秘伝書クン   作:jejjsuususuwu

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時間かけすぎました。



風村颯太郎/影山零治

「豪炎寺修也君だよね?」

 

 雷門が先制し、帝国ボールから試合が再開される直前、豪炎寺にスーツを着た男が声を掛けた。

 

「……確かに俺が豪炎寺修也です。 一体何のご要件でしょうか? 部外者は学校の敷地内に入ることは禁止されていますが」

 

「ん? あーッ、私はこういう者です」

 

 スーツの上着に手を入れ、名刺入れを取り出し、そこから一枚の名刺を豪炎寺に差し出した。

 豪炎寺は差し出された名刺を受け取り、そこに書かれた名前を見て驚愕する。

 

株式会社エルドラド代表取締役
   

風村颯太郎

 

『風村』この苗字(みょうじ)は珍しくはないが、豪炎寺にはある人物の姿が思い浮かぶ。

 

「颯太、あっ、私の甥っ子でね? 数年前から一緒に住んでいるだよ。 ほら、試合に出ている背番号99番の」

 

 コートにいる風村颯太を指でさす。その表情は純粋な笑顔である。

 笑顔のまま風村颯太を指しながら、風村颯太郎は話す。

 

「実は颯太に頼まれごとをしてね、『君をサッカー部に入れて』って頼まれちゃたの」

 

 俺をサッカー部に? 何を今さら。 俺はサッカーをするつもりはない。夕香が目覚めるまで俺はサッカーを―

 

「『妹が目覚めるまでサッカーしない』って聞いたからさ、君の妹さん、豪炎寺夕香ちゃん? を目覚めさせたんだよ。 ついさっき」

 

「!?」

 

 衝撃を受ける豪炎寺を尻目(しりめ)に颯太郎は上着のポケットから携帯電話を取って電話をかける。

 呼出音(よびだしおん)が鳴る携帯を豪炎寺に渡す。

 受け取った携帯を耳元に持っていき、繋がるのを待つ。

 呼出音が切れ、通話ができるようになる。

 

「もしもし?」

 

『……もしかして、お兄ちゃん?』

 

「夕香!?」

 

 電話からの声は豪炎寺の妹である豪炎寺夕香のものであった。しかし、彼の妹は一年前の交通事故で意識不明でいつ目覚めるかわからない状態なのだ。

 

「夕香、何もされてないか! 無事なのか!」

 

 電話から聴こえる声は間違いなく妹の夕香のものであった。

 

『……? 大丈夫だよ? それより聴いたよ! お兄ちゃん、私のせいでサッカーを辞めたって』

 

「ち、違う! お前のせいじゃない! サッカーを辞めたのは俺の意思で……」

 

 久し振りの妹との会話。こんな気持ちで話したくはなかった。

 

『お兄ちゃん、お願いがあるの』

 

「な、何だ?」

 

『あのね、サッカーやって』

 

「!!」

 

『そこにいる、風村さん? が言ってたんだけどお兄ちゃん、私が眠っている間大好きなサッカーできなかったって』

 

『だがらね、夕香のこと気にせずサッカーやって。

 お兄ちゃんが好きだったサッカーを……』

 

 大好きなサッカーをする、そう考えただけで胸が熱くなる。その情熱はやがて火となり、爆炎となる。

 

「夕香、お兄ちゃんちょっとサッカーしてくるよ。それまでそこで待っていてくれないか?」

 

『うん! 待ってるね、お兄ちゃん!』

 

 豪炎寺修也は電話を切り、颯太郎に返す。

 

「これでサッカー部に入ってくれるよね? 豪炎寺修也君」

 

「……俺は、俺のサッカーをする。それだけです」

 

 彼の瞳に再び火が宿った。

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

1ー0

 

 四十年間無敗の帝国が無名のチームから先制点を奪われるという異常事態に驚愕していた観客や帝国選手たちもクールダウンし、帝国ボールで試合が再開する。

 

 

『雷門が先制点を決め、ボールは帝国学園からです!』

 

 帝国FW寺門は再開のホイッスルと同時にMF咲山(さきやま)にボールを渡し同じくFWの佐久間と共に雷門陣地に入っていく。

 雷門のFW染岡と風村は攻め入ってくる帝国イレブンに目もくれず帝国陣地を進む。

 その様子に驚きと侮辱を感じる寺門。

 

 帝国のエースストライカーに目もくれずにゴールに走るだと? 

