オデッセイではロビンの『二輪咲き・グラップ』で毎回笑い転げてます。
前回のあらすじ
No.6撃破後に追い付かれてしまった水都と芽吹。芽吹の奮戦も虚しくその銃口は、双子座を守る水都へ……。しかしその時、歌野と雪花が追い付いた!
そして双子座を巡る争いは第2ラウンドへ。
歌野は東郷が持っているリボン付きの麦わら帽子に注目する。
「ねぇ、それ返して」
「……麦わら帽子だけなら返してあげるわよ」
「違うわ。大事なのはリボンの方よ」
「さっきも彼女が大切な物と言ってたわね。……こんなリボンがあなたにとって何だって言うの?」
「ーーあっ」
東郷は麦わら帽子のリボンを見つめると、帽子を後方へ放り投げた。
「ーーやあっ!」
その瞬間、歌野はベルトを東郷に向かって伸ばした。
「……!」
東郷はそれを攻撃だと思い、避けようとしたがベルトは東郷を通過して帽子に巻き付いた。
「ーーよっ」
ベルトを収縮させ、帽子を手元に引き寄せる。
「道標よ! 農業王になる為の」
「……」
「いくよ東郷さん、今度は勝つわ。だって今の私は貴女より強いものっ」
自身満々な歌野に対して東郷は真顔のままだった。
「……強い弱いは結果が決めるものよ。そして一度結果を知ったあなたが、何を根拠に勝つと言うの?」
「だってさっきより、私は強いから!」
歌野と会話が噛み合わない事に呆れてため息がでた。
「はぁ。強いから勝つ? 呆れるわね……。勝者だけが強者になり得る。結果だけが全てを語れるの」
それを聞いた歌野は、
「じゃあその結果をリアルにしてあげるっ」
歌野が攻撃のモーションに入るのを察知して、東郷は距離を取った。
そして、ロケットランチャーを両手で支え、狙いを歌野に定める。
「その偽りの自信も……そのリボンも……、あなたを負かす事で私の前から消し去るっ」
「ーーッ!」
東郷が引き金を引いた瞬間、ランチャーから大玉が歌野に向かって射出された。
(前の時と同じ、追尾する爆弾⁉︎)
自分が倒されたあの追尾型のミサイル弾をまた撃ってきたのだと歌野は思った。
「逃げても追ってくるのなら、直前で避けるッ!」
「「……‼︎ 歌野⁉︎」」
園子と交戦している芽吹と雪花の目に映ったのは、大玉へ自ら向かっていく歌野の姿。
(紙一重で避ける事ができたならっ、反転して追いかけるのに時間がかかる。その隙に……)
遠距離から高威力の攻撃を繰り出す東郷との戦いは、言ってみれば刹那の攻防。
遠くから一方的にやられるか、懐に入って相手を倒すか、その一か八かしか無いと歌野は考えたのだ。
「ーーよしっ!」
そしてその思惑通り、間一髪で歌野は大玉を避け、東郷との距離を一気に詰める事に成功する。
……しかし、
「……ふっ」
「ーーえッ⁉︎」
歌野が避けた瞬間、
「ーーうわっ、ぐああッ‼︎」
「「歌野⁉︎」」
大玉に仕込まれた槍が歌野の背中に襲い掛かる。
「あっ、がっ……」
背中から血が流れ落ち、歌野も片膝を地面に付ける。
「卑怯なッ⁉︎」
「何が〜? 彼女が勝手に勘違いしたんじゃないの〜? わっしーが爆発する弾を撃ってくるって……」
「ちっ……」
園子は雪花の槍による刺突と、芽吹の横薙ぎの斬撃を、しゃがんで避け、その場で回転して回し蹴りを浴びせる。
「あた……っ」
「……くっ」
「早くも向こうは勝負アリだ〜」
「「…………」」
「ん〜?」
「ーーはっ」「ーーにゃは」
園子の言葉に二人は鼻で笑った。
ーー歌野がもう片方の膝を付く瞬間、東郷は勝った気でいた。
「白鳥さん、これ以上戦うと……ここがあなたの墓場になるわよ? だからもうーー」
「ムチムチのぉ
片足を強く地面に踏みしめる事で、付く直前だった膝を持ち堪えさせた。
その勢いのまま、東郷の顔をベルトで殴り付ける。
「ーーぶッッ!」
倒れはしなかったが、よろよろと後ずさる。
「……っ」
「いっ……たぁ……」
背中に刺さった槍を抜いて地面に捨てる。
「ここは本当に……私の墓場? それとも……貴女の墓場?」
「……?」
歌野の問いかけに東郷は眉をひそめた。
「これ以上戦うと……ここが墓場になっちゃうのは……
背中の痛みに苦しみながらも、歌野は笑う。
「たかが仕込み槍で不意を突いたくらいで、墓場だって決めつけないでよ。ここは私の死に場所じゃない!」
「くっ……」
歌野はさらに東郷へ突っ込んでいく。
「貴女が……っ、私の死に場所を勝手に決めないでよ! ムチムチのぉ!
