前回のあらすじ(?)
祝勝会だぁ。バンザーイ!
白鳥さんの活躍で正攻法で飛行機に乗る事ができたっ。やっぱり悪い事なんて進んでやるもんじゃないね。だって白鳥さんは海賊じゃないんだもんっ。
〜勇者によるワンピースセリフパロ〜
柚木「ここが、壁のテッペンか……」
芙蓉「やっぱり、星屑やバーテックスなんていなかったんだ! 世界は滅びていない! 私たちは四国の外にだって出られる!」
ひなた「あと数歩歩いてください」
芙蓉「あ……」
ひなた「これが、世界の真実の姿です。いつか遠い日に、その姿を誰かが見た時、世界はひっくり返るでしょう。誰かが見つけ出す。そして、その日は必ず来る」
若葉「バーテックスはっ、実在するッ!!!!」
芙蓉・柚木「!?」
朝日が昇る前、白んできた空の下、歌野は麦わら帽子をかぶり畑を耕していた。
「……朝早いね、うたのん」
「みーちゃん! グッモーニングっ」
空港付近の誰も使っていなかった畑を懸命に耕している歌野の元へ水都は歩いていく。
「どうして畑を耕してるの?」
「ん? まぁ今日でここもお別れだからね。少しでも私たちがいたって証を作りたくて」
「それがこれ?」
「うん。バーテックスを倒してとりあえずは平穏になったからね。こうして少しでも『日常』を取り戻していきたい」
歌野は畑を耕し続けた。
「……そういえばうたのん。よかったの?
「うん。私たちよりこの空港のこれからを考えたら、そっちの方が必要かなって」
「そっか……」
進化体バーテックスを討伐した人には大社から懸賞金が贈られるそうだ。しかし彼女はーー。
「ーーそうだ。懸賞金の話をしなくっちゃな」
「懸賞金?」
昨日の夜、歌野と水都が飛行機に乗れるように大赦支部へ頼んできた帰りに、ナルミからそのような話があった。
「なんだ知らないのか? 進化体バーテックスはな、その強さから討伐した者へ賞金が渡されるんだ」
「……! そうだったんですか!」
「ああ。懸賞額は大社の人たちと四勇とが話し合って決めるんだ。……今回の進化体だがな、奴の情報は既に大社側に知られてある。今、大社が認知している進化体の数は全部で十二体。それぞれ識別するためにコードネームが与えられている」
「十二体も、アレが……」
歌野から冷や汗が流れた。ほぼ歌野一人で倒したが、一体だけでも相当な強さだったのだ。そんな奴らが他にも存在しているようだ。
「十二体はそれぞれ星座に関する名前だ。アンタが倒したのは『乙女座』と呼ばれている」
「乙女座……」
名前に何ひとつ似ていないのだが、なぜそのような名前が付けられたのだろう。
「確か、一年前にも四勇の誰かが一体倒してたな。名は『水瓶座』と呼ばれていた。だから、あと十体だな」
「なるほどなるほど」
「……で、懸賞金の話に戻るが、乙女座の懸賞額は『400万ぶっタマげ』だな」
「えっ?」
耳慣れない単位を聞いた気がする。
「『ぶっタマげ』って何ですか?」
「まあわからんよな? 懸賞金独特の単位だそうだ。確か、四勇の一人がそう決めたらしい」
「……なんでそんな事を? 『円』じゃダメなんですか?」
「しらん。決めた四勇に聞いてくれ」
「四勇って、乃木さんじゃあないですよね?」
歌野が四勇の中で知っているのは乃木若葉しかいない。
「いや、名前は忘れたが違った筈だ」
「それは良かったです」
歌野のイメージ内の若葉は、そんな意味不明な単位を付けない筈だ。
「ちなみに円に換算するといくらになるんですか?」
ナルミは暫し考えてから……。
「んーとな。覚えてる話では、自動販売機で120円のジュースを買おうと財布を開けたら、80円しか無かった時を『1ぶっタマげ』というらしい」
「……?」
何を言ってるのか理解できなかった。
「つまり、120円に対して持っているのが80円だから……」
ナルミは何か計算をしていた。
「120:80=1.5:1 の数式が成り立つわけだ。つまり、1ぶっタマげ=1.5円だな。……ああ、小数点以下は切り捨てだから実質、1円。10ぶっタマげ=15円の換算になる」
「計算メンドクサっ!!!」
つい大声が出てしまった……。
「つまり、400万ぶっタマげだと、600万円貰えることになる」
その金額に歌野はピクっと反応する。
「単位は置いといて……。その金額は驚きですね」
「まぁ命懸けだからな」
「ですがそれだけのメニーなマニーをどうやって使うんですか?」
確かにこのご時世、バーテックスよって市場など機能していない。四国以外の土地では万札もただの紙クズである。
「例えばお前たちが乗りたがっていた大社所有の飛行機。あれは一般人が乗ると『片道ひとり100万円』だ」
「ソーハイヤーッ‼︎」
「このご時世、大社以外の人が乗る事自体、珍しい。それに大社の人間も数人程度しか乗らん。だから燃料や整備、特に維持費に莫大な金がかかる」
「そうなんですね」
「あと、闇市だな。四国にある物資を、これまた高値だが売ってくれる奴がいる。たまにここにも顔を出すぞ」
「闇市なんてあるんですか」
「と言っても大社が暗黙に公認している闇市だ。半公式の闇市ってところか」
「なんか複雑そうですね」
「複雑さ。大社という組織は、四国と四国以外との板挟みだからな。闇市の件も然り、何食わぬ顔であくどい事をやっている」
大社は四国外の人たちを四国へ立ち入る事を禁じている。その大社が四国内の人たちからの反感を抱かないようにする、せめてもの措置なのだろう。
「……それに今、大社は必死で勇者の野菜を探してる」
「大社が?」
