白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。
 今回から『ウエストジャパン編』スタートです。

 ONE PIECE 105巻買いました。
『富』『名声』『力』は手に入ったけど、代わりに肝心の『自由』から最も遠ざかってしまった海賊がいるそうです。


『この大地の向こう、そして瀬戸内海(グランドライン)の先にある四国。そこにスッゴイお宝があるって知ってる? それを手にして私は農業王になるのっ。ワクワクするでしょ! 見た事も無いアドベンチャーが待ってるっていうのよ!』



〜ウエストジャパン編〜
第四十話 京都壊滅ッ!?


 

 ウエストジャパンへ踏み出し旅を続ける歌野たち。

 現在は岐阜県と滋賀県を越えて京都府に差し掛かっていた。

 

「ーーあっ。歌野っ、楠さん!」

「星屑ね……」

 

 雪花の指差す方向には十数体の星屑の集団が蠢いていた。

 そして、その内の一体が四人の方へ向くと、それに続いて他全ての星屑も四人に軌道を変えて突進してきた。

 

「……こっちに気付いたみたいね」

「うわー。きっもち悪いわー」

「ウエストジャパンに来てから初の遭遇。気合い入れてかないとねっ」

 

 歌野は抱えていた水都を下ろして前に立つ。

 芽吹と雪花は走り出し先んじて討伐にあたる。

 

「ーーふっ、はっ。ーーせいっ」

「……やぁあ! とっと……はぁ!」

 

 芽吹は星屑を一体一体を真っ二つに斬り捨て、雪花は縦横無尽に駆け回り槍で串刺しにしていく。

 歌野は従来どおり、二人が殺し損ねた敵や、二人を無視して自分と水都を狙った際の対処にまわる。

 

「あっ! 歌野、二匹行った!」

「見えてるわっ」

 

 雪花と芽吹の間をすり抜け、二体の星屑が歌野と水都へ襲い掛かる。

 

「ムチムチの〜〜」

 

 歌野はベルトを伸ばして、右腕を振り上げ攻撃体勢に入る。

 

「ピ……っつ!?」

「ーーうたのん⁉︎」

 

 ……しかし、歌野の動きが途中で止まった。

 異変を察知した水都は即座に歌野の背中を掴んで共に地面に倒れ込む。

 

「うわっ」

「いっ……」

 

 二人が地面に倒れたおかげで星屑の突進を避ける事ができた。

 

「ーー歌野⁉︎ 雪花⁉︎」「ーー歌野⁉︎ 雪花ちゃん⁉︎」

 

 様子がおかしい事に気付いた雪花は槍を放り投げる。

 

「ーー飛翔する槍(オプ・ホプニ)!」

 

 投げられた槍は、一体の星屑の体を貫通させ、二人に追撃を試みるもう一体の星屑も刺し貫く。

 

「よっし。……んで楠さん。()()()よろしくー」

「はぁぁああ!」

 

 二人が無事な事に安堵していた雪花の背後に迫る星屑を、芽吹は横薙ぎに斬り殺す。

 

 そして四人を襲うバケモノは全滅し終えた……。

 

 

 

「……歌野。さっきのは何?」

「えっ。……えーっとぉ」

 

 戦闘後、歌野は正座させられ、仁王立ちしているニ人と、その後ろで不安そうな顔をしている一人を目にする。

 

「さっきの戦闘……。明らかにおかしかったでしょ?」

「ソ、ソーリー……」

「歌野?」

「ご、ごめん……なさい……」

 

 半笑いで誤魔化そうとしていたが、三人の真剣な眼差しに歌野はしゅんとする。

 

「……ちょっと腕みせて」

「あっ……」

 

 星屑を攻撃するために腕を振り上げた時、歌野は確かに痛がったのだ。

 水都は歌野の袖を捲り上げ、右腕を見た。

 

「……ちょっと赤くなってる?」

「触るわよ」

 

「ーー痛ァァあッ⁉︎」

 

 芽吹が多少強引に右腕を掴んだ途端、歌野から悲鳴があがる。

 

「うう〜。ぐぐぐ……」

「歌野、貴女……」

 

 呻き声をあげながら右腕を押さえる歌野を見て三人は予感した。

 

()()()()()()?」

「…………っふぇ?」

 

