白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。……この章も大詰めと言いながらどこまで続くんだ?
 ……これを除いてあと二話で終わります。……終わるといいな。ロード トゥ ウエスト編。


前回のあらすじ(?)
歌野「ちょっとちょっと! あんな砲撃食らったら一瞬でゴートゥーヘブンだよ!」
園子「わっしー。いくらなんでもやり過ぎなんよ〜。それじゃあハエを落とすのにバズーカを使うもんだよ〜」
歌野「ハエ? わたし、モスキートなの⁉︎」
水都「うたのん、モスキートは蚊だよ」



第三十七話 死せど本望

 

 歌野と東郷の戦いの決着は、芽吹や雪花、園子も確認していた。

 

「……わっしーが」

「にゃっはっはっは! さっすが歌野だねー」

「やればできるじゃない……。でも相手も相手だったわね」

 

 東郷が浮遊戦艦を出現させた所を芽吹は目撃していた。レーザー砲の余波も、気を抜くと吹き飛ばされそうな程の風圧だった。

 吹き飛んだ木々、削り取られた大地。それらは東郷美森の恐ろしさを十二分に物語っていた。

 

(本当に……歌野はやってのけたわね)

 

 芽吹は少し微笑みながら後方へ振り向いた。

 

「ーー水都。起きてたら歌野の介抱に行ってあげ……」

 

 しかし、そこに水都はいなかった。

 

 園子と向かい合っていた雪花も、居たはずの場所に水都と双子座がいない事に気付く。

 

(……水都ちゃん? 双子座?)

 

「雪花っ!」

「ーーうわっととっ」

 

 芽吹は雪花の腕をぐいっと引っ張る。

 

「楠さん、水都ちゃんはーー」

「水都が居ない! どこに行ったの⁉︎」

「え? い、いや……私も気になったんだけど」

 

 二人は園子を警戒しつつ辺りを見るが、向こうには歌野と東郷が倒れている。そして、その奥にはNo.14とNo.27が気を失っている。確かに三人の姿が見えないのだ。

 

 ーーそこで芽吹は気付く。

 

 目の届く範囲には自分を入れて()()しかいない事に。

 この事実に、芽吹の顔は真っ青に染まっていく。

 

「きっと危ないからって遠くへ逃げたんじゃあ……」

「まずいっ! もし……()()()を待ってたんだとしたらッ! ……とにかく雪花、水都を追ってッ! 位置的に貴女の方が近い!」

 

 確かに位置からすれば雪花の方が僅かに水都が居たはずの場所に近い。

 芽吹と比べて"僅かに"だが。

 

「ま、待ってよ。()()()()()()()()()()()()って事? それを双子座が待ってたの?」

「それだけじゃ無いわ。居ないのよ……っ」

「え……?」

 

 芽吹は焦っていた。戦いに夢中で気付かなかったのだ。

 

 ……もうひとりの存在を。

 

「ーーNo.6が、居ないッ‼︎」

「……⁉︎」

「大社から来てたの! さっきまで向こうで倒れてた! ……双子座も疑わしいけど、なにより水都が危ない!」

 

 芽吹の言葉の最中に、雪花は急いで走り出した。芽吹の言いたい事が、"全て"理解できたのだ。

 

「わかった! ……けど、こっちは任せていいの⁉︎」

「ええ、時間を稼いでおくわ」

 

 芽吹は走っていく雪花を、見えなくなるまで目で追っていた。

 

(水都……あれだけ言ったのに、ひとりになるんじゃないわよ……っ!)

 

 心の中で水都を叱咤すると、改めて園子へ向き直る。

 

「どうしてあなたが行かないの〜? あなたの方が敵について詳しいのに〜?」

「……」

 

 芽吹はその問いには答えなかった。

 

「……待ってくれてたの?」

「んん〜? 無視だぁ〜。まぁいいや〜。……別に待ってたわけじゃないんよ〜。私は今、心中穏やかじゃなくてね〜、冷静になってたんよ〜」

「……でしょうね。()()()()()()()があるものね」

「その言い方だと……仕組みに気付いたのかな〜?」

「大分ネタは割れたって言ったでしょ?」

「んん〜」

 

 芽吹自身も心を落ち着かせる。

 そして園子が自分たちの攻撃を、不自然だと感じるほどに回避していたその謎について説明していく。

 

「ーー貴女の回避能力は戦う相手の"気配"や、"攻撃する意思"を察知していたのよね? 雪花から聞いたわ」

「うんうん」

 

