白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

47 / 112
 拙稿ですがよろしくお願いします。七武勇(勇者部)の中で樹の能力がすぐに思いついた。早く登場させたかった。


前回のあらすじ
 京都支部へ到着し勇者御記が保管されていると言われる地下施設へ行こうとする歌野たちだが、そこへ七武勇の風と樹が現れた。彼女たちの目的も同じだと言うが、どんな内容が書かれているのか。


第四十六話 鳥カゴ

 肩を負傷した犬吠埼姉妹は一旦、蓮華と歌野たちから遠ざかる。

 

「樹、無事⁉︎」

「うん。お姉ちゃんは大丈夫?」

「大丈夫よ。でも今の攻撃……まったく見えなかった」

「足を止めてたらまた斬られるかも……。お姉ちゃん、私があの人の相手をするね」

「そうね……。悪いけどお願い」

 

 二人は蓮華から目を離さないようにして、先程の高速斬撃に備える。

 

「スピーディー過ぎて分からなかったわっ蓮華さん! 今のどうやったの⁉︎」

 

 歌野が興奮気味に蓮華へ問いかける。

 

「今のはただ、相手とすれ違う際に斬りつけただけよ」

「それだけ……って、凄くないですか⁉︎」

「この蓮華の技よ。当然じゃないっ」

 

 口角を上げて自信満々の態度を表す。

 

「もっと言うなれば……私の能力である『カネカネの野菜』は材質を変化させるけど、重量は元の素材に依存するの」

 

 そう言いながら軽々とサーベルを振り回して再度鞘に収めた。

 

「それ故に軽く、且つ確かな一撃を放つ事ができるのよ」

 

(確かに速い。私より速かった。……型は、居合?)

 

 ただひとり……芽吹だけは蓮華による攻撃の一部始終を見ていたようだ。

 

「蓮華さん……その剣技、どこで覚えたんですか?」

「企業秘密よ」

 

 蓮華は人差し指を口元に当てて芽吹に微笑む。

 

「でもあえて言うなら……()()()()()の居合を元に、この蓮華が速さ重視に改良した結果ってところね」

「そうです……か……」

 

(とある人物。三好さん……ではないわよね。彼女は二刀流だし……)

 

 初めて蓮華と会った時、星屑(バーテックス)を両断していたが、その切り口は鮮やかなものだった。芽吹の場合、こうはいかない。

 

(そう言えば一刀流の時、私の居合が乃木若葉のものに似てるって言われたわね……)

 

 以前、乃木園子に言われた事を思い出しながら刀を一瞥し、すぐに視線を風と樹に戻す。

 

「ーー時に七武勇の二人、聞きたい事があるのだけど」

「「……?」」

 

 蓮華は風と樹が勇者御記(ポーネグリフ)を欲している理由が気になっていた。

 

「あなたたち、ここの勇者御記(ポーネグリフ)を手に入れて何がしたいの? 歴史の勉強かしら?」

 

 その質問に風は大剣を構えながら答える。

 

「京都支部にあるっていう勇者御記(ポーネグリフ)の内容が……あたしたちが求めているものの可能性が高いからよ」

「内容って……あなたたちは読めるの? あれを……」

「あたしは読めないわ。樹も読めない。でもね、読めるやつが勇者部(こっち)にはいるのよ」

「読めるやつ……?」

 

 蓮華は少し考えていたが、水都にはそれが誰かすぐに分かった。

 

「そうか、"友奈"だ……」

「……‼︎」

 

 その名前に蓮華は目を見開いて水都を見る。

 

「友奈、ですって⁉︎」

「えっ、あ……はい。七武勇には結城友奈がいるんです。私の聞いた話では、"友奈の名を持つ少女たち"には勇者御記(ポーネグリフ)の内容が分かるらしくて……」

「……そう。そっちの友奈の事ね」

「……?」

 

 蓮華の表情は何故か少し沈んでいた。

 

勇者御記(ポーネグリフ)が読めるのは分かったわ……。でもそれでどうするのよ?」

 

 少し間をおいて、風は勢いよく走り出す。

 

「それはねぇ……大社に一泡吹かせるためよぉ‼︎」

 

 大剣をまた倍以上の大きさにさせて振り下ろした。

 

