白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。前回、寝ている歌野を蓮華が温めようとしていましたが、これをブルックに置き換えたらこんな感じ。

「ルフィさんが凍えてしまわないように人肌で温めておきました。……私……っ! 肌……ッ、無いんですけどッッ‼︎」


前回のあらすじ
歌野たちは水都を奪還する為、兵庫支部である姫路城を目指す。誰もがこれから起こる戦いに決意を固めて。


第八十一話 私たちが本隊

 歌野たちは兵庫支部である姫路城が見えるところまでやって来ていた。

 

「うっひょ〜。あれが姫路城。すっごい綺麗」

「確かに。あまり壊されてはいないのね」

 

 今、歌野たちはバーテックスによって破壊された元姫路駅にいる。

 そこで携帯食の麺類を頬張りながら兵庫支部への突入方法を模索していた。

 

「ここまでは……むぐむぐ……見つからずに来れたけど……くんっ。……ふぅ、お城の近くは警備が厳しいかな」

 

 高嶋友奈は仮面を再度装着してうどんを頬張る。また、結城友奈と芽吹、蓮華もうどんを食している。

 雪花はラーメンを。歌野は蕎麦を食べて腹を満たす。

 

「もぐもぐごっくんっ。……ごめんね。東郷さんたちが近くにいたら力を貸して貰えるようにお願いしたんだけど」

「サンクス結城さん。その気持ちだけでインナーフよ♪」

 

 協力を求められず歯痒く思う結城友奈にフォローの言葉を送る。

 

「そのスマートフォンは?」

命の携帯(ビブルダイアル)って言うんだって」

携帯(ダイアル)? って事は大社絡みの?」

 

 命の携帯(ビブルダイアル)とは友奈たち"七武勇"が所持しているスマートフォンの名前である。

 これにより携帯(ダイアル)を持っている者同士のいるおおよその位置が分かる。

 画面に映らない範囲にいる場合はどの方向にいるか矢印がつく。

 

 結城友奈以外の"七武勇"は遠くの場所にいるらしく画面には方向しか示されていない。

 

「ユースフルねっ。仲間の位置が把握できるなんて」

「でもスマートフォンを手放しちゃったら分からなくなっちゃうから、そこが困るかな」

 

 命携帯(ビブルダイアル)が位置情報を特定しているのはあくまで機器の方である。

 三ノ輪銀の場合、スマートフォンだけが取り残され、本人が行方を暗ませた為、今に至るまで"七武勇"の誰にも居場所が分からなかったのだ。

 また、万が一敵に奪われてしまえば悪用される可能性もある。

 

「結城さん。貴女がいてくれるだけでこっちはとても心強いから。ノープロブレムよ」

「あははっ。ありがとね」

 

 そして全員は戦前の腹拵えを終える。

 

「姫路城……」

 

 そんな中、芽吹は何か思うところがあるのか、食事中もその後もずっと姫路城を見続けていた。

 

「芽吹ちゃん、姫路城に何か思い出があるの?」

「大工だったパ……父が昔模型を買ってくれた、ただそれだけ。実際に来たのは今回が初めてよ」

 

 まさかこんな形で来る事になるとは芽吹も思わなかっただろう。

 

「こんな事態でも無ければゆっくり見て回りたかった……」

「いやー、それに関してはこの雪花さんも同意見だねー」

 

 城好きな雪花も頷く。姫路城は世界遺産に登録されている日本を代表する名所のひとつ。

 それが奪われた仲間を取り返す為とはいえ武装して突入するのだから少しだけ気が引ける。

 

 ……だからといって、引き返すつもりは無いのだが。

 

「さて、と」

 

 準備が整うと、歌野は全員に呼びかける。

 

「みーちゃんを取り返すにあたって、大社サイドがどんな対応をするか分からない。プロブレムがあるとしたら……」

「伊予島杏、No.3。そしてパシフィスタ……いえ三ノ輪銀ね」

 

 芽吹が三人の名前を出すと、全員の表情が引き締まる。

 

「銀ちゃんは……私に任せて」

「良いの? 結城ちゃん」

 

 高嶋友奈は不安な顔で結城友奈を見る。三ノ輪銀の対処を行うという事は仲間同士で争う事を意味する。

 

「うん。私がやらなきゃダメなんだぁ。私の手で銀ちゃんを取り戻したい!」

「オーケー。じゃあ頼んだわっ」

 

「さてあとは伊予島杏とNo.3だけど……」

「No.3の砂になる能力は厄介極まりないわ」

 

 警戒すべきは圧倒的な実力を持つ杏。そして身体を砂に変えることでこちらの攻撃を受け流せるNo.3。

 No.3にいたってはダメージを与える方法が未だに不明瞭である。

 杏も強い事に変わりはないのだが、ダメージを与えられる分、まだやりやすいというもの。

 まともに戦うとなるとNo.3が能力を発動できない状況、または弱点のようなものを探るしかない。

 

