前回のあらすじ(?)
双子座「「おなかすいたよー」」
水都「じゃあ蕎麦食べる? 携帯食の」
双子座「「わーい‼︎」」
歌野「イェイイェイ♪ これで二人も蕎麦フレンドねっ」
芽吹「ここにうどんもあるわよ。食べなさい」
雪花「旭川ラーメンもだよっ。携帯食だけど」
双子座「「ええー、それはいい。きょーみないもん!」」
芽吹・雪花「「!!!!?」」
歌野「た、大変っ。今すぐ謝って!」
水都「二人から物凄いオーラが……」
芽吹・雪花「…………許すまじ! 極刑に処す‼︎」
芽吹と刃を交えている園子はやや、押され気味だった。
宙を飛び交う槍の刃たちも芽吹の剣線の前に悉くいなされている。
(んん〜、これはしんどいかな〜?)
時折、間合いに入った芽吹の斬撃を、持っている槍でガードする。
単純な力勝負の場合、今の園子には分が悪かった。
「ず、随分お疲れなようねっ」
「そ、それはあなたもでしょ〜?」
横からひと薙ぎに払う芽吹の刀をまた槍でガードする。しかし、威力を殺しきれずふらつく。
芽吹自身も肩で息をしていた。
園子が回避を試みるも、それを上回る程の速度で動き、攻撃を繰り出す事が体力をより一層消耗させる。
「はぁ、はぁ……。は、はっ」
大量の汗が地面に滴り落ちる中で、芽吹は笑う。
「何がおかしいの〜?」
「……さあね。でも、つい笑ってしまうのよ」
「私に勝てる……と思ってるから〜?」
「……かも知れないわね。いえ、"勝てる"じゃなくて"勝つ"のよ」
芽吹は刀を腰の高さに合わせ、自身の体勢を低くとった。
「私はもう……
芽吹はふぅ と軽く一呼吸おいて園子を見据え型をとる。
「一刀流……」
「ーー
芽吹が行動起こすより先に、園子が先手を取った。
園子は地面に手を付けた瞬間に、辺りから地鳴りが起こる。
「な、何ッ⁉︎」
芽吹は突然の地震にぐらついて、型が崩れる。
周りの木々は土が迫り上がった事で根ごと掘り起こされ倒れていく。
芽吹の目に映るのは土塊が宙に浮いた超常現象だった。
「こ、これを……
「本気でやるって言ったからね〜。それに槍の刃の"数"も……」
園子が槍の先端を芽吹に向けると、その先がぱかっと開き、新たな刃が現れ宙を漂い始めた。
「なっ⁉︎ ま、まだあったの⁉︎」
「これが全部だぜ〜? マトリョーシカみたいで面白いでしょ〜? 最初のと合わせて合計20本あるんよ〜。……あ、槍本体を合わせたら、刃の数は21本か〜」
園子の真上を飛び交う20本の刃は一斉に芽吹に向いた。
ーーと、同時に浮いていた土塊が
(か……カラス?)
鳥型の土塊は背中と思わしきあたりから翼を形成させ、顔と思われる部分に突起物を形作る。それは嘴によく似ていた。
「かかれ〜!」
「ーーッ!!?」
園子の合図のより、まずは一斉に刃が芽吹に襲い掛かる。
「くっーー、ぁあっ」
園子へ斬りかかる体勢から、即座に重心を起こして飛んでくる刃を迎え討つ。
10本目までは刀で防ぎきるも、続く11本目、12本目から徐々に押されはじめ、バックステップで後退する。
「じゃあ〜、さよならだね〜」
「……ッ!?」
上から鳥型の土塊が芽吹目掛けて降り注いでいく。
「ぐぅッ! ……このッ……」
刀を振るい抗ってみせるが、為す術もなく呑み込まれる。
「……ぅ……っ…………」
そして遂には芽吹が居た場所に土の山が完成し、彼女は生き埋め状態となった。
「……ちょっと本気でやり過ぎたんよ〜」
そう言いつつも園子は特に悪びれる様子も無く、土山に語りかけた。
「……でもあなたはそれ程に強かった〜って事だから"負け"を恥じる事はないんだよ〜? 私もかなり疲れたんだから〜。……だからもう、おやすみだね」
園子はそれに背を向けて東郷の元へ歩き出す……。
「…………ちな……さい……よ」
ーーNo.6と雪花の戦いは平行線を辿っていた。
はじめはNo.6が爪剣で雪花に斬りかかるも、雪花はそれを避け続けていた。
そしてその攻防の中で、相手の雪花は蹴飛ばされていた槍を拾いに走る。
「……ちっ」
槍を拾い上げ、雪花は攻撃を試みるもNo.6はなぜか距離を取った。
