秘伝書クン   作:jejjsuususuwu

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遅くなってすいません。


キャプテン①

 

 

 龍の出現以降、試合は硬直状態に陥った。

 円堂を除く他の選手達が、龍の存在感と咆哮に恐怖し、力を発揮できなかったからだ。

 特に雷門の選手たちはその影響が顕著であった。

 長い者で二年、風村颯太と一緒にいた。

 一人の人間を知るには短い時間だが、共に苦楽をともにしてきた雷門イレブンは、風村という人間について知っていた。 いや、知っているつもりであった。

 

「風村のことならば、他人よりも知っているし、風村も自分のことを知ってくれている」

 

 必殺技という超次元な技を持つ彼等でも許容することのできない『龍』という恐怖に彼等の『信頼』は崩れかけているのだ。

 

 

 一方、帝国側は雷門の弱体化を早々に察知し、一気に攻めて逆転しようと、意見が出たか、キャプテンである鬼道が不確定な情報だけで動くのは危険と判断した。

 それに対して、寺門、鳴神、辺見、源田の四名は不服の申立をするが、鬼道はそれを却下した。

 帝国の他の選手たちは、チームの雰囲気が悪くなっていくのを肌で感じていた。

 

 前半は終わり、試合はハーフタイムに突入していた。

 

「鬼道さん! やっぱり俺たちは納得行きません!! 前半40分からは奴等、意気消沈していて好機だったじゃないですか。 わざわざ試合を膠着させる意味がわかりません!」

 

 寺門が鬼道に不満の声を上げる。

 鳴神、辺見、源田は寺門に賛成のようで、鬼道に厳しい目を向ける。

 他の選手たちも、どちらかといえば寺門寄りの意見を持っていた。

 

「お前たちに話すことはない。 後半も、俺の指示どおり動いていればいい」

 

「…………確かに、鬼道さんはチームのキャプテンで、司令塔です。 ですが今回ばかりは関係ありません! 俺たちは帝国学園なんですよ! 帝国の無敗伝説を終わらせるつもですか!!」

 

「寺門の言うとおりだ。 俺たちは帝国学園。 敗北など許されない。 今こそ、チー厶一丸となって闘わねばならないはずだ。違うか、鬼道?」

 

 寺門と源田の言葉を受け、元凶である雷門の選手たちに視線を移す。

 向こう(雷門)は何やら盛り上がっており、鬼道の視線に気づかない。

 視線を雷門から帝国の仲間たちを向ける。誰も彼も日本中から集まった秀才、天才達だ。 纏まりが無くとも、下手なチームに負けることはない。しかし今、雷門という無名のチームに先取点を許し、二点差をつけられ、前半を終えた。 源田の言うとおり、チームが一丸とならなければ敗北する。そのために、先ずやるべきなのは……

 

 

 Side:秘伝書クン

 

 ヤッベー。 久しぶりに出したわ、ソウル()

 アイツ、まったく制御できないから嫌いなんだ。

 5歳くらいの誕生日プレゼントに、エイリア石を叔父さんに強請(ねだ)ったけど、失敗だったなコレは。

 

 5歳の頃、風村颯太は手に入れたエイリア石を使い、自分の遺伝子を組み換え『化身』と『ソウル』を出せる強い身体を手に入れようとした。元々の遺伝子が人類史上最高峰とも言えるものだったので、エイリア石による肉体の強化はもはや、()()と言っても過言ではなかった。

 どれほど身体が変わったのか実験を行うと、通常ではあり得ない数値が叩き出された。

 身体能力は勿論のこと、記憶力、味覚、嗅覚等も人間のレベルを遙かに上回っていた。それだけでなく、念力や念話、発火現象(パイロキネシス)、所謂『超能力』が発現した。

 風村颯太は、この進化を二百十年後の()()に匹敵すると確信し、その進化を傍らで見ていた叔父の風村颯太郎は、歓喜の悲鳴をあげた。

 エイリア石によって進化した風村颯太を、叔父の風村颯太郎は『セカンドステージ・チルドレン・ザ・ファースト』と名付け、()()()()()()取り入れようと研究を開始した。

 

