白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。皆さんは『飛ぶ斬撃』を最初に見たのはどの作品でしたか? 残念ながら、自分はワンピースでは無かった……。


前回のあらすじ(?)
水都「楠さん。さっきのってどうやって攻撃できたの? どうやって斬撃を飛ばしたの?」
芽吹「気迫」
水都「えっ?」
芽吹「つまりは、気合と根性」
水都「…………」



第三十四話 楠芽吹としての覚悟

 

 ーー動いて。動いて……お願いだから。

 

 うつ伏せのまま動けない歌野は手や足に力を込める。

 

(動かなきゃ……。立ち上がらなきゃ……。追いかけなきゃ……)

 

 すでに東郷と園子は双子座を仕留めるために水都と芽吹の元へ向かってしまった。

 二人の手によって()()全員が危機に晒される事は明白だ。

 

(う……ご……い……て……)

 

 歯を食いしばる。意識を指先に集中させそこから伝わる地面の感触を確認する。

 

「ーーッッ‼︎」

 

 グッ と両手を握りしめて、拳を地面に叩き付ける。それを支えにゆっくりと体を起こしていく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 やっとの事で顔を上げると、暗い顔をしていた雪花がこちらに気付いた。

 

「……あっ! 歌野っ、起きたの⁉︎」

 

 ゆっくりと頷く。まだ体の節々に焼けるような痛みが走っているが……。

 

「雪、花……。その腕……」

「あ、ああこれ? ……東郷美森から麻酔弾食らってね、眠気を覚ますために……」

 

 見れば雪花の腕は傷だらけになっていた。そのうえ、口元や腕にじんわりと血が滲んでいる。

 

「腕を地面に擦り付けたりとか、唇とか、舌とかを噛んだりとか……その場で出来る事は全部して、眠気を吹っ飛ばしたのさ……」

「……」

 

 歌野はゆっくりと立ち上がる。そして一歩ずつ踏みしめながら歩き出す。

 

「雪花、二人はどっちの方角に行ったの?」

「あっちへ……」

「よしっ……とっとっと」

 

 未だおぼつかぬ足取りで、ふらついた歌野の肩を支える。

 

「歌野。ホントに大丈夫なの?」

「大丈夫よ……大丈夫にしなきゃね。そう言う雪花は?」

「大丈夫……になった。……にゃはは」

 

 顔を引き攣りながらも雪花に笑いかける。雪花もまた顔を引き攣りながら歌野へ笑いかけた。

 

「このまま私が支えてあげるから、行こう」

「サンキュー♪」

 

 歌野は雪花に支えられたまま、ベルトを最大限伸ばして樹木に巻き付ける。

 

「いくわねっ! ムチムチの〜ロケット〜〜!」

 

 勢いをつけて、思いっきり空に向かって飛んだーー。

 

 

 

 

 

 

 ーー芽吹は起き上がってこないNo.6を一瞥したあと、水都たちへ歩き寄った。

 

「楠さん、さっきのは?」

「ええ? ……ああ、あれね……。バーテックスは基本、全部空を飛んでるでしょ? 星屑とか特に。そいつらに攻撃を当てる為に習得したのよ」

「えっ……ええ……」

「いや、三好さんが考案したものをお互いに協力して習得していった……の方が正しいわね」

「そ、そうなんだ……。やっぱりすごいなぁ」

 

 今一度、水都は芽吹という人間に尊敬の念を持つ。

 

「ーーッ」

「え、楠さん?」

「……い、いえ、大した事ないわ」

 

 急にふらついた芽吹は胸元を手で押さえて苦しそうにしていた。

 

(間違い無く、三好さんに付けられた傷が開いたわね……。こればっかりは勇者が羨ましく思えるわ……)

 

 歌野や雪花たち勇者は、一見すれば致命傷ととれる傷でも数日で回復している。

 しかし芽吹の場合、未だに夏凛に付けられた傷がその体に痛々しく残っている。

 そのうえ、この戦いで胸元の傷が開いてしまったのである。

 

「……水都。早く行くわよっ」

「あっ……う、うん」

 

「ーー待ちなさいっ」

 

 銃を手にしているNo.14はそれを芽吹たちに向け呼び止めた。

 

