白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。……京都? そんな地名、元々ないではないか……。


前回のあらすじ
 ウエストジャパンへ踏み出した歌野たち。先の戦闘の負傷を癒すべく京都支部に向かったが、そこは焼き払われ荒野と化していた。
 歌野たちは避難したと思われる大阪府の梅田地下街を目指すが……⁉︎



第四十一話 地下の楽園、梅田地下街

 

 京都の惨劇を目の当たりにした歌野たちは、気持ちを切り替えて大阪府へ向かった。

 またその途中で一度、星屑と遭遇したが雪花と芽吹で難なく対処する事ができた。

 

「……見えたっ。あれが大阪駅ね」

「見た目はズタボロだねー。まー、京都(あれ)を見た後じゃかわいいもんか……」

 

 四人は大阪駅の前に立ち止まり、あたりを見渡す。しかし、人の気配は無い。

 

「全員、地下へ避難しているみたいね」

「よしっ。じゃあ早いとこ地下へ行こうかっ」

 

 そう意気込んだ歌野だったが、しばらく周りを見渡す。

 

「……」

「どうしたの? うたのん」

「……入口ってどこ?」

 

「「「…………」」」

 

 歌野の問いに三人は沈黙する。

 

「え? ……まさか、入口わからない……の?」

「わ、私は……来たことないから。……あっ、楠さんは?」

「私も来た事無いわよ。……雪花は?」

「生粋の道産子である雪花さんがぁ……分かるわけないじゃん」

「…………」

 

 四人は大阪駅から一歩も動けずにいた……。

 

「ーーはっ! 私、聞いたことあるよ」

「みーちゃん⁉︎ 分かったの?」

「うたのん。梅田地下街はね……通称『リアル不思議のダンジョン』って呼ばれているの!」

「…………つまり?」

「迷わない人がいないって言われる程の迷宮なんだよ……」

「その迷宮の入口の時点で迷ってたら意味ないじゃなぁぁぁい‼︎」

 

 珍しく水都がボケて歌野がツッコんだ。

 歌野は両手を地面につけて土下座に近いポーズで下に向かって叫ぶ。

 

「大阪の人ぉぉぉ‼︎ 聞こえますかぁぁぁ!!!」

「やかましいわいっ」

「ーーあだっ!」

 

 雪花のツッコミチョップが脳天に炸裂する。力はまったく込めていない。

 

「……とにかく、この真下でしょ? 穴開ける?」

「いや楠ちゃん過激〜! 避難している人いるかも知れないのに、バーテックス側の考え方だよ」

「冗談よ」

「と……とにかく探そう」

 

 それから数分、地下へ通じる手段を捜索し続けた。

 

「……あったわ。ここから入れると思う」

「わーお! さっすが芽吹!」

「なんだー、普通にあるじゃんっ。迷宮感ゼロだし」

「うう……」

「いや責めてるわけじゃないからね」

「早速入ろうっ」

 

 四人は階段を降り、地下へ潜る。

 

「あっ。バリケード……」

「バーテックスから守るためだろうねー。まー、意味あるか分かんないけど」

「通らせて貰いましょう」

 

 瓦礫や壊れたドアなどで構成されたバリケードを抜けていく。

 その過程で動かしたものは元に戻しておく。

 

「……ここが梅田地下街⁉︎ 広ーい。っていうか明るい⁉︎」

 

 地下はなぜかうっすらと灯りがついていた。

 

「電気が通ってる? どういう事?」

 

 地上はバーテックスの襲撃があったのに電気系統が生きている事を四人は疑問に思う。

 

「大阪梅田駅……」

 

 芽吹は目の前にある柱を見る。そこには『阪神電車 大阪梅田駅(西口)』と表示されていた。

 

「人がいる気配は?」

「分かんない。歩いてみよう」

 

 歌野が先頭で芽吹を最後尾として、四人は固まって地下街を探索する。

 

 ……しばらく歩くと、一際明るいフロアが見えた。

 

「見てっ。あそこだけ他と比べて明るいよ」

「……! よく見ると人もいるわっ」

 

 人影が見え、歌野は走り出した。

 

「ーーあっ! ちょっとうたのん!」

 

 三人も駆け足で歌野を追いかける。

 1フロアだけ比較的明るい場所は『泉の広場』と呼ばれる場所だった。広場の中央には、半壊している噴水らしき残骸が見える。

 そこに結構な数の人たちがいた。

 

「……だれあれ?」「女の子?」「見かけない子だな」

 

 そこにいる人たちは歌野を物珍しそうに見ている。

 

「あぁ……良かったぁ。生き残っている人たちがこんなに……!」

 

