白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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 拙稿ですがよろしくお願いします。この作品では能力の種類に、自然系。超人系。動物系。という括りはなく、装備型と憑依型に区別されます(厳密に言えば少し違うけど…)。そこは、勇者であるシリーズの影響かな。
 

前回のあらすじ(?)
 進化体は白鳥さんに鞭で叩かれまくって倒されました。
 白鳥さんに鞭で叩かれまくる進化体……。いや、羨ましくはない。……ホントだよぉ?


〜勇者によるワンピースセリフパロ〜

芽吹「亜耶ちゃん! 人として生きなくて何の意味があるの⁉︎」
亜耶「芽吹先輩。人として生きることも、神と共にあることも、どちらも救いなんです。そして巫女は神樹様と共にある。それが巫女の使命」
芽吹「亜耶ちゃんダメだ! 私たちは生きるために戦ってるんだ。だから亜耶ちゃんも生きてくれっ! たとえ神に逆らおうとも」
亜耶「そんな、神に逆らうなんて……」
芽吹「亜耶ちゃん! 生きるんだっ!」
亜耶「でも、私は……」
芽吹「頼むっ。言ってくれ!」
亜耶「うっ、うっ……。怖いです」

芽吹「亜耶ッ‼︎ 『生きたい』と言えッ‼︎」
亜耶「……生ぎたいっ‼︎」
芽吹「!」
亜耶「私も一緒に連れていってください!!」



第七話 戦いの果てに

 進化体バーテックスの戦いの後、歌野は気を失ってしまっていた。

 流石に疲れたのだろう。特に右腕は新しい武器を手にしてから色々と酷使し過ぎて痙攣していた。

 

「ーーのん。うたのんっ」

 

 誰かが体を揺すっている。

 

「うっ、ううん、んん……」

 

 眠ったままの歌野を起こそうと、水都は体を揺すっている。

 

「うたのん、起きて。こんなところで寝ると風邪引くよ?」

 

 歌野が戦っている間、水都はずっと空港で祈り続けていた。歌野にもしものことがないように、と。

 この時代、何に祈っているのかは分からないが、兎にも角にも祈らずにはいられなかった。そうすることぐらいしか水都にやれることはないのだ。

 そして、歌野の勝利を先に戻ってきたNo.25から聞いた時は一目散に歌野の元へ駆けて行った。

 

「そのままにしてやれよ。死ぬほど疲れてるんだ」

「いいえ。疲れているからこそ、ちゃんとした場所で眠るべきです。地面の上にそのまま寝るんじゃあ体も痛むし、疲労も抜けません」

「……まぁ、それもそうだな」

 

 ナルミもやれやれ、といった感じで歌野を起こそうとする。

 

「おい、起きてくれ」

 

 ペシペシと頬を軽くはたく。

 

「む〜。眼前に広がる麦畑……。あちらの農園には葉物野菜の楽園が〜。熟れる果実。最新鋭の農作器具っ。まさかここがひとつなぎの大秘宝⁉︎ ビバッ! 四国ッ」

 

「……おい。アンタ起きてるだろ?」「……うたのん、起きてるでしょ?」

「……てへっ♪」

 

 ぱっちりと目を開けた歌野はペロっと舌を出す。

 

「いや痛い痛い、みーちゃん痛い。つねらないでぇ」

「馬鹿な事やってないで、帰ってちゃんと寝よっ」

 

 頬を引っ張られながら歌野は起き上がる。

 

「……いいお天気だ♪」

「ふふっ。なにそれ?」

 

 呑気な事を言いながら歌野は水都と手を繋いで空港へと帰る……。

 

 

 

 

 ーーそしてひと眠りしたその夜。歌野は空港の人々に感謝された。

 

「いやーありがとなぁ」「助かったわ‼︎」「あなた本当に勇者なのねぇ⁉︎」「これはお礼だ。ささ、召し上がれ」

 

 また、細やかながら宴が開かれた。食べ物の品目は乏しいが、歌野と水都にとってはご馳走である。

 