「まー、最悪勝たなくてもいいんじゃない? 水都ちゃんを取り返すまでの時間稼ぎをすれば良い。……でしょ?」

「ええ! 雪花の言う通りよ」

 

 雪花の言葉に歌野は頷く。

 

 目的はあくまでも水都の奪還。もし杏やNo.3のような実力者が立ち塞がろうとも、隙をついてその目を掻い潜るか、時間稼ぎさえ出来ればいい。

 

 水都を取り返した時点で、歌野たちの勝利なのだから。

 

「じゃあこれから姫路城へ突入するとして、一つ。私の記憶通りなら抑えておきたい建物があるのよ」

「それはどこかしら芽吹」

 

 芽吹は遠くに見える姫路城の斜め左を指差した。

 

「あの辺りの倉庫には武器が貯蔵されてるの。上手く使えば敵の戦力を削れるわ」

 

 指差す建物はどうやら武器庫らしく、芽吹の記憶どおりなら様々な武器が保管されているようだ。

 

「武器庫というより物置きの方が正しいかしらね。バーテックスに通常の武器は効かないから半ば放置されてるのよ」

「詳しいのね」

「来たのは初めてだけど、施設周辺の見取り図なら頭に入っているわ。防人として活動してた頃に各支部の情報に目を通してたから。……私の知らない大改造でもしてない限りね」

 

 待ち構えている敵の数がどれほどなのかは分からない。だが歌野たちの能力上、多対一は効率が悪い。いちいち相手をしていたらかなりの時間を要するだろう。

 故に、そこから武器を調達して序盤の流れをものにしたい。

 

「オーケー。その作戦で行きましょう」

 

 歌野は荷物の中から麦わら帽子を取り出して頭に被り、気合いを入れる。

 

「それじゃあレッツゴーよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――姫路城にて。

 

 神官長は部屋で右手に持つ"金色のスマートフォン"を眺めて独り言を呟いていた。

 

「ハハハ……。いやー何度見ても恐ろしいもんだよな。このスマートフォンのボタンひとつで辺り一帯が更地に変わるんだぜ」

 

 派手な色である事以外は通常のスマートフォンの形と変わらない。

 しかし、重要なのはその役割である。

 

「もし発動しちまえば、この歴史ある姫路城もただの廃墟と化す。……バーテックス襲撃時の比じゃねェ」

 

 金色のスマートフォンの正体は『バスターコール』の合図を発信する装置である。

 大社本部に設置されている受信用のスマートフォンから本部支部関係なく大社という組織全体に合図が送られる。

 そして発令場所の付近にいる者たちは最優先で当該場所へ、武装して出撃する。

 一度発令されたら最後、辺り一面を更地に変える程の無差別攻撃を行うというものだ。

 その発令権を神官長は上層部の指示により譲渡されていたのだ。

 

「権力ってのもまた兵器みたいなモンだな……」

 

 機器の側面を指でなぞりながらニヤける。

 

「――失礼します、長官殿‼︎」

「わっ⁉︎ あっ……ぶねぇええ!!!?」

 

 とその時、神官の一人が部屋へ入ってきた。

 

「急に声を上げるなッ‼︎ ビックリして押すところだっただろーがッッ‼︎」

「も、申し訳ありませんっ」

「で? 要件はなんだ?」

 

 神官は気を付けの姿勢のまま伝える。

 

「はい。食事の用意が整いましたので、そろそろ長官殿をお呼びしようと」

「なんだ……。そんなことか」

 

 神官長は金色のスマートフォンをポケットに入れて部屋を後にした。

 

 そして最上階にいる水都をNo.3に見張らせるよう命令したのち、宴の席へと向かう。

 

「あ〜ゴホンゴホン。よく集まってくれたなァ。兵庫支部の諸君ら」

 

 コーヒーを注いだカップを手に挨拶の言葉を述べていく。

 この場に集まった神官たちは五十人ほど。まず間違いなく支部では一番の数だ。

 

「……であるからしてー。奉火祭の生け贄になる藤森水都は犯罪者。死んで惜しまれることもねェ。むしろ世界の為に死ねるんだから感謝してほしいぐらいだ」

 

 挨拶も結びの言葉となり、全員が乾杯の為にグラスやカップを手に取っていく。

 

 ――ところが。

 

「さて、ではグラスを手に持って……」

「――緊急事態です‼︎ 長官殿‼︎」

「わっ⁉︎ あっぢゃ……あっつぅ!!?」

 

 コーヒーをこぼして太ももにかかってしまう。熱さで取り乱してしまった。

 

