白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。ワンピースアニメを観る廃人と化してました。一体何周するんだ……?


前回のあらすじではない
麦わら「死ぬことは恩返しじゃねぇぞ。そんなつもりで助けた訳じゃねぇ。助けて貰っといて死ぬなんて弱ぇ奴のやることだ!」
銀「そうだぞー須美」
友奈「そうだよ東郷さん」
東郷「……ぐうの音も出ないわ」



第六十八話 覚悟をみせろ! 藤森水都VS烏丸久美子

 久美子の出してきた条件に全員は戸惑いの表情を見せる。はじめは聞き間違いではないかとも考えた。

 だが久美子は先程、確かに水都に向かって『チームを抜けろ』と言った。それを聞き間違いで済ませる訳にはいかない。

 

「烏丸久美子。一体、あなたはどういう意図でそれを口にしたのかしら?」

 

 言葉を発した蓮華だけではない。芽吹も雪花も訝しむ目で久美子を見る。

 

「…………」

 

 そして当の本人である水都は俯いて黙り込んでいた。

 

「烏丸さん。友奈を必要としているのは私よ。みーちゃんは関係ないわっ」

 

 条件を課すのなら歌野に関するものが妥当な筈だ。それに、友奈と水都には接点が感じられない。

 

「いや、関係あるぞ。何故なら藤森水都(そいつ)は勇者じゃないからだ」

「……? 確かにみーちゃんは勇者じゃないわ。でもそれが何の関係があるの?」

「勇者じゃないと言うのなら私もそうよ。なら私も抜けろって言うの?」

 

 芽吹も意見する。久美子は芽吹を一瞥して少しだけ笑った。久美子にとって芽吹は"勇者側"の認識だったからだ。

 

「いや、この際だ。はっきり言ってやろう。……藤森水都、お前が"弱い"からだ」

「……ッ‼︎」

 

 その言葉に水都の身体は僅かに震えた。

 

「友奈は"超"が付くほどのお人好しだからな。"弱い奴"を守った挙句、死んでしまったらどうする?」

「えっ……」

「お前らは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「そんなつもりはないわ! 友奈は四国に行きたい。私たちも四国に行きたい。私は友奈のことを気に入ったから一緒にって誘ってるのよ」

 

 歌野としては純粋に、意気投合している友奈と旅を共にしたいと考えている。そして四国へ行きたいという願望を友奈は抱き続けている。

 

「そうだな。友奈は四国への願望を日に日に募らせている。四勇の郡やお前らと出会った事でより拍車が掛かっただろう」

 

 彼女たちの想いとは裏腹に久美子は現実を突き付けてくる。

 

「だが四国への旅路は簡単にはいかない。昨日言ったな?」

 

 四国までの道のりの険しさは今までの比ではない。中国地方(マリンフォード)や四国には行く手を阻む猛者がいる。

 

「私は疑問に感じていたんだよ。何の力も持たないこいつが今日まで生きてこれたことがな。きっと周りのやつらが身を挺して守っていたからだろう?」

 

 水都は勇者ではない。芽吹のように鍛錬を積んだ実力者でもない。そんな彼女が、今日まで勇者たち(歌野たち)と共に旅を続け、戦いの中を生きてこれた事は奇跡に近い。

 

「だがここから先の旅はそんなに甘くない。バーテックスはイーストジャパンやノースジャパンを縄張りにしていた奴らとは桁違いに強い個体ばかりだ。それに大社本部や四勇がお前たちに立ちはだかれば必然と弱い奴は足手纏いになる」

 

 相手が歌野たちを潰す気ならば、手っ取り早く藤森水都というウィークポイントを突けばいい。それが全員の壊滅に繋がる。

 

「これからも藤森水都をお前らだけで守り続けるのなら文句は無かった……が、友奈を連れて行くのなら話は別だ。あいつは絶対にお前を守る。死ぬ気でな。だから聞いた。"友奈を死なせる為に四国へ連れていくのか?" と」

「みーちゃんは弱くないわっ。これまでだってみーちゃんがいてくれたからセーフリーだった事もあるのよっ。そしてそれはこれから先だってあるっ」

 

 歌野は水都を大切に思う。水都をよく知っている歌野だからこそ水都の強さを理解している。

 

