白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。奴は……能力はドフラミンゴで、趣味がホーキンスで、将来の夢はウタで、中の人はうるティで…………混ざりすぎだろ!


前回のあらすじ……ではない

樹「お前よォ! ウチのフーたんナメたらシバキ倒すぞ、ああん⁉︎」
風「樹……?」
樹「あちき達の邪魔する奴は全員、シバくでありんす‼︎」
芽吹「……キャラ崩壊も甚だしいわね」
樹「農業王になるのはカイドウ様に決まってんだろ! ウルトラ馬鹿野郎‼︎」
蓮華「中の人繋がりってやつだわ……」



第四十八話 邪魔をするな!

 芽吹は銃剣と刀をそれぞれ手に持ち、蓮華と対峙する。

 樹に操られている蓮華もまた、サーベルを片手に芽吹に向き合っている。

 

「「………」」

 

 芽吹は真剣な表情で"相手"が動く瞬間を見極める。

 蓮華もまた、芽吹に自分の行く末を託す。体が言うことを聞かない今、芽吹を信頼するしか手は無い。

 

 二人共、武器を構えたまま時間だけが過ぎていく……。

 

 ーーしかし次の瞬間。

 

「「ーーッ‼︎」」

 

 樹が指を不規則に動かし、それにより蓮華の体が連動して芽吹に突撃した。

 芽吹も"樹"の動きに瞬時に反応して蓮華へ突っ込んだ。それ故、蓮華と芽吹は同じタイミングで走り出した事になる。

 

「ハアアア!」

 

(ミス・クスノキ。あなたのお陰で、生きる事を諦められずに済んだ。生きて、"皆"との再会を果たさねばならないのに…………私はっ)

 

 弱気になっていた自分の心を無理矢理奮い立たせる。

 

(頼んだわよ! "楠芽吹"!!)

 

 サーベルが銃剣と刀に衝突して甲高い金属音を鳴らし火花を散らす。

 蓮華の持っているサーベルは超軽量のプラスチック製で出来ているのだが、『カネカネの野菜』の能力により材質を"鉄"に変化させている。

 よって、プラスチックから金属音が響くという不可思議が現象が起こっている。

 

「ーーハア‼︎ ーーセイッ‼︎ ーーフゥッ‼︎」

 

 縦、横、斜め……と激しく両者の武器が触れては離れ、当たっては弾かれを繰り返す。

 

「ミス・クスノキ。私が能力を解除すればサーベルはただの棒に戻る。そうすれば私を無力化できるからーー」

「その必要はありません。解除しなくて結構です。……武器が無くなったら"彼女"を斬る事が出来なくなるでしょッ」

 

 蓮華は後ろに迫る気配を感じた。そして、振り返る必要もなくその気配の対象が視界に入る。

 

五色糸(ゴシキート)!」

 

 繰り出される五色の糸を芽吹は膝を折り曲げて回避する。さらにその状態から樹目掛けて平行に持った武器で横斬りを繰り出す。

 

「弍斬り・"(ヒラメキ)"ッ」

 

 ーーしかしその刹那、樹が蓮華の体を引き寄せて、芽吹と自分の間に割り込ませた。

 

「ーー⁉︎」

 

 芽吹は咄嗟に刀の刃先を反転させて、蓮華の体に棟の部分を当てた。

 

「ーーウッ!」

 

「今……咄嗟に刃で斬る事を躊躇いましたね」

 

 樹はそう呟くと背中から太い糸を出現させ、あの時と同じように頭上から芽吹を狙う。

 

降無頼糸(フルブライト)‼︎」

 

 芽吹は自分に降り注ぐ糸を視認してすぐ、横に飛んで回避した。

 

「……ハッ、ハァ……ハァ……」

 

 四つん這いの状態で息を整えるーー事も出来ず、飛んできた樹の蹴りを両手の武器でガードし、反動で吹き飛ぶ。

 

「ぐっ……カッ……フッ」

 

 転がりながらも、その勢いを逆に利用して無理矢理起き上がった。

 

「ーークスノキッ‼︎」

 

 起き上がってすぐに蓮華の刺突が目の前に迫る。それを上半身を仰け反らせる事で頭部への命中を回避する。

 

(駄目ッ。後手後手に回ってはーーッ)

 

 反り返っている上半身を起こす際、大きく勢いをつけて刀と銃剣を逆手に持ち替えて振り下ろす。

 

「ーー"魔熊(マグマ)ッッ‼︎」

「ぐぅあッ‼︎」

 