「モアモアッ……50倍(ごじゅうばい)‼︎」

「ーーっ! 避けてェェ‼︎」

 

 芽吹の声で歌野は水都を抱えて、全員大剣が当たらない方向へ回避する。

 

「ーーこ、のぉ!」

 

 避けた後、芽吹は銃剣と刀を使い、多角的に攻撃を仕掛ける。

 それを風は元に戻した大剣を盾がわりにして防ぎ続ける。

 

「二刀流・虎狩(トラガ)りィ‼︎」

「ぐっ……」

「弐斬り・"(ヒラメキ)"ッ」

「ウッ」

 

 踏ん張っているが芽吹の勢いに押され、両足は地面を擦りながら後ろへ下がっていく。

 

「大社防人……っ。あんたは勇者御記(ポーネグリフ)の回収を命じられてここに来た……っ。やっぱりあの話は本当のようねェ」

「……? あの話?」

「京都支部に保管されている勇者御記(ポーネグリフ)には大社が保有する"兵器"の情報が書かれているって話よッ!」

 

 実際には芽吹たちをここへ来させたのは京都支部の防人たちの意を汲んだ蓮華である。しかし風は、それほど大事なものがここにあるのだ、と解釈した。

 

「大社のウェポン⁉︎ リアリー⁉︎ 芽吹!」

 

 歌野は驚き芽吹を見た。

 芽吹本人は特に驚いた様子もなく答える。

 

「眉唾ものの噂なら……ね。でも勇者御記(ポーネグリフ)に書かれてあるなんて……」

「あるわ」

 

 それを肯定したのは蓮華だった。

 

「大社が保有している兵器の情報が、勇者御記(ポーネグリフ)として京都支部にあるのは本当よ。……まぁ、この蓮華もそれ以上の事は聞かされてないけど」

 

 それを犬吠埼姉妹は知っていた。そして彼女たちが兵器の情報を知り得た理由を、蓮華はすぐに察した。

 

「何であなたたちが知っていたかなんて聞かないわ。七武勇は"ほぼ全員"が()()()()()()()()だものね。全く……情報漏洩どころの話じゃないわ」

 

 以前、東郷が呟いていた事を歌野は思い出す。乃木園子はもちろん、三好夏凛や東郷美森は大社に所属している家の出身だ。

 

(大社関係の家……。ーーッ‼︎)

 

 芽吹はその時、風の姿にとある人物を重ねた。

 それは、夏凛が芽吹の元を去ったあの日に彼女と話していた見知らぬ女性の事である。

 

「思い出したわ……。貴女、()()()三好さんと一緒にいた女ね」

「……?」

「貴女が三好さんを誑かして四国の外へ連れて行ったのね……っ」

 

 風は眉を顰めていたが、何かを思い出したかのように話し始める。

 

「確かに夏凛を誘って四国の外へ連れ出したのはあたしよ。……でも何であんたが知ってんの?」

「かっ、関係ないでしょ。貴女には」

「じゃあ何でそんな事あんたが気にするのよ」

「……っ」

「それにあんたの……剣術? ……が、夏凛とそっくりなんだけど、何? あんた、夏凛のファンなの?」

「……は、はあ?」

 

 風からの予想だにしていない質問に芽吹は間の抜けた声が漏れた。

 

「なぜか随分と夏凛に拘ってるじゃない。……あんた、あの子の何なの?」

 

 俯き、少しだけ考えてから芽吹は答える。

 

「別に何って程じゃないわよ。……三好さんは、私にとっての目ひょ……ッじゃなくて敵よ敵っ!」

 

 何故か慌てて顔を左右に激しく振る。

 

(今、言い直したわ)

(言い直したにゃぁー)

(何で言い直したんだろう……)

 

 芽吹の頬が一瞬だけ赤みを帯びたのを歌野たち四人は見逃してはおらず、歌野と雪花は愛想笑いを浮かべ、水都は頭に疑問符が浮かぶ。

 

「……ミス・クスノキとミス・ミヨシの関係は置いておくとして」

 

 蓮華がゆっくりと歩きながら話を切り出した。

 

「……樹っ」

「うんっ」

 