「よ、よくもNo.6をっ。あなたはもう隊長じゃないっ。敵よ!」

「……だから?」

「わ、私がこ、ここで……」

「……」

「……ううっ」

 

 芽吹の視線に威圧され、No.14はすぐさま銃を下ろした。

 

 

(ち……っくしょ……)

 

 No.6は仰向けのまま、己の非力に嘆く。

 

(なんだってんだウチは……。山口支部も守れず……あの三体の進化体に蹂躙され……それが原因で九州まで被害を拡大させた……。そんなウチに折角、弥勒さんが挽回のチャンスをくれたってのに……)

 

 No.6たち三人は1ヶ月ほど前まで山口支部にいた。しかし、突如侵攻してきた三体の進化体バーテックス、"蠍座" "蟹座" "射手座"によって支部は壊滅。生き残りを連れて大社本部に避難した。

 その知らせを受けて、大社は四勇の乃木若葉を九州に行かせたが、集落があったとされる熊本は悲惨な状況だったという。

 その調査から帰ってきた若葉の見解では、九州へ進出したのは、三体ではなく、"山羊座"だと断定している。

 

(ま、だだ……。ウチはまだ……やれる……)

 

 芽吹たちはNo.14に気を取られている中、No.6は双子座を睨む。

 

(芽吹隊長の強さはわかった……。だがこのまま引き下がるわけにはいかない、ぞ、ウチは……)

 

 彼女たちの不意をつき双子座を仕留めるべく、虎視眈々とその機会を狙う。

 

「……で? 貴女達はこのまま戦うの?」

「「……っ」」

 

 No.14とNo.27も芽吹に対してすっかり萎縮してしまっている。

 

「……なら私たちは先を急ぐわ。水都、行くわ……よ……」

「……?」

 

 芽吹の言葉が最後、ぎこちなくなっていた事に水都は首を傾げる。

 

 ……しかし、その理由はすぐに明らかとなった。

 

「……なんで……いるのよ」

「……えっ、ウソ……」

「「!?」」

 

 芽吹の視線を辿り振り返ると、つい先ほど見た事のある物体が空を飛んでいた。

 

「あ、あぁ……」

 

 水都の顔はみるみる蒼白と化していく。

 

「ーー増えてるわね、そのっち」

「うん〜。ちょっと目を離した隙にね〜」

 

「……ちっ」

 

 芽吹は歯を食いしばりながら舌打ちをした。

 

「……何やってんのよっ。歌野ッ‼︎」

 

 

 

 ーーそして上空の戦闘機は姿を消し、そこから園子と東郷が手を繋いだ状態のまま、地面にゆっくりと着地する。

 

「追いついたんよ〜」

「さぁ、もう終わらせましょう。この不毛な追走劇を……」

 

 園子が槍の穂先を飛ばし、東郷が拳銃で双子座を狙う。

 

「ーー七武勇っ。東郷美森と園子っ!」

「懸賞額、380万ぶっタマげと425万ぶっタマげ……。山口支部復興の為、その首を渡してもらうっ」

 

 現れた二人が七武勇(賞金首)だと気付いたNo.14とNo.27は、途端に銃を構えて二人へ発砲する。

 

「ーー馬鹿ッ‼︎ 逃げなさいッ貴女達!」

 

 東郷もまた拳銃を発砲して相殺させ、園子はひょいひょいっと軽々しく避けた。

 

「……⁉︎」

「あっ!」

 

 東郷の拳銃が大砲に変わり、二人に向かってミサイル弾を発射した。

 

「「ぐぅあああああ!!!」」

 

 ミサイル弾をモロに食らった二人は呆気なく地面に横たわり気を失った。

 

「どうして挑んできたんだろ〜? さっきまで戦う気は感じられなかったけど〜?」

「お金に目が眩んだのかしら。自分と相手の力量の差も分からないなんて……」

 

「ーーくっ」

 

 芽吹は二人に向かって突っ込んだ。

 

「ーー楠さん!」

「あなたも、なの?」

「あ〜! そういえばあなた、今の子と同じ防人なんだ〜」

 

 二人へ刀を振るうが、園子の槍に防がれる。次の瞬間、東郷が弾丸を双子座に向けて数発放つ。

 

「ーーはぁあ!」

「……!」

 

 芽吹は東郷と双子座の間に素早く移動して、刀を使って弾丸を弾き飛ばした。

 