 

 FW(染岡と風村)が守備に入らずゴールに向かうってことはコイツラ(仲間)が俺からボールを奪うことを確信しているからだ。

 

 俺たちは帝国学園。まぐれで取った一点で調子に乗りやがって。テメェらに見せてやる。

 帝国のエースの実力を。

 

 ボールを一旦佐久間にパスし、ゴールに近付こうとしたとき、雷門の背番号3番壁山塀吾郎(かべやまへいごろう)が寺門の前に出る。

 

 お前一人にトメられてたまるか! 

 

 強引に壁山を抜こうとしたとき、壁山は己の必殺技をくり出す。

 

「真ザ・ウォール!」

 

 要塞のように堅固な壁が立ち塞がる。

 壁山のブロック技だ。寺門からボールを奪った壁山は栗松にパスを出す。

 パスを受け取った栗松に佐久間がボールを奪おうと迫る。

 

「真まぼろしドリブル!」

 

「何!?」

 

 ドリブル技で佐久間を抜く栗松。己が抜かれるなど思ってもいなかった佐久間はフリーズする。

 そのスキをついてボールを少林に繋ぐ。

 ボールを受け取った少林は誰も想像していなかった行動に出る。

 

 

「真クンフーヘッド!」

 

 センターラインを越えた場所からの必殺シュート。

 予想外の行動に雷門の選手以外が驚いている中、染岡は少林の必殺技に更に必殺技をかけようとする。

 俗に言うシュートチェインだ。

 それを知るものはシュートチェインだと思った。

 しかし、それはシュートチェインなどではない。

 

「ドラゴンー」

 

 先程見せた青色のドラゴンが放たれる。それはゴールにではなく、()()()である。

 

「……まさか!」

 

「トルネード!!」

 

()()と共に回転しながらジャンプする風村。

 青いドラゴンに黒炎が加わり、ドラゴンの色は黒色に変わり黒炎を纏いながらゴールに向かう。

 

 青いドラゴンを上回る黒いドラゴン。

 先程のシュートとは違い距離があり、奇襲ではないため、帝国ゴールキーパー源田は己の必殺技を発動する。

 

「パワーシールド!」

 

 必殺技の発動と共にオレンジ色の衝撃波がゴールを全方位から護る。どんな方向からでも対処可能な万能の必殺技であるパワーシールド。至近距離からのシュートのみが弱点である。

 

 黒いドラゴンと衝突する。その瞬間、パワーシールドの衝撃波にヒビが入り、砕け散る。

 パワーシールドでは抑えられないパワーに、ボールと共にゴールに押し込まれる源田。

 雷門の追加点である。

 

2ー0

 

 無名校の雷門中が帝国学園から先制点を奪っただけでなく、追加点を決めた。それも圧倒的な実力差で。

 

 

 追加点を入れたドラゴンの必殺技とファイアトルネードと酷似した必殺技のオーバライド。

 どちらか一つでも帝国のゴールをこじ開けることが出来た。

 にも関わらず、なぜ風村はオーバライドを? 

 それもファイアトルネードと酷似した必殺技で? 