 二人は蓮華の方を注目して後ずさる。

 先程と同様、自分たちが知らずのうちに斬られる事を防ぐために。

 そして樹は向かってくる蓮華に対し、右手で宙を引っ掻くように大きく振りかぶった。

 

五色糸(ゴシキート)ッ!」

「……!」

 

 蓮華は立ち止まり、後ろへ跳んで"それ"を回避した。

 

「蓮華さん⁉︎」

「なるほどね……分かったわ」

 

 蓮華は樹の攻撃から彼女の能力を推測する。

 

「彼女は手からワイヤーのようなものが伸びていた。……五色に彩られた五線譜のような線が……ね」

「ワイヤー? ……なら彼女の能力は『ワイワイの野菜』を食べたワイヤー人間?」

「もしくは『センセンの野菜』の線人間かも」

「"糸"でしょ? どう見ても」

 

 歌野と雪花の会話に芽吹から指摘が入る。

 

「どう見ても……って楠ちゃんには見えてたの?」

「今明確に、ね」

「そっか。なら彼女は糸を操るスパイダー人間って事だわっ」

「何で糸人間って発想が出てこないの?」

 

 三人で半ば漫才が繰り広げられていた。

 

「次に姉の能力だけど……」

 

 蓮華が話を元に戻す。

 

「確かさっき、()()()()……とかなんとか言ってたような」

「なら、モアモアの野菜をイートした『モアイヒューマン』って事? 確かに巨大にもなるわっ」

 

 歌野の口調に半ば呆れつつ、蓮華は指摘する。

 

「面白そうな能力だけど。恐らくは"それ以上"、って意味のmore(モア)だと思うわ」

「んー、アイガレット♪ そういうことねっ」

 

 ポンッと歌野は右手を拳にして左手を叩き相槌を打った。

 

 ーーそんな歌野と蓮華のやりとりを耳に入れつつ、雪花は風へ。芽吹は樹へ武器を振るう。

 

「ーーやあ‼︎ ーーッせい!」

「ーーふっ、はぁあ!」

 

 二人が繰り出す槍と刀の連撃を風と樹はそれぞれ防ぐ。

 

「お、お姉ちゃん、このままじゃ……」

「……っ。埒があかないわね」

 

 大剣の刀身でガードし続ける風は口元を悔しく歪ませる。彼女の性格的には防御に専念するスタイルは望むところではないのだが、雪花と芽吹の攻撃と、後ろに控えている歌野。そしていつ斬り掛かってくるか分からない蓮華。この二人への意識が風をより一層後手に回させる。

 

(ただの四人なら対処も出来た。でもこの四人……相当な練度ッ。……見誤ってたわねッ)

 

 樹も風をサポートしようと近付く……が、そこを狙って雪花は片手で槍を90度回転させ、風から樹へと標的を変え刺突する。

 

「樹ッ!」

「……っ。五色糸(ゴシキート)!」

 

 樹から五色に彩られた糸が現れ、雪花の槍と衝突。穂先の方向を変えられ回避した。

 

 ーーそしてその瞬間、間に割って入った蓮華が回転しながら風と樹を斬っていった。

 

「あがッ!」

「うっ……」

「……その隙を、この蓮華は見逃さないわ」

 

 さらに、歌野もベルトを横薙ぎに払って二人を狙う。

 

「ムチムチの(サイズ)ッ」

 

 風は樹の前に立ち、また大剣でガードする。

 しかし、大剣とベルトのほぼ中間部分とがかち合った際、先端が進行方向を変えて風の顔に直撃した。

 

 歌野はまた水都の隣の位置まで戻る。

 

「お姉ちゃん‼︎」

「だ……いじょうぶ、だから」

 

 唇を切ったのか血が滲み出す。それを見た樹は意を決して提案を持ちかけた。

 

「ねぇ……お姉ちゃん……」

「どうしたの?」

「私、"鳥カゴ"を使うよ。……それで彼女たちを足止めできる。その間にお姉ちゃんは地下に行って……」

「いいの樹? 孤立しちゃうことになるけど」

 

 樹は朗らかな笑顔を風に向ける。その笑顔を見て風は真顔で頷いた。

 

「オッケー、それじゃあなるべく早く帰ってくるから。……頼んだわよ」

「うん!」

 