 歌野は心底安心した。……と歌野の太ももをチョンチョンと小突く少女がいた。

 

「……ねぇねぇ、おねーちゃんだれ?」

「私? ……私は諏訪から来た白鳥歌野。農業王になる勇者よ」

「ゆうしゃ? それってーー」

「こらっ。こっち来なさいっ」

 

 歌野と同年代ぐらいの少女が、幼い女の子の肩を掴み、自分のところへ引き寄せた。……おそらくは姉だろうか。

 

「お姉ちゃん! あの人勇者って……」

 

「ーーうたのんっ。急ぎ過ぎだよ」

「ほー、こんなに人がいるんだー」

「……確かに、驚きね」

 

 そこへ後から水都たち三人が追い付く。

 

「あ、あなたたちは……外から来たんですよね?」

 

 姉は四人を少しだけ警戒していた。

 

「ええそうよっ。京都支部の方たちがここへ避難したって情報を得てね。……どこかにいる?」

「……っ。そ、それは……」

 

 姉は質問の答えを窮していた。

 歌野たちを警戒しているが故、話す事を躊躇っているようだ。

 

 ……すると、芽吹が周囲の人たちに呼びかけた。

 

「すみませんっ。私は防人の楠芽吹と言います。ここに京都支部から避難して来た人達がいないか教えてはくれませんか?」

 

「防人⁉︎ 今、防人って……」「確かに、彼女の服装は……」「あの人たちの仲間なのね!」

 

 途端に周囲が色めき立つ。そしてその反応からここの人たちが防人と関わりを持っている事を芽吹は察した。

 

「貴女は、何か知らない?」

「さ、防人の方なら……」

 

 姉は芽吹たちに説明する。

 

「二日前です。防人三名と神官の方々十三名がここへやって来ました。京都支部を進化体バーテックスに壊されたので、避難しに来た……と」

「そう……」

「京都支部の方たちは、以前から物資や娯楽を提供してくれる良い人たちでしたので、私たちは歓迎しました」

 

 芽吹は周りを見るが、神官らしい人も防人らしい人も見当たらない。

 

「歓迎した……にしてはそれらしい人は見かけないわね」

「あっ、それは……」

「ーーもうすぐしたら分かるぜ?」

 

 二人の話に男が加わる。

 

 ……とその時、地下街が真っ暗になった。

 

「……⁉︎ 停電⁉︎」

「まさか、襲撃⁉︎」

 

 四人は暗闇の中、あたりを警戒する。しかし、周りの人たちは特に騒ぎ立てる訳でもなく、何かを待っているようだった。

 

「お! 始まるぞ」

「……始まる?」

 

 すると真っ暗闇の中、スポットライトがひとつの場所を照らし始めた。

 

「え⁉︎ なに、どういう事⁉︎」

「……⁉︎」

「わーい! 始まったよ、お姉ちゃん!」

 

 照らされた場所はこじんまりとしたステージだった。

 そこへひとりの少女が姿を現す。

 

「ンフフ〜♪ ズンッチャ♪ ズンッチャ♪ クルクルクルクル〜♪」

 

 口で何かの効果音を出しながら少女は回る。

 その少女に、芽吹は見覚えがあった。

 

(もしかして……)

 

 ステージ上の少女は満面の笑みでマイクを手に取り声をあげた。

 

「みんなああ〜〜! こんにちわあ〜〜!」

 

こんにちわー!!!

 

 ……マイクを持ってはいるが、スピーカーがないのか、電池がないのか、結局地声で話している。

 

「今日も来てくれて、ありがとう〜〜‼︎ 梅田地下街の"地下アイドル"『ウメコちゃん』のライブ! 楽しんでねぇ〜〜!」

 

イエーイ!!!

 

 周りの男性や女性たちは元気よく彼女へレスポンスする。

 

「それじゃあ早速! 一曲目! タイトルは『Star and Flower』! 〜〜〜♪』

 

 歌野たち四人は口を半開きにして固まっていた。

 

「……ナニコレ?」

「ライブ?」

「地下アイドル……?」

「…………」

 

 小刻みに踊りだす自称"梅田地下街の地下アイドル"の姿は、困惑と動揺を与えてくる。

 

「サラ〜ダバ〜♪ ア〜〜♪ ……静ケキ………………あれ?」

 

 と、そこで歌が止まる。

 

「……ゴメン! 歌詞忘れちゃったっ。テヘッ!」

 

「ーー忘れたのかよ! 1本取られたよ!

