白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。バトル作品あるある。ボスキャラまたは囚われのお姫様キャラは、塔や城の一番高いところにいる。


前回のあらすじ
水都を取り戻す為に歌野たちは兵庫支部である姫路城を襲撃する。対する大社陣営も兵庫支部に集っている戦力で彼女たちを迎え撃とうとしていた。


第八十二話 開戦、姫路城

 歌野たちによるドンパチ騒ぎは、最上階にいたNo.3と水都の耳にも届いていた。

 

「どうやら来ちまったようだな」

 

 No.3は不敵な笑みを浮かべながら窓から地上を見下ろす。この騒ぎから歌野たちが来た事に気付いたのだろう。

 

「この騒ぎは……」

「どこぞのヒーロー様が囚われのお姫様を助けに来たんだろうなァ」

 

 水都もまた歌野たちが来た事が騒ぎの原因だと気付く。

 

(うたのん……)

 

「……下にいる奴らに武器を持たせたのは正解だったな。まァ前座にもならねェだろうが」

 

 まるで歌野たちがここへ来る事が分かっていたような言い方だ。……いや、実際No.3には分かっていたのだろう。

 彼女はアクシデントが発生する事を前提に行動している。神官長に命令されなくとも水都の監視についているのもその為だ。

 

 すると、No.3の携帯端末に神官長から連絡が入った。

 

「一斉通信か。噂をすればってやつか」

 

 

 

 

 

 ――歌野たちからの先制攻撃により神官長はこの場から即座に離れる。そして、ポケットに入れてある携帯端末から城内にいる者たちへ呼びかけた。

 

「こちら神官長‼︎ 賊どもが侵入し我らに攻撃を仕掛けたっ。目的は藤森水都の奪還で間違いないだろう。各位っ、奴らを始末しろ!!!」

 

 指揮官型防人のひとりであるNo.5はその通信を煩わしく思いながら聞いていた。

 

『侵入者ごときで……そんなに喚かんでもいいでしょうに、長官。私様やNo.3、PXー0もいるんだから』

 

 騒ぎのことはNo.5も知っているが、歌野たちの戦力を特に問題視してはいなかった。伊予島杏がもうここにはいないとはいえ、たった六人の"寄せ集め"にこの姫路城(兵庫支部)をどうにか出来る筈もないと見越しているからだ。

 

「バカ言え‼︎ ここは大社本部が統べる中国地方(マリンフォード)。その神聖なる誇りを背負った玄関口だぞっ! ここを襲撃する事が何を意味するかぐらい、どんなバカでも理解できる筈だ‼︎」

 

 常識的に考えて、大社支部の中で一番の規模であるこの兵庫支部を、バーテックスではなく人間が襲撃してくるなどありえない話だ。

 これは大社本部だけではなく四国の平穏を脅かすテロ行為ともとれる。

 

「それもたかだか小娘一人取り返す為に大天守まで乗り込まれて荒らされたとあっちゃあ恥だぜ、まったく!」

 

 神官長は歌野たち迎撃の為にそれぞれ指示を送る。

 

「ドクター! すぐにPXー0を出せ‼︎ それからNo.5や他の防人は最上階までの各フロアで迎撃。No.3は対象の監視を継続。……他の迎撃可能な奴らも対処に当たらせろ‼︎ 伊予島杏を呼び戻せ! 以上ッ‼︎」

 

 一方的に叫んだあと強引に通信を切った。

 

「見てろよこの野郎」

 

 そして神官長自身も、戦いに備える為に装備を整えにいく。

 

 

 

 

 

 

 

 ――姫路城地上階にて。

 

「あっ、またきたよ」

「関係ナッシング!」

 

 新たに二十人程の敵兵が現れた。しかし彼女たちの勢いの前にはまるで歯が立たない。

 

「――ッ⁉︎ 危ない‼︎」

「えっうわっ⁉︎ ……っと」

 

 すると突然二つの斧が飛んできた。

 歌野と結城友奈は芽吹の声に反応してうまく回避する。

 

「……! この斧は」

 

 二つの斧は床に突き刺さると、即座にその場から消えた。

 

「……銀ちゃん」

「おいでなすったわね」

 

 目の前に現れたのは両手に斧を持った少女と、サングラスを付けた小太りの男。

 "パシフィスタ"とそのメンテナンスを任されていた"ドクター"である。

 

「フォスフォスフォス! やっちまいなパシフィスタ」

 

 ドクターが合図するとパシフィスタがこちらへ走り出す。

 

「みんなは先に!」

「オーライ。結城さん、気を付けてね」

「うんっ」

 