「んん〜! 諏訪で食べた信州蕎麦は最っ高にデリシャスだけどここの蕎麦もなかなかにデリシャス〜‼︎」

「……うん。美味しいです」

 

 諏訪を後にしてから蕎麦はひさしぶりに食べた気がする。

 やはり蕎麦は美味しい。あの細い麺に多大なる栄養素や旨味が凝縮されているなんて想像できないほどに。

 蕎麦は味のインパクトはラーメンやうどんに及ばないものの、それは逆に体への負担が少ないということ。口に入れ噛み締めた時の優しさは麺類の中では一位と言っても過言ではないだろうーー。

 

「ーー本当に助かった。ありがとうな」

 

 ナルミは歌野に頭を下げる。

 

「いえいえ。これも勇者の御役目のようなものですから」

「私たちが救われたことは事実だ。……改めてなにかお礼がしたい」

「お礼ならこのご馳走で充分ですよ」

「そうはいかないさ。この食べ物はみんなで食べてるんだ。アンタ個人へのお礼じゃない」

 

 歌野は暫し考える仕草をとってから……。

 

「あっ! でしたら飛行機乗せて行ってくれますか?」

「飛行機? ああ、大社の神官たちが月一で乗ってるやつか?」

「多分それです」

 

 歌野と水都の目的は四国へ行くこと。ここからかなり距離があるのでウェストジャパンの手前までは飛行機で行きたいと考えていた。

 しかし、その飛行機に乗るお金は持っていないので、忍び込もうと考えていたわけだが、普通に頼めば余計なリスクも負わずに済む。

 

「ここに来てからの騒ぎで忘れてた……。私たちは飛行機を乗りに来たんだったね」

「そうそう。うまくいったらみーちゃんの言ってた方法で乗らなくても済むでしょ?」

 

 二人でヒソヒソと話す。

 

「わかった。少し頼んでみる。……それに幸運にも今月の便は明日の朝だ。私やNo.25から、乗せてもらえるように支部の連中に頼んでな」

「やったぁ! ありがとうございます!」

「支部、はどこにあるんですか?」

 

 ここに大社の支部がある事は、事前に水都は知っていた。ただ、支部らしい施設はここにはない。

 

「少し離れた場所に元管制塔がある。バーテックスの襲撃で塔自体は破壊されてはいるが、支部はその地下にひっそりと存在しているよ」

「地下にあったんですねぇ」

 

 その後、ナルミたちが掛け合い、歌野と水都は幸運にも、犯罪行為に手を染めずに飛行機に乗ることができたーー。

 

 

 

 

 

 

「ーーぷは〜。食べた食べたっ」

 

 宴の後、歌野はお腹をさすりながら空港周りを散歩していた。

 

「少し食べすぎたんじゃあないの?」

「うん? いやぁ腹八分目ってやつよ。蕎麦なら別腹だけどねっ」

「後半はもう蕎麦しか食べてなかったよね? 食べたら注がれ、食べたら注がれで、なんかわんこ蕎麦みたいになってたし……」

「ふっふっふっふ〜。ひさしぶりに食べたからね。ついつい……」

 

 今朝の戦いなど、遠き日の思い出か。二人は明るい月の下、笑いながら歩く。

 

 ……と。

 

 

「ーーやあやあ、お二人とも、今日は月が綺麗だねぇ」

 

 声のする方を見ると、少し背の高い小山で誰かが座って月を眺めていた。

 

「……? 誰ですか?」

 

 水都が尋ねるとその人物は立ち上がりーー。

 

「仰げばとおっ! っとし」

 

 変な掛け声と共に小山からジャンプして、シュタッと二人の前に着地した。

 

「ーーお! 凄い凄いっ、けっこうハイヤーなところからっ」

「あの、大丈夫ですか?」

 

 その人物は女の子だった。歳としては二人と同じくらいだろうか?