 

 ワハハハハハハ とみんなは盛り上がる。

 

「な、なんか楽しそう」

「あれ……No.7ね」

「「「ええ⁉︎」」」

 

 芽吹が彼女を見て呟く。

 

「ウメコちゃ〜ん。次の曲、次の曲〜!」

 

 周りにいた男のひとりがNo.7(?)へ呼びかける。

 

「了解おまかせ♪ ……ではご希望に答えまして、次の曲を歌い……歌いま……」

「……?」

「ーー歌いませえーーん! テヘッ☆」

 

「ーー歌わねえのかよ! 2本目取られたよ!

 

 どわっ とまた周囲の人たちが笑い合う。

 

「……これライブっていうか漫才みたくなってるわね」

「ふっ、ふふふふっ♪ 面白いわっ」

「……おもしろい、かな?」

 

 すると、No.7(?)は広場に立っている芽吹と目があった。

 

「あっ! もしやもしやの〜」

「……?」

 

 彼女はみんなに大きく手を振る。

 

「みんなあ、名残惜しいけど、今日はこれまで! またねえ〜!」

 

バイバ〜イ!!!

 

 そして彼女はステージの裏手へまわり、暗くなっていた照明が復帰する。

 

「……彼女、結局一曲も歌わなかったね」

「……何この茶番」

「にゃはは……」

「エクセレントなライブだったわっ!」

 

 冷めた三人に対して、歌野はなぜか盛り上がっていた……。

 

 

 

 

 

 ーー少しした後、先程までオンステージだった彼女が芽吹たちの前に現れた。

 

「やっぱりやっぱりぃ! 楠隊長! ……いや、"元"隊長か。お久だねぇ〜」

「No.7……」

「ちっちっ。今は地下アイドルの『ウメコちゃん』って呼んでぇ」

「……」

 

 No.7はウィンクしながら人差し指を左右に振る。

 

「いやー、でも超久しぶりだよねぇ〜! てっきり死んじゃってたと思ってた」

「まぁ、ね……」

 

 彼女のハイテンションぶりに芽吹は困惑した表情で返す。

 

「ーーウメコちゃん! 今日もステージありがとう!」

 

 先程の幼い少女がお礼を言う。その後ろにいた姉も頭を下げた。

 

「どういたしまして。次も見に来てねっ」

「うん! ……? そっちのおねーちゃんたちは、知り合いなの?」

「そう! 元同僚の、楠……えーっと……。忌引?」

「芽吹よ」

「そうそうそんな名前だった! ……テヘッ。ずっと居なかったからさぁ、忘れてたよ、下の名前」

「貴女も元気そうね。……その嫌味も」

「テヘッ。イヤミや皮肉……それと()()が私の趣味だからねぇ」

 

 No.7は頭を軽く小突いてウィンクしながら舌を出す。

 

「アイドルとしてアウトじゃない? それ……」

「気にしなぁい、気にしなぁい」

「……」

 

 雪花も水都もこの状況に置いていかれていた。警戒すべき防人の指揮官クラスが、あろうことか地下アイドル(?)と化していたからだ。

 

「ていうか、楠隊長……じゃない、元隊長。彼女たちは?」

「え、ああ……。今、私と行動を共にしている勇者たちよ」

「ふぅん。なんかワケアリ?」

「まぁ……訳ありね」

「まあいっか。新しいお友達と仲良く楽しんでね」

「え?」

「……ここはバーテックスが闊歩する地上から逸脱した世界、地下の楽園。不安や恐れなど感じさせない桃源郷。……現代に蘇った楽園(エデン)! 梅田地下街へようこそ!」

 

 芽吹は疑問を抱いた。梅田地下街がこれほどまでに賑やかな事に。そしてNo.7の歌野たちへの対応に……。

 彼女は、歌野や雪花、水都を見ても何の反応も無いのだ。

 

(彼女たちが指名手配だって事、知らないの……?)

 

 No.7は三人そっちのけで、幼い少女とその姉と仲良く話している。

 

 ……と、そこへ。

 

「No.7! ここに居ましたか!」

「……! 防人だ。それに後ろは……大社の神官だよね」

 

 十三人の神官と二人の防人がぞろぞろとやって来た。

 

「ちょっと待って! No.7って呼ばないでっ。今私は梅田地下街に生きる地下アイドル『ウメコちゃん』よ」

「は、はぁ……。ではウメコちゃん」

「呼ぶんだ……」

「実はバーテックスがまた大阪駅にやって来ました! 数は十体です」

 

 その名前に、当然周囲はざわめく。

 

「……! バーテックス⁉︎」

「地上に現れたみたいね」

 

 それを聞いたNo.7はキリッと表情を変える。

 