 その攻撃を受けて蓮華が怯む。

 

 そして芽吹は蓮華と距離を取って息を整える。

 

(よ……ようやく……ひと息、つけられる……わね……)

 

 呼吸を整える最中、蓮華の後方にいる樹が遠ざかっていくのが見えた。

 

「休むのは構いませんけど、切り刻まれないように注意してください」

「……っ!」

 

 忠告と同じタイミングで後ろを見ると、鳥カゴがすぐ後ろまで接近していた。

 樹が芽吹から遠ざかる事で、鳥カゴの端が近付いてきているのだ。

 

「地味な嫌がらせを……」

「これで終わりにします」

 

 そう樹が口にした途端、蓮華はサーベルを鞘に仕舞い、少し体勢を低くした。

 

「……! これは‼︎」

 

 芽吹と蓮華はすぐさま、居合の構えをとっている事に気付いた。

 

「これで決着とします。あなたの自慢の技……でしたね? 確か名前は……『(かぶら)矢筈斬(やはずぎ)り』」

「ーーッ!!!」

 

 蓮華の居合による高速斬撃を樹は再現させ、芽吹を倒すと宣言する。

 

「……その名を……」

「……?」

「その名をお前が口にするなッッ‼︎」

「……蓮華さん」

 

 蓮華が声を荒げて明確に怒りを露わにさせる。

 

「鏑矢に所属していた頃……『カネカネの野菜』の能力を応用して作り上げた速斬り。この技の()()()()は『鎮魂歌(レクイエム)・ラバンドゥロル』! "あの人"の居合を真似て、なおかつそれよりも速さに特化させた"この蓮華"の得意技!」

 

 動かない体に力を込める。通常の糸なら簡単に引き千切れてしまう程の力を……。

 

「その剣技を賞賛して鏑矢の仲間が付けてくれた通称は『鼻唄三丁(はなうたさんちょう)矢筈斬(やはずぎ)り』! ……当時、お笑いの勉強の一環で落語を嗜んでいた()()()()()()()()()()()()のよ!」

 

 

『ーーロックの速斬りはアレやなぁ。まるで『鼻唄三丁矢筈斬り』みたいやな』

『何ですかそれ?』

『知らへん? あんな、酔っ払いが侍に斬られるんやけど、あまりにも速いいうて見事な太刀筋でな。斬られた側は全然気付かへんねん』

 

 蓮華の速斬りを見た桐生静は、当時の自分の趣味だった落語の演目と蓮華の技とを重ね合わせていた。

 

『へええ‼︎ 確かにレンちの技も速過ぎて気付かない事ありますよね!』

『せやロック、名前変えへん? レク……なんとかよりこっちの方がカッコええ名前やわ』

『うんうんっ。シズ先輩の言う通りだよ!』

『……二人がそう言うなら』

『あーでも、名前長過ぎひん? もっと短い方がええなっ』

『確かに! 折角速いんだから、こう……ズバッと短く言い切りたいよね!』

 

 そこで、静は蓮華の技に新たな名前を付けた。

 

『ひらめいた! "(かぶら)矢筈斬(やはずぎ)り"ってのはどうや?』

『"(かぶら)矢筈斬(やはずぎ)り"?』

『ウチらの組織の名前、鏑矢に因んだものやで』

 

 『鏑矢』とは、昔の戦の際に合図として用いられた音の鳴る矢の事である。

 この矢を放つ事で、味方への作戦の合図や、戦いの始まりの合図を知らせる事が出来る。つまり、()()()()()()()()の合図として用いられていたのだ。

 

『戦闘開始の合図があった……と思ったらもう斬られてた! そんな意味が込められているんですね! シズ先輩!』

『せやで。……ええ名前やろ?』

『確かに……良い名前ですね』

 

 

 ーーこうして蓮華はこの高速斬撃を『(かぶら)矢筈斬(やはずぎ)り』と呼ぶようになった。

 

「ーー何も知らないお前なんかにその名を使われたくはないわッ!!!」

 

 しかし樹は、蓮華の言葉を無視するように居合の構えを継続させる。

 

「ミス・クスノキ! この蓮華がどうなっても構わない! ……この偽物の技を、叩き斬ってしまいなさい‼︎」

「勿論です。他人に操られて繰り出す技が……至高である筈が無いッ。本人の意思で、本人の体で放ってこそ、その技は極限まで研ぎ澄まされる!」

 

 芽吹は銃剣を地面に置き、刀を両手で握る。

 