「じゃあその根拠を見せてみろ」

「えっ?」

「弱くないというのなら……足手纏いにならないというのなら、その根拠を今ここで証明しろって言ったんだ」

「ここで? 一体どうやって?」

 

 久美子は水都を見つめる。その視線は僅かながら恐怖を感じさせるもので思わず目を逸らしたくなる。

 

「藤森水都。私と"決闘"しろ」

「――ッ!?」

「な、何を言い出すの⁉︎」

「"1対1"の決闘でもし私に勝てたのなら、お前はこの先でも生きていける証明になるだろう。そうすれば私も友奈を連れて行かせる事に協力しよう。……だが敗ければ友奈は諦めろ。そしてそいつらとの旅をやめて故郷に帰れ」

 

 久美子の突き付けてきた決闘の案に水都はたじろぐ。

 

「どうして……決闘で……?」

「手っ取り早いだろう? ()()()()()()()倒せなければ、これから先の地獄を潜り抜けられない」

 

 水都は少しの間だけ目を瞑って思案する。決闘の内容は聞いていないが、まず間違いなく武力が問われるだろう。

 

(今の私じゃ当然烏丸さんには勝てない。でも……うたのんと一緒にいたい。……うたのんが友奈さんの力を借りたいのなら、私は……)

 

「烏丸久美子。決闘に敗ければ水都は私たちから離れるの?」

「その方がいい。半端な覚悟でやっていけるほどこの世界は甘くない。藤森水都が私の()()()()()()ならここから先、必ずお前らの致命的な弱点になる」

 

 芽吹と蓮華は水都の顔色を伺う。水都は俯いていた顔を僅かに上げた。

 

「わ……分かりました。やります……」

 

 水都は歯を食いしばり僅かに漏れた声でそう告げる。

 

「平気なの?」

「本当は嫌だよ。……でも、私が覚悟を見せなきゃこれから先、うたのんやみんなに取り返しのつかないような迷惑をかけちゃう。……それにね、前に双子座の子たちに庇われた時からたまに夢に見るの。あれがもしうたのんだったら……って」

 

 七武勇の東郷と園子から双子座を庇って戦ったあの時、結局水都は助けるどころか身を挺して助けられ、目の前で死なせてしまった。

 

 その時の悲しみが……悔しさが今も胸を締め付けてくる。水都に戦う力と覚悟があれば何か変わったのではないかと。あのあとすぐに雪花が駆け付けてくれたが、その時間をうまく稼げたのではないかと。

 

「私を庇って死ぬのは嫌。だから証明したいの。烏丸さんに。何より私自身に。……こんな自分でも困難を乗り越えられる覚悟があるんだって」

 

 あの時の光景がもう二度と現実として蘇ることがないように。歌野や雪花。芽吹、蓮華。そして友奈に……自分が枷になることが無いように。

 

「その決闘……受けて立ちますっ。よろしくお願いします!」

「そうか……どうやら決闘を受ける度胸はあるようだな。よし、これから内容を説明する」

 

 この決闘において勝敗は以下によって決められる。

 

『相手を再起不能状態にさせる。または敗けを認めさせる』

 

 よって、それまではどんな状況でも決闘は続行され、他者の介入は許さない。

 

「決闘の内容は単純な力比べ。お前と私で武力を競う」

 

 水都が想定していた内容になった。知力や精神力など、少しは別の決闘も想定したが案の定、武力による決闘。

 

「単純な武力なら貴女に有利じゃないかしら?」

 

 芽吹の問いに久美子は鼻で笑う。

 

「安心しろ。そのまま戦っても勝敗は見えているだろう。だからお前に二つ、ハンデをやろう」

「ハンデ……?」

 

 久美子が水都に提示したハンデは以下の二つである。

 

・この場にある道具は藤森水都のみ自由に使って良い。

・この決闘で藤森水都を死亡させた場合、久美子の敗北となる。

 

「……この決闘の勝敗は、相手を"再起不能状態にさせる"こと。または"敗けを認めさせる"こと。だが、もし誤って私がお前を殺した場合、問答無用で私の敗けだ。逆にお前は私を殺しても敗けにはならない。……どうだ? ハンデとしては充分だろう? お仲間も安心して観戦できる」

 

 久美子は近くに置いてあった荷物や袋の中身を水都たちに確認させる。

 