 両手を上げて大きく振り下ろされる双斧を全員は回避する。

 そして結城友奈だけを残したまま五人は先を急ぐ。

 

「ん? なんだ? お前一人だけ残るのか?」

 

 結城友奈は三ノ輪銀(パシフィスタ)をじっと見つめて拳を強く握る。

 

「もう少しだけ待ってて銀ちゃん。絶対に取り戻してみせるからっ」

 

 

 

 

 ――歌野たちは上へ続く階段を見つけると、一度立ち止まる。そこで高嶋友奈とあとの四人とに別れる。

 

「ここから上へ行けるわね」

「じゃあ私は一応地下を見てそれから合流するね!」

「ええ! よろしくね友奈」

 

 姫路城の大天守には一般的に地上階から最上階までの計6フロアあるが、芽吹が見たという見取り図には地階も存在していた。

 

 建物の構造上、水都が居る場所は最上階だろうとは思うが地下に拘束されている可能性も考えられた。

 その可能性を無くす為、地階を確認する役目を高嶋友奈が担った。全員が上を目指して実は地階に水都がいた、となれば時間ロスになってしまう。

 また、いなければいないで早々に戻り歌野たちと合流すればいい。今の状況ならば地上階で交戦中の結城友奈に加勢する事もできる。

 一番の恐れは時間がかかり、本部や四国から増援が来てしまう事だ。

 

「階段せまっ。頭ぶつけそう」

「注意して。上っている途中に頭に当たって負傷……なんて格好悪いから」

 

 雪花、芽吹、蓮華、歌野の順で一列で階段を駆け上がっていく。一段一段が高いうえに狭いので走りにくい。

 そして四人は二階へ到達する。

 

「……あ!」

 

 雪花は誰かいる事に気付き立ち止まる。続く芽吹たちも敵を確認した。

 

「おっ。来た来た。飛んで火に入るカバ共が」

「No.5……」

 

 待ち構えていたのは、本来この兵庫支部を担当している指揮官型防人No.5だった。

 彼女を目にした芽吹は一歩前に出る。

 

「先に行って。ここは私が……」

「いや、私様が戦いたいのはそいつだけなんだよね。……だから芽吹先輩は上行きな」

 

 No.5は歌野を指差した。向こうはどうやら真っ先にリーダーである歌野を標的に定めたようだ。

 

「先輩には()()()()()()()()を用意してあるからさ。……まっはっは」

「どういう意味?」

「行けば分かるさ」

 

 雪花と蓮華も武器を構えて前に歩き出す。

 

「確かに歌野を倒せたら私たちの士気は一気に落ちるねー」

「でもそれをこの蓮華たちが許す訳ないでしょう? ……第一、二階に配備されているような雑兵が歌野と戦えるなんて烏滸がましいわ」

 

 No.5は意味深な笑みを浮かべた。

 

「私様はそいつだけ狙うって言ってんの。他の奴らは見逃してあげるって言ってんの。カバでも意味分かるかな?」

「……っ」

「時間。無いんじゃない?」

 

 確かに今は出来るだけ早く水都を救出して、この城から脱出しなければならない。

 それを敵側も分かっているようだ。

 

「ならなおさら、あんたは四人で――」

「良いわ!」

 

 攻撃を仕掛けようとする雪花の肩に触れて引き止める。

 

「歌野……」

「どうやらあちらさんは私をロックオンしてるみたいね。なら受けて立つわ!」

 

 ベルトを波打たせ、地面を叩いて臨戦体勢に入る。

 

「ここは私がやるから。みーちゃんを頼んだわっ!」

 

 三人はそれぞれ向き合い、お互いの表情を確認して頷いて進む事を決めた。

 

 『水都を頼む』という歌野の言葉に全力で応える為に。

 

「分かった!」

「了解」

「じゃあ行くわね」

 

 三人は走ってNo.5の脇を通り抜ける。

 走っている最中にNo.5から不意打ちがくるかと警戒したが、そんな素振りはまったく見せなかった。

 

(本当に歌野一人しか眼中にないみたいね。それとも、上の階にまだ強い奴がいるのかしら)

 

 伊予島杏やNo.3も待ち構えているだろう。蓮華はより一層気を引き締めて上を目指す。

 

「歌野っ」

 

 芽吹は一旦立ち止まると振り返って歌野を見た。

 

「……今度こそ勝ちなさいよね」

「オフコース♪ 先行って待ってて。……あっ、なんだったらみーちゃん取り返して戻って来てくれてもいいからね」

 

 それだけ聞くと芽吹は先に行った二人を追いかけるように走り出した。

 

「よしよし。行ったね、地獄の釜口へ」

「何の話……?」

「あんたにゃあ……関係ない話さ‼︎」

 

