白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。麦わらの一味の中にも犯罪に加担した奴は結構いるので、蓮華たちも犯罪の有無なんて気にせずやっていこうっ。

 ……いや、彼らは存在自体が法に触れてるわ。
 


前回のあらすじ
 鏑矢の存在とその行いの真実を知った蓮華は少なからず衝撃を受けていたが、歌野の言葉や農作業を通し、心に余裕が生まれ未来に向けて再び歩み出すと決めた。


第六十話 友奈の一族

 畦道で腰を下ろし、歌野と蓮華は休憩をとっていた。

 

「そういえばあなたのその麦わら帽子。素敵なリボンが付いてるわね」

 

 蓮華は歌野の被っている麦わら帽子のリボンをそっと撫でた。

 

「ああコレ? これは命の恩人の"忘れ物"よ」

「忘れ物?」

 

 歌野は麦わら帽子を脱ぎリボンを見て微笑む。

 

「いつか……御役目が全て終わった時にこのリボンを取りにきてくれる。……だから私が無くならないように預かってるのよっ」

「取りに来るって事は、別にあなたが届けに行く訳では無いのね」

「ええ。四国に行けば乃木さんには会えるけど……でも、リボンを返すのは諏訪にまた来てくれた時って決めたの」

「……! 乃木ですって?」

「そう! このリボンは"乃木若葉"さんのものよ!」

 

 それから歌野は若葉との思い出を蓮華に話していく。彼女との触れ合いはたった一日だが、それでも歌野にとっては色褪せない大切な思い出だ。

 

「…………それからは農業をする時は必ず被るようにしているの。……普段は無くしたり戦いで破けたりしないようにみーちゃんに預けてるけどねっ」

 

 話を聞き終えた蓮華は嬉しさで笑みが溢れた。このリボンに込められた二人の絆をしみじみと感じて。

 

「……フッ。どうりで見た事あると思ったわ」

「……え?」

「いえ……独り言よ」

 

 昔、蓮華が世話になった人物もまた同じリボンをしていたような気がする。

 

(これも運命……なのね)

 

 歌野と若葉の出会い。そして蓮華と歌野が巡り合った事も、何かの導きによるものなのかと考えずにはいられなかった。

 

 

 

 

「――お〜〜い! 二人共〜!」

 

 すると向こうから高嶋友奈が手を振りながら駆け足でやってきた。

 

「……ッ! あなたっ」

 

 蓮華は歌野より先にその声に反応して振り返る。

 

「あら? 友奈じゃないっ。私と一緒に来る気になったのかしらっ」

 

 再びの誘いに友奈は渋い顔をして断る。

 

「う……う〜ん、ごめんね。そうじゃないんだぁ。久美子さんが折角だから夕飯でも食べていくか? って言ってたよ」

「烏丸さんが? ……それはありがたいわねっ。蕎麦かしら⁉︎ あっ、でも奈良で名物と言えば……」

「ううん。お好み焼きだよ」

 

 奈良の食べ物について思いを馳せていた歌野は予想外だった回答に一瞬固まる。

 

「お好み焼き? 奈良の名物の……?」

「奈良っていうよりかは、大阪かしらね」

 

 蓮華は友奈の顔をまじまじと見つめる。

 

「高嶋友奈……。改めて見ると何処と無く、似てるわね」

「結城友奈ちゃんの事? ……あっはは。みんなに言われちゃうんだぁ」

 

 蓮華は首を横に振った。

 

「いいえ。"赤嶺()()"の方よ。……声とか、雰囲気とか、ね」

「「赤嶺友奈?」」

 

 高嶋友奈だけでなく歌野もまた首を傾げていた。赤嶺といえば蓮華と同じく元鏑矢で過去に二度会った少女のことだ。

 

「ひょっとして知らなかったのかしら? 歌野たちが会ったっていう彼女。赤嶺友奈って言うのよ?」

「知らなかったわ! 彼女、赤嶺とだけしか言わなかったし」

「そうなの? てっきり知っているのかと……」

 

 歌野はそこで初めて、赤嶺の名前が友奈である事を知った。

 

(……?)

 

 蓮華は手を顎に添えて考える。

 赤嶺がなぜ"友奈"を歌野たちに名乗らなかったのだろうか。

 もしかして彼女は"友奈"がどういう存在か知っていて無闇に人前で名乗るのを嫌がったのでは無いかと。

 

(彼女……以前はそんな素振りは無かったように思えたけど)

 

 様々な疑問が生まれるが、それは一先ず赤嶺友奈に会った時まで置いておく事にする。

 

(もしかしたら友奈……あなたは鏑矢壊滅後に何かを見つけたのかしら? 何かを知ったのかしら? ……でもその前に……)

 

 蓮華は鏑矢にいた頃に、ミス・オールサンデーが赤嶺に聞いていた質問を高嶋友奈(もうひとり)に問いかけた。

 

「……ねぇ、"あなたたち"は何故戦うの?」

「えっ?」

「友奈の一族の事よ……。烏丸久美子から聞いてないの? または他の誰かに言われなかった? "友奈の意志"は……今もなお生き続けているの?」

「蓮華さん? 私もよく分からないわ。……一体どうしたの?」

 

 蓮華の仲間だったミス・オールサンデーは名前こそ分からなかったが、位の高い家の出身だという。

 その彼女は"友奈"について何か思う所があるようだった。

 

「それにね、以前友奈……あぁ鏑矢(こっち)の友奈の事ね。赤嶺友奈が蓮華の家に来た時、養父が呟いていたのよ。『生きていたのか……? "友奈の意志"は』って」

 

 『五老星』である蓮華の養父もまた"友奈"について何かを知っている口振りだった。

 