「ーーがあああッ‼︎」
一直線に東郷の腹部へ命中させ、今度こそ彼女を吹っ飛ばす。
「ぐっ、がっあ……」
「槍って……こういうものでしょ?」
東郷は立ち上がって歌野を睨み付けた。
「槍はそんなもの……じゃないっ」
東郷は拳銃を歌野へ向けて発砲する。
「しつこいのよ! あなたはその矮小な道具で武器の真似事をしてるだけッ! 私の『ブキブキの野菜』とは、天と地ほども違うッ! これが
「やああああああッ!」
ベルトを振り回して、弾丸を弾き飛ばしていく。
そして、伸ばしたベルトを捻っていく。
「ムチムチのぉぉ
「ーーこのぉ!」
東郷は拳銃をライフルに変えて、向かってくるベルトを狙って引き金を引く。
ーー二つがぶつかり合うのと同時に、バリバリッ! とアーク放電のような黒い稲妻が発生した。
「うっ!」
「くっ」
その衝撃で二人は数歩後ろへ退がる。
「ーーうわっあ‼︎」
「「ーーくうっ」」
その衝撃は水都と双子座の所まで届いていた。
(うっ……あれ……? 目眩、が……)
と、その途端に水都は目の前が真っ暗になり、地面に倒れ込んだ。また、双子座も同様にガクッと糸の切れた人形のようにその場に横たわる。
「ーーはあ、はあ」
「はあ、はあ……」
東郷と歌野は息を切らしながらもお互い睨み合っていた。
「ーー歌野! 水都がッ」
芽吹の声で水都の方を見ると、水都と双子座が倒れている事に気付いた。
「ーーえ⁉︎ あ! みーちゃんっ」
芽吹が水都たちの元へ駆け寄り、様子を伺う。
「……気を失ってるだけね」
「……よかった。でもなんでだろう?」
「流れ弾? でも他に外傷は見当たらない……」
「ーーここにいるには"勇気"が足りなかったって事なんよ〜」
園子は倒れた水都と双子座を見て笑っていた。
「何の話さ?」
「知らないならそれでいいんよ〜。あなたたちにはまだ早い領域なんだから〜」
「訳のわからない事をっ」
雪花が槍を振り上げて一気に下ろす。
それを園子は自分の槍で受け流す。受け流された雪花の槍は地面に刺さった。
「ーーにゃろっ」
「ふ〜ん」
刺さっている槍を軸に回転して園子に蹴りを入れるが、園子もまた槍でガードする。
芽吹は水都と双子座を少しだけ遠ざけた場所に運んだあと、歌野に呼びかけた。
「歌野ッ!」
「何⁉︎ 楠さん!」
「貴女、なんでそうやって猪みたいに突っ込む事しか考えてないの!」
「えっ⁉︎」
芽吹に怒られてる事を想定してなかった歌野はキョトンとしていた。
「相手は狙撃手。距離を取られて撃たれたんじゃあ不利じゃないっ」
「わかってるわっ。でも、突っ込む以外に方法はーー」
「周りを見なさいッ! ここはどこ⁉︎」
言われるがままに辺りを見渡す。
ここは森の中。木々が多く、所によっては樹木に阻まれ
「あっ……」
歌野はその意図に気付いて頷く。
「そうかっ!」
「無策で勝てる程甘くは無いでしょ? 相手は七武勇なんだから」
「うんっ。ありがとうっ、楠さん!」
礼を言うと、歌野は東郷に向かって走り出した。
「また馬鹿のひとつ覚えみたいに……」
「そう思うのなら、撃ってくれば!」
東郷がライフルのスコープを覗き込み、歌野の足に狙いをすませ、引き金を引くーー。
「今‼︎」
「……ッ⁉︎」
ライフルから弾が発射されるその刹那、歌野は一気に右側へ跳んだ。
そして、前転して
「な……っ」
「ふっふっふふっひ♪」
歌野はそのまま樹木を壁代わりにして東郷に迫る。
「くっ……射線がっーー」
スコープから眼を離し、この場から退避しようと思ったその時ーー
「ムチムチの〜〜!」
「はっっ⁉︎」
(いつの間にこんな近くまで⁉︎)
死角から歌野が飛び出し、ベルトを回転させて勢いを付け、上から東郷を殴り付けた。
「
