遊戯王GXアフター幻魔を統べるもの〜金髪爆乳お姉さんハモンとショタの日常〜 作:kiakia
「じゃあ、ちょっとキツイが……俺も最後の最後まで足掻きますか…!俺のターン!ドロー!」
清水は自身の引いたカードを手に取るとニヤリと笑みを浮かべる。フリーチェーンで手札の魔法カードを墓地に送れば表側表示のカードを破壊できるハイネの効果。同じく魔法カードを一枚墓地に送れば全ての相手の表側表示のモンスターの効果を無効化できるヴェールの効果。
更にはヴェールの効果で魔法使い属の戦闘時に、任意の数だけ魔法カードを見せれば攻撃力が×1000アップという事もあり、ハイネとヴェールの戦闘破壊はほぼ不可能。そして、バイストリートによりハイネとヴェールは1ターンに1度戦闘破壊耐性と効果破壊耐性を身につけている。
まさに鉄壁の布陣と呼べるだろう。しかし、清水はこのターンでの勝利は不可能とは言え形勢を逆転させる事は可能であると……才賀 直という少年の性格を考えれば決して不可能ではないと確信していた。
「俺は手札より魔法カード『ライトニング・ストーム』を発動。自分フィールド上に表側表示のカードが存在しない場合、相手フィールド上の攻撃表示モンスター。もしくは魔法・罠カードを全て破壊する。俺が選択するのは攻撃表示モンスターだ!」
ソリッドヴィジョンによりフィールドが一瞬暗雲に包まれたかと思えば、雷の奔流が才賀達のフィールドに雪崩れ込む。限定的な使用条件とはいえ長く禁止カードであった『ハーピィの羽箒』と『ライトニング・ボルテックス』の双方の効果を合わせ持つ強力なカード。しかし、才賀は慌てる事なくセットカードの使用を宣言する。
「その瞬間リバースカードオープン。カウンタートラップ『封魔の呪印』を発動。手札から魔法カードを墓地に送る事でそのカードの発動を無効にし、この決闘中の同名のカードの発動を不可能にします。僕は手札より『ウィッチクラフト・ドレーピング』を墓地に送り無効化させてもらいます」
「えっ…」
ラビが一瞬声を漏らす中、雷撃の奔流は一瞬で消滅する。
「また珍しいカードを……ウィッチクラフトの魔法はコストとして実質使い放題だから選択肢としてはあり得るか。だが、これで反撃の準備は整った!」
だが、万策尽きたかと思いきや清水の目には諦めの色はない。そんな様子に才賀はもしやといくつかのカードの存在が頭によぎって冷や汗を流してしまうが、最悪の予想は的中してしまう。
「俺は更に魔法カード『冥王結界波』を発動させてもらう!その効果によりそっちのフィールドのモンスターの効果は全て無効化され、このカードの発動に関してモンスター効果を発動する事も不可能!」
「なっ…!」
「少し判断が早かったな!元冥王の力を思い知れ!」
カードの発動と共に青色のオーラが周囲を包み込み、暗黒界のモンスターと二人の魔女は力を失うかの様に膝をつく。涙目のハイネの周囲に漂う魔道具は地面に落ち、ヴェールも自らの運命を予感したのか、ふて寝をするかの様にその目を閉じてしまう。心なしか暗黒界のモンスター達はそんな二人の女性を守ろうと矢面に立とうとしている様であった。
「くっ…ごめん、ラビちゃん!」
力を失うモンスター達の姿を見て才賀は謝罪するが、ラビは複雑な表情で自身のモンスター達を見つめている。この場を切り抜ける方法は無いかと彼は思考を回転させるが、そうしている間に清水の出番が続いてしまう。
「まだまだ!俺はフィールド魔法!『混沌空間』を発動。更に手札よりモンスターを二体特殊召喚させてもらう!まずは墓地の『輝白竜 ワイバースター』と『暗黒竜 コラプサーペント』をそれぞれ除外する事で手札より『カオス・ソーサラー』を特殊召喚!更に墓地の『トワイライトロード・ハンター・ライコウ』と『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』を除外する事で『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』を特殊召喚!」
光と闇が捩れた空間より飛来する二つの影。青白い肌の魔法使いと伝説の決闘者も愛用していたとされるエースカードと類似した剣士が姿を現した。光と闇の相反する二つの力を使いこなすその力は、見るものに威風の風を感じさせる。
《カオス・ソーサラー》攻撃表示
星6/闇属性/魔法使い族/攻2300/守1000
《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》攻撃表示
星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500
「それらのカードは『手札抹殺』で墓地に…相手は『カオス』デッキだったか…!」
後悔する様に呟く才賀の言葉にニンマリと笑みを浮かべる清水達。手札抹殺により一度は焦った彼らであるが、墓地が第二の手札と称されるデュエル・モンスターズに於いて下手に墓地を肥やす事は相手にアドバンテージを与えかねない。
それが今回は最悪のケースで的中したと言う訳であり、両者に益を与えたタッグデュエルの難しさを改めて痛感させられる結果となってしまった。
「さぁ、まだまだいくぜ!フィールド魔法『混沌空間』の効果により表側表示でカードが除外される毎にこのカードにカオスカウンターを1つずつ置かせてもらう。そして、俺が今除外したカードは4枚!よって4つのカオスカウンターを置かせてもらって追加効果を発動!」
時間と空間。光と闇の狭間に位置する捩れた空間から一体のドラゴンが現れる。光輝くその姿は弱者に勇気を与え、敵対者には恐怖と浄化の光による正義の裁きを実行せんとその身を露わにした。