 歌野から素っ頓狂な声が漏れた……。

 

 

 

 

 ーー歌野の右腕に骨折疑惑が立ち、本人含めて神妙な空気に包まれる。

 

「リ……リアリー?」

「もしかしたら……の範疇よ。私は医者じゃないし、レントゲンだってないでしょ?」

「でも歌野。一応動かせるんだよね?」

「もちろんよ」

 

 歌野はゆっくりと右腕を上げ、軽く一回転させる。

 

「痛みは? うたのん」

「んー、全然。 力を入れたらズキッてなる程度」

「折れては無いのかな? だったら腕がぷらんぷらんしてるもんね」

「じゃあ……捻挫? 骨にひびが入った?」

「そのあたりでしょうね。……まぁ、とにかく、この状態のまま戦闘を行うのは危険よ。……諏訪まで戻る?」

 

 芽吹が提案する。

 確かに体の内側を知るには、相応の医療設備が備わっている場所でなければならない。

 もちろん、今彼女たちがいる場所に病院などない。いや、このご時世に四国以外の土地に大した医療機関などないのかもしれない。

 だが諏訪支部には、多少なりとも医療関係者や設備が整ってある。

 

「ううん。このまま進みましょう!」

 

 歌野は首を横に振って立ち上がった。

 

「何言ってるのよ? 骨に異常があるかも知れないのよ? ……おそらく、いや十中八九、東郷美森との戦いの後遺症でしょ」

「かもしれないわっ。"イレギュラーヒーロー"で腕を酷使し過ぎた……。それに最後、網に囚われちゃった時、変な落ち方したから」

「イレギュラーヒーロー?」

「私の新しい戦法。武器を最大限にしならせて、予測不可能な攻撃を繰り出せるの」

「そう。……でも危険よ? このまま進むのは」

 

 芽吹も雪花も水都も、充分すぎるくらい歌野を心配している事はわかっていた。

 それでも歌野は前へ進む事を選ぶ。

 

「ここまで来た……。これが"ウエストジャパンの洗礼"だと言うのなら受けて立つわっ」

「いやいや、歌野のやつは入る前に負ったものでしょ。その"洗礼"を受ける前にこの様じゃあねー」

 

 雪花の言葉に芽吹は頷く。

 

「雪花の言う通りよ。この先、さらに激しい戦いが起こる。だから少しでもーー」

「ーーえいっ!」

 

 と、芽吹が喋っている途中に、歌野は芽吹の胸を掴んだ。

 

「ーーッ痛ッ‼︎」

「ほら! ()()だってここに来る前に怪我してる! 痛いのに我慢して旅続けてくれてたんでしょ⁉︎ 前の戦いで三好夏凛さんにやられた傷が開いてたし」

「……」

 

 今度は芽吹が痛そうに胸を押さえて跪く。

 

「あーあ。こりゃ二人ともボロッボロだ。そんなんでこの先どうすんのさー?」

「むう……」

「……」

 

 先日の戦いの傷は癒えていない。芽吹に至ってはこの先また、夏凛に付けられた傷が開く可能性も大いにある。

 そんな中、更に激しい戦いに見舞われた時、取り返しのつかない事態に陥る事は分かっていた。

 

「……あのさ、考えがあるんだけど。二つほど」

「「……?」」

 

 雪花の言葉に二人は首を傾げた。

 

「私たちには今、怪我人がいる。そしてそれは今後も増える可能性がある。……私や水都ちゃんね」

「なら二人は私が守るわっ」

「ハイハイ。……で、幸いここウエストジャパンには、人が居ると思われる場所がいくつかある。そうだよね? 水都ちゃん、楠さん」

 

 諏訪支部にいた水都。そして防人として大社本部にいた芽吹へ問いかける。

 

「……うん。確か……大阪と、奈良に人がいたって……」

「そして京都。そこには大社の京都支部がある」

 

 こくっ と雪花は頷いた。

 

「つまり、この三つの場所のどこかで治療してもらう。または、治療できる人を()()()()()。……この二つの方法を私は提案するよ」

 

「「「……!」」」

 

 雪花以外の三人は、なるほど……と頷く。

 

「確かにそれなら……」

「ええ。戻る必要もないし、傷も治せるっ」

 