 

 地面に降り立った風村颯太は豪炎寺に向かって口角をあげて笑った。

 テストで100点を取ってクラスメイトに自慢するかのように。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

「おお! 去年よりパワーアップしてる。 確か、『ダークトルネード』といったかな? あの技。 豪炎寺くんも颯太と似たような必殺技持ってたよね? 名前何だっけ?」

 

 となりからの言葉が耳に入らぬほど、豪炎寺修也は驚愕する。 まさか、『ファイアトルネード』と似たような必殺技が存在していたとは。

 名前やモーションは似ていても、その威力までは全く似ていない。

 

 回転、炎の勢い、豪炎寺のファイアトルネードを上回る黒い炎。

 

 だが、それを見て劣等感は感じなかった。

 強面の11番が青い巨大なドラゴンを放った彼とツートップを張る風村が弱いとは思っていない。

 練習を続ければいつか自分もあのレベルに達する日が来るだろう。

 しかし、今あのレベルと対等以上に戦うことは出来ない。

 例え雷門サッカー部に入部したとしても()ぐには強くはならない。次のF F(フットボールフロンティア)まで時間はない。一体どうすれば……。

 

 颯太郎は手に持っていた(かばん)を豪炎寺の目の前に出す。

 

「この中に入っているモノを使えば君は強なれる。 彼等よりもね」

 

「!! ドーピングなんて俺は―」

 

「ドーピングじゃない。スパイクとミサンガさ。使う、使わないは君の自由だけど、強なりたいなら使ったほうがいいけど、どうする?」

 

 颯太郎の提案に怪しいと思いながら鞄を受け取り、中身を確認する。中にあるのは颯太郎の言うとおり、スパイクとミサンガだった。

 しかし、店で売られているような既製品ではない。

 スパイクには炎を彷彿させるような模様が入っており、ミサンガは獰猛な火炎の様に真っ赤である。

 

「これは一体?」

 

 豪炎寺の呟きに颯太郎は答える。

 

「それは君専用のアイテム。 名前を付けるなら『爆炎のスパイク』と『炎のミサンガ』かな」

 

 鞄からミサンガを取り出し、右手に着けてみる。 すると、身体の奥から力が湧き上がってくる、としか言いようが無いほどの力が豪炎寺に(みなぎ)る。

 突然の出来事に驚き、ミサンガを右手からはずす。

 

「どうだい? 使う気になったかな」

 

「……いや、やっぱりいい。 俺は道具の力になんて頼る事はしない。 自分の努力で実力を付ける。 雷門サッカー部だって、そうやって強くなったはずだ」

 

「でもそれは時間をかけ過ぎする。これを使えば君は強くなる。 ドーピングだとか、不正を疑われるものじゃない。 言ったろ? 君専用だって。 それらは君の潜在能力をある程度引き出してくれる。 遅かれ早かれ開花するなら、早いほうがいい」

 

「道具に頼って力を手にするのは悪いことじゃない。 君が別人のように強くなっても誰も君を非難しない。

 あいつは才能がある、だとか、特別だからといった言葉で凡人たちは君を決め付ける。

『炎のエースストライカー』と呼ばれる君を羨むことがあっても、非難するものは誰もいないさ」

 

 デメリットなく力が手に入る。それはまさしく悪魔の誘惑。それに豪炎寺は抗う。自分のサッカーをすると妹に約束した。サッカーを楽しむのだと。サッカーに掛ける思いが誘惑に勝利した。

 

「道具に頼った力なんて俺は欲しくはー」

 

「君の意思はわかった。 でも結論を出すのはまだ早い。

 この試合の終わりにまた聴かせてよ。 その頃にはたぶん、君の意志は変わってると思うけど」

 

 風村颯太郎を(いぶか)しむ豪炎寺。

 それを全く気にせずに試合を観戦する颯太郎。

 

 豪炎寺はこのとき、「コイツラ(風村ファミリー)を夕香に近付けない」と誓った。

 視線を颯太郎から離し、帝国キャプテン・鬼道を観る。

 圧倒的な攻撃力を持つ雷門に対し、帝国がどう対応するのか、はたまた、雷門がねじ伏せるのか、この試合の行く末を颯太郎と共に見ることにした。

 

 

 ☆☆

 

 

2ー0

 