 しかし、研究は風村颯太が7歳の頃に終わりを告げる。

 風村颯太は6歳の頃、『ソウル』を出現させた。

 ライオンか、はたまた、松風天馬のような幻獣が出現することを風村颯太は望んでいたが、実際に現れたのは蜥蜴(とかげ)。真っ黒な蜥蜴が風村颯太のソウルだったのだ。

 このことに、颯太は酷く落ち込んだが、研究者たちは人類の到達点だと騒ぎ、有頂天となった。

 それから半年後、身体の成長に伴い超能力も成長し一人で()()()()()()()()()()を身に着けた。

 しかし、成長を続ける超能力に風村颯太の身体が追い付かなくなり、()()を数十回繰り返し、その度に身体と精神に尋常ではない負荷がかかり、生死の境を彷徨った。

 エルドラドの技術者達は、被検体(風村颯太)が死んでは研究どころではないので、被検体が成熟するまで一旦研究を凍結しようとした。

 研究が完全に凍結したのは、その翌日である。 

 被検体(風村颯太)が突如暴走し、これまで観測した以上の力を放出し続けた。 技術者達が死を悟ったその時、風村颯太から『ソウル』が出現し、放出されていた力を呑み込んだ。

 

 この現象を解明しようと技術者達は、被検体(風村颯太)の身体を二ヶ月かけて隅々まで調査し、その結果、落胆した。

 エイリア石によって進化したはずの身体能力が、元に戻っており、超能力も発動する事が出来ない状態になってしまっていた。

 被験体が力を喪失してしまい、研究は完全に凍結され、封印された。しかし、風村颯太の暴走した力を呑み込んだ『ソウル』は黒い蜥蜴から、『龍』へと進化しており、研究を再開しようとする動くもあったが、組織のトップであり、保護者でもある風村颯太郎が「アレはこの世のものじゃないし、チョー危険だから、無しで」と宣言したため、誰も逆らうことができず、研究は完全に終結した。

 

 まぁ、上記では淡々と書いてあるけど、血反吐いたり、精神崩壊してそれから統合を五回は繰り返しているが、俺は無事に生きてるし問題は無しかな? 

 それより、蜥蜴の『ソウル』って何? 転生特典持ち&原作知識持ちの転生者よ、俺。 

 百歩譲って『ソウル』は理解できる。 でも蜥蜴ってありえなくない? 『化身』寄越せよ『化身』。俺ならソッコーでアームドまで行けるね。

 

 …………いや、それよりもチームの雰囲気がヤバい。

 前半の終わりぐらいから感じてたけど、チームの雰囲気暗すぎだろ。 大事な人が死去したときのお通夜かな? 

 

 まあ、とりあえずは染岡辺りに話しかけるか。 俺、結構染岡と友情を育んだと思うし、原作でも仲間思いな染岡さんなら受け入れてくれるっしょ。

 

「染岡! 前半の終わりからどうした! FWの俺等が点取らないと勝てねぇ。目金にスタメン奪われちまうぞ!」

 

「あ、ああ。 そうだな。 ……悪い」

 

 染岡の表情は暗く、話す風村に目も合わせなかった。

 

「? おいおい、どうした。 まさかビビってんのか?」

 

「いや……そんなことはねェ。 ただ、初めての試合だから飛ばしちまっただけだ」

 

「……そ。 気を付けてくれよ? ウチのFWは俺と染岡と目金だけなんだから」

 

「……分かってる、そんなこと」

 

「良し! なら後半からはガンガン攻めて、得点しまくってやろうぜ!」

 

 風村がそう言って染岡の肩に手をポン、と置く。

 すると染岡は目を見開き、驚愕した表情で急いで風村の手を叩く。

 

「触んじゃねェ!!」

 

「!?!?!?」

 

「あっ……いや、すまねぇ」

 

 染岡は、風村から逃げるように離れる。

 遠ざかる染岡の背中を見ながら風村は…………

 

「マジでミスったかも」

 

 そう呟いた。

 

 

 

 side:雷門イレブン

 

 前半を終え、ベンチへと戻っていく雷門イレブン。

 マネージャーからタオルとドリンクの入った容器を貰い、水分を補給する。その際、皆が風村をチラチラと見る。

 何人かは声をかけようと様子を窺っているが、尻込みしてしまって行動に移せないでいる。

 見られている事に風村本人も気付いており、仕方ないことだと自分に言い聞かせる。

 チームの雰囲気が暗くなっていることを、誰しも感じ取っていた。

 そんな中、円堂守が声をあげた。

 

「みんな、なにヘコんでんだよ。 宍戸、不安そうな顔してどおした? 染岡、何時もより顔が怖いぞ。 風村、テンション低いな。 腹でもいたいのか?」

 

「あのな、円堂。 俺たちは─」

 

「俺も知らなかった。 風村がドラゴン出せるなんて」

 

「えっ?」

 