「一般の人たちが勇者の野菜らしき物を持ってきて、それが本物だと判明した時に、高値で買い取っているらしいんだ。つくづく金遣いが荒いよなぁ」
今、大社は勇者の野菜を、一個500万円で買い取っているらしい。または、四国への永住権を保証しているようだ。
「四国外で大金を貰って生きていくか、金より命で四国へ入って平穏に暮らすか、だな」
(まったく、集めた勇者の野菜をどうするんだか……。いや、予想はつくが)
ナルミは過去の事が頭によぎり鼻で笑った。
「……話が逸れたな。だからアンタには明日、懸賞金を渡しーー」
「ナルミさん。私、いりません」
「……!」
ナルミの言葉を遮り、歌野は断った。
「……おいおい、本気で言ってるのか?」
「ナルミさんは言いましたよね? たまにここで闇市があるって」
「ああ」
「なら、そこで農作物の種とか、肥料とか、道具とか買えませんか?」
「それは売ってあれば買えるが……」
ナルミは歌野の意図に気付く。
「なら、もし売ってあればそれを買ってあげてください。また、この空港の復興のために使ってあげてください」
「何を言うかと思えば……」
「私はあなたと約束しました。バーテックスを倒したら、ここで農業をしましょうって。この空港を、バーテックス襲撃前に戻したいんです。一日でも早く、ここに日常を取り戻してあげたい」
歌野は目を閉じて胸あたりに手を当てる。
「バーテックスを倒したら終わりじゃない。私が求めているものは、その先にあるんです」
「……」
ナルミはその言葉に驚いていたが、ふっと笑った。
「……アンタはいい意味で変わったやつだな。……とんでもなく凄いやつな気がする、かな」
「変わったやつで結構です。とんでもなく凄くて結構です。だって私は、農業王になるんですからっ」
「ふっ。そうだったな」
歌野は満面の笑みを浮かべた。
ーー朝日は完全に昇り、歌野と水都は飛行機の前に立つ。
「……みーちゃん、コレ」
「うん。忍び込むなんて無理だったね……」
二人の目の前には、プライベートジェットがあった。おそらく十人程しか乗れないようなサイズである。
「よく考えてみると、私たちが想像してたサイズのものをこのご時世、維持するだけでも大変だった……」
「みーちゃん……」
「きっと、悪い事をしちゃいけないっていう、神様からのお告げだね」
「え、ええ。そうだね」
「ーーなんだ? 二人でコソコソ喋って」
振り返ると、ナルミとNo.25、そしてパイロットだと思われる人がいた。
そして後ろには、空港にいた人たちが見送りに来ていた。
「「短い間ですが、お世話になりましたっ」」
ペコリと歌野と水都は頭を下げる。
「よせ、礼を言うのはこっちの方だ。……アンタたちが来てくれてホントに良かった。ありがとう」
「「はいっ」」
「また、いつかここに寄ってくれよ? それまでには私たちで立派な田畑や農園を作っておく」
「それは、楽しみです! 私が農業王になったら、ここに遊びに来ますから、一緒に農業しましょう!」
「ふっ。……よろしくな。農業王っ」
ナルミは手を振る。それに続いてNo.25や空港の人たちも手を振り二人に別れを告げる。
「きっと来てね〜!」「でっかい野菜作って、待ってるからなぁ!」「ありがとうっ、勇者ぁ‼︎」
ーーそして、二人は飛行機に乗り、空へ飛び立ったーー
「あれ、もしかして私たちだけですか?」
水都は乗っている人が自分たちしかいない事に気付いた。
「ええ。ザラにあるんですよ。最近は特に人の乗せる事が少なくてですねぇ」
パイロットは水都の質問に答える。
「まぁそれでも向こうへ運びたい物もありますし、来月には向こうから乗りたいって人もいるかもしれませんから」
「それもそうですね」
そういえば、何か荷物を運び込んでいたような気がする。後方には、ダンボールが積まれていた。
「……それにしても、色々あったねぇ」
「うん。ホントに短い間だけど、色々あった。うたのんが勇者になって、バーテックスを倒した事が、一番驚いた事、かな」
「アレは私自身も驚いたわっ!」
二人で諏訪からここまでの旅を振り返る。
「でも、ここまできたら後は、突き進むだけっ。ウェストジャパンまで一気にGO GO!」
「うんうんっ」
と、歌野と水都が盛り上がっているところで……。
「ーーえっ?
その話を聞いていたパイロットが問いかけてきた。
「「えっ?」」
ーー二人を見送ったあと、ナルミとNo.25はーー
「あっ‼︎ そういえば、あの二人がどこへ向かうのか聞いてませんでしたねっ」
「……! ホントだなっ」
No.25に言われてナルミの表情はハッとなった。
「まぁ、今月の便に乗るなら、行き先に間違いはないだろう」
「そうですね。便はあれひとつだけですから、間違えて乗ることもないです」
「白鳥歌野は農業王になるんだろう? なら、行き先は間違い無いな。……何より今時、
「それもそうですねっ」
二人は笑いながら、歩き出した……。
ーー機内で、歌野と水都はーー
「あ、あの〜すみません。この飛行機ってどこに向かってるんですか?」
恐る恐る水都がパイロットに尋ねる。
「もちろん、
その言葉を聞いたとき……。
「「……え……?」」
ーー10秒後ーー
「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッッ!!!!」」
『イーストジャパン編』 完!
新章『ノースジャパン編』開幕!
……おいいいいっ‼︎ 白鳥さんんんんん‼︎
どんどん四国から遠ざかってるじゃあないかッ‼︎
次回 四勇会議