 スコアボードに映る雷門と帝国のスコア。

 帝国イレブン含めた観客たちも帝国が圧勝して終わりだろうと思っていた。しかし、試合開始から10分と経ってはいない中、雷門が帝国から2点を奪い取ることを彼らは予想もしていなかった。

 その結果、帝国イレブンたちは先制点を奪われたとき以上にチームの雰囲気が重くなる。

 

「クッソ、あいつらふざけやがって!!」

 

 そう(こぼ)すのは寺門だ。

 彼にあった『帝国のエース』という自信には亀裂が走る。

 

「落ち着け、寺門。 焦ったままじゃ、奴らの思い通りだ」

 

 荒れる寺門に対し、同じくFWの佐久間が(なだ)める。

 しかし、それでも収まらないのか寺門は鬼道に詰め寄る。

 

「総帥の目的の人物は単独なんでしょ! 鬼道さん、アイツラ一体何なんです! 俺たちを越える身体能力に必殺技、技術、アイツラが総帥の仰る人物なんですか! 答えてください!」

 

「おい、寺門やめろ」

 

「うるせェ! お前も、いや、他の奴らも気になっているだろ! アイツラの、雷門の正体を!」

 

「そ、それは……」

 

 口躊躇(くちためら)う佐久間。他の帝国選手たちも心当たりがあるようで鬼道がどう答えるか、視線を集中させていた。

 視線を向けられた鬼道は総帥である影山からの指示の内容をチームに話す。

 

「……総帥の指示では雷門に転校してきた豪炎寺修也の実力を判断するために弱小のはずの雷門イレブンを徹底的に痛めつけ、豪炎寺をひきづりだすこと。 これが総帥からの指示だ」

 

「ちょっとまってください! それじゃ答えになっていないでしょ! 俺たちは雷門の正体が知りたいんだ! アイツラの強さの秘密を!」

 

 叫ぶような声色(こわいろ)に鬼道は眉を(ひそ)める。

 

「お前たちポジションにつけ。 試合が始まるぞ」

 

「まだ答えを聞いていないですよ鬼道さん!」

 

「二度も言わせるな、早くポジションにつけ」

 

 それだけ言って鬼道は自分の位置につく。

 その背を見ながら寺門を始めとする数人は鬼道の対応に不満を漏らす。

 このままではチームの連携が崩れ、得点を許してしまうだろう。

 

 鬼道はチームの危機を理解し、されど何も指示を出さない帝国学園総帥・影山の考えを理解できずにいた。

 

 

 ☆

 

 

 帝国学園総帥・影山零治(かげやまれいじ)

 彼は雷門と帝国の試合を総帥室から画面を通して観ていた。

 そばにはガルシルドに仕えていた『ヘンクタッカー』がいる。

 もともとヘンクタッカーはガルシルドの秘書であり、ガルシルドの裏側の一切を取り仕切っていた。

 しかし、仕えていたガルシルドが何者かに襲撃され、『吐き気を催す邪悪』から『黄金の精神の持ち主』となってしまい、ヘンクタッカーとその一味は、反転前のガルシルドほどではないが、邪悪な精神を持つ影山に仕えているのだ。

 

「総帥、雷門の実力は帝国のメンバーを(はる)かに上回(うわま)っておりますが、いかが致しましょうか」

 

 己が手塩(てしお)にかけて育てた鬼道が率いる無敗のチームが弱小といわれる雷門に圧倒されていることに影山は眉一つ動かさずにいた。そんな気はしていたのだ。

 

「……ヘンクタッカーよ、もし、次、帝国が得点されれば、あの必殺T T(タクティクス)を使わせろ」

 

「はっ、承知いたしました」

 

 そう言って、ヘンクタッカーは総帥室から退出する。

 

 一人総帥室にいる影山は画面に映る風村颯太を観て、今から7年前のことを思い出す。

 

 世界征服を企むガルシルドが襲撃され、人格が反転してしまった。

 

