が芽吹へ伸び、刀を奪い取る。

 

「ーーちっ」

「キーキキキッキャハハハァ! 刀を奪ってしまえば、それまでーー」

 

「無刀流……」

「え?」

「ーー(タツ)()き!!!」

 

 両腕を体と共に大きく振りかぶり、回転する。

 その回転は周囲に竜巻を発生させ、No.6を風圧で切り刻みながら上空へ飛ばす。

 

「ーーうわあああああああああああああああ‼︎」

「……これが、私と貴女の重みの差よ……ッ」

 

 舞い上がった拍子に手からすり落ちた刀を手に芽吹はNo.6を見上げる。

 

「こうなったら……ッ、百花繚乱(シエン・フルール)・ウイング‼︎」

 

 空中のNo.6は背中から大量の腕を生やし、それを束ねて翼を作った。

 

「キーッキキキッ! これなら、アンタはウチを斬れないッ。でもウチはここから爪剣を咲かせて投げることができるッ!」

 

 No.6は腕で出来た翼をはためかせ、上空からの一方的な攻撃を試みる。

 

 ……だが。

 

「芽吹隊長‼︎ 所詮アンタは能力者(勇者)には勝てーー」

 

「ーー飛ぶ斬撃を、見た事ある?」

 

「……あ? 今なんてーー」

 

 芽吹は刀を構えて口上を呪文のように呟き始めた。

 

「眼・耳・鼻・舌・身・意……。人の六根に、好・悪・平! ……また各々の"浄"と"染"。一世三十六煩悩ッ!」

 

「えっーー」

 

 ーーそして芽吹は標的に向かって、一気に振りかざすッ。

 

「一刀流ッ! 三十六(サンジュウロク)煩悩鳳(ポンドホウ)ーーッッ!!!」

 

 芽吹の刀から発せられた斬撃は、宙を飛ぶNo.6を見事に捉え、斬り裂いた。

 

「ーーキャアアアアアアアアアアアアッッッッ!」

 

「ええ⁉︎ 」「何アレ⁉︎」

「すごいっ……っ」

「「……!?」」

 

「ーーあ……ああっ……」

 

 周囲が驚く中、斬られたNo.6はそのまま地面へ墜落した……。

 

 

「……ああ、言い忘れてたけど、私が防人のトップに返り咲いた時は、貴女達……」

 

 落ちて来た相手と、その仲間に向かって口を開く。

 

 

「農業王の野菜……買いなさいよ」

 

 




 No.6(女です):『ハナハナの野菜』の花咲人間。彼女の場合、防人装束を装備対象としているので、はたから見れば体から生えているように見える。その気になればもう一人も作り出せたり、今回みたいに翼を作って飛んだり(滞空時間は長くはないが)と、戦闘以外にも汎用性がある。
 大社はこの能力は、"すでに『ハナハナの野菜』という名前がある"と言っていたようなので、この能力の前任者がいたようである。


次回 楠芽吹としての覚悟

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