「はぁ、はぁ……」

 

(まったく、No.6との後に間髪入れずに七武勇? ここまで来ると笑えるわね……)

 

 額からうっすらと汗が滴り落ちる。

 

「ちっ……」

 

 少し距離を保つ目的で、バックステップで水都のところまで退がる。

 

「楠さん。どうしよう……このままじゃ」

「分かってるわよ。でも歌野達が来れない以上、私がやるしかないっ」

「でも相手は七武勇で……楠さんはさっきの戦いで疲弊してーー」

「それも分かってるわッ! ……でも貴女も双子座も戦えないなら、これしか無い」

 

 水都の肩を少しだけ押す。これから行う戦闘に巻き込ませない為に、少しでも距離を取らせようと……。

 

「災難ってものは……畳み掛けてくるのが世の常なのよ。理不尽な程にね」

 

 一歩一歩踏み締め、二人に近付く。

 

「で、でも……」

「言い訳したらどなたかが助けてくれるものなの?」

 

 こうなってしまった以上、逃げ切ることなど到底できない。今、芽吹が立ち向かわなければいけない事など、水都も双子座も内心わかっていた。

 だからこそ、芽吹に頼るしかないこの状況を憂いてしまう。

 

「もし、死んだら……、私はそこまでの存在だったって事よ」

 

(ここが分水嶺……。今の私が七武勇にどれだけ通用するか……)

 

 芽吹は刀を掲げ上段から振り下ろす。

 

「はぁああ!」

 

 園子はまた槍を使って防ぐ。

 

「はあ‼︎ せいッ‼︎ ふぅああ‼︎」

「よっ、よっ、よ〜」

 

 一撃一撃、力を込めて振るう。それを園子は涼しい顔でいなし続ける。

 

「力がこもってるよ〜? そんなんじゃあ当たるものも当たらないんよ〜」

「うるさいッ」

 

 斬撃を繰り出し続けていた芽吹は、園子の対応に違和感を感じた。

 

(さっきから宙に漂う刃が攻撃してこない?)

 

 芽吹にとって一番警戒しているのは宙を漂っている刃である。

 芽吹は園子と東郷が何の能力者かは分からないが、戦闘機や宙に浮く刃。これらを見るに、()()()()()()を持っているという予想は出来る。

 東郷の放つ弾丸は、銃口や東郷自身の目線である程度、どこを狙っているか分かる。しかし、自由自在に飛び交う刃なら不意を突かれ背後から襲われたり、芽吹を無視して双子座へ向けたりする事も可能だろう。

 

「気になる〜? さっきからこの刃が攻防に参加してないのが〜。私は触れたものを自由に操作できるんよ〜」

「わざわざどうも」

「でも、使わないんよ〜。純粋に私の槍とあなたの刀で力比べしたいんよ〜」

「どういう事?」

 

 園子は不敵に笑う。対して東郷は無表情のまま手を出さず芽吹と園子の戦いを見ていた。

 

「これはハンデだね〜。勇者じゃないあなたに能力使っちゃったら、()()()()()なんよ〜」

 

「……っ、舐めるなァァ!」

 

 園子の言動に腹を立て、今以上に刀を握る手に力が込もる。

 

「はい、予測確定〜」

 

 園子は体を反らして斬撃を避ける。

 

「ちぃ、この……っ」

 

 涼しげな表情で避け続ける園子にさら苛立ちが募っていく。

 

「ほいっ」

「ぐあッ!」

 

 園子が腰を低くして、芽吹の刺突を回避する。そしてそのまま懐に入り腹部に掌底を食らわせ、後ろへよろけた芽吹を蹴り飛ばした。

 

「ーーぐっはぁ!」

「もう終わりかな〜?」

「ーーッ⁉︎」

 

 次の瞬間、芽吹は体に激痛が走った。ここに来て夏凛から受けた傷が更に開き、その痛みで集中力が切れてしまったのだ。

 

「……?」

「うッッ!」

 

 気を抜いてしまった結果、園子の槍の刺突をもらい、吐血してしまい仰向けで地面に倒れた。

 

「ーーがッ、あ、は、あ……」

「今、一瞬気持ちが抜けたね〜。どうしたの?」

「……く」

「まぁいいか〜、じゃあそろそろ路線を戻そうか〜」

 