雪花が走りだし、槍の刺突を繰り出すもNo.6は爪剣で防御。
何度も何度も槍と爪剣が激突して火花を散らせる。
「ほらほらっ。さっきの威勢はどうしたのかにゃぁ?」
「……ちっ、くしょ」
防戦一方のNo.6は自分から攻めていこうとはせず、後ろへ跳び雪花と距離を取った。
そして彼女は飛び上がり、背中から無数の腕を生やして翼を形作る。
「
上空に舞い上がったNo.6は装束から次々と爪剣を出現させる。
「オリャオリャオリャアァァ‼︎」
上空から雪花目掛けて爪剣を放り投げる。
「よっ、よっ、よっ……」
雪花は降り注ぐ爪剣をヒラリヒラリと避けていく。
「デタラメに投げてたって当たらないよっ」
雪花は上空のNo.6に狙いを定めて槍を構え、槍投げの体勢に入る。
「オプ……っ」
……しかしその槍を、雪花が投げる事はなかった。
「キキキッ。
「……うがッ⁉︎」
地面に突き刺さっていた爪剣から腕が伸び、雪花の体を羽交締めにしていた。
「食らえェェ! オリャアァァア‼︎」
「……ふぐっうう!?」
雪花が身動きが取れない状態で腹部に正拳をもらう。
「…………かっ、はっ」
重い一撃にたまらず血を吐く。
「まだまだァァア!」
雪花を捕らえている無数の腕からまた新たな腕が生え、彼女をタコ殴りにする。
「……っ! ……ぅ⁉︎ ……っがっ!」
「キーッキキキッ‼︎ さっきの威勢はどうしたんだぁ?」
高笑いしながらNo.6は地面に着地する。そして背中にあった翼も消えた。
「たかが100万の田舎勇者がウチに勝てると思うな! ウチらは"防人"。先代である"鏑矢"を越える、大社の矛であり盾となる存在だよ!」
「……鏑、矢?」
「あーそっかー。田舎者だから知らないよねぇ? 鏑矢ってのは大社によって昔作られた戦闘部隊。簡単に言えば旧世代型の防人だよ。『
No.6は雪花に歩み寄り、両手を胸の前で交差する。
「
「……むぐぅッ⁉︎」
雪花の口を出現させた両手で覆う。
「芽吹隊長の時みたいに噛まれたらたまったもんじゃないからねぇ。口を封じた。このまま窒息させてもいいけど……」
No.6は爪剣を雪花の胸に向けた。
「……"さっき"みたいに串刺しにするか。あんたらバーテックスと仲良かったみたいだし、死に方だけでもおんなじにしてあげる」
プスッ と爪剣の先端が胸に刺さる。
「ーー⁉︎ んん! んんん〜‼︎」
「キキキッキャッハハ! 何言ってんのかわかんねーしっ」
そしてNo.6は、思いっきり腕を前へ突き出したーー。
「ーーんんんグ!?」
眼を見開かれた雪花の口元から、血が噴き出した。
覆っていた手の隙間からとめどなく流れ出る。
「キーーッキキキキキキキキッ。これがっ! 大社に仇為す愚者共の末路だよ‼︎ 大社こそが正義‼︎ "正義"に楯突く奴らは淘汰されるべき"悪"でしかなァァいッッ‼︎」
天を仰ぎ見、高らかに勝利の愉悦に浸る。目の前の雪花
「……やめときなよ。"正義"だ"悪"だと口にするのは……」
「ーーあ、ぁあ?」
「……そんなもの、"この世"のどこを探したって答えはないでしょ?」
後ろから聞こえた
「な……んで……?」
「くだらない……」
No.6は自分の眼を疑う。そしてもう一度雪花が居た筈の場所を見ると、そこには誰もいなかった。
(いない……? ーーハッ⁉︎ さっきバーテックスの所にいた奴はっ⁉︎)
辺りを見渡すも、今この場には雪花(?)とNo.6しかいない。
周りの木々すらも、気付けばいつのまにか無くなっていた。
まるで、世界に二人しかいないような……。
「の、能力……なのか……?」
そして彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「ーーっていう夢を視たのかにゃぁ?」
……その瞬間、世界が割れた。粉々に砕けた仮初の世界の残滓は、足元に落ちると同時に儚く消えゆく。
「は……?」
No.6は膝が崩れ落ちその場に跪いた。
「……っつ⁉︎」
見れば右肩から斜線上に出血していた。雪花が槍を使い袈裟斬りにしていたのだ。
「う、ウチは……」