「テメェ、なんだこんな時にィ⁉︎」

「す、すみません‼︎ しかしご報告がっ!」

「今度はあ⁉︎」

「そ、それがですね……」

 

 報告によると、つい先ほど侵入者が姫路城の敷地に潜り込んだようだ。

 侵入者は警備の者たちを呆気なく倒すとこちらへ向かっている。

 数は()()

 

「六人? 馬鹿、さっさと殺すなり捕えるなりしねェか」

「それが、とても強く。なんせ勇者でして」

「勇者ぁ?」

 

 するとこの場にいる全員の耳にゆっくりと足音が聞こえてきた。同時に武器の金属同士が接触する音も聞こえる。

 そして足音の主は宴を行おうとしている場所の扉の前までやってくる。

 

 ――こんこんこん。

 

 誰かが優しく扉をノックする。

 

「……あれぇ? 返事がないね。留守かな?」

「いやーそんな訳ないでしょ友奈。……反応がない時は」

 

 ――ドゴォ!

 

 扉は槍に貫かれ勢いよく吹き飛ばされた。

 

「……!?」

 

 神官たちが動揺する中、六人は静かに入場する。

 

 左サイドに雪花、高嶋友奈。右サイドに蓮華、芽吹、結城友奈と並び、中央だけ隙間を空ける。

 最後、その中央に空けられた隙間に収まるかのように歌野が歩いてきた。

 

「見ろ……アレ。楠芽吹だ」「防人にいた?」「それに手配書で見た顔が何人かいる」「白鳥歌野、秋原雪花……ゆ、結城友奈もだ」「あの変な仮面は知らないが……」

 

 辺りの神官は口々に歌野たちの事について呟いている。神官長も歌野たちを一目見てその動機に気付く。

 

「てめェらだったのか」

「みーちゃんは無事なのよね?」

 

 歌野の開口一番に聞く質問に、笑って答える。

 

「ああ。……少なくとも今のところはな」

 

 そして歌野たち六人が銃を担いでいる事に目を付けた。

 

「物騒ななりしてやがるがまさかてめェら、たった六人でこれを相手にする訳じゃねェだろーなァ」

 

 この場にいる神官たちは一斉に立ち上がると白い袴の下から銃や刀を取り出し始めた。

 

「あら? 向こうもウェポンを持っていたようね」

「神官に相応しくないわね。……罰当たりだわ」

「隠しやすいもんねー」

 

 一方、歌野たちはさほど動揺してはいない。

 

「我が身を犠牲にすりゃ世界を守れると信じる素晴らしき()()()()()と、共に散りにきた無謀な特攻隊か」

 

 その言葉に歌野は一歩前に出て物申す。

 

「……みーちゃんは別に犠牲になったわけじゃないわっ。先陣切って戦っただけ」

「……あ?」

 

「覚悟しなさい大社のエブリワン」

 

 歌野の声を合図に、他のメンバーは持っていた銃を構えた。

 

私たちが本隊よ!!!

 

 そして彼女たちは一斉に発砲する。放たれた弾丸は人に当たらずとも足元や壁に命中して爆発する。その爆風や爆炎に大社陣営は巻き込まれる。

 

「うおおああああーーーッ!!?」

 

 何人かの神官も銃で応戦するも、勢いの止まらない攻撃に押し負ける。

 

ぎゃああああ〜〜〜!!!

 

 大社陣営から一方的な悲鳴があがる。神官長もまた臆してしまいその場から逃げ出す。

 

「あ……。弾切れちゃった」

 

 暫くして銃声が鳴り止む。

 爆煙が晴れると、神官たちは八割近くが倒れていた。

 

「残弾は僅かだったものね」

「でもこれで大体は片付いたかしら?」

「オッケー。エブリワン! クイックリーでみーちゃんをレスキューするわよ‼︎」

「了解!!!」

 

 歌野の合図に全員は残存兵力の排除と、水都のいる可能性がある、姫路城の上階を目指して行動する。

 

「……待っててよぉ、みーちゃああああん‼︎」

 

 歌野もまた銃を捨ててベルトを力一杯握りしめて走り出す。

 

 

 

 

 ――これより幕が上がるのは姫路城で繰り広げられる前代未聞な戦い。

 

 しかし、今の彼女たちは予想だにしなかっただろう。

 

 この戦いの結末が……あの、極めて忌々しい事件(戦い)の引き金になる事を――。

 




 よく見てな。例えこの戦いの結果、彼女たちが死のうが生きようが過去誰一人としてやらなかった事に……この事件に世界中が驚く事になる。

 ……この戦いが終わったら、白鳥さんの名は四国の隅々にまで轟くよ。


次回 開戦、姫路城
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