「"自由"を奪われたその状態でッ、その剣でッ、本当の強さを引き出せる筈が無いッ‼︎」

 

 ーーその瞬間、二人は猛スピードで走り出し、交錯する。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

 芽吹は走りながら、地面に散らばる焼け焦げた木材や瓦礫に刀の刃を這わせる。

 すると、煤を纏った芽吹の刀からボッと火が上がった。焼け焦げた木材や瓦礫が、刃と接した摩擦により火が点いたのだ。

 

「一刀流ッ!」

 

 芽吹は摩擦により発火した火を刀に纏い、上段の構えから一気に振り下ろした。

 

「"飛龍(ヒリュウ)火焔(カエン)"!!!」

 

 火を纏った刀は蓮華を焼き尽くすーーそう樹には見えた。

 

「そんなっ⁉︎ これじゃあ彼女の命は……ッ」

 

 しかし、実際に斬られた(焼かれた)のは蓮華ではなかった。

 蓮華はその場に力無く倒れ込む。

 

「私が斬ったのは貴女が作った"糸"よ‼︎」

「……!」

 

 地面に転がった銃剣をまた拾い上げる。

 

「糸を焼き斬るなんて……そんな事ありえません! ましてや……」

「"勇者でも無いのに"って言いたいのかしら?」

 

 走り、樹との距離を一気に詰める。

 

「とんだ妄想癖ね。……()()()勇者ひとりの能力、どうにも出来ない方が、私には不条理なのよ‼︎」

「……ま、まだ2体1の状況が終わったわけではありませんっ。ーー影騎糸(ブラックナイト)‼︎」

 

 体から出した無数の糸を束ねて、人型を構築させる。そしてそれは、樹そっくりな『糸人形』へと変化した。

 

「デュオ・五色糸(ゴシキート)ォーーッ‼︎」

 

 二人の樹が芽吹に殴りかかる。

 

「ーー荒廃の自我(エゴ)、斬り裂けり」

 

 芽吹は一瞬だけ止まると、膝を落として刀を鞘に、銃剣を腰の位置まで下げる。

 

「二刀流・居合」

 

 不思議と周囲の状況がゆっくりに見えた。相手の動き、間合い、そこから自分がどう斬るかを、頭の中で明確にイメージする。

 

「 "羅生門(ラショウモン)"!!!」

「ーーうわあぁぁあ‼︎」

 

 糸人形と本体……二人の樹を同時に斬り伏せた。

 

「…………っ」

 

 樹は地に背をつけて倒れ込み立ち上がる気配はない。

 

「……ハァ、……ハァ」

 

 緊張が途切れ、ゆらゆらと重い足取りで蓮華の元に向かう。

 

「立てますか……?」

「ええ。……けど今はもう少しだけこのままで居させて……」

 

 蓮華は横になったまま、芽吹を見上げて笑う。

 

「ミス・クスノキ。あなたにはとんだ苦労をかけたわね。……情けない姿も晒してしまった」

「別に良いですよ」

「この蓮華としては良くないわ。……貴女たちとの初陣なのに」

 

 蓮華にとっては、歌野たちと行動を共にしてからの初めての戦闘だった。

 

「屈辱だわ」

「同じですね」

「同じ?」

 

 芽吹もまた歌野たちと行動を共にした際の初戦闘で、夏凛に叩きのめされた事を思い出した。

 

「私もみっともない初陣でしたよ。情けない醜態を歌野達に晒してしまいました」

「フッ。お互いに、初陣というものは中々上手くはいかないようね」

「ええ。相手が相手……でしたからね」

 

 二人はお互いに小さく笑う。芽吹にとってはあの戦いも今や必要な経験値である。

 ……己を見つめ直すために必要な。

 

「でもだからこそ、その屈辱を糧に、私は強くなれたんです。……そしてこれからも強くなれるんです」

 

 そう言った芽吹の眼は力強く、これからの更なる成長を予感させるものだった。

 

「フッ。そうね……転べばまた立ち上がればいい。これも、この蓮華にとっては必要な経験値、かしらね」

「はいっ」

 

 蓮華は上半身を起こして、ゆっくりと立ち上がる。

 

「ーー‼︎」

 

 しかし、蓮華は立ち上がったまま静止した。

 

「……? どうしたんですか?」

「……っなんで」

 

 ()()()()()()()()、蓮華は驚き微動だにしない。

 つられて芽吹も空を見上げる。

 

 ーーそこには、彼女たちを閉じ込め続けている糸の檻があった。

 