 つまり次に歌野たちが目指すべき場所は……。

 

▶︎京都へ向かう

 

 大阪へ向かう

 

 奈良へ向かう

 

 

「……なんか、頭に選択肢が降ってきた!」

「でもまー、私たちが指名手配されている以上、大阪か奈良のーー」

 

「京都に行こう!」「京都支部ね」

「……えっ?」

 

 怪我人である歌野と芽吹の答えは一致する。

 

「その三つの中で一番医療設備が整っているのは京都支部になる」

「大社の施設があるくらいだから、その可能性大だわっ。何よりここから一番近い!」

「……歌野。一応私たち、つい最近防人と一戦交えたばかりなんだけど……。楠さんも分かってるよね?」

 

 北海道の件や先の戦いで防人を倒し、大社にお尋ね者として扱われている歌野たちを受け入れてくれるとは到底思えない。

 しかし、歌野は首を横に振る。

 

「確かにそうだけど……でも、私は医療機関が充実している可能性がある点を考慮して京都に行くべきだと思うわっ」

「貴女の言いたい事は充分に分かってる。けど試しに行ってみてもいいかも知れない……」

 

 芽吹も同様に京都支部へ行く事に賛成する。

 

「芽吹のためにっ」「歌野のためにね」

「「…………」」

 

 そして二人同時にお互いのためと口にする。

 

「芽吹のため!」

「歌野のためよ」

 

 なぜか、お互いが相手のためだと強調し合う。

 

「芽吹の方が重体でしょ」

「歌野だって重体じゃない。勇者の自己治癒でも難しいなんて」

「これは……あのっ……、内側のダメージだから治りが遅いのよっ。多分」

「そういうものなの?」

 

 雪花はこの応酬に苦笑いを浮かべている。

 

「……二人はなんの意地を張ってるのさ?」

「意地じゃないわっ」

「ただの思いやりよ」

「あーハイハイ。……じゃあ京都支部に行こう」

「雪花ちゃんもいいの? ……いや、私はうたのんと楠さんの怪我が治るなら京都へ行くのに賛成だけど……」

「……ネックはやっぱり防人だねー。歌野はそういう所に危機感無いっていうかー。楠さんも影響されてるっていうかー」

 

 歌野のわがまま……もとい自由奔放な行動には毎度手を焼かされる。

 バーテックスである双子座を守ろうとしたのも、指名手配されていながら、芽吹の怪我の為に大社支部へ行こうとするのも、その優しさは微笑ましく思うが、こちらとしては心配で仕方ない。

 

「水都ちゃん。歌野とずっと一緒にいたんだねー。心中察するよ……」

「……え? あ、ありがと……う?」

 

 遠い目をしながら口にする雪花に水都は不思議そうに礼を返した。

 

「よし、分かった! 二人が頑として京都支部に行くっていうなら、それに従うよ。最悪、仕掛けて来たら返り討ちにすれば良いだけだしね」

「わおっ! 頼りになるわねっ」

「それで包帯とか傷薬とかも奪っていこう」

「……盗賊かな?」

 

 そして四人の目的地は京都支部に決まった。

 歌野はいつもどおり、水都を抱え上げようとする。

 

「うたのん、やっぱり痛い?」

「痛くないわっ。みーちゃんを抱えて跳ぶくらいどーって事ないの。みーちゃんが軽いおかげねっ」

「……じゃあ楠さんだったら無理なんーーっ痛ぁ!」

 

 話している途中に、いきなり背負っている芽吹から膝蹴りを食らった。

 

「あ、ああぁ……」

「……歌野、負傷者が増えたわ。早く目指した方がいい」

「そうねっ。レッツゴー♪」

「い、いや……楠さんが……」

「行くわよ雪花。いつもどおり、お願いね」

「こんちきしょぉ……」

 

 雪花は苦々しく思いながら、歌野へ続いて跳ぶ。

 

 

「……そういえばうたのんって楠さんの事、いつから名前呼びしてるの?」

「ん? 唐突ね、みーちゃん」

「いや、うたのんが唐突に楠さんを名前呼びにしてたから……」

「そうねぇ。今まではあくまで"取引相手"として敬意を表してたんだけどーー」

「敬意? うたのんが?」

「……でも、これからちゃんと"夢を語り合った同志"としても接したいなぁって。幸い、芽吹も指摘してこなかったじゃない?」

 

