ONE PIECE106巻買いました。世界の謎を知っていそうな人物と遭遇。
この作品においても真実を知っていそうな人物と奈良で出会います。もう少し待ってね。
前回のあらすじ(?)
牡牛座バーテックスVS風、樹、歌野、雪花、芽吹、蓮華。
それって、ONE PIECEのキャラで例えると
アプーVSワールド、ドフラミンゴ、ルフィ、ウソップ、ゾロ、ブルック。
…………ご愁傷様。
カーン……カーン……
牡牛座の鐘はウエストジャパン中に木霊していた。
それは梅田地下街から地上に出て京都方面を眺めていたNo.7たちの元にも届いていた。
「No.7。この音は……」
「うん、そうだね。……きっと、合図かな」
「合図?」
口では笑いつつも、No.7は心配した表情で音が聴こえる方角を見続けていた。
(無事……なんだよね。蓮華さん……。"芽吹隊長"……)
――ウエストジャパンの別の場所。奈良では、ふたりの少女が遠くを見つめていた。
「ねぇゆうちゃん……この音」
「綺麗な鐘の音ですね。……どこかのお寺からかなぁ?」
「お寺の鐘じゃないと思う……多分」
寺の鐘にしてはやけに透き通るような心地良い音色だ。
「誰かが呼んでる気がするんだぁ……『わたしたちはここにいる』って」
「……?」
「茉莉〜? 友奈〜? ついでに黒シャツ〜?」
「あっ。久美子さんが呼んでる。行きましょう茉莉さん」
「う……うん」
二人は音が聴こえていた方角から背を向けて歩き出す。
――そして鐘の音が届いていない筈の四国の香川県では。
「今日もまた、海の向こうを見ていたんですか? 若葉ちゃん」
「ああ。気付けばいつも……な」
若葉は海の向こうに見える、神樹が作り出した"世界を分かつ壁"を眺めていた。
いや、正しくは壁の向こう側である。
それ自体は日課のようなものだが、何だか今日は何かに呼ばれたような気がしていた。
(まさか、そこまできてるのか……?)
――蓮華は霧の中を歩いていた。あたりを見渡しても自分ひとりしかいない。
(どこかしら、ここ。確か……私は京都で)
すると霧の向こうに人影が見えた。
「おーい。こっちやで〜」
「え?」
手を振りながら聞き覚えのある声が近付いてきた。
「う……嘘……」
「ん? なんや、呆けた顔して」
「もう作戦始まっちゃうよ」
蓮華は口を開けたまま、この状況を飲み込めないでいた。
「シズ……さん? 友、奈……?」
「どうしたの?」
「こらこら。作戦中は、"コードネーム"で呼ばなアカンで?」
「あっははは〜ん。レンち、寝坊助さんだぁ」
「アンタもや」
「――ミス・ウイスキーに何かあったの?」
「それがなー、奴さんボーッとしてんねや」
二人に続いて、何人かが蓮華の前にやってきた。それも全員、蓮華の知っている人たちだ。
「ジョーダンじゃないわよ〜う! しっかりしなさい、あなたらしくない。寝ぼけてんの⁉︎ あちしのキックで目ェ覚まさせてあげよっか?」
「フッフッフ。酷い事するわ……」
「物騒な事言うもんじゃないよ! ……『物騒』……『ぶっ』だよ!」
彼女たちはあの日、蓮華と別れてしまった鏑矢のメンバーだった。
「ミス・ボンクレー。ミス・オールサンデー。ミス・メリークリスマス。……あなたたち……
「???」
全員は、蓮華の言葉に首を傾げた。
「これは……重症かもね」
「夜更かしでもしたの? ミス・ウイスキーピーク」
「ピークは余計だよミス・ダブルフィンガー。……いや『ミス・ウイ』で充分だね。『ウイ』」
「省略しすぎよ」
(そうか……っ。みんな無事だったのね)
蓮華はあの日、何人か鏑矢の死体を目撃した筈だった。しかし今は、みんな蓮華を見て笑っている。
――そうか。……みんなが死んだのは気のせいだったのか。
「フッ、そうよね。あなたたちが死ぬなんてありえないわよね。 今までの事は全部
(ホントに良かったわ。
――そこで蓮華は目を覚ました。
「…………」
体を起こすと、あたりは真っ暗になっており近くで歌野や雪花や水都が眠っていた。
(また……この夢……か)
夜空を呆けた顔で眺めていた。夢であって欲しい現実と、現実になる事のない夢を、もう何度も見せられている。
先程見た『鏑矢の仲間が生きている夢』の回数も、両手の指を越えたあたりで数えるのをやめた。
(そういえば……いつ眠ってしまったのかしら?)
