秘伝書クン   作:jejjsuususuwu

6 / 8
遅くなりました。


全員攻撃/全員守備

 雷門対帝国の一戦。

 雷門が前半に2点を先取し、前半12分。

 再び帝国のボールから試合が再開される。

 しかし、帝国側の士気は低い。

 彼らの中にあった王者としてのプライドを弱小と侮っていた雷門に砕かれたのだから。

 その現状にチームを指揮する司令塔である鬼道有人は歯噛みする。

 

 司令塔として、選手としてわかる。

 今の帝国では雷門には勝てない。

 

 この事実を鬼道は帝国の誰よりも理解していた。

 現状を打破(だは)することは難しい。

 だが、それは正攻法での話である。秘策を用いれば勝てないことはない。

 しかしそれは、帝国が雷門に実力的に完全に劣っていることを証明することであると同時に、サッカー選手としての矜持(きょうじ)()てることである。

 その選択を鬼道が選ぶことはないし、帝国の他のメンバーたちも望まない。

 正攻法で攻めるのなら、実力で劣る帝国は雷門の隙を見付けてそこを突くしかない。

 しかし、これほどの力を持つ雷門が隙となる弱点をそのままにしておくことは考えられない。

 やはり、秘策を用いるべきか、いやしかし…………。

 

 敗北(プライド)勝利(体裁)か。

 

 伝統ある帝国のキャプテンとして、司令塔として、鬼道は揺れ動いていた。

 そんな鬼道に総帥(影山)から指令が(くだ)される。

 

 次、点を取られたら必殺T T(タクティクス)を使え

 

 それは鬼道がブライド故に使わなかった秘策を使えと総帥である影山が態々(わざわざ)指令を下したのだ。

 鬼道に緊張の汗が(ほお)を流れる。

 秘策であるT T(タクティクス)は雷門の選手たちをひどく傷めつけるだろう。もしかすればもう一生サッカーをプレイすることは出来ない。

 

 そんなことは絶対に起こさない。

 もう二度と雷門に追加点は取らせない。(帝国に必殺タクティクスを使わせないでくれ)

 

 そう決意し、フィールド全体を観る。

 ここからが司令塔としての鬼道有人の底力を見せるときだ。

 

 

 ☆☆☆

 side風村颯太

 

 帝国学園って予想通りだけど、やっぱ弱いな。

 そら、他の学校と比較(ひかく)すれば帝国は最強かも知れないけど、超強化雷門に勝てるとは思えない。

 原作では帝国は大量得点してたけど、この世界線では雷門が優勢。ここから負ける展開なんてありえないだろう。

 

 現在、雷門のレベル

 精神はそこそこ。

 技術は世界レベルと比べても遜色(そんしょく)無し。

 身体能力はジェミニストームと同等。

 必殺技は多くがカンスト(最終進化)一歩手前。

 

 心技体(しんぎたい)+必殺技のバランスが悪いが、これに帝国が勝てる道理は無いだろう。

 もし、ゴール手前まで来ても、円堂守(守護神)が絶対に止める。

 あとは俺や染岡が点をガンガン取れば試合終了。

 最終スコアは0対30はいけるだろ。勿論、雷門が30だが。

 たが、相手を()めてはいけない。

 司令塔に鬼道、監督に影山がいるのだ。

 とんでもない盤外戦術(鉄骨落とし)を仕掛けてくるかもしれない。

 いや、間違いなく仕掛けてくるだろう。

 

 だって影山、原作ならデッカイ戦車みたいな乗り物に乗っているはずなのに居ないし。

 これ絶対ヤバい何か仕掛けてくるだろう。 

 というか、叔父さんがガルシルドを潰したって聴いたときは影山も連座(れんざ)していると思っていたけど、普通に帝国の総帥やってんのね。

 名前に『鬼』と『瓦』が付いている刑事さんは仕事してるんですかね。

 あっ、でも鬼瓦刑事って最初はガルシルドのことを調べていて、そこから影山にたどり着いた? 

 これって俺の預かり知らない所で鬼瓦刑事の活躍奪ってた? 