 園子は面白半分で芽吹の謎解きを聞いていた。

 

「でもそれは常にじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()、という条件がある。違うかしら?」

「ふう〜ん」

 

 肯定とも否定とも取れない相槌を返す。

 

「随分と苦労させられたわよ。全くと言っていい程攻撃が当たらないんだから。……でもその中で貴女は攻撃を避けなかった時がある。雪花に言われて気付いたの」

 

 二人で確認しあったのだ。おそらくこの認識で間違い無いだろう。

 

 "東郷美森に気を取られている時は、回避がおぼつかなくなる"。

 

「貴女は歌野と東郷美森の戦いを気にかけていた時、"感じ取る力"の精度は落ちてしまっていた」

「……」

「意識が私達から仲間に向いていた。だから私達の攻撃を察知し切れなかった。そしてもうひとつあるわ……」

 

 雪花に教えられた情報と実際に戦った手応えから、芽吹はまた新たな仮説を作り出した。

 

「貴女は何も、最初から避けていた訳じゃない。最初の頃はその槍でガードしてたのよね? なぜ避けなかったの?」

「…………」

「それは相手が冷静だったから。攻撃する意志を()()()()()()()()()から、よね? だから貴女はあらゆる言動で、こっちの動揺を誘った。……攻撃を察知しやすくする為に」

 

 雪花と芽吹の精神状態を揺さぶる。その為に園子は手練手管で二人を煽っていた。

 怒りや焦り。それらは当人たちの攻撃をより単調にさせ、感じ取りやすくしていたのだ。

 

「眠った状態からの回避。目を閉じての戦闘。戦闘後を狙っての2対1……と思いきや、あからさまなハンデを提示。……全部こちらを翻弄する為の貴女の小細工」

 

 そうやって雪花や芽吹の精神に揺さぶりをかけた。

 

「貴女……勇者の癖に小賢しいわね」

 

「ーーよっよっよ〜」

 

 園子は右手で顔を覆いながら笑い声をあげる。

 

「すごいすごい〜、大アタリなんよ〜!」

 

 パチパチパチと手を叩いて称賛する。

 

「……で? それが分かって、これからあなたはどうやって戦うのかな〜?」

「決まってるじゃないッーー」

 

 芽吹は園子の懐に入り込み、刀を下から突き上げた。

 

「……!」

 

 園子は体を左に反らせて回避しようとする。

 しかし、刀の速度の方が勝り、左肩に一太刀入れられた。

 

「うっ……」

 

 僅か程度の切り傷だったが、園子の顔は若干苦痛の表情を浮かべた。

 

「ーーどうしたの? さっきまでならこの程度の攻撃を避けられた筈よ?」

「……へぇ」

 

(間違いない……。彼女は外見では平静を保っているけれど、心の中はかなり動揺している)

 

 そのうえ芽吹は今、()()()()()()()刀を振るっていた。

 

(なんて事はない。……今の私には当たり前のように出来る!)

 

 さらに芽吹は追い討ちをかける為、一気に間合いを詰める。

 

(そして仲間がやられた今が貴女を倒せる唯一の機会……!)

 

 芽吹は園子に絶え間なく斬撃を加えていく。

 

「ーーはあ! ーーせいッ! ーーはッ!」

「……うっ、むむっ」

 

 園子は攻撃を捌ききれなくなってきており、段々と生傷が増えていく。

 

「先にお仲間が倒された事が貴女の敗因っ。次からはひとりで戦う事ねッ!」

「……!」

 

 園子の足元がふらついた時を見計らって、足を引っ掛け転ばせた。そしてそこへ、刀を振り下ろす。

 

「これで……おわーー」

「ーーお願い……セバスチャン」

「ーー⁉︎」

 

 しかし、芽吹の刀は浮遊する刃に防がれた。

 

「……そこまでわかってるんなら、もう()()()()()()()()いいよね〜」

「……上等よ。貴女にはもうその能力でしか戦えない。……ここからが全力勝負よ!」

「よっよっよ〜」

 

 園子は芽吹の勢いに飲まれる事なく笑みを浮かべる。

 

「でもさ〜、強がっても貴女も疲弊してるのは分かりきってるんだぜ〜? だから余力がある彼女を向かわせて、自分は時間稼ぎとしてここに残った」

「……」

「貴女にとって大事なのは"向こう"の戦い。こっちは別に勝たなくてもいい。貴女は私を抑える役目を担った"捨て駒"というわけだ〜」

 