牡牛座バーテックスを倒して、鐘の音色が山々を伝って響いていたところまでは憶えている。しかし、そこからの記憶が無い。
「犬吠埼の姉妹は……? 私は……」
「――ああ、起きたんですか?」
すると芽吹が歩いてきた。
「ミス・クスノキ。この蓮華は、いつから寝てたの?」
「……? 進化体を倒した後、鐘の音が響いてたじゃないですか。それを聴いて……」
「そう……なの?」
まるで身に覚えが無い。随分と疲れていたのだろうか。
「彼女たちは? 犬吠埼の……」
「ああ、二人ならどこかへ行きましたよ。もう戦う気は無いって」
「そう」
蓮華は芽吹からあの後の事を聞いた……。
――風は樹の糸により、左眼の怪我を縫合してもらった。
「ありがと樹」
「もう……あまり無茶しないでね」
「わかってるわよっ。樹のその言葉も聞き飽きたわね」
「『わかってる』も聞き飽きたよ。……でも無茶ばかりするもん」
「ふぅはっはっは! これ、性分なり〜」
「…………」
処置を終えた風は歌野たちと向き合う。
「……あたしたちは敗けたわ。
立ち上がり汚れていた服をパンパンと払う。
「このままあたしたちは帰るつもりだけど、あんたたちは? 見逃してくれる?」
「見逃すも何も、決着は付いたからもう戦わないわっ。私たちの目的は
「そうね。貴女達と私達の目的が対立したから戦っただけで、そっちが諦めてくれるならこの話はおしまいよ」
風は歌野と芽吹を見て両手を上げて降参の意を示す。
「ええ諦めるわよ、あたしたちの敗け。……あーあ、折角大社の秘密を手に入れて交渉材料にしようと思ったけど。儚い計画だったわ」
「潔く諦めるのは良い事ね。そんな大雑把な計画、どの道上手くいかないんだから」
芽吹の辛辣な言葉に苦笑いする。
「うっわ〜。夏凛みたいな事言うわね」
「三好さんは関係無いでしょ? それにこっちには貴女以上に大雑把で壮大な目論みを持ってる人がいるしね」
芽吹が歌野を見ると、歌野は胸を張る。
「計画のビッグさなら私の方が上よ。私はいずれ農業王になる女ですから♪」
「へー。よくわかんないんだけどさ、たしかに壮大な夢ね」
「ええそうよっ。農業王っていうのは……」
「あーいいわよ。説明してくれなくて。……じゃあ白鳥歌野、あたしたちはお暇するわ」
「アレ……? そう言えば名前言ったかしら私」
風は手配書を見せてきた。そこには歌野の顔がばっちり写ってある。
「手配書。……知ってる人は知ってるわよ。勇者だし。金額もあたしたちと同じくらいだし」
「あらっ、私もどんどんポピュラーになってるって事ねっ」
「悪名だけどね……」
風の持っている手配書の中には当然、雪花と水都もあり、本人は呆れていた。
「風さん。樹ちゃん。縁があったらまた会いましょう! そしたらぜひ、農業しましょ!」
「はいはい。じゃあね」
「それでは」
樹もペコリと頭を下げて去っていった。
「――で、気付いたら貴女が寝ていたので、連られて歌野は眠ってしまいました。もう夕焼け空でしたから、今日はここで休もうって水都と雪花も……」
「この蓮華もまだまだね。こんなところで眠ってしまうなんて。それも
「確かにあの鐘は牡牛座バーテックスのものですけど、鳴らしたのは歌野です。……だからあんなに心地良い音色を奏でたんじゃないですか」
人類を滅ぼす敵が持つ鐘の音が、安らぎを与えてくれる心地良いものなのは、皮肉だろうか。
いや、あれはあくまで歌野が奏でたが故にあの音色になったと考えれば、それは歌野の清らかさがもたらす癒しなのだろうか。
「で、あなたは? 何をしていたの?」
「見廻り兼、鍛錬です。いつまたバーテックスが強襲してくるか分かりませんから」
(あなたは……休むというのを知らないのかしら?)