「これ……!」

「道具は好きなものを使え。奈良で活動してから色々拾ったんだ」

 

 久美子が持っていた道具の種類は、鉄パイプやハンマーなどの鈍器に使えるもの。ノコギリやナイフ、刀などの鋭利な刃物。そしてハンドガンやアサルトライフル、ショットガンなどもあった。

 

「銃⁉︎ こんなものどこで……」

「恐らくバーテックスが襲来した時に自衛隊の奴らとか警官とかが使ったんだろうな。当時は通常の武器が効かないことを知らなかったから遺品として落ちてるのを拾った。それに四国外のそういう施設にはまだ色々残っているだろう」

 

 沢山の種類の"人を殺す道具"に水都は顔を顰める。もちろん銃や刀など触った事すらない物が多い。それに鈍器や刃物も人を傷付ける為に使った事は一度もない。

 

(……これも"覚悟"ってこと……なのかな)

 

 久美子が言った覚悟の証明。それがこの武器を使い戦う事なのだと水都は考えた。

 

(出来るのかな……私に……。いや、弱音はだめだっ。なんとかしないと)

 

「じゃあそろそろ始めるぞ。ギャラリーのお前らはもう少し離れてろ」

 

 水都が逡巡している中、久美子は準備に入る。外に出て先程水都に見せた道具の数々を上に重なることがないようにばら撒いていく。

 この決闘には、特に範囲の指定はされていない。なので歌野たちは屋内にて行く末を見守る。

 

「……見せてもらうぞ、藤森水都。お前の強さ……覚悟の現れをな」

 

 久美子は白衣を脱ぎ、地面に置いた。そして軽く関節をほぐすストレッチを行う。

 

「よ……よろしくお願いします」

 

 水都も両手で頬を軽くはたいて気合いを入れる。

 

「準備はいいな。……では烏丸久美子と藤森水都の決闘、スタートだ!」

 

 久美子自身の開始合図と共に水都は周りを見渡して道具を選ぶ。

 

(剣は私には扱えそうもないし、銃なら遠くから撃つだけでいいけど腕もよくないし……)

 

 刀や拳銃が置いてある場所へ交互に視線を送る。

 

 ――その時。

 

「みーちゃん‼︎」

「……え?」

 

 歌野の声に気付き、視線を正面(久美子)に戻す。すると目の前に靴底が迫っていた。鼻先にギリギリ触れない距離で静止している。

 

「おいおい、気を抜いてるんじゃあない。開始の合図はしたぞ?」

「え、あっ……、ああ……」

 

 水都怯んでしまい、よろよろと後ろへ退がる。

 

「今の蹴りは威嚇だ。本当に当たってたら死んだかもしれんしな。それじゃあ私の敗けだ」

 

 周りの道具に気を取られていた水都は正面から繰り出してくる久美子の蹴りに全く対応出来なかった。

 もし、蹴りを目の前で寸止めしていなかったら、水都の顔は蹴り飛ばされ、原型を保っていなかったかもしれない。

 

「彼女、すっかり萎縮してしまったわね。呼吸も荒くなってきた」

 

 蓮華の言う通り、水都は恐怖に顔が引き攣って呼吸も浅くなっている。

 

「いいの? 歌野。こんな無謀な決闘を止めなくて。……いえこれはもう決闘ではなく私刑(リンチ)よ」

 

 始まってからまだ十秒程度しか経っていないが、水都の戦闘への意思が消えてしまったのではないかと蓮華は考える。

 

「このまま水都が痛ぶられる姿を、あなたは見ていられるの?」

「みーちゃんのメンタルはまだ潰れてないわ。それに私はみーちゃんの強さを知ってる。中途半端な覚悟じゃないってことを」

 

 歌野の目は絶えず水都の表情を捉え続ける。そこには顔を引き攣りながらも未だ光を灯している目があった。

 

「ノープロブレムよ。みーちゃんは勝つから」

 

(勝つ、ね……)

 

 蓮華は少し考える。この決闘に隠された()()を。久美子がひそませたメッセージを。

 

()()()()で烏丸久美子に勝つ事がどういう事なのか……本当に分かっているの……?)