「ーーッッ⁉︎」
頭から地面に叩きつけられ、転がっていく。
「……う、あ……」
地面に向かって血が落ちていくのが分かった。
「く……」
「どう? 思い知ったかしらっ」
「……何勝った気でいるのよ」
叫びながら東郷はロケットランチャーからミサイル弾を発射させた。
「ーー⁉︎ 今度こそ追尾するやつねっ!」
当たる直前で歌野は樹木に隠れて、ミサイル弾の盾にする。
「ーーぐぐっ!」
木は爆散し、その衝撃波で歌野は尻餅を着いた。
(ふぅ……。爆発の衝撃波だけでこの威力だものねっ)
また次の樹木の陰に隠れ、東郷の様子を伺う。
「私を怒らせたわね……」
「……?」
東郷は歌野がいると思われる場所辺りに向かってロケットランチャーを構えた。
「……猛毒煙弾」
ーー園子は何度も何度も攻撃を避けながら、じわじわと二人を削っていく。
「……ねぇ、雪花。貴女の能力でどうにかならないの?」
「なってたら、もう終わってるよー。でも、彼女には効かないの」
「効かない?」
雪花は芽吹に耳打ちして先の戦いの情報を伝えた。
「……そんな話がありえるの?」
「ありえるから、私は心折れたのさ」
「……でもそう考えると……引っかかるわね」
園子の能力。『トリトリの野菜:モデル"鴉天狗"』の事も雪花から聞いた。
しかし芽吹にとっては、物を浮かせる事より
(それも彼女の能力? でも……)
"鴉天狗"がどういう能力を使っていたのかなど分かるはずもない。伝説上の生き物で、それにまつわる逸話など無数にあるからだ。
(メジャーなのは"念動力"って所かしら?)
「ーー楠さん、ちょっと確認したい事があるんだけど」
「手短にね。いつ彼女が攻撃してくるか分からないから」
雪花も気になっていた事を芽吹に相談する。
「……私も彼女の回避能力には辟易してる。1対1ならまだしも、2人がかりで、だよ? それに、私の槍を見ずに、ね」
「……そうね、彼女の戦い方はカウンター戦法。避けるついでに一撃入れてくるって感じだった」
「……で、あまりにも避け続けるもんだから思い返してみたの。
「避けなかった時? ……っ!」
そう呟きながら芽吹はある事に気付いた。
「楠さんもあったんじゃない?」
「あったわ。彼女が避けずに防いでいた時……」
園子は攻撃を避けているが、確かに槍で守っていた時があった。
つまり、
「どんな時か、思い出せる?」
「ええ……」
そして二人は同時に声に出す。
「「
「「ーーねぇ、おきて? おきてってばぁ」」
「……う、うん……?」
双子座に体を揺すられ、水都は目を覚ました。
「あ、れ……? 私、倒れてたの?」
「「うん、そうだよ。さんにんともきをうしなってたんだ」」
「どうして?」
「「わからないよ……」」
(……巻き込まれたのかな?)
水都は自分の体や双子座の身体に外傷が無いか確認するが、少なくとも失神に繋がる程のダメージはないように思える。
「過度の緊張、かな……?」
「「もしかしたらまじかのたたかいにあてられちゃったのかも」」
「そうかも……」
(戦いの余波を受けるかもしれない。流れ弾とか……)
「ねぇ、二人とも。少し遠くへ避難しよう」
「「いいの?」」
「うん。ここにいるとうたのんたちの邪魔になるかもだから」
「「……うん、わかった」」
水都は双子座を連れてここから離れる。足の痛みに耐えながら。
(ーー頑張ってうたのん)
ーー東郷は銃口から大玉を発射させた。
(さっきと同じ大玉……。また仕込み? いや、確かさっき……)
東郷が撃つ時、確かに"猛毒煙弾"と口にした。
(ーーまずいっ)
歌野がすぐこの場を離れようとした瞬間、大玉が破裂して中から紫色の煙が噴き出した。
(ーー⁉︎ 見るからにやばそうだわっ!)