「――蓮華さん。少し前から聞きたかった事があるんです」
芽吹は周りに二人しか聞いていないこのタイミングを見計らって前々から問いたかった事を切り出した。
「貴女の名前は……『"弥勒"蓮華』ですか? 弥勒さんの義理の姉の……」
「…………」
蓮華は無表情で芽吹を見ていた。
「あっ、弥勒さんというのは」
「夕海子のことでしょう? そのぐらい分かっているわ」
口を開いた蓮華は、改めて
「そう……この蓮華のフルネームは弥勒蓮華。大社上層部に鎮座する『五老星』がひとり、弥勒家に属していた。……そして、あなたの同僚である弥勒夕海子の義理の姉……という事になっているわ」
「なっている? 随分と含みのある言い方ですね」
「この蓮華は三年前のあの日、バーテックスによって両親を殺された。身寄りが無くなった私は、父親の仕事仲間だと言う、夕海子の父に出会った…………」
蓮華は静かな口調で、昔の思い出を綴っていく。
――西暦2015年のあの日、世界は突如出現したバケモノに蹂躙された。そこで蓮華の本当の両親は亡くなり、自分は
そこで運良く父の知り合いを名乗る男と出会う。そして蓮華は弥勒家に迎えられる事になった。
「……いえ、運悪くと言った方が正しかったかしら…………」
弥勒家にやって来た蓮華は、そこで弥勒夕海子と出会う。
――おそらくその時から、蓮華と夕海子の人生は
ある一室に、蓮華と夕海子は呼び出された。
「お父様。そちらの方はもしかして……」
「昨日少し話をしたな、夕海子。彼女が今日からうちで面倒を見る事になった子だ」
「よろしくお願いします」
蓮華は一礼し挨拶を交わした。
「わたくしは弥勒夕海子と言います。こちらこそよろしくお願いいたしますわ。……聞けば、あなたはわたくしのひとつ下だそうですわね。歳上として何でも聞いてくれて構いませんわ!」
自信満々に胸を張る夕海子。しかしそこで父親から耳を疑うような言葉が出てきた。
「いや……彼女は
「え……?」「な……っ」
蓮華と夕海子は動揺していた。
無理もない。蓮華にとってはこの家に来たその日に次期当主などと言われたのだ。
それに夕海子は正統なる弥勒家の血筋だ。世継ぎがいないのなら分かるが、これは普通に考えておかしい。
「畏れながらお父様。弥勒家は代々……」
「ああ、この家は代々、
「でしたら、わたくしが次期当主で問題無いのでは……」
「――失礼します」
扉がノックされ、秘書の女性が入ってきた。
「お話中申し訳ございません。会議のお時間が……あら? そこの彼女は……?」
「後で家の関係者にも説明するが、彼女は今日から厄介になる『弥勒蓮華』だ。私の同僚の娘で
そこで蓮華は察したのだ。自分がわざわざ名家に引き取られた理由を。
恐らく夕海子も気付いたのだろう。
「しかしまぁ、親がバーテックスに襲われてな。居場所が無いと言うし、将来
「お優しいんですね」
なぜか……ある特定の言葉が強く耳に残った。
「
「「…………」」
義父はそう言って部屋を出ていった。
そして蓮華は弥勒家の次期当主になるべく、日々英才教育に励んでいく。
夕海子もまた蓮華と同じカリキュラムを受けているようだ。
しかし、数日経てばいやでも分かってしまったのだ。
"弥勒夕海子に才能はない"、と。
蓮華は小学校の頃から成績は良かったし、弥勒家に来て難しい学問を学ばされたが、その覚えの良さでどんどん才能を伸ばしていった。
