Q.どんな敵にくれてやったんだ? その腕。
???「(乃木さんと上里さんが作るであろう)新しい時代に、懸けてきたわ」
???「(須美と園子が作るであろう)新しい時代に、懸けてきたんだ」
……まぁ、悔いが無いならいいか。
前回のあらすじ(?)
歌野「蓮華さん。……『ミス・シラトリ』って名前はもう使わないの?」
蓮華「ええ。今までは鏑矢の癖でコードネームみたいに呼んでいたけど、もうその必要もないからね」
芽吹「確かに『ミス・クスノキ』とか、言われている方もむず痒いから」
蓮華「じゃあ間を取って、芽吹は『ミス・ブシドー』でどう?」
芽吹「どこの間を取ったの?」
梅田地下街にて開かれた宴も終わり蓮華は身支度を済ませる。
「内容は全てここに記してあるから」
蓮華は分厚い紙の束をNo.7に手渡す。
「重っ。これ全部『ガーデンエリア』にある草花の栽培方法ですか……」
「ええそうよ。水を上げる時間帯。その量。花壇の移し替えのタイミング。肥料の種類と頻度。それらが全て載ってるから」
「ひ、ひえ〜」
No.7は軽く引きながらその書類を受け取る。
「まぁ、これは
「No.7。ちょっといい?」
と、そんなNo.7に制服姿の芽吹が話しかける。
「どうしたの?」
「これ、返すわ。ボロボロにして悪かったわね」
芽吹はNo.7から借りていた防人装束と銃剣を渡した。それらは樹や牡牛座との戦闘を介し、煤まみれや傷だらけでボロボロになっている。
「いやそれは別にいいんだけど。……これからはどうするの? あなた自身の装束は完全には修復してないよ」
芽吹の装束は他の防人や神官たちが修復していたが完全では無い。
一応、No.7経由で本部に頼めば装束は手に入るが、今の芽吹にはそれを待っている暇は無い。
「いえ充分よ。……色々ありがとね」
防人装束を身に纏わなければ、勇者では無い芽吹がバーテックスとの戦いについていける筈もない。確実に命を落とすだろう。
もっとも、防人装束を纏っているからといって助かる保証もないが。
「別にそのまま自分のものにしてもいいんだけどねぇ」
「結構よ。……本当にありがとう」
芽吹は深々と頭を下げる。ここへ来た時もそうだったが、誰かに頼み事をする時や礼を言う時、正式に防人となった以降の芽吹ならば余計なプライドが邪魔をして頭を下げることはなかっただろう。
「本当に良い意味で変わったね」
「何か言った?」
「ううん。じゃあそういうことで〜」
蓮華と芽吹が戻ってきて、改めて歌野たちは梅田地下街を出発する準備が整う。
「それじゃあ四国への旅をまたリスタートしてーー」
「ちょっといい? 歌野」
蓮華が四国へ向かうと意気込んでいた歌野の言葉を遮る。
「水を差して悪いわね。……四国を目指す前に"寄り道"をしてもいいかしら?」
「寄り道? と言うと、やっぱり赤嶺さんを?」
「いえ、そうでは無いわ」
確かに蓮華の第一の目的としては、赤嶺をはじめとする鏑矢の生き残りを探す事。
歌野たちの情報で赤嶺が今いる所はイーストジャパンとノースジャパンの境あたりだという事が分かっている。
「あなたたちの目的地はここから西でしょう? 今更イーストジャパンへ帰る手間は取らせないわ。彼女がいるかどうかも怪しいし」
彼女がまだイーストジャパンに留まっている可能性は低いだろう、と蓮華は考えていた。
「それに歌野。あなたといる方が会えるような気がするのよ」
「えっ? それはどういうミーニング?」
「それ、分かります。うたのんにはそういう"運"が良いみたいで……」
蓮華はわざわざ戻らなくても、歌野と旅を続ける中でもう一度会えるのではないか、と考えた。
そして水都や雪花もその話に同意する。
「そうそう。歌野はなんていうか……"出会いを呼ぶ力"、みたいなのを持ってるんだよねー。縁っていうのかにゃぁ?」
芽吹の時もそうだった。歌野はなんの情報もなく彼女と遭遇した。加えて、赤嶺や彼女からの情報で位置が判明した夏凛……。
「七武勇の人たちも含めて、うたのんがまるで引き寄せてるみたいな……」
「私、マグネットみたいねっ」
「まー、偶にバーテックスまで引き寄せてるのが、キズだけどねー」
歌野には人を引きつける力があるのかも知れない。
それが偶然なのか必然なのかは分からないが、少なくとも歌野の周りでは、"縁"というものがやおら形を為していくのだ。
「……で、話は戻るけど。寄り道先はね、同じウエストジャパンのある地域なの」
「ある地域?」
「勿体ぶる必要もないから言うわね。……修理に出しているこの蓮華の武器を取りに"奈良"へ行きたいのよ」
「奈良? そこに蓮華さんのマイ武器があるのね?」
「あれ? じゃあ今使っているのは?」
今、蓮華が持っているプラスチック製のサーベルは蓮華の愛用している武器では無いようだ。
奈良にいる鍛冶屋の職人に預けているらしい。
「見た目は細長い刀よ。この蓮華は『
「じゃあそれを取りに行きましょうか!」
「次なる目的地は奈良ね」
「りょーかい」
そして歌野たちは梅田地下街から地上に戻り、奈良を目指す事に決めた。
地下街の人たちはこぞって彼女たちとお別れの挨拶を交わす。
「蓮華さん行ってらっしゃあい」「いつでも帰ってきてね」
蓮華は握手を交わし、その一人一人の服や鞄、その他の持ち物にサインしていく。