 イナイレの細かいトコは忘れてるし、よく分からん。

 

 ……け、警察が暇な方が平和だから(震え声)。

 しょうがないよね。うん。忘れよ。

 

 

 帝国から2点を取ったが、豪炎寺は理解してくれただろうか。

 俺の『ダークトルネード』は豪炎寺の『ファイアトルネード』よりも威力も回転も勝っている。

 俺のことをライバルだと思って、このあとサッカー部に入部して来てくれないだろうか。(染岡でも可)

 夕香ちゃんが目覚めないとやっぱダメ? 

 叔父さんに頼んだから目覚めるとは思うけど、手段については何も言ってないから強引(ごういん)なやり方してないといいけど。

 

 マックスこと、松野空介が俺に話し掛けてくる。

 

「風村どうする? メガネの分析や久藤監督の作戦がなくとも、帝国と俺たちの実力差は歴然。 あと、ボールをこっちに寄越せ」

 

「どうもしない。 ボールはやだ」

 

 そこに風丸と染岡が入ってくる。

 風丸がマックスの意見に同意する。

 

「マックスの言う通りだ。 俺たちのレベルと帝国のレベルはまったく違う。初めての試合だから気合を入れていたが、ここまで実力に差があるとちょっと不憫でな。

このままじゃ、帝国の面目(めんもく)が丸潰れだ。

手を抜けとは言わないが、染岡と風村は実力を抑えてほしい」

 

 まあ、落胆ってのは分かる。

 想定したより、帝国弱いもん。

 ……風丸の言動に違和感を覚えるな。なんだ? この違和感は。

 

「気持ちは分かる。 けど以外だな。 風丸が実力抑えろなんて。 普段のお前ならそんなこと言わないだろ」

 

 そうだよ! 普段はマジメな風丸が実力を落とせなんて言わない。染岡が俺の違和感を言葉にしてくれた。

 

「フッ、簡単なことだ。お前や染岡ばかりがシュートを決めていたんじゃ他の奴らが楽しめないだろう。

 次、ボールを持ったら俺たちにも回してくれ」

 

 ……風丸って闇落ち(エイリア石)挫折(ジェネシス)を経験せず強くなると性格悪くなるのな。

 

「朱に交われば赤くなる。 そういうことだよ。風村」

 

「!? 俺の思考読み取った?」

 

「ああ。 小野がサッカー部全員に教えてくれたぞ? 風村の思考の読み取り方」

 

 風丸もそうだけど雷門サッカー部性格変わりすぎじゃないか? 

 ふゆっぺは王道ヒロインから鬼怖マネージャーに。

 影野は注目されたい少年からファンクラブができるイケメンに。

 守備の穴でイナイレファンから嫌われ、『帰国の準備をしろからのブゥゥゥゥン』等の扱いをされる栗松はこの世界では守備の要。

 栗松、意外なことに久藤監督からの評価は高い。円堂の後のキャプテンは栗松、というのはサッカー部共通の認識だ。原作の面影はない。

 染岡やマックスたちを差し置いて代表入りしただけのことはある。

 栗松が帰国したのはやはり怪我が原因だったな。

 

 変わっていないのは、宇宙一のサッカー馬鹿、円堂守ぐらいか。

 にしても、ここまで変わってしまったのはやっぱり俺の影響か? こんなにも原作と違いすぎるとこれからの展開がまったく読めない。 豪炎寺がサッカー部に入部かつ原作通りエイリア学園が攻めてきて沖縄に行かないと松風天馬くん死んじゃうし。 天馬死んだら誰が神童や剣京介たちを率いてフィフスセクターを倒すんだよ。

 フィフスセクター倒してもクロノ・ストーン編は? 

 天馬が幼児期に死んだのなら天馬の子孫であろうSARUも居ないし、セカンドチルドレンたちはバラバラ。各々が勝手に力を使って最期は力に耐え切れずに死亡。

 

 ……正直言ってまだ、ホーリーロード編、クロノ・ストーン編はまあいい。

 フィフスセクターは叔父さんに潰してもらえばいい。

 クロノ・ストーン編は俺や円堂が二百年後の世界に殴り込めばいい。けど、ザ・ギャラクシー編はマジキツイ。

 ソウルが無ければ勝てなさそうだし、特にイケボ宇宙人(オズロック)。例え優勝できたとしてもファラム・オービアスの女王を良い方向に成長させるなんて無理だし、カトラが夢の中にやって来て、星の欠片について話すのは天馬じゃないと無理っぽい。