対する夕海子は……ただただ平凡だった。学業もスポーツも可もなく不可もない。一丁前に名家としての誇りは持ち合わせているようだが、実力が伴わない分、余計虚しく見える。
――弥勒夕海子は普通だった。優秀では無かった。それが弥勒家にとっては致命的なのだろう。
そんな夕海子に蓮華は特に構いもしなかった。覚える事ややるべき事が山積みで夕海子と話す時間が取れなかったからだ。
そんなある日の夜、蓮華はフェンシングの練習をしている夕海子を見つけた。
練習風景を見るからに、動きのキレも無い凡庸そのものだったが。
「遅くまでお疲れ様ね、夕海子」
「……! あら、ご機嫌ようですわ"お
"お義姉様"が若干ぎこちなく聞こえたが、蓮華は本題に入る。
「あなたは、これで良いの? 実の親に半ば絶縁状態にされて。良いの? 本来歳下である私を敬服する態度取らされて」
「…………」
夕海子は練習を終えて、着替え始める。
「悔しくないの?」
「――悔しいに決まってますわ」
そう言った夕海子の口調は、静けさの中にも怒りにも似た感情を宿していた。
「ですが、お父様のわたくしに対する"今の"評価は、その程度という事でしょう。ならば、駄々をこねて喚いても変わりませんわ」
(今の評価……ね)
蓮華は使用人がうっかり漏らした会話を聞いていた。夕海子が父親から"無能"の烙印を押されたのは
「ですからわたくしは、今やるべきことを精一杯努力し続けるのですわ。そうすれば、いつかはその努力は報われわたくしがお父様に認められ、当主の座に輝いてみせますっ」
夕海子の言葉に力強さを感じた。彼女はこの状況下においてもめげる事なく、ポジティブに上を見ていた。
「……フッ。そう。なら私も追い抜かれないように精進しなくてはね」
「当然ですわ。同情されて席を譲りました、ではわたくしのプライドが許しませんもの」
私服に着替え終わった夕海子は、キッチンへ行き冷蔵庫を開ける。
「鍛錬の後は……やっぱりこれですわ!」
夕海子が取り出したのは魚の切り身だった。
「夜更けに食べるものではないわね。バランス良く食べないと私を越えられないわよ?」
「いいえ、体を動かした後はこれ以外ありえませんの。わたくしの譲れないものですわっ」
蓮華に反論しながらも頬を染め、うっとりしながら食べ続ける。
「栄養はきちんと摂りなさい。……やっぱりマグロ食べているようでは駄目ね……」
「言っておきますけど、これはマグロではなくカツオですわ!」
どうやら夕海子が食べていたのは鰹のタタキだったようだ。
「ん〜、アルフレッドが拵えてくれたカツオはやっぱり随一ですわ!」
「もう……好きになさい」
蓮華は笑いながら部屋を後にした。
それから、蓮華は鏑矢の道を進み、その後に夕海子は防人の道を進んでいく。
お互いに弥勒家の女としての"誇り"を胸に抱きながら。
後半は蓮華+夕海子の過去をざっと振り返りました。前々から何となく匂わせておいたこの二人の関係。
この作品において、蓮華の一人称は大体『この蓮華』ですが、以前は『弥勒』だったそうです。
彼女は執拗なまでに"弥勒家"に拘っているようですね。それはすなわち、養子である蓮華が"自分が弥勒である事"を自分と周囲に誇示し続けているからだと、邪推する訳ですよ。
次回 旅立つあなたに最終楽曲を