「さっぱり分からないわっ。"友奈の一族"って何なの⁉︎ 農業と関係あるのかしらっ⁉︎」

「歌野……多分関係無いから安心していいわ」

 

 友奈の一族が何なのか。もしかすれば高嶋友奈ではなく烏丸久美子の方がよく知っている可能性が高い。

 しかし、久美子は肝心な所で情報を隠す。難問に頭を抱え、迷走する様を見て愉しんでいる様な気概さえ感じるほどに。

 

「ごめんね……私にもよく分からないんだぁ。でも前に久美子さんが言ってたのは覚えてるよ。『"友奈の一族"は神に干渉することができる』って」

「わーお! ゴッドに干渉……ってアレ? 私もどこかで聞いたような……」

 

 過去の記憶を辿っている歌野をよそに、蓮華もまたその言葉で養父と交わした会話を思い出した。

 

 

『――友奈の一族は神に干渉することができるんだ。神と同位置に立ち、対話する事ができる』

『神? 神樹のことかしら?」

『いや違う。……かく言う私も、先代当主から中途半端にしか聞いていないが……"神"の詳細については蓮華、お前が当主になる時に教えよう……』

 

 その時の養父は特に饒舌になっていた。赤嶺友奈と会った事が何かのきっかけになったのだろう。

 しかしそれでも"友奈の一族"も"神"も詳しくは教えてくれなかった。

 

『だがな……"干渉できる"ということは同時に()()()()()()事もできる……という事だ』

『危害を? ……神に力を貸すのでは無くて?』

『無論、本来の目的はそれであろう。故に大社は"友奈"を欲しがっている。……しかしな、私はどうもそっちの意味もあるのではないかと勘繰るのだ』

 

 神と同位置に立ち、干渉する事ができる。

 "友奈"がその特異な力を持っているのであればそれは即ち、()()()()事もできるのではないか。

 

『それ故、『友奈の名を持つ少女たち』を、一部の奴らはこう呼んでいる…………"神の天敵"とな』

『神の……天敵……?』

 

 蓮華の養父は最後に、『赤嶺友奈も……"神の天敵"となり得るのか』と呟いていた。

 

 

 

 

「――あなたはその"友奈"の特異な力を、どう思っているの?」

 

 一連の話の後、蓮華は高嶋友奈に問う。友奈の一族である彼女が、その力をどのように考え、扱うのかを。

 

「……そんな特別なものなんかじゃないよ?」

 

 友奈は首を横に振り、悲しげな表情をした。

 

「私の名前が、何か特別な意味を持ってるっていうのは久美子さんが言ってた。……でもね、()()()()だ。この手の届く所でしか誰かを守れない。今だって世界のどこかで苦しんでいる人がいたって、奈良にいるままの私じゃあ、手を伸ばすことができない。……だから、"友奈"が特別だとか言われても、私には何もできないんだよ……」

 

 蓮華はその言葉を静かに聞いていた。

 

「私はいろんな人たちに支えられたからこそ今がある。……だから勇者の力で、これから先もずっとみんなを助けるって決めたんだぁ。久美子さんや茉莉さん……奈良の人たちや世界の人たちの幸せの為にっ! それが無力な私ができる……精一杯の恩返し」

 

 そう言った友奈の姿は、なぜか弱々しく見えた。

 自分のやるべき事が分かっているのに、それが出来ずにもどかしく感じているようだった。

 

(矛盾してるわ……)

 

 蓮華はその友奈の姿にある種の疑念を抱いていた。

 

(歌野……気付いてるかしら? 彼女、心の奥底では()()()()()()()()()()わよ)

 

 高嶋友奈の目的がより多くの人たちを救いたいのであれば、四国へ行くのが手っ取り早い。しかしそれが出来ない理由がこの奈良にある。

 高嶋友奈が奈良で戦い続けなければいけない理由が。

 そもそもの話、奈良の人たちが四国へ避難しなかった理由が。

 

(きっと彼女はそれに縛られてる。……それが良いか悪いかは別として)

 

 ()()()について蓮華はある程度確信を持っている。

 そしてここには居ないが、水都もまた薄々勘付いているだろう。

 

 高嶋友奈を奈良に縛り付けているのは、"彼女たち"なのだ。

 

(ねぇ友奈……あなたもそうだったのかしら……?)

 

 蓮華は東の空を見ながら過去の友へ想いを馳せる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あれぇ? ……今、レンちが呼んだような気がしたんだけどぉ?」

 

 愛知県、名古屋にある駅前の大型ビルの上。

 周囲を一望できる高さから、ひとりの少女が西の空を眺めていた。

 

「気のせいか……そうだよねぇ。……最近こんな事ばっかりだよ」

 

 周りには彼女以外の人間はいない。あるのは駅中を覆い尽くす白き大群。そして地表やビルに産み付けられた卵状の物体。

 

「もうすぐ時代が変わる……っ。その引き金となる大きな戦いは必ず起こるっ。その時には力を貸してよね」

 

 地を蠢き、空を泳ぐその白き大群に少女は語りかける。

 もちろん、人の言葉など話せないので返答などある筈も無いのだが。

 

「……それじゃあみんな、行ってくるねっ!」

 

 眼下に溢れ出る白き大群に向かって"赤嶺友奈"は笑い、ウエストジャパンにある目的地へと急ぐ――。

 

 

 




「あの結城という少女。高嶋友奈に雰囲気が似ておる」
「彼女の名前は結城友奈。私も興味が尽きないわ」
「友奈⁉︎ ほお! 名前が似ておるな」

「ええ。……それが歴史の大問題なの」


次回 烏丸久美子の武器
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