「……嘘……」

「どういうこと、なの……」

 

 二人同時に、この事態に驚愕した。

 

「「鳥カゴが、消えてない……⁉︎」」

 

 その時、無数の糸が芽吹に襲いかかり、体を絡めとる。

 

「うあッ‼︎」

「ミス・クスノキ⁉︎」

 

 そして、糸が出ている方向を見ると、樹がむくっ と起き上がっていた。

 

「……⁉︎ 彼女、まだ……⁉︎」

「ハァハァ……時間さえあれば……、私は自分で応急処置、できます」

「なっ……⁉︎」

「ハァ……ハァ……。い、今……私の体は糸による"修復作業"が行われ、今の戦闘で負った傷を治しているんです」

 

 呼吸を荒げながらも、樹は体に付けられた傷を糸で縫い合わせていく。

 よく見ると、今まで付けた刀傷も塞がり、出血も止まっている。

 

「……回復とは違いますが……能力は、使いようです……」

 

 体の自由が利かない芽吹は歯軋りする。

 

「くッ……。これだから勇者は……タフ過ぎるのよッ」

「それはあなたも大概ですよ……。ーーうッ!」

 

 途端、樹が口元を押さえてふらついた。

 

(言って彼女も、もう限界。……あと一撃あれば)

 

「あなたたちは強いです……が、このまま私も終われません」

「ーーぐがっ!」

 

 糸が徐々に締め付けてくる。とうに限界を迎えている芽吹の体は、ミシミシと悲鳴を上げ始める。

 

「勇者として、あなたたちをここに留め続けます! もうこれ以上、お姉ちゃんの邪魔はさせません!」

「ーーッ!」

 

 その言葉に反応して芽吹は声を荒げた。

 

「違うッ! 貴女達が、私達の邪魔をしてるのよッ‼︎」

 

 糸が体に食い込み、そこから血が滲み出すのが見えた。

 

「あまり力を入れ過ぎると、手足がちょん切れます」

「別に良い……わ。貴女を倒せるのなら、手足の一本や二本、あげるわよ……。でもね、絶対にあげられないものがある……!」

 

 力を振り絞り、糸の呪縛に抗い続ける。すると芽吹の体が少しずつ自分の意思で動き始める。

 

「……⁉︎ 糸の拘束を⁉︎」

「貴女達が……私達の()()()()にいるから……立ち塞がっているのよ……!」

 

 糸が皮を破ってもなお、力を緩めない。

 

「貴女とこの"鳥カゴ"が……私には邪魔だッ!」

 

 糸が肉に刻み込まれる鈍い感覚を、歯を食いしばりながら耐えーー

 

「私達のォォ邪魔をするな!」

 

 体に巻き付いた糸を力一杯引っ張り込む。

 

「ーーうわぁっ」

 

 引き寄せた樹に肘打ちを食らわせた。

 

「ーーかッ!」

 

 樹は腹部を押さえ膝をつく。

 

「……っ……ぅ」

 

 芽吹は最後の力を出し切り、地面に前のめりで倒れた。

 

「まだ……こんな力が……、あなたの方がよっぽど危険でした……」

 

 樹ももう立ち上がるだけの余力はない。いくら糸で体に付いた傷を治しても、体力は回復しない。

 

「……それはどうかしら?」

 

 倒れながら芽吹は笑みを浮かべた。……勝利の笑みを。

 

「…………あ、ああ……」

 

 視線の先には、サーベルと鞘を手に持った蓮華の姿があった。

 

「い、一体……"いつ"……?」

「"いつ"、ですって? ……それを教える義理があるのかしら?」

 

 蓮華は一歩ずつ、芽吹の元へ歩み寄る。

 

「……でもそうね。あえて言うなら……()()()()()()()()、かしらね」

「そ、そんな……」

 

 

「ーーさよなら。(かぶら)矢筈斬(やはずぎ)り!」

 

 カチンッ とサーベルを鞘に完全に収めたその時、樹は斬られ地面に倒れる。

 意識が途切れる間際に見えたのは、自分を見下ろす蓮華の、充足感に満ちた表情だった。

 

 

 

 ……そしてようやく、彼女たちを閉じ込めていた"鳥カゴ"が、うっすらと消えていった……。

 




 『カネカネの野菜』の能力を使えば、ただの紙切れで人を撲殺できる。重量はそのままなので紙一枚で石も砕ける。不思議な感覚だ。
 イメージとしては『ヒラヒラの実』の逆バージョンかな。


次回 勇者部部長 犬吠埼風
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