御役目(そっち系)の話ならNo.7って呼んでよ。『ウメコちゃん』はアイドル活動時限定なんだから」

「は、はい……」

 

((無茶苦茶だなぁ。この人))

 

 水都も雪花も遠い目をして呆れていた。

 

「……でも敵なら撃退しなきゃ。いくわよっ雪花、芽吹!」

「……おっとぉ、ボーッとしてる場合じゃないや」

「ええ……って歌野は戦闘への参加は駄目よ」

「あっ、そうだよ。思わず流しそうになったけどそうじゃん」

「大丈夫っ。もう治ったから」

 

 歌野は親指を立ててウィンクする。

 

「ダメだようたのん。二人に任せよう」

「見るだけ見るだけっ」

「待ってうたのん!」

 

 そうしている間に、No.7は防人装束に身を包んでいた。

 その首元のプレートにはしっかりと『07』と描かれてある。

 何かの間違いではなく、芽吹がNo.7と呼んだ少女は正真正銘、防人の指揮官クラスのひとりだったのだ。

 

(さてさて……何の能力なのか、油断しないようにしないと……)

 

 雪花は槍を握りしめ、シャッターをくぐり、バリケードを退けながら階段を上る。

 そして()()()に備えて、いつでもNo.7たちへ攻撃できるように集中する。

 

 ……そして階段を上り切ると、地上の光に包まれた。

 

「ーーえっ?」

「? どうしたの……よ」

 

 先に地上に辿り着いた雪花は呆然と立ち尽くしていた。

 次に来た芽吹やNo.7、連れの防人たちもあたりに転がっている()()をただ見下ろしていた。

 

「星屑が……。全滅してる」

「私たち以外にも、誰かがいるの⁉︎」

 

 しかし、雪花と芽吹と違いNo.7たちはその理由に心当たりがあった。

 

「あーあ。仕事が早いなぁ。……さすが"蓮華さん"」

「……え?」

 

「ーーはぁっ、はぁっ……。アレ? 片付いてるわ⁉︎」

「こらうたのん! 行っちゃダメだって……」

 

 水都に追いかけられながらも地上に出た歌野も両断された星屑を見る。

 

「これ……剣状のものね。一刀両断にされてる」

「楠ちゃん並みの剣技かにゃぁ?」

「いえ少し違う。三好さんのものでもーー」

 

 ……とその時、生き残っていた星屑が大口を開けて芽吹に向かって突進して来た。

 

「ーーッ⁉︎ 楠ちゃん!」「芽吹ッ‼︎」「楠さん!」

 

 三人が同時に名前を呼ぶ。

 芽吹は斬られていた星屑の死骸を見ていたが、即座に刀の柄に手をかける……。

 

 しかしその瞬間、星屑はすでに()()()()()()

 

「……"(かぶら)矢筈(やはず)()り"!」

 

 芽吹の両脇を、真っ二つにされた星屑が転がっていく。

 

「…………」

 

 見れば黒く綺麗な長髪をした少女が剣を鞘に収め、優雅に歩いて来た。

 

「フッ……斬り甲斐がないわね」

 

 No.7たちは拍手で少女を迎えた。

 

「お見事ですっ。蓮華さん」

「この蓮華の手に掛かれば朝餉前よ」

 

 バサっと長い黒髪を右手で払い上げる。その顔立ちは自信に溢れ、多くを語らずともエリートの風格を感じさせた。

 

「あら? この方は誰?」

 

 彼女は芽吹の目をじっと見つめる。No.7とは知り合いのようだ。そして、No.7と同じ防人装束を着ている芽吹の事が気になっていた。

 

「私たちの元隊長のー、楠…………吹雪?」

「芽吹よ。楠芽吹」

「そう……。ミス・クスノキね」

「……?」

「名乗るのが遅れたわね……。名前は蓮華。故あってこの梅田地下街……ひいては大阪府全域を守る気高くも美しい女傑よ」

「は、はぁ……」

 

 先のNo.7のライブ擬きといい、この蓮華と名乗る少女といい……京都の惨事から予想外の連続を目の当たりにしている()()の頭はパンク寸前だった。

 

「……んー、あの人も面白そうだわっ」

 

 ただ、歌野だけが目を輝かせて、この出逢いを大いに喜んでいる。

 

 

 ……そして蓮華(彼女)との出逢いは、歌野たちをさらなる戦いと、新たなる出逢いとを結び付けるきっかけとなった……。

 

 




 原作とかなり違う状況の梅田地下街……。おそらく今作品中随一だと思われる。


次回 気高き乙女、その名は蓮華
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