《ライトロード・ドラゴン グラゴニス》攻撃表示
星6/光属性/ドラゴン族/攻2000/守1600
「カオスカウンターを4つ取り除く事で、除外された自分。もしくは相手のモンスターを1体特殊召喚可能。それによりグラゴニスが召喚された訳だが、グラゴニスは墓地に存在する『ライトロード』と名の付くモンスター一枚につき300ポイントアップ。俺の墓地に存在する『ライトロード』モンスターは『ライトロード・マジシャン ライラ』と『ライトロード・エンジェル ケルビム』の二体。よってグラゴニスの攻撃力は600ポイントアップだ」
《ライトロード・ドラゴン グラゴニス》
攻2000→攻2600
(多分あの清水って奴が『カオス』デッキで、中村って奴が光属性と闇属性のカードを併せ持ち、更に墓地を高速で肥やせる効果を持つ『ライトロード』デッキって訳か……ちっ。あたしとアイツより余程相性の良いカテゴリ同士で組んでやがる…)
ラビが内心毒を吐いている一方で、まだまだ清水のターンは終わらない。光の剣士と闇の魔法使いが、何かの呪文を唱えたかと思えば膝をつく『ハイネ』と不貞寝をする『ヴェール』の姿が、何の兆候もなく一瞬で掻き消える。そこには何の痕跡も残さず、暗黒界の心優しき悪魔達はまるで味方を守れなかった事を後悔するかの様に悲しそうな声をあげた。
「『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』と『カオス・ソーサラー』は自身のバトルフェイズ時の攻撃を放棄する事で1ターンに1度、フィールド上のモンスターを一体除外出来るのでな。厄介な『ウィッチクラフト・ハイネ』と『ウィッチクラフト・ヴェール』は除外させてもらった。これで『ウィッチクラフト・サボタージュ』による蘇生も不可能。更にそっちのフィールドの『ウィッチクラフト・バイストリート』は戦闘や効果による破壊の耐性は付与出来ても除外には無意味だ!」
形勢はあっという間に逆転したといえるだろう。相手ターンに妨害可能なハイネとヴェールを失い、『バイストリート』は無用の長物となってしまい、フィールド上のモンスターの数も互角。いや実質フィールド上では通常モンスターと変わらない『暗黒界』のモンスターとくらべても、『カオス』と名の付くモンスターは極めて強力な力を秘めており、才賀の胸には後悔に苛まれる。
「ごめん……ラビちゃん!」
もしも、あの時『ライトニング・ストーム』を無視して『冥王結界波』を無効化していれば、暗黒界のモンスター達は守れなかったが、『バイストリート』の効果によって『ウィッチクラフト』達は無傷であり、その後のヴェールにより二体の『カオス』のモンスター達の効果を無力化した上でハイネによって『開闢の使者』を破壊する事も可能だった。
しかし、彼は咄嗟の判断でラビ達のモンスターを守ろうと発動してしまったのだ。それは彼のパートナーに対する優しさか、或いはこのタッグデュエルに誘ったのは自分だからという責任感か。いずれにせよ、結果論とはいえ清水はそんな才賀のパートナーに対する信頼感を瞬時に見抜き、そして賭けに勝利したと言えるのだろう。
「さぁバトルフェイズに移行!《ライトロード・ドラゴン グラゴニス》により《暗黒界の鬼神 ケルト》を攻撃!審判の光!」
闇を打ち払う正義の光を纏った竜が突進を行う、魔女達の仇を取ろうと黒の騎士が迎え撃つ。しかし、その衝突も虚しく『ケルト』は光と共に消滅する。
ライトロード・ドラゴン グラゴニス 攻2600 VS暗黒界の鬼神 ケルト 攻2400
戦闘結果:ライトロード・ドラゴン グラゴニスの勝利
「本当は戦闘ダメージと行きたい所だが『冥王結界波』の効果で戦闘ダメージは発生しない。だが、これで形成逆転って奴だ。バトルフェイズを終了し、そのままターンを終了する。おっと、忘れずにエンドフェイズ時に『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』の効果でターンプレイヤーである俺のデッキの上からカードを3枚墓地に送らせて貰うからな」
盤面
才賀 手札0
モンスター
ゴルド、シルバ
魔法罠
バイストリート、スクロール
清水 手札1
モンスター
開闢、ソーサラー、グラゴニス
魔法罠
混沌空間
(どうにか……これで中村の奴にバトンを渡す事は出来そうだな)
先輩の意地として盤面の突破に成功した清水であるが、その内心は穏やかなものでは決してなかった。もしも『ライスト』や『冥王結界波』が無ければ、もしも運良く墓地に『カオス』をモンスターを特殊召喚可能な素材が無ければ、次のターン確実に自分は敗北していたと確信できてきたからだ。
後輩達は今も互いに申し訳なさそうな目で見つめあっているが、冗談じゃない。あの二人のペアはこれが初のタッグデュエルというのに、先輩としてタッグデュエルの経験も豊富である自分と中村が必死になってやっと、偶然と幸運の女神様の微笑みによりやっと、互角に持ち込めるような相手なのだ。
「なぁ、中村」
「どうした?」
「正直めっちゃ楽しい」
清水がそう本音を漏らすと、中村も同じ気持ちだったのか笑みを浮かべて同意する様に言った。
「俺もだ」
対策は重ねた。三幻魔使いの後輩に負けないようにと親友同士で夜遅くまでカードと睨み合いをしながら作戦会議を繰り返した。盤面を逆転したというのに次のターンにまた逆転されるのでは?となるヒリついた感覚に、自然と口角がつり上がる。
(欲を言えばソーサラーじゃなくて、ダイダロスなら良かったが……さて、どうするリア充カップルコンビ?)
「なぁ、才賀……すまねぇ」
一方、彼のパートナーであるラビは結果