 風丸が素っ頓狂な声を出す。

 

「俺も知らなかったんだよ。 風村がドラゴン出せるなんて」

 

「じゃあなんであの時、お前だけが動けた!」

 

 染岡が声を荒げた。 風村と同じFWで、練習でも他の部員たちよりも一緒に過ごしていただけに、人一倍ショックを受けていた。

 言葉では表していなかったが、心では常に仲間を大事に思っていた。

 龍が怖かった。そしてそれを出した仲間(風村)が怖くなった。 知っているつもりでいたのに、知らないモノを見て戸惑い、 そして恥じた。

 

「俺は、仲間を信じていなかったのか」と。

 

 それは染岡だけでなく、雷門イレブン全員が共通して実感していた。

 

「『行かなきゃ』って思ったんだ。 あのとき、風村のところに行かなきゃって、それだけだ」

 

「それだけって…………」

 

「…………怖くないのかよ」

 

 染岡が聞いた。

 

「いや、怖かった」

 

 円堂の言葉に皆、衝撃を受ける。

 

「じゃあ、なんでお前は動いたんだ! 俺達と同じ様に怖かったんだろ!」

 

「それ以上に仲間を見捨てるのことが怖かった」

 

 染岡だけでなく、皆がはっとする。

 円堂は、風丸たちの前を横切り、風村の前まで進む。

 真っ直ぐ風村を見る円堂から視線をそらすようにそっぽを向く風村。

 風村の真正面に来た円堂は、真っ直ぐ風村を見る。

 しかし、風村は依然そっぽを向いたままである。

 それを見ていた小野冬花は、風村のところに行き、そっぽを向く風村の顔を両手で掴み、円堂の方に向ける。

 

「痛ッ! 何しやがるこの──」

 

「守君を見て」

 

 そう言われ、風村はしぶしぶ円堂を見る。

 円堂の真っ直ぐな視線にやはり気不味いのか視線を反らそうとするが、小野が抑える。

 観念して、円堂の方に顔を向ける。

 円堂は先程と同じで、真っ直ぐな視線で風村を見ている。

 

「…………なんだよ」

 

 ぶっきらぼうに風村は言った。

 顔を強制的に円堂の方に向けられると、円堂は頭を下げて地面を見ていて、右手をグッと握りしめ、身体を震わす。

 息を整え、握りしめていた右手を開き、膝を叩き、「良し!」と言うと、顔を上げて風村を見て、口を開く。

 

「俺も、あの龍が怖い。逃げ出したくて仕方なかった」

 

 風村は「突然なんだ?」と疑問符を浮かべる。

 

「だけど、逃げたら風村との間に埋まらない溝ができちゃう気がして、気が付いたら走ってた」

 

「? 円堂さっきから一体何の話?」

 

 疑問から困惑に変わり、風村は状況をうまく飲み込めずに居た。

 一方、染岡や風丸たちは円堂の話を真剣な面持ちで聞いている。

 自分と、他の選手たちとの違いに風村はますます困惑する。

 

「本当に何の話? 意味わかんないですけど……」

 

「怖くてたまらなかったけど、気付いたんだ」

 

「何を?」

 

()()()()()()()()()()、龍を出した風村本人じゃないのかって」

 

「はっ?」

 

 龍の怖さに、誰しもが忘れていた。

 そして結論づけた。最も龍を恐れているのは、ソレを出現させた風村颯太本人であると。

 しかし、そんなものはただの勘違いで、等の本人は、

 

 

 えぇっ! 俺が龍を怖がってるって!? ふざけんな! 元々は蜥蜴だぞ、怖がる必要性皆無!! 襲ったりしないデカいだけの蜥蜴!! ハズレ『ソウル』!! 

 

 と、考えていた。

 だが、少しだけ考えてほしい。 イナイレ世界の『ソウル』とは『化身』と似た人間(高度な知性を持った生物たちも含む)の不思議エネルギー。 自己防衛本能が生み出す存在。

 個人によって姿形、向き不向きが違うように、本人の性格や性質によって自分以外を傷付ける、そんな力が発現してもおかしくは無いのではないだろうか。

 

 風村颯太は、『ソウル』を出現させる前から『セカンド・ステージ・チルドレン』に進化していた。 際限なく成長する

S.C.C(セカンド・ステージ・チルドレン)』の力と、エルドラドの研究者たちの狂気的な実験から来る強力なストレス、繰り返す精神の統廃合。

 

『ソウル』が出現してもおかしくは無いはずだ。自己防衛本能が生み出した存在ならば、本体を護ろうとするのではないだろうか。

 元凶である『S.C.C(セカンド・ステージ・チルドレン)』の力を呑み込み、研究者たちに殺気を浴びせたのは『ソウル(蜥蜴)』が本体である風村颯太を護ろうとしていたからだ。

 本体(風村颯太)を護る為に、本体以外を威嚇し、畏怖させる存在。 それが風村颯太が言う、ハズレ『ソウル』の正体。

 

「違う違う違う違う!! 龍じゃない! 蜥蜴ッ! 