「ーー違うわよ」

「ん〜?」

「確かに時間稼ぎと言ったけれど……倒せるのならそれに越した事はないじゃない?」

「私を〜?」

「ええ。私がここで貴女を倒すのよッ!」

 

 芽吹は刀を振るい、数々の刃を捌きながら園子に立ち向かうーー。

 

 

 

 

 

 

 

 ーー芽吹の嫌な予感は的中していた。No.6が突如、水都たちの目の前に現れたのだ。

 

「ーーやっとだ。ったく……」

「ーーッ⁉︎」

 

(そんな……っ。楠さんに敗れて、そのままだと思ってたのにっ)

 

 No.6は歪んだ笑顔で水都と双子座の元へ近付いていく。

 

「二人とも! 私の後ろへ!」

「「ーーで、でもッ」」

「いいからっ!」

 

 水都は双子座を庇うようにNo.6の前に立ち、両手を広げる。

 

「……手配書の女。何のつもり? おまえもバケモノを庇うクチか?」

「ま、守るからっ、私が!」

 

 No.6は射殺すような眼光で水都を睨み付ける。

 

「……っ」

 

 水都はすくみそうな足を必死で堪えていた。

 

「人間だから殺さないって思ってる? ……ナメるなよ」

「ーーぐっ!」

 

 No.6の腹部から二本の腕が出現し、計四本の腕を水都の首に手をかける。

 

「……ぅ、あぁ……」

「大社に歯向かう奴は敵っ。ここで絞め殺す!」

 

 力を込めて首を締め上げていく。

 

「「ーーはなしてぇ‼︎」」

 

 ーーすると、後ろの双子座二人はNo.6に突進した。

 

「ーーく!」

 

 No.6は後ろへ下がり、水都の首から手が離れた。

 

「……かっ、はぁはぁ、かはっ」

「「だいじょーぶ??」」

「う、うん……ありがと……」

 

 水都は膝をつき、呼吸を整える。

 

「……ぃってんだよォォ‼︎」

 

 股の間に脚を生やし、双子座を蹴り上げた。

 

「「うわああ!」」

 

 さらに、地面に倒れ込んだ双子座を追い討ちと言わんばかりに蹴り付けていく。

 

「この! このッ!」

「「いたっ、いたいッ……よぉ」」

「人間サマの姿、真似てんじゃないよッ! バケモノごときがッ‼︎」

「ーーやめてッ!」

 

 今度は、水都がNo.6を両手で突き飛ばした。

 

「ーークソがぁ……三人纏めて殺してやるッ‼︎」

 

 No.6は三本の爪剣を防人装束から出現させ、それぞれ手にして走り出した。

 

「ーーッ‼︎」

 

 突き刺される事を覚悟して水都は間に入り双子座を守る……

 

 

 

 …………その筈だった。

 

「ーーうわっ!」

 

 ーーしかしその瞬間、水都は双子座に肩を掴まれ、後ろへ投げ飛ばされた。

 

「「ーーッ!!」」

 

「…………え」

 

 水都の目に映ったのは三本の爪剣のうち、二本がそれぞれの胸に突き刺さった双子座の姿だった……。

 

「「……か、かはっ」」

 

 また、最後の一本は二人で掴んで、押さえつけている。

 

「ふ、ふたり……とも……」

 

「「ーーうっ、ううっ」」

 

 激しい痛みの中でもなお、双子座はもう一本の爪剣を掴み離さない。それが水都へ及ぶのを必死で食い止めている。

 

「……離せよバケモノ。まだ生きてるのか」

「「はなさ、ない……。これ、をはなしたら……かのじょがあぶない、から」」

 

「あ、ああ……」

 

 目の前の光景に水都の表情は絶望に染め上げられていく。

 双子座へ手を伸ばそうにも、体が震えて立ち上がることすらできない。

 

「双子座バーテックス……。"双子"ねぇ。同じ思考を持つそっくりさんを生み出す為だけの()()()()()だ」

 

 No.6はそう言うと、装束から"もうひとりのNo.6"を出現させた。

 

「……ウチの能力を使えば、ひとり、ふたり……簡単に花咲かせられる。お前らの能力も、その存在も……」

「……この世には要らないんだよ

 

 衣服は無く、上半身だけを露わにしたふたりめのNo.6は双子座を嘲笑う。

 