歌野は自身を煙が覆う前に反射的に息を止めた。
(……でも、このままじゃあ)
歌野は煙から脱却しようとするが、視界は悪く、なおかつ樹木に阻まれて動き辛い。
(何とかしなきゃーー)
「ーーあれは〜、"M H 5"〜?」
園子は立ち込める煙から距離を取るため少しだけ跳んだ。
(わっしー、そこまでしてーー)
「「ーーはああ‼︎」」
地面に着地した瞬間を狙って、芽吹と雪花が飛び込んできた。
「ーーうッ!」
槍でガードに成功するが、反動で体がよろける。
「雪花ッ」
「オーケー、畳み掛けるよッ」
芽吹の連続斬撃と、雪花の連続刺突を捌いていくが、ジリジリと押されていく。
「……っ。いける!」
「絶え間なくたたき込む!」
「むむむ〜」
園子は後ろへ跳んだあと、体勢を立て直すため真上へ飛び上がった。
「ふぅ〜、なかなかに危なかったんよ〜」
「「……」」
「……?」
宙に浮いている園子を見上げて、雪花と芽吹は笑みを浮かべた。
「……っ!」
「「もらったァア!!」」
芽吹は刀の刃を、雪花は槍の穂先を、園子に向けた。
「ーー
「ーー
斬撃と槍が園子に襲い掛かる。
「ーーうあうッ!」
二人の攻撃を受け止めきれず、園子はバランスを崩して地面に墜落した。
「……やっと、攻撃が当たったわね」
起き上がった園子の頭から血がうっすらと垂れた。
「焦れったいったら無かったにゃぁ」
放り投げた槍を回収して雪花は笑う。
「貴女のその脅威的な回避能力には散々手を焼かされたわ……。でも、大分ネタが割れてきた」
「……」
芽吹の言葉に園子の眉毛がピクッと反応するーー。
ーー毒煙の中、歌野はベルトを盛大に振り回した。
(ムチムチの〜
高速に回転するベルトの風圧により、歌野の周りに竜巻が発生する。
それは周辺の木々が軋みをあげる程だった。
「なっ⁉︎」
「はぁあ、はぁあ……。し、死んじゃうかと思ったぁ」
竜巻により煙を吹き飛ばした歌野は息を切らしながらも目はジッと東郷を見据える。
(風で毒煙を吹き飛ばすなんて……っ)
東郷は歌野を睨み、また銃口を向けた。
「……大したものだわ、白鳥歌野さん」
「褒めてくれてサーンクス♪ でもこれからよっ」
歌野はベルトをまた大袈裟に振り回す。
「……今度は何をするつもり? はっきり言ってもうあなたは限界をとうに迎えているはず」
「限界? そんなものは最初から突破済みだわっ。それにタフなのが私の強みなのっ」
スッ と歌野は左手の平を東郷に向けて構えた。右手は依然、ベルトを振り回したまま。
「……何、その手? 私を狙い撃ちにするって?」
「ーー私は、貴女に感謝してるわっ」
「……?」
東郷は突然のお礼に首を傾げる。
「貴女のおかげで……私は『ムチムチの野菜』の能力を、またひとつ理解できた」
「私のおかげ……?」
「東郷さん、貴女が言った。"私は自分の能力を理解してない"って」
歌野が倒れた先の戦闘の時、別れ際に東郷が言った言葉を歌野はしっかりと聞いていたのだ。
「その答えが、それ?」
「ええ。この"予測不可能な攻撃"は……貴女のおかげで導き出せたアンサーなの。……そう、名前を付けるならーー」
歌野は左手を照準代わりにしっかりと対象を狙う。
「ーー
「いれぎゅらー?」
東郷はライフルの銃口から通常の弾を発射させた。……しかしそれは周りを飛び交うベルトに弾かれる。
「……? 今、彼女の武器が変な方向から……」
「いくよ……ムチムチのーー」
「デタラメに振り回すだけで何がーー」
「ーー
「ーーッ!? ガハッァ!?」
次の瞬間、攻撃を食らったと思われる東郷の体は宙を舞い、空を仰いで吹っ飛ばされたーー。
「な、なに……が」
「……これでもう、貴女は私の攻撃を避けられない、防げない。私の技はみんな、一段階進化するっ!」
白鳥さんvs東郷さんも次で終わりへ。
次回 一発の弾丸