 …………いや、待てよ。俺達だけじゃ無理でも、セカンド・チルドレンも含めればいけるじゃね? あとちょっと特訓すればソウルも出せそうだし、何なら瞬木隼人(またたぎはやと)たちも入れて戦えば勝てるだろ。

 カトラは円堂なら星の欠片について話してくれると思う。天馬と同じかそれ以上のサッカー馬鹿だし。

 ファラム・オービアスの女王は……叔父さんに任せるか。

 以外にも天馬居なくてもなんとかなる気がしてきたな。

 居たほうがきっといいだろうけど。

 

 豪炎寺が雷門に加入しないだけで最終的に銀河の命運まで変えてしまうなんて、サッカーって何なんだろな。

 

 

 ☆☆

 

 

 大きく息を吸い、全身に酸素を行き渡らせ、血が身体を巡る。

 恩師から貰ったゴーグルは他人が想像するよりフィールド全体がよく見える。

 試合開始を告げる本日三度目の笛の音は鬼道にとって、ゲームメイクを一切間違えられない戦場の開戦を告げる物でもあった。

 寺門からボールをパスされ、ボールを受け取った鬼道。

 鬼道は帝国の選手たちに驚きの指示を出す。

 

 鬼道の指示に一瞬戸惑う帝国イレブン。しかし流石は日本一の選手たち。直ぐに我に返り、鬼道の指示通り動く。

 

『ん? な、なんと帝国イレブン! 全員が自陣深く下がって、ゴール前での全員守備だ!?』

 

 帝国イレブンが自陣のゴール前に集まり、ボールを持った鬼道を中心に強固な防御陣を敷く。

 帝国学園がゴール前での全員守備を行うことに観客たちは驚きの色に染まる。「こうなっては雷門は点を取れない」

 と観客たちは思う中、雷門イレブン達は帝国の意図を察し笑った。

 

「おもしれェ、そっちがそれなら(全員守備)こっちは、これで(全員攻撃)行くぜ?」

 

 ゴールキーパーである円堂も含めた雷門の全員攻撃。

 向かってくる雷門を迎え撃つために鬼道は守備に特化した布陣を築くため、帝国イレブン全員に指示を出す。

 

「寺門、佐久間、咲山、洞面、11番(染岡)99番(風村)をマーク! 鳴神、辺見、五条は雷門のパスコースを塞げ! 大野、万丈、源田はゴールを守れ!」

 

 その指示は到底、40年間無敗のチームとは思えない内容。しかし、高い攻撃力を持つ雷門による全員攻撃(フルアタック)。これを凌ぎ、得点に繋げるにはこうするしか無いのだ。攻撃を棄て、防御にのみ力を尽くすこの指示に帝国イレブン達は不満気な表情を見せずに鬼道の指示通り動く。それが帝国のサッカーであり、勝利への道だからだ。

 

「「「おおっ!」」」

 

「「「任せろ!」」」

 

 活き良く応える帝国イレブン。

 

「突っ込め!!」

 

 雷門の先頭が帝国のFW陣と接触する。

 ここからはボールを奪い合う戦場である。

 現在ボールを持っている鬼道を目掛けて雷門は突き進む。

 しかし、帝国の選手たちがそれを許さない。

 攻撃の要のFW、風村と染岡の二人に対して帝国は四人でマークし、人数差を活かして風村と染岡を分断する。

 

 一対ニ。一人のプレイヤーに全国最高峰の選手が二人も付く。二人とも対象のプレイヤーをフリーにしないため、全力を以って抑える。いくら全国最高峰の選手と云えど、全力を出し続けるのは不可能だ。

 風村と染岡を抑える四人の帝国選手たちの想いは一つ。

 

「鬼道の指示通り動く。この二人を自由にはさせねェ」

 

 そのためなら前半で自分たちが潰れる事も許容の範囲内だ。それ故に身体能力と技術で遥かに勝る風村と染岡は自分たちをマークする彼等を振り切れなかった。

 無論、風村と染岡が全力を出せば容易に振り抜ける。

 しかしそうしないのは雷門と帝国の選手層にある。

 