「「……う」」

 

 大量の血を流しながらも双子座は掴んでいた手をさらに握りしめる。

 

「それ一本持ってたって仕方ないんだよ。ウチはまた新たに何本も咲かせられるんだからッ!」

 

「「ーーうう⁉︎ ーーがはっ!」」

 

 体に刺さっていた爪剣が枝分かれするように、四方へ刃が伸びる。

 さらには三本目からも新たな爪剣が生え、水都へ襲い掛かるーー。

 

「……っ!」

「「さ、せないっ」」

 

 双子座は同時にNo.6を蹴り飛ばした。

 

「ーーぐがっ」

「「……っう!」」

 

 No.6が後ろへ下がると同時に、刺さっていた爪剣も抜かれ、双子座は力なくその場に倒れ込む。

 

「ふ、ふたりともっ」

 

 水都は固まっていた体を奮い起こし、双子座へ手を伸ばす。

 辺りの血溜まり二つが重なり、より大きな血溜まりを作る。

 双子座は今にも生き絶えそうな程に衰弱していた。

 

「「はぁ、はぁ……。よ、よかったぁ」」

 

 双子座は水都を守れた事に安堵して笑う。

 

「良くないよ! なん、で……」

「「だってまもれ……たから……。あなた、を……」」

「だから、どうしーー」

 

 水都は言葉を途中で遮り前を見た。

 

「キキキッ。見たか、おい。バーテックスが人間を庇いやがったぞっ」

 

 ほくそ笑んでいたNo.6だが、すぐに無表情に戻る。

 

「……ふざけるな。さんざん人を喰い殺してきたバケモノが、今更人間サマの真似事してんじゃないよ。誰かを守って犠牲になるってのはな、人間サマの特権でしょうが!」

「……っ!」

 

 水都は涙を滲ませながらNo.6を睨み付けた。

 

「あ? なにさ?」

「…………」

 

 ただ、黙って睨み付ける水都にNo.6は腹立だしく思う。

 

「ま、あんたも死ぬんだ。大社の敵になったせいでな」

「…………」

 

 そして、爪剣を水都へ振り下ろした。

 

「バーテックスと共に、仲良く逝くんだなッ!」

 

「ーー飛翔する槍(オプ・ホプニ)ッ!」

「ーーッ!? ぐぅあッ‼︎」

 

 ーー突如、槍が飛んできた。No.6の"もうひとり"はその槍から身を守る為に防御体勢に入ったが、命中した衝撃で"本体"と共に地面に倒れ転がっていく。

 

「水都ちゃん⁉︎」

「せ、雪花ちゃん……」

 

 雪花は水都へ急いで駆け寄った。

 

「水都ちゃん、怪我は⁉︎」

「わ、私は……大丈夫、だけど……」

 

 暗い表情をしたまま双子座を見下ろした。雪花も双子座を見て顔を強張らせる。

 

「……そう」

 

 雪花は腰を下ろして双子座の頭を撫でた。

 

「大体の状況は把握した。……水都ちゃんを助けてくれてありがとね」

「「……!!」」

 

 それを聞いた双子座は涙を流しながら、辛うじて頷いてみせた。

 そして雪花はNo.6が起き上がるのを見て、歩き出す。

 

「雪花ちゃん……」

「大丈夫。直ぐに終わらせてくるから。……あ。あと、助けにきたのが歌野じゃなくて私でゴメンねっ」

「…………」

「あ……。にゃっはは。ゴメンゴメン。今の無しで」

 

 軽いジョークを水都にスルーされ雪花は苦笑いした。

 

「水都ちゃんは……双子座をお願い。ちゃんと看取ってあげて」

 

 水都は何も言わずにこくっ と頷いた。

 

 

「……ちぇっ。痛いじゃないか」

 

 No.6は自分を攻撃してきた雪花の槍を明後日の方角へ蹴り飛ばした。

 

「秋原雪花……。100万ぶっタマげの()()()()か」

「はいはいそーですよー。田舎勇者の雪花ちゃんですよー。そう言う貴女はー、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 装束を身に付けたNo.6と、そこから上半身裸で生えている"もうひとり"に雪花は白眼視を向ける。

 

「双子座とあんたで、300万。さらに白鳥歌野も併せて600万ぶっタマげ……。七武勇もいたっけか、なら、占めて1000万は軽くいくかな」

「……全部倒せる気でいるんだー。傲慢だね」

「あんたらで潰し合ってくれたお陰で漁夫の利を得られるってワケさ。礼を言うよ。大社に楯突くゴミ共」

 