「ん? 寝てたよ? 私の槍で斬り裂かれるまで。私の能力『ユメユメの野菜』はリンクした武器を肉眼で見る事で相手を夢に誘う事ができるから」
激痛と困惑によりNo.6は立つ事はおろか、動く事さえままならなかった。
「……は、はぁ……?」
「私が貴女に最初、槍を投げ付けた時に"もうひとりの貴女"がいたよね? それが私の槍を
「…………」
No.6はやっと冷静になってきた頭で状況を整理した。
確かにあの時、"もうひとり"は雪花の槍を見てしまっていた。
「……じゃ、じゃあ、最初から? ウチがあんたと戦ったのも……夢?」
「能力を発動したのは、"私の口を覆った時"だよ。……ほら、あの時言ってたよね? 『噛まれたらたまったもんじゃない』って。貴女の能力で現れた手を噛めば、貴女は痛がるって意味だよね? なら、
「……嘘、でしょ……。たったそれだけで」
「"たったそれだけ"で、勝敗は呆気なく着くんだよ」
No.6の慢心……とも言うべきたった一言の"失言"により、雪花は能力の弱点を見抜き、相手を夢へ誘ったのだ。
「もっと早くに気付けていれば余計なダメージを負う事はなかったんだけどね。まー、捕まっていたのも能力を発動したら、解放されたから良いんだけど」
雪花は腹部を押さえ口だけ笑う。
「こ、このやーー」
No.6が立ち上がるのを阻止すべく、雪花は槍でNo.6の両脚を突き刺した。
「ーーっあァァ‼︎ ……あ、あああっくぅ……!」
「痛い……よね? 当然だよ。でも貴女は同じ事を
「……っ。キ、キキキ……」
「……?」
両脚の痛みに苛まれながらもNo.6は苦笑いを浮かべた。
「ウチは……まだ戦える……。立てなくとも、能力があれば……」
「その隙を私が与えると思うのかにゃぁ?」
雪花は槍を半回転させ柄の部分でNo.6を顔を殴り付けた。
「ーーぶっふ⁉︎」
その瞬間、No.6のバイザーが割れ、完全に素顔が晒される。
そしてNo.6の眼前に槍を突き付けた。
「さて……これでまた夢を視させられる条件が整ったわけだけど?」
「この……っ。図に乗るなよ、異端者共がァァ!」
「…………
「バーテックスなんざ、庇いやがって! あんたらはきっと
「……大切な人が殺されてない、か。……そう思うんだねー」
「いいかっ。バーテックスがこの世界に存在する。ただそれだけで、庶民は愛する人たちを失う恐怖で夜も眠れないッ! ……だから
途端に辺りは薄暗くなっていく。
「大社こそが絶対だ! 大社が無ければ四国の住民なんて簡単に瓦解してしまう。今やこの世界は、大社無くしては成り立たない! か弱き者たちを平穏な世界へ導く、その道を切り開き、創り上げていく! そうさっ!
雪花はそんなNo.6を冷たい視線で見つめていた。
「その"道"をつくるために、一体何人の人を犠牲にしてきたのさ? 一体いくつの人たちの人生を……その"道"の
「犠牲の無い世界なんて存在しないんだよ! 何かを手にする為には、それに等しい何かを捨てなければならない。この世は人間を中心に回ってるワケじゃないんだからねぇ!」
その時、No.6の胸に槍が突き刺さった。
「……ッ⁉︎」
「ウンザリだよ。そんな正論を聞くのは……」
胸部に刺さった槍は、なおも突き進みNo.6の体を貫通した。
「……っあがっ! ……っうっ」
「貴女がどんな正論を宣おうが、私には届かない、響かない。……私は北海道で絶望を知り、
No.6は違和感を感じた。
自分に刺さった槍は、明らかに心臓を貫いているのに関わらず、自分は生きていた。
一瞬だけ感じた"激痛"も、とうに消えている。
「……これも、夢……か?」
「そうだよ。こーゆー夢を視てるんだよ」
ーーそしてまた、薄暗い世界はガラスのように砕け散る。
「……ハァ⁉︎ ……かっ、ハァハァハァ……。夢なのに、あの痛みは何だったんだ……」
「"痛い"と感じたのなら、それは
雪花は槍をクルクルと回転させる。
No.6は夢の中のショックで動けずにいた。
「『ユメユメの野菜』は脳に影響を与えて夢を視させる。貴女が感じた苦痛はその副産物だよ」