 芽吹を置いて、園子と傍観していた東郷は水都と双子座に歩き寄る。

 

「はっ、ああ」

「「どうしよう、どうしよう……」」

 

(楠、さん……)

 

 

「ーー待……ちな、さい」

 

「「……?」」

 

 園子と東郷が振り返ると、芽吹が立ち上がってこちらを睨み付けていた。

 

「まだ、やるの〜?」

「まだ、終わってないで、しょ……」

「……」

 

 東郷が拳銃を芽吹に向ける。

 

「わっしー」

「?」

「わっしーは双子座をお願い、私はこっちを片付けるんよ」

「ええ、それが良いわね」

 

「ーーッ。させないっ」

 

 芽吹はジャンプして園子では無く、東郷に刀を振り下ろす。

 

「はああああ!」

 

 しかしそれは、間に入った園子によって防がれる。

 

「ーーッ、くそっ」

 

「わっしー、早く終わらせよう」

「ええ」

 

 芽吹と園子がかち合っている中、東郷は拳銃を双子座向ける。

 

「……ああ! ダメェ!」

「「……‼︎」」

 

 水都はその間に立ちはだかり、東郷から双子座を守ろうとする。

 

「……撃たれたいの?」

「ま、守るって決めたんだもんっ。だからーー」

 

 言い切る前に、東郷に頭を掴まれた。

 

「……うっ、いたっ」

「避けてなさい」

「ーーあぅ」

 

 そのまま、地面に投げ飛ばされた。と同時に持っていたバッグが乱雑に転がり中身が溢れ出る。

 

「……‼︎」

 

 すると東郷は、バッグから溢れ地面に転がった物を見て固まった。

 

「……?」

「わっしー?」

 

 芽吹と戦っていた園子も、横目で東郷と()()を見た。

 

「あ……あれは〜」

「ーー彼女達に手を出すな!」

「……! させないよ〜」

 

 芽吹は何としてでも園子を払い退け、双子座に迫る東郷を食い止めたかったが、それを園子が阻止し続ける。

 

「邪魔ッ」

「私にとっては貴女の方が邪魔なんよ〜」

 

(どうして()()を彼女が〜?)

 

 

 ……東郷の意識は双子座から完全に()()()に移っていた。

 

「なんでこんなところに……」

 

 その正体は、歌野の麦わら帽子だった。

 東郷の視線は今、その帽子に釘付けにされていた。

 

 ……いや、正確には麦わら帽子ではなく……

 

「どうしてこの()()()を持っているの? どうしてあなたが?」

「……えっ?」

 

 水都は理解出来なかった。東郷と、おそらく園子も、二人がこのリボンに意識を向けていたのを……。

 

(いや、ちょっと待って……)

 

 水都は東郷と園子の付けているリボンに注目する。

 それはなぜか、麦わら帽子に付いているリボンと似ていたのだ。

 

「このリボンをどこで手に入れたの⁉︎」

「……」

 

 いや、リボンなどどれも似たようなものなので、特徴的な色でもない限り見分けなどつきにくい。

 しかし、東郷のこの過剰な反応は、歌野の麦わら帽子に付いているリボンが彼女たちと何らかの関係がある事に勘付いたのだ。

 

 "乃木若葉"から貰ったこのリボンが。

 

「……答えは無いようね。まぁいいわ」

 

 東郷は水都の無言を"答えたくない"と判断したようだ。

 そしてリボンを麦わら帽子ごと拾い上げた。

 

「ーーあっ! ダメェ!」

 

 その瞬間、水都は東郷の手を掴んだ。

 

「なっ、ちょ、離しなさいっ」

「それはダメなの! うたのんの大切な物なの!」

「うたのん⁉︎ さっきの白鳥歌野さんのこと⁉︎ 彼女の持ち物なのね!」

「違う! それはうたのんがっ! ()()()()()()から預かってる大切な物でーー」

 

 パァン!