 月の光に照らされて、頭のテッペンあたりで結っているピンク色の髪が綺麗に輝く。前髪は三つに分け、左右をヘアピンでとめている。

 暗がりでわかりづらいがよく見ると、褐色肌をしている少女だった。

 

「平気平気。こう見えて私、鍛えてるからっ。アイラブ筋肉。マッスルマッスル〜」

「えっ、あ……。はぁ」

 

 変な回答に困惑する水都。

 

「空港にいた方ですか? 初めて見た顔ですけど……」

「いんや、私は旅の者だよ。ついさっきここへ来てね。野宿しようかなぁ、ってとこだったんだよ」

「そうだったんですか。じゃあせっかくなので空港に泊まりませんか? 私たち二人も厄介になってるんで」

 

 歌野の誘いに少女は首を横に振った。

 

「ううん、悪いね。野宿って言っても数時間の仮眠程度だから。すぐ出発するし……」

「ですが夜は結構危ないですよ? 今朝、この近くにバーテックスがいたんですから」

「ん? ああ。知ってる知ってる」

「え?」

「だって私、全部見てたから。()()()()()()()()()()()()()()()のを」

「「えっ⁉︎」」

 

 その言葉に当然二人は驚いた。

 

「私たちの名前、どうして……?」

「……二人がそう呼び合ってるのを聞いちゃってて。私、こう見えて耳が良いんだよねっ」

「あっ、ああ。そうですか」

 

 歌野は戸惑いながらも一応納得する。

 

「今朝、戦ってたのはうたのんーー、彼女だけです。私は戦ってはないですよ」

「……! あっはっはっは。そうだったそうだった。ゴメンネ、見間違い」

 

 少女は頭を掻いて笑う。

 

「でもうたのん、凄いよねぇ。進化体バーテックスを倒しちゃうんだもん!」

「いやぁ、それほどでもぉ……」

「おかげで、ここら辺の()()は散っちゃって当分は近寄らないと思うよ?」

 

 少女は聞き覚えのない単語を口にした。

 

「星屑?」

「そそ。進化体じゃない雑魚の方。クネクネ〜って蠢く奴ら。一部の人は『星屑』って呼んでる。……ほら、三年前のあの日、真っ暗な夜空から降ってきたことからそう命名されたんだ」

「へぇ〜」

「……」

 

 頷く歌野とは別に水都は得体の知れない雰囲気を少女から感じていた。

 

「だから大丈夫っ。心配ありがとねっ。お話し相手がいて楽しかったよ」

 

 じゃ、と手を振って少女は駆けて行った。

 

「……なんか、台風みたいな人だったねみーちゃん。急に現れて急に去って行った……」

 

 歌野は水都に話しかけるが、水都は彼女が見えなくなった後も、その方向を見続けていた。

 

「……? みーちゃん?」

「へっ。あ、うん。そうだね」

「どうしたの?」

「……いや、あの人、名前言わなかったなぁ、って思って」

「あっ! ホントね。……まぁ私たちもニックネームでしか知ってもらえてないわ」

「……うん」

 

 そして、二人は空港へ戻る。

 

 ……が、水都はーー

 

『ーーだって私見てたから。うたのんとみーちゃんが戦ってたのをーー』

 

(……私がバーテックスと戦ったのは、うたのんが勇者の野菜を食べた時だけ。……いや、あれを戦った、とは言わないか……)

 

 水都はあの少女の事を深く考えていたが、やがて考えるのをやめた。

 

(まぁ、単なる言い間違えだよね……)

 

 

 

 

 ーー二人からかなり離れた距離でピンク髪の少女は独り言を呟く。……周囲には誰もいない。

 

「あはっははは〜ん。ぜーんぶ、見ぃちゃってるんだよねぇ」

 

 彼女は月を見てニヤける。

 

「ホンっトにやらかしてくれちゃって。……あと十体かぁ。少し予定を早めた方がいいかも?」

 

 

 




 さあて長かったチュートリアル(?)が終わり、これからどんどん物語を進めていきましょう! ……順調に進むかなぁ。


次回 新たなる地へ
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