 何を言っているかわからないが簡潔(かんけつ)にまとめるならこうとしか言いようがない。

 

 ガルシルドの突然の変貌(へんぼう)コチラがわ(闇の世界)の世界は混乱に陥り、大恐慌となった。

 その結果、多くの組織、人物が警察や、敵対組織に壊滅(かいめつ)に追いやられる中、影山はその(すぐ)れた頭脳(ずのう)と卓越した戦術眼(せんじゅつがん)によって損害を軽微(けいび)に抑え、国内外問わず、多くの組織から資金や、技術、土地等の資産を手に入れ、己の地盤をより強固なものとした。

 ガルシルドの一件から2年が過ぎ、情勢(じょうせい)が安定してきた頃、ガルシルドの変貌に関して、様々な噂が飛び交った。

『国際警察に洗脳された』『多国籍企業の連合に潰された』

といったものから、『神が罰を与えたのだ』という神罰論(しんばつろん)まで出てきた。

 

 どれも胡散臭(うさんくさ)い噂だと思ってた。

 その中でも『多国籍企業の連合に潰された』というのがまだ現実的に起こりそうな事だと考え、調査した。

 初めは対した手がかりを見つけることはできなかったが、数ヶ月経つと、情報が手に入るようになった。

 しかし、それらの情報はどれもおかしなものだったが、

 情報を一つにまとめて推理するととある人物が調査線上に浮かび上がった。

 

 

《center》株式会社エルドラド 代表取締役(/center)

《center》風村颯太郎(/center)

 

 突如あらわれたこの人物を新たな調査対象として、一年に及ぶ調査の結果、対象のあらゆる情報を調べることに成功する。

 

 性別は男で、年齢は33才、両親はすでに死去。

 唯一の兄弟も義理の姉と共に交通事故で死去。実の兄の子供を引き取り、住み込みで働く家政婦が面倒を見ている。

 最終学歴はアメリカハーバード大学を首席で卒業。

 その後、エルドラドという会社を起業。

 11人の従業員が働いており、業務内容は最先端技術を用いた医療器具、半導体の生産と販売を行っている。トップである風村颯太郎自身が営業をしており、国内だけにとどまらず、国外にも展開している。

 風村颯太郎の代わりに専務の藤堂(とうどう)という男が会社運営を行っている。

 身長は178センチ。体重62キロ。

 趣味は無し。 しかし、義理の兄の息子を溺愛している。

 

 上記の情報をもとに、風村颯太郎がガルシルドの件の犯人なのか確かめるため、自分と全く関わりのない組織に風村颯太郎を襲撃するように(そそのか)した。

 その結果、その組織は文字通り壊滅。在席していた人間は勿論、その家族や金融資産がまるごと消失していた。

 この報告を受けて影山は風村颯太郎がガルシルドの一件の黒幕だと確信した。

 

 君子危うきに近寄らず。

 

 影山は自分が行った悪事の一切を(ほうむ)り、帝国の総帥として君臨し続けている。

 

 それから7年たち、最高傑作(鬼道有人)が誕生するも

 脅威となる選手(豪炎寺修也)が現れた。その時は彼の家族に起きた不幸な事故のおかげでなんとか事無きを得た。

 だが、その脅威となる選手は、影山に因縁(いんねん)のある雷門中転校していた。

 炎のエースストライカーが全国レベルのチームに入れば帝国の脅威となる。

 雷門は脅威足り得るのか、ヘンクタッカーに調査させた。

 

 その結果は影山に危機感を抱かせた。

 復活した雷門は公式試合に出場したことがないが、選手にあの円堂大介の孫が、そして超危険人物の血縁者がいた。選手のみが厄介なのではなく、監督も一筋縄では行かない人物だ。雷門の監督を務めのは久藤道也(くどうみちや)

 彼が前に監督として率いたチームは『平凡』と自分なら評価するチーム。

 そのチームを一年でF F(フットボールフロンティア)全国大会レベルにまで仕上げ、出場させた。

 その時は運良く相手側が不祥事を起こしてくれたので帝国は苦戦することなく優勝した。

 