「ええ! 次、ここへ帰ってくる時は、沢山の土産話を持ってくるわね。……蓮華が離れている間は、その直筆サインを見て寂しさを紛らわすのよ」
「うんっ。ありがとっ蓮華お姉ちゃん!」
「お元気で!」
「近くに来た時は是非寄ってくれ。またご馳走用意しておくからね」
「ん〜、にしんそば‼︎ とてもデリシャスだったわ! 本当にありがとうございました!」
歌野は宴の席で食べた時を思い出し、その嬉しさから地面に膝をつき、頭を下げて土下座する。
「歌野。何も土下座する事ないでしょー」
「うたのんにとってはそんなに嬉しい事だったんだね……」
挨拶を済ませた歌野たちは、奈良がある方角へ跳び立った。
……その中で、蓮華は奈良にいるある人物に話を聞きに行く事も視野に入れていた。
(それに奈良に行けば、ミス・カラスマ……いえ、"烏丸久美子"がいる。彼女なら、
鏑矢壊滅から、蓮華が意図的に避けていたことを知るために。過去と向き合うためにーー。
ーーそして数時間後。途中、星屑との戦闘もあったが、軽々と蹴散らして奈良県へ入る。
「ここはもう奈良県内。もう少し西へ進めば目的地よ」
「いやーすぐだねー。おまけに楠ちゃんは蓮華さんに背負って貰ってるから、この雪花さん、随分楽して貰っちゃったにゃぁ」
「その分、さっきのバーテックスとの戦闘はあなたの躍進だったじゃない」
「まー、そのぐらいはね」
そして数十分後、奈良の人たちが集っているという場所へやってきた。
「……ぁん? なんだオマエら?」
すると、彼女たちの来訪に気付いたひとりの男性が近付いてきた。
「男の人が来たわ。……あの人が鍛冶屋さん?」
「いいえ、違うわ」
男は髪の色を赤に染めており、黒色のTシャツを着ていた。そして見るからに彼女たちを警戒している。
「オイガキ共。修学旅行ですか、この野郎」
「あのっ、私たちはーー」
喧嘩越しである男に説明しようとするが、その声は遮られる。
「お前はすっこんでろ、黒シャツ」
「……久美子の姉貴……? 知り合いなのか?」
「知ってはいるが、初対面が多いな」
次は女性がやってきた。『久美子の姉貴』と呼ばれた女性は長い黒髪に赤のメッシュが所々に入っており、白衣を着た変わった科学者のような人だった。
「ご機嫌ようね、烏丸久美子」
「ああ、京都支部で情報交換して以来だっけか? 蓮華」
「ええそうね」
烏丸久美子は蓮華を見た後、その視線を歌野へ移す。
「白鳥歌野だな。お前は」
「あら? 貴女も私の事を知っているのねっ」
「ある意味、有名人だから……な」
「ふっふ、ふふっひ♪ 照れるわね〜」
面識がない相手に知られている事に、若干頬を染めて照れる。
「まぁなんだ、ようこそ奈良へってやつだな。……私は烏丸久美子。しがない研究者だ」
ーーそして時は遡り。某時刻、香川県丸亀城にて。
「では"四勇"乃木若葉により、白鳥歌野たちの件は保留、か」
「はいそうです。また、兼ねてより計画されていた…………」
ここに集った五人の当主たち。即ち"五老星"は四勇や大社本部の神官たちが話し合いで決定した今後の方針を聞いていた。
「……退がってよい」
「失礼します。……それと、もうすぐ
「分かっておる」
「では」
五人は、名家の当主であり大社の礎を築いた者たちであるため『大社上層部の最高位』にあたるわけだが、直接的に四国の政治に関わっている訳では無い。
「白鳥歌野……か。これ以上面倒を起こされても困るがな」
「私はその隣にいる藤森水都が気になる……」
「その父親は確か、我々が大社を組織させる前の団体に所属していたようだ」
この五人は大社の決定事項について度々話し合っている。別にその結果が新たなる政治方針になるわけでもないが。
「双子座バーテックスが身を挺して守った少女……か。確かに
しかし、この中にいる『弥勒家』の当主だけは
五老星とは、大社を作った者たちの中でも特に権力の高い五つの家の当主たちである。
しかしその後、弥勒家の当主は病死。それから次期当主だった夕海子の実父は当主になった際、
そうでもしなければ、弥勒家没落に拍車が掛かってしまうと考えたからである。
そしてもう一度言う。彼らに今の大社における発言権は無い。
それが重要な案件であっても、だ。
「…………」
カツーン……カツーン……と足音が聞こえてくる。
「……! 参られたようだ」
大社に関わる重要事項は子や孫に任せてある。……そう、孫に。
カツーン……カツーン……。
丸亀城の物見台からひとりの少女が姿を見せる。その少女は巫女装束を纏い静かに、それでいて堂々たる佇まいで五人を見下ろす。
「おお……
ザッ……と五人は一斉に片膝をついて平伏する。
「"五老星"、ここに!」
五老星の中のひとり。『上里家』の当主もまた、実の孫娘である彼女に平伏す。まるでその二人に血の繋がりがないかの如く。
「先日……神樹様より、新たなる"神託"が降りました」
「神樹様が……っ」
その言葉に五老星は感嘆の声を漏らす。
「では今回も、歴史から消すべき灯が、お決まりになったという事でしょうか」
「然らば……その者の名を!」
ーー多くの人々の預かり知らぬ所で、少しずつ……それでいて確実に"世界のうねり"は拡大の一途を辿る。
丸亀城の虚の玉座には……四国の王などいない筈のあの玉座には……! ひとりの少女がーーザザッ……ツーツーツー。
次回 空白の歴史を辿る者