 

 水都は一定の距離を保ちながら、止まっている久美子の周りをまわる。

 足を止めればすぐさま久美子の餌食になってしまうからだ。いや、久美子がその気になればあっという間に距離を詰められる事は熟知している。

 しかし今は、久美子に勝つ算段を見出す時間と自身を落ちかせる時間がほしい。

 

(ここだ……っ!)

 

 両膝を曲げて体勢を低くして久美子に跳び掛かる。

 

「やあああああああーーッ‼︎」

 

 その拳は久美子の横腹を捉える。その攻撃に久美子は一切の対応をしなかった。……少なくとも見てくれは。

 

 そして横腹に当たる…………のだが。

 

「なんだ? その腑抜けたパンチは……?」

「いっ……た……っ」

 

 殴られた久美子ではなく、殴った水都の方がダメージを負っていた。

 

(何この体……とても硬い……)

 

「パンチというのはな。……こう打つんだよっ」

「――ッ⁉︎」

 

 殴り掛かってくるのを予感して咄嗟にしゃがみ回避を試みた。

 次の瞬間、水都を久美子の蹴りが襲った。

 

「ぅあああ!?」

 

 蹴り飛ばされた水都は地面を転がりうつ伏せで這いつくばる。

 

「…………う」

「知ってるか? 腕力より脚力の方が強いんだ。だから私は足技を鍛えたし、友奈にも鍛錬させている」

 

 苦しみの中、歩いて接近してくる久美子を見上げる。

 

「……ん? 殴ってくると思ったのか? 殴る前に"殴ります"って言う馬鹿がどこにいる?」

「うっ……ぐ……っ」

「戦いにおいて騙しはひとつのテクニックだ。バーテックス共には効かないが、言葉のわかる人間相手には有効手段だ。……特にお前らの前に立ちはだかる大社の連中とかにな」

 

 久美子は真下に倒れている水都の位置まで歩き寄る。

 

「弱者が強者に勝つには……隙をつく"騙し"。高度な"作戦"。強力な"武器"。これらが必要不可欠だ。……今のお前には何ひとつありはしない」

 

 水都の右手を掴み、引っ張り上げる。

 

「……っ、痛っ」

「この期に及んでまだ武器を取ることを拒んでいるのか? 刀や銃を扱うのが怖いか? 誤って私を殺すのが……。思い上がるな」

 

 腕を掴んだままずるずると引き摺りながらばら撒いていた刀や銃の前に水都を置く。

 

「ハァ……ハァ……。ん……」

 

 水都はその中で鞭を手に取った。

 

「違うだろ? そんな小道具を持ってどうにか出来るのか? お前が持つべきなのはこっちだ!」

 

 手を蹴って鞭を手放させると強引に手を掴み、ナイフを握らせた。

 

「ま……待ってくだ……」

「こうでもしないとやる気が出ないだろ? よく見ておけ」

 

 無理矢理ナイフを掴ませたまま、その刃の先を自分の腹部に突き立てた。

 

「……!?」

「あ‼︎」

 

 水都は目を疑う。屋内で見ている雪花も思わず声を上げた。

 ナイフの刃は久美子の腹部に当たっているが、刺さっていないのだ。

 

「刃が当たる場所に"武装色"を纏わせてある。これなら刃が私の肉を突き刺す事は無いし、弾丸だって防いでみせるさ」

 

 久美子は"武装色の勇気"で自身を硬化させている。まるで全身に鎧を着ているようだ。

 

「もっとも"武装色"の練度には及ばないが、私は"見聞色"も鍛えている。弾丸が体のどこに当たるのか、刃がどこに触れるのか、それすら察知できるから避けようと思えば避けられる」

 

 そう言って無造作に掴んでいた水都の手を放り、地面に着かせた。

 

「さあこれで思う存分、私に銃を向けられるぞ? 剣も使えるだろう。……勝つ為の可能性を、色々試してみるんだ」

 

 久美子は水都を見下しながら嘲笑う。

 

「私はそれを、ひとつひとつ潰していくから……な」

 

 




烏丸久美子:勇者並みに強い一般人。非能力者。実質的な奈良の支配者。日常より非日常を心から愉しみ、他人が迷い、苦しみ、もがいていく様を"面白い"と言って嘲笑う、変わった趣向を持つ御方。彼女の"武装色の勇気"は練度としてはこの作品において一、二位を争うほどである。


次回 勝てる訳ないだろうが
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