 雪花は憐れみの表情を浮かべて聞いていた。

 

「大社を絶対視、か……。何も知らないらしいね」

「知ってるさ。知らないのはあんたらの方だ。大社がどれだけ偉大な存在かって事を。それに歯向かう奴らがどれだけ愚かだって事をッ!」

 

 "もうひとり"を引っ込め、No.6は雪花へ斬りかかるーー。

 

 

 

 

 

 ーー水都は徐々に呼吸が浅くなっていく双子座の姿を見て涙を流していた。

 

「ごめん、ごめんね……。守るって決めたのに……」

 

 双子座の手をそれぞれ握る。

 

「うたのんにも頼まれたのに……。楠さんの言い付けも聞かずに……。私、は……」

「「なかない、で。()()()()()」」

「……!」

 

 次第に冷たくなっていく体温の中で、双子座は痛みに耐えながら微笑みかける。

 

「「双子座(ぼく/わたし)は……うれしかった、よ……。ばーてっくすなのに……、わがままきいて、くれて、さ……」」

「でも、でもぉ! 守れなかった……私が弱いばっかりに。本当にごめんなさいっ」

「「ううん、いいんだ……。いやむしろ、あやまるのはこっちだよ。ごめんね。ばーてっくすのふぉるむになれば……いくぶんかはたたかえてたと、いまさらながらおもうんだぁ」」

 

 双子座は水都たちと出会ったからというもの。いや、出会う前からも、進化体の形態になろうとはしなかった。人間の姿で居続けていた。

 あくまでも、人であり続ける事を願っていたのだ。

 

「「けっか……こうなっちゃったけどぉ……くいは、ない……よ? しあわせ、だったよ。……しあわせ、だったんだ」」

「う……うう……、うん」

「「あなたたち、が……たすけてくれるっていってくれたこと……。にんげんとして、せっしてくれたこと……。とてもしあわせにかんじたんだぁ」

「…………う、ん」

 

 水都の涙は頬を伝い、双子座の顔に滴り落ちていく。

 

「「あなたたちの、おかげで……、すこしのじかんだけでも……"にんげん"になれたと……"にんげん"でいられたと、おもえた……から」」

「うんっ人間だったよッ!」

 

「「…………‼︎」」

 

 水都はぐしゃぐしゃに濡れた顔のまま、声を張り上げる。

 

「あなたたち二人は、"人間"だよ! 紛れもなく"人間"だった! 笑っていた姿は……泣いていた姿は、私たちのものと何も変わらなかった‼︎」

「「……うん」」

「あなたたちは確かにバーテックスとして生まれたけど、それは変わらない事実だけど……でも最期に、私を守ってくれたっ。二人が守ってくれなかったら私は死んでたんだ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを人間と言わないなら何だって言うの? バーテックスはそんな事絶対にしない! たとえ全ての人たちが認めなくてもっ、私は()()()()()()()()()()()と言い続けるよ!」

 

 息切れしている事も忘れて水都は最後まで声を張り上げ続けた。

 

「はぁはぁはぁ……。はぁ……はぁ……」

 

「「…………ぅ、」」

 

 双子座は満面の笑みを浮かべて、ただ……ただ頷いていた。

 

(ねぇ、おねえちゃん)(ねぇ、おにいちゃん)

 

 お互い声を出さず、能力で意思を伝え合う。

 

(ほんとにしあわせものだよね)

(ほんとうだよね)

(……あのさ)

(うんわかってる)

(ぼくたちはこのままおわっちゃうけど)(わたしたちはここでおわるけれど)

 

((つぎにうまれかわるときは……))

 

((……ちゃんとしたにんげんのきょうだいがいいね))

 

 二人は心の中で笑い合った。

 

(かみさまにでもたのんでみる?)

(それ、いいかんがえだね)

(……あーでもあれだねー)

(うんそうだねー)

 

(ぼくたちのかみさまはきっと……)(わたしたちのかみさまはきっと……)

 

 

((ゆるしてくれそうに、ないよね…………))

 

 

 ーーそして双子座は、片手で水都の温もりを、もう片方の手でお互いの意思を感じながら……。

 

 

「「…………」」

 

 

 …………砂となって消えた。

 

 

 

 





 ・・・・・・・・・・・・


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