 No.5は銃剣で歌野へ斬り掛かる。

 

 それを横に跳んで回避する。と、同時にベルトを大きく振りかぶる。

 

「ムチムチの〜(ピストル)〜〜ッ」

 

 相手もまたヒラリと身体を回転させて避けた。

 

 歌野は受け身をとってそのまま真っ直ぐに走る。

 

「ムチムチの〜銃乱打(ガトリング)ーーッ‼︎」

「甘い甘い」

 

 銃剣で度重なる猛攻をいなし続けていく。また自身も攻撃を見切ったかのように避けていく。

 

 避けられたり、いなされたりした攻撃は周囲の木材で出来た壁や床に当たり傷付けていく。

 

「ムチムチの戦斧(オノ)ォ‼︎ ……アンド、(ピストル)ーーッ‼︎」

 

 上に掲げたあと振り下ろす。それを避けられるも、すかさず二撃目を繰り出す。

 

「はいはずれ〜。カーバカーバ!」

 

 しかしその攻撃も上半身を左に傾けることでまたもや回避された。

 

「まっはは……って、お?」

 

 ベルトは避けた後ろの格子窓に直撃すると、格子窓は簡単に破壊された。

 

「……はぁー。下もそうだけど、めっちゃ壊してくれるよねぇ。人の家を」

「ホーム? この姫路城が?」

 

 右手で頭を抱えているようなポーズを取ってはいるが、口元は彼女の心情を隠しきれてはいなかった。

 

「ああそうさ。この城は私様の城で……この兵庫支部は、私様の兵庫支部なのさ!!」

 

 目を見開くと銃剣の切っ先を歌野の向けて発砲する。

 

「それをずけずけと土足でチャイムもなしに入ってきやがってからに……!」

 

 歌野は発射される弾丸をベルトで弾き落としていく。

 

「バーテックス襲撃時以来だろうねぇ、大社の玄関口にここまで踏み込んで荒らしまくってんのは……」

 

 今のNo.5は、この施設を荒らされた怒りと、そのリーダーである歌野を倒せる喜びとが混ざり合っている。

 

「このカバが。いつまで暴れるつもり?」

「死ぬまで!」

 

 歌野の振るうベルトとNo.5の振り翳す銃剣とがぶつかり合う。

 

 歌野は水都の奪還しか眼中にない。その結果、この施設をどれだけ壊そうとも二の次なのである。

 

「でもみーちゃんを返してくれたらやめてもいいわよ♪」

 

 その言葉にNo.5は軽く頷いて相槌を打った。

 

「ふむふむ、へぇ。……じゃあそうしようかっ。私様の城をこれ以上壊されるの嫌だし」

「あらっ?」

「ほら、早くこっち来なよ」

 

 No.5は後ろを向いて上階を目指して歩く。

 その予想外の対応に拍子抜けしていた歌野だったがすぐにあとに続こうとする。

 

「貴女っ、案外聞き分けが――」

 

「なぁああんてねっっ!」

 

 突然、No.5が振り向きざまに刃を振るった。

 

「うわっっお!」

 

 横一閃に払われた銃剣の刃を両膝を曲げて身体を後ろに倒す事で目の先スレスレで回避した。

 

「ちっ。避けやがったか」

 

 歌野はバックステップを踏んで距離を空けた。

 

「……良いなんて訳無いのよね。それもそうよね」

 

 歌野は笑って誤魔化す。対するNo.5も笑い微かに見えた八重歯が光る。

 

「準備運動はこのくらいでいいか。……そろそろ見せてあげるよ。私様の能力」

 

 そう言うと、口を大きく開けて歌野が壊した木製の格子を()()()()()

 

「わあーお‼︎ 木を食べたっ。よほどハングリーだったのね」

 

 ごくりっ と喉を大きく鳴らして飲み下す。

 

「ごちそうさま。……さぁてと」

 

 すると、No.5の身体に変化が表れた。

 腕は木の幹のような茶色に変わり、そこから枝のようにいくつかの手が生えてくる。

 

「身体が……木に⁉︎」

「おっっりゃあああ!」

 

 木に変化したNo.5から放たれる無数の枝のような拳が歌野を襲っていく。

 

「ぐ……。くっ……かはっ……!」

 

 守りの体勢に入るが余りの手数に押されてしまい床に膝をつく。

 

「見たかあ! これが私様の能力。『バクバクの野菜』の力さ! まーっははは‼︎」

 

 フロア一帯にNo.5の高笑いが響き渡る――。

 

 




 ここから本格的に戦いが始まっていきます。頑張れ白鳥さん。


次回 喰らえば血となり肉と化す
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