 そこへ、雪花が背負っている芽吹が話に加わる。

 

「……そうね。私の事をどう呼ぼうと好きにしていい。私も呼び捨てで呼んでるし」

「やった!」

「じゃあ私は"楠ちゃん"でいいやー」

「……"でいい"が少し鼻に付くけどまぁ良いわ」

「私は楠さんのままで……。もう慣れちゃったし」

「ええ」

 

 芽吹との距離がまた一段と近付いた事に、歌野は嬉しく思う。

 

「ーーじゃあ、もっととばすよ!」

「あ、ああっ。無理すると腕痛むよ!」

「ノープロブレム♪ もう治ったからっ」

「嘘付かない!」

 

 

 

 ーーそして四人は京都支部が遠目に見渡せる高台にやってきた。

 

 …………しかし。

 

「ーーねぇ、()()()()()()()? 京都支部」

「ええそうよ……」

「それらしい建物なんて……」

「……ひ、酷い」

 

 高台から見えるのは、決して歴史を感じさせる京都の街並みや、その中で大きな存在感を持つ、京都支部でも無かった……。

 

 見えたのは……黒い煙が所々に上がり、あたり一面に焼け跡とクレーターが残る、()()()()()()()を模した姿だった。

 

「……行こう。人がいるかも知れない」

 

 また重苦しい空気に包まれながら、四人は京都支部だった場所へ向かう。

 

「遠くから見ていたから分かっていたけど……。あたり一面が焼け野原」

「戦争の跡って……こういうものだったのかなぁ?」

「…………」

 

 本来の目的である怪我の治療どころの話ではない。

 

「本当なら……ここが京都支部の入り口……だと思う」

 

 芽吹に案内され、黒炭と化した場所に立つ。

 もはや、どこに何があるかさえ分からない。

 

「京都は元々、木造建築が多いって聞いたよ。……だから一回火が上がると、たちまち広がっちゃうのかな……?」

 

 不完全燃焼により起こった黒い煙から感じる嫌な匂いに眉をしかめる。

 

「……人は……いるわけないか。こんな状況だし。いたとしても、私たちとは言葉は交わせないだろうね」

「嫌な言い方をするわね」

「……ごめん。ちょっと……まいってる」

 

 芽吹に指摘され、雪花はため息をついた。

 

「見てみんな。ここに……」

 

 その中、歌野が何かを見つけてきたようだ。

 

「ほら、何か書いてあるわっ」

「……ほんとだ」

 

 木屑の中に、赤色の文字で文章が書かれていた。

 辛うじて、それを読んでみる。

 

「『…………へ。我々は…………の梅田地下街へ避難する』」

 

「京都支部の人たちのメッセージ⁉︎ その"梅田地下街"って所に避難したって意味だよね!」

「この文を素直に受け取るなら。そうなるわね」

 

 歌野は京都支部の人たちがそこへ無事に避難出来たのではないかと考えた。

 

「梅田地下街ってどこ⁉︎」

「大阪駅周辺の真下にあるおっきな地下街だよ。行った事は無いけど、確かいろんなお店があって、アーケード商店街みたいなってる……」

「そこにいるかも知れないのねっ」

 

 歌野は安堵した。

 それは自分たちの怪我を治してくれる相手へ、ではない。純粋に京都の人たちが生きている可能性がある事に、だ。

 

「やっぱり行く?」

「ええ。それに大阪"県"なら旅の目的地でもある四国へも近い。目指さない理由はないわ!」

「だねだね。それと歌野、大阪"府"、だからね」

 

 歌野は水都を抱え上げ、雪花は腰を下ろして芽吹を背負う。

 

「よしっ。じゃあ大阪の梅田地下街に行こう!」

 

 

 そして四人は気を取り直して次なる目的地、大阪を目指す。

 

 




 白鳥さんも芽吹も満身創痍だよ。これは早急に優秀な治療員が欲しい。

 そして見せ付けられる。これが……ウエストジャパンの洗礼。
 誰がやったかは……すぐにわかるさ……。


次回 地下の楽園、梅田地下街
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