 雷門の選手人数は12人。 帝国はベンチも含めれば雷門の倍以上の人数。

 未だ帝国の総てを把握していない段階で全力を出せば後半に必ずバテる。

 帝国は選手を幾らでも変えられるが、雷門は試合人数ギリギリだ。そうそう全力は出せない。

 

 だが、身体能力、技術が共に帝国より上の雷門はそのぐらいのハンデを物ともしない。

 

「FWが居なくても、自分が決める」

 

 エゴイストな自意識が雷門の選手たちにはある。ゴールキーパーの円堂も含めてだ。

 身体能力、技術で帝国より上であり、そういった自意識を持つ雷門からすればこの状況は決して不利なものではない。 (むしろ)、好都合。

 FW二人に四人が付くなら、それ以外のところでは雷門10人に対し、帝国7人。雷門が人数で勝る。

 心技体+人数。帝国の雷門FW二人をを無効化する策は結果的に雷門に追い風となった。

 

 ☆

 

「退屈ですね、これは」

 

 そう呟いたのは雷門ベンチにて試合を観察している目金欠流(めがねかける)だ。彼の役割は情報の収集と分析等。試合開始から雷門が苛烈に帝国を攻め立てる今現在迄の両チームの戦力、選手の身体能力と技術を独自に分析し、ここから先の展開を予測する。

 

 乱戦となり、雷門の猛攻で手一杯の帝国。

 ここから帝国が正攻法で得点を決めるのは極めて難しい。

 雷門と帝国では自力が恐ろしいほど離れている。

 雷門が十なら帝国は三。

 帝国が一点を取るには雷門の裏を掻いた一手を打たなければならない。

 しかし、そんな一手は簡単には出てこないし、思いついたとしても雷門の選手が許さないだろう。

 よっぽどの秘策が帝国に無ければ、雷門は帝国に30点以上の点差をつけて圧勝する。

 雷門を自陣のゴール付近に集めるという戦術は体力で劣る帝国が先にバテる。FW二人に帝国は四人をマークに付けていることを考えれば帝国選手一人辺りの負荷は尋常ではない。あと、十分かそこらで帝国の体力は底をつく。交代で優秀な選手たちを出してきても所詮はスタメン入りできない選手だ、脅威ではない。

 

 そう結論付けた。目金の分析は概ね正しい。

 もし、鬼道以上の選手がいて試合に出場するのなら自分(目金欠流)が指揮を取る。

 帝国は司令塔を置いているが、雷門にはそんな存在はいない。マックスと風村が似たような事をしているが、あんなものは戦術とは言えない。

 帝国の戦力を分析するという役割がなく、スタメン入りしていれば今より雷門は優勢に試合を進められていた。

 歯痒い思いが目金にはあった。しかし、それは前半までの話。後半からは自分も試合に入る。そうなれば雷門はもっと強くなる。

 

「まあ、待つとしましょう。 『ヒーローは遅れてやってくる』といいますし」

 

 かけていた眼鏡を取り、ハンカチでレンズを拭く。

 雷門中学校サッカー部に所属している選手の中で、目金欠流は単体の必殺技を持っていない。にも関わらず、彼が風村、染岡と共にFWをやっているのは訳がある。

 

 本人曰く、『FWなんてカッコいいでしょう?』

 

 久藤監督曰く、『やる気があるのなら良い』

 

 染岡曰く、『心意気が気に入った』

 

 そして風村曰く、『面白そうだから』

 

 FW陣と監督が認め、本人がやりたいならという事で彼はFWとして雷門に所属している。

 

 目金欠流(めがねかける)。雷門中学校サッカー部所属。

 FW、情報収集分析係、戦術アドバイザー、マネージャー予備軍。彼のサッカー部における役割である。

 しかしそれはだけが彼の役割ではない。

 

 彼の本当の役割それは、FW兼情報収集分析兼戦術アドバイザー兼マネージャー予備軍兼

 

 ー司令塔(しれいとう)

 

 

 

 




作者は栗松が嫌いではありません。
まあ、初代では栗松が世宇子戦でミスを連発して円堂のTPが枯れて、3−2で負けたけど嫌いではありません。







「あとちょっと特訓すればソウルも出せそうだし」

これ、クロノ・ストーン編のセカンドチルドレンが特訓すれば、とは言ってないんだよね。
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