 わかるだろうか。

 キャプテンに円堂大介の孫。

 エースに豪炎寺修也と風村颯太郎の甥。

 監督として久藤道也。

 更にここに響までもが合流する可能性がある。

 

 運命とかいうクソったれが、この影山零治をゆっくりと、だが確実に、引きずり落とそうとしているとしか思えない。

 ならばこちらから先に仕掛けてやろう。

 先手必勝。

 未だ実力の程が知れない雷門だが、帝国の敵ではないだろう。そう思い、鬼道たちを雷門に送り込むことにしたのだが、不思議と嫌な予感がした。何か見落としているかのようなそんな気持ちの悪い予感が。

 その時は気のせいだろうと割り切り、実行に移したのだ。

 

「だが、これほどの見落とし、いや、誤算というべきか」

 

 息を軽く吐き、背を椅子に預ける。

 甘く見積もっても帝国の六割強位だと思っていた雷門の実力は完全に影山の予想を超えていた。

 実際は帝国メンバーを圧倒するほどに強い。

 子供と大人、ともいえる。

 雷門がここまで強くなったのは、監督である久藤道也の指導力と円堂大介の孫を中心とした選手たちの努力の賜物(たまもの)だろう。

 このままでは帝国は雷門に一点もとれないまま敗北を(きっ)することになる。それは帝国の無敗神話の終了と同時に影山零治のサッカーの敗北である。

そんなことは決して認めることは出来ない。

 

「試合に勝つのは何も得点だけではない。例えば、選手全員が試合続行不可の怪我をする、とかな」

 

 誰もいない部屋でそう呟いた。

 

 

 

 




9年前

5歳児 風村颯太
「おじさんあのね、ガルシルドってやつがね、ものすっごく悪いの。退治して(懇願)」

風村颯太郎
「ガルシルドって裏側で色々やってるヤバイやつのこと?」

5歳児 風村颯太
「そうだよ」

風村颯太郎
「あっ、いっすよ。 前から嫌いだったし」

7年前

風村颯太郎
「ん?どっかの組織が俺のことを狙ってる?潰さなきゃ(使命感)」
            ⬇
「コイツラけしかけたやつ、影山零治って名前なのね。
どうしよっかなー。悪そうだし、消しておこうかな」

7歳 風村颯太
「おじさーん! 円堂大介の秘伝書とエイリア石っての探してきてよ。俺、誕生日プレゼントでほしいんだよね」

風村颯太郎
「おじさん、今忙しいんだよね。 ミタさんに頼んでよ」

7歳児 風村颯太
「やだ。どっちか一つでもいいから」

風村颯太郎
「…わかった。でも、どれか一つだけね。本当に忙しいんだよ? 藤堂のおじさんが事務仕事もしろってうるさいから」

7歳児 風村颯太
「じゃあ、エイリア石で。 場所はたぶん富士山の頂上にあるはずだから」

風村颯太郎
「任せとけって」

六年と5ヶ月後

風村颯太郎
「結構前に俺を襲った奴の名前って何だっけ。たしか、影なんたら」

14歳の風村颯太
「おじさーん! 部活の皆をサプライズで富士山合宿に連れていきたいからヘリ貸して。 あと建築用の鉄球も」

風村颯太郎
「…ヘリってそこそこするんだよ? 鉄球は知らんけど。 まあ、いいよ。 いつ必要?」

14歳の風村颯太
「うんとね。 サプライズしたいから、明日の深夜なんてどうかな」

風村颯太郎
「明日の深夜ね。 了解」

「あれ? 名前何だっけ? ………考えても出てこないし、まっいっか」

ガルシルドのみを狙い撃ちしたから影山が運気も含めて強化されちゃったんだよね。
まっいっか。で颯太郎が影山を済ますから甥の颯太がいつか苦労するんだよね。

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