雪花は遊ぶのをやめ、また槍をNo.6に向ける。
「じゃあもう終わらせよっか」
「……な、No.4に続いてウチまでやられたと分かれば、大社は完全にあんたらを潰しにかかるだろうね!」
「……だから?」
「ーーせいぜい大社の陰に怯えながら逃げ続ける事だ!」
「怯えないし、逃げもしない。私たちは歌野と共に四国へ行くんだから」
「キキキッ! 馬鹿言うなよ! 四国へ行くにはその途中で大社本部がある
No.6は高らかに叫び続ける。
「三大将‼︎ 四勇‼︎ ……あんたらァァ、こいつらに喧嘩売る度胸あんのかよォォ!?」
雪花はその怒声を聞いて少しだけ口角を上げた。
「多分、歌野ならこう言うだろうね……。『喧嘩? そんなもの、野菜と一緒にいくらでも売ってあげるわ!』ってね」
そして槍を後ろへ引いて体勢を低くとる。
「……旅行に行くならどこに行きたい? 片道切符をあげようか」
「ーーあぁ⁉︎」
「飛べ……神々の地まで」
後ろへ引いていた槍を力一杯、前へ突き出したーー。
「
ドーン‼︎ と鈍い轟音が走り、No.6は上空へ突き上げられた。
「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
☆キラーン☆
断末魔をあげながら空の彼方まで飛んでいき、No.6は星になった……。
ーー園子は東郷の元へ向かおうとする足を止めて振り返った。
芽吹は土の中から必死に身を捩って這い出てきたのだ。
「ま……だ……戦いは、終わって、ないわ……よ……」
「どうしてそこまで頑張るのかな〜」
園子は宙に浮くと、芽吹に向かって飛んだ。
そして、彼女の首に手をかけた。
「ーーぐっ!」
「もうこんなにボロボロなのに〜。全身泥だらけで、血だらけで〜」
「…………っ」
「私知ってるんよ〜。あなた、怪我してるでしょ〜。今もほらっ、服から血が滲み出してる」
「……あっ!」
「どこかの階段で転んだのかな〜?」
園子が芽吹の装束をたくし上げると、中からドロッと血が流れ出した。
「ーーくぅああッ‼︎」
開いた傷口に触れられ、芽吹に激痛が走る。
「……予想以上に酷い傷だね」
(なんで生きていられるの? なんで立っていられるの? ……不思議だよ。勇者でもないのにね〜)
ギロッと芽吹は園子を睨み刀を振るう。
「……っおっととと〜。危ない危ない〜」
(これが今にも死にそうな人の目……? )
芽吹の血走った目は、園子を一瞬だけ畏怖させた。
「……こっの傷はァ……どこかの勇者がつけたものよ……」
「……?」
芽吹は刀を強く握りしめた。
「"妖怪・スパルタ煮干し喰わせ"にねッ‼︎」
「……⁉︎」
斬りかかろうと迫り来る芽吹に対抗して、園子は足元にある倒木に触れて浮かせた。
「ーーやあぁ〜!」
「……⁉︎ 一刀流・
それを芽吹に向けて放るが、彼女はいとも容易く真っ二つに斬り裂いた。
「あ、あれれ〜」
「……私の傷を見て狼狽してくれるのは別に構わないけどね。同情する暇なんてあるのかしら?」
「やっちゃえセバスーー」
園子が浮遊する刃たちに命じるが、芽吹はそれより先に動き出す。
(……⁉︎ は、はやーー)
ーー刹那、園子の目の前まで迫っていた芽吹は、刀を一旦鞘に収めていた。
「あ、あ……っあ」
「一刀流・居合……」
ーー次の瞬間、目にも止まらぬ速さで芽吹は園子の背後へ駆け抜けていたーー。
「ーー"
芽吹の手には、鞘に収まったままの刀が握られていた。
……園子には全く、その刀が鞘から抜け出た瞬間を目で追う事は出来なかった……。
「……あ……ちゃぁ〜」
袈裟斬りにされた園子は、顔を引き攣りながら仰向けで地面に倒れた。
「はぁ……はぁ……。くうッ‼︎」
持っていた刀を落とし、胸を押さえて激痛を堪えようとする。
「れ……礼を言うわ……。貴女のお陰で、私はまた……強くなれた……」
「…………」
園子は無言で空を眺めていた。
「ありがとう……。お陰で私は……また一歩……
そして芽吹も力尽き、うつ伏せの状態で地面に倒れた……。
二つの決着。そして次なる一歩へ。
次回 いざっ、ウエストジャパンへ!