 

 水都は最後まで言えず、その場にしゃがみ込む。

 

「い……いた……」

 

「ーーはっ! わっしー⁉︎」

「水都‼︎」

 

 水都の左腿から血が滲み出した。

 東郷が水都の足へ発砲し、弾丸が腿を掠めたのだ。

 

「……乃木、若葉……」

 

 東郷は声のトーンを低くしたまま、水都の頭に拳銃を突き付けた。

 

「その名前を……」

「うっ……。……っ」

 

「ダメ。わっしー! それ以上は‼︎」

 

「くっ! 三十六(サンジュウロク)ーー」

 

(駄目だ。ここから斬撃を飛ばしたら、水都を巻き込んでしまう……っ)

 

 芽吹は水都を撃とうとする東郷を狙おうとしたが、水都を巻き添えにする事を恐れて手が遅れてしまった。

 

「ーーそのっちの前で口にするなァァ!!!

 

 東郷は怒号と共に引き金をーー

 

「ーームチムチの!」

「助けてっ、うたのん!!!」

榴弾砲(シュナイダー)ーーーッッ!!!」

「ーーぐっふァァァアア‼︎」

 

 ーー瞬間、飛んできた歌野のドロップキックが東郷を吹っ飛ばした。

 

「ぐっはあ……あっ!」

 

 東郷は後方の樹木に背中から叩きつけられた。

 

「わっ……」

「ーー煩悩鳳(ポンドホウ)ッッ‼︎」

 

「ーーうわああっ‼︎」

 

 芽吹の斬撃は、前にいた園子へ目標を切り替えた。

 

「ううっ!」

 

 園子はそれを槍を盾代わりにして斬られる事は防いだが、近距離の攻撃だったので衝撃で地面を転がった。

 

「ーー歌野‼︎ 雪花‼︎」

「ソーリー。待たせちゃった」

「ごめんねー、二人とも」

 

 水都は助かった事に安堵し、助けにきてくれた歌野と雪花の無事に安心した。

 と同時に、ボロボロの二人を心配するごちゃ混ぜの状態になっていた。

 

「ああっ……えっと、良かった、うたのん、雪花ちゃん。あっ、でもその傷……良くは無いよね……。でも、助けてくれありがとう。……えっと、その……」

「みーちゃん、少し落ち着いて。私たちはノープロブレム♪ むしろみーちゃんこそ大丈夫?」

「う、うん。平気……だよ」

 

 腿の痛みに耐え、必死に笑いを作った水都に笑顔で応えた歌野は、芽吹の元に歩き寄る。

 

「ありがとう楠さん。みーちゃんを守ってくれて」

「全く……どこで油売ってたのかしら?」

「ほんとにごめんねっ」

「まぁでも、間に合って良かった。……私じゃあどうにもならなかったから。……悔しいわ」

 

 芽吹は園子の方へ向き直る。

 

「さて、反撃開始と行きましょうか」

「……」

 

 歌野もまた東郷の方へ向き直る。

 

「……わっしー、大丈夫?」

「ええ」

「冷静になろう? いくら()()()()()至近距離で撃ったら危なかったよ」

「ごめんなさいそのっち。頭に血が昇ってたわ」

 

「ーー雪花、楠さん」

「「ん?」」

「彼女は……東郷さんは私に任せてくれない?」

「……!」

「……」

 

 歌野は強い眼差しで東郷を見据える。

 怒っているようにも見えるが、悪いオーラは感じない。

 

「当たり前でしょ? 元々貴女の敵よ」

「だねー。こっちも私の敵だし」

「いえ、今は私の敵よ。雪花」

「……じゃあ二人で、だね」

 

 そして、歌野は東郷と、雪花は園子との再戦。芽吹は園子との続きをする為に両方相手と向かい合う。

 

「みーちゃん」

「……?」

「ホントごめんねっ。私、一回彼女に負けちゃったんだ」

「う、うん……」

 

「ーーだからもう負けないッ。……双子座(この子たち)をよろしくねっ、みーちゃん」

「うんっ。行ってらっしゃい、うたのん!」

 

 今度はしっかりと返事をして歌野を送り届ける。

 

(私は結局、三人に頼る事しか出来ない。うたのんたちを信じる事しか……。でも……だからこそ信じよう! うたのんの勝利を!)

 

「うたのん! 雪花ちゃん! 楠さん! 頑張って!」

 

「「「頑張るッッッ!!!」」」

 

 

 そして再度切られる戦いの火蓋……。

 

 

 その戦いの果てに……その最後に、笑っているのは誰だ。

 

 




 落ち着いて東郷さん。


次回 予測不可能な攻撃
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