 すると風は芽吹と蓮華が樹に接近した瞬間を狙って自身の武器に力を込める。

 

「モアモアッ! 70倍(ななじゅうばい)()りッッ‼︎」

 

 今まで以上に巨大化させた大剣を一気に振り下ろした事で、地面から土煙が舞った。

 

「うわっ。前がぁ……」

「けほッけほ……」

「目眩し……⁉︎ 皆、警戒して!」

 

 ーーとその時、樹が空を仰ぎ見て両手を広げた。

 

「「ーーッ‼︎」」

 

 樹の近くにいた芽吹と蓮華はすぐに"それ"に気付いた。

 

「不味い! 歌野! 雪花! 逃げなさい‼︎」

「「ーーッ⁉︎」」

 

 雪花もすぐその意図に気付き走り出す。歌野は水都の手を引いてより遠く、距離を取った。

 

「うわっ。何これ⁉︎」

「……っ」

 

 芽吹と蓮華は()()()()()()と感じ、"それ"の完成を見る事しか出来なかった。

 

「こ……これは⁉︎」

「二人が……閉じ込められた……?」

 

 水都たち三人の眼前には、幾つものワイヤーが天から地面に突き刺さっていく光景が映る。

 

「これは『イトイトの野菜』の能力で作り出した鳥カゴ。……鉄よりも硬い糸の監獄。これであなたたちはもう逃げられません!」

 

 樹の言うとおり、さながら檻のように芽吹と蓮華を囲っている。

 

「二人共! 大丈ーー痛ッ!」

「歌野! 触らない方がいいわ!」

 

 天から降り注ぐ糸に触れると、手のひらを切ってしまい血が垂れた。

 

「私と蓮華さんは完全に閉じ込められた」

「ーーみんなッ! もう一人がいない‼︎」

 

 鳥カゴの中には芽吹と蓮華、そして発動した本人である樹の三人しか見当たらない。

 

「あっ! 地下に!」

「先に勇者御記(ポーネグリフ)を盗りに行ったのか!」

 

 雪花と歌野は地下へ行こうとするが、その前に鳥カゴの中の二人を見やる。

 

「芽吹! 蓮華さん!」

 

 二人は歌野を見て、頷いた。

 

「心配要らないわよ。だから早く追いなさい」

「この蓮華に任せておけば問題ないわ」

「心強いわっ」

 

 それだけ言うと歌野は雪花と水都を連れて地下に降り、風を追いかけた。

 

「早めに倒して歌野達に追い付きましょう」

「当然ね。この蓮華がいるんだもの」

 

 二人は武器を構えて樹と相対する。

 樹はポケットの中にあるタロットカードの束から無作為に一枚取り出しそれを見つめていた。

 

「…………」

 

 そのカードの意味を理解し、チラッと二人を見る。

 

「逆位置の愚者のカード。意味は……"仲間割れ"……」

 

 『THE FOOL』と描かれた文字と絵を見ながら、彼女は静かに呟いた……。

 




・犬吠埼樹:『イトイトの野菜』を食べた糸人間。体から糸を出して操り戦う。通常のワイヤーより頑丈。犬吠埼風は実の姉。両親は大社で働いているがとある理由で姉と共に四国の外へ旅立った。懸賞金額は312万ぶっタマげ。


 余談
・今回の話で、芽吹の二刀流が夏凛に似ている。一刀流の居合は若葉に似ている事が再度話題にあがった。
 夏凛に似ているのは本作品の通り、夏凛直々に教えてもらったから。そして、その夏凛はお兄ちゃんの技を目で見て真似て、二刀流版に昇華させた。
 一方、夏凛お兄ちゃんはというと、若葉の剣術とひなたの"剃"から編み出した。
 つまり『若葉+ひなた→夏凛お兄ちゃん→夏凛=芽吹』の構図になるのだが、芽吹が一刀流で居合を繰り出す事により一種の先祖返りが起きてしまった。
(一刀流・居合の芽吹=若葉の居合)
 これにより園子が芽吹の居合に若葉を垣間見た訳である。(ややこしい!)

 そしてまた、とある人物から剣を教わった蓮華が現れた事でさらにややこしくなってしまう……。


 次回 仲間割れ!? 芽吹VS蓮華
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。