 デカいだけの蜥蜴。 あと、別に俺は怖くもなんともないって! お前たちの勘違い!」

 

 雷門の選手たちの誤解を説こうと、必死の弁明をする風村だが、

 

「気を遣うなよ、風村」

 

「えっ?」

 

 染岡が言った。

 先程まで、円堂と風村のやり取りを一歩下がっていたはずの染岡が一歩前に出て、風村の肩に手を、ぽんっ、と置く。そして未だ一歩下がったままの仲間たちを見回す。

 

「俺達は今でも怖い。 だがな、円堂の言うとおりだ。 

 ビビったまんまじゃ、大事な仲間を失っちまう。 そんなこと、俺は絶対に認めねェ! そうだろ! お前ら!」

 

 染岡の熱い言葉に、一歩下がっていた仲間たちが一歩を踏み出す。

 

「そうだ!」

 

「俺達は仲間を見捨てない!」

 

「雷門の仲間を失うなんて、嫌っす!」

 

「仲間を見捨てない! それが雷門イレブンだ!」

 

「お前たち!」

 

 円堂はその光景に、ニッと笑う。

 やっぱりみんな、仲間が大事なんだと知り、嬉しくなる。

 

 呆けた顔をしている風村に身体を向けて、

 

「仲間の悩みは、みんなの悩みだ! 一人でくよくよしても始まらない! そうだろ風村!!」

 

 と、特大の笑みと、サムズアップする円堂。

 それに対し、風村は、

 

「えっ、あっ、うん。 みんなで頑張って行こう?」

 

 と頼りない返事をするのであった。

 

「よーし! 後半はガンガン攻め上がって行こうぜ!」

 

「「「「「おおっ!」」」」」

 

 

 Side:鬼道

 

「お前たち。すまなかった」

 

 突然鬼道が頭を下げた。

 鬼道が頭を下げて謝るとは欠片も思っていなかった帝国のメンバーは、困惑した表情で鬼道の次の行動を待った。

 

「寺門、帝国が雷門に来たのは、弱小サッカー部を蹂躙し、見かねた豪炎寺修也をあぶり出す為だ。だが、蓋を開けてみれば、弱小の、…………弱小だと思っていた雷門は俺たちよりも何倍も強い。 技術、スタミナ、身体能力。そして必殺技。 どれも雷門に()()()()()

 

『劣っている』。

 この言葉を、帝国の誰もが否定したかった。

 地元じゃ無敵の選手でも、帝国サッカー部に入れば、道端の小石。 三年間続けても一度もベンチ入り出来ない選手も当然いる。 

 限界ギリギリのトレーニングを積み、天才、秀才と呼ばれていた選手たちとの熾烈なレギュラー争い。

 それを勝ち抜き、ようやくユニホームと背番号が与えられる。

 帝国選手にとって、努力と才能と勝利の証。

 それを手に入れた。

 

 なのに、公式戦に一度も記録がない、去年出来たばかりのサッカー部に圧倒されているのだ、誰もがこの状況を打破し、逆転する術を求めている。

 

「劣っているからこそ、俺たちは攻め続けるしかないはずです! それを、なぜ……」

 

「あの99番。龍を出すタイミングは、いつだ?」

 

「えっ?」

 

「どれくらい出し続けられる? 威圧するだけか? 必殺技は? 身体能力に影響はあるのか? その他にも―」

 

「ちょっと待ってくださいよ! いきなりどうしてそんなコトを……」

 

「俺たちは、雷門の事を知らなければならない。 そのためには、前半あんなプレイをしなくてはならなかった」

 

「ならば鬼道。 見つけたんだな? 雷門の弱点、俺たちの勝利を」

 

「ああ」

 

 鬼道の短いが力強い言葉に、帝国メンバーたちの心が熱くなる。

 

「お前たち。 俺たちは、帝国だ。 無敗の王者、帝国学園だ! 勝ちに行くぞ! 」

 

 

「「「「「おおっ!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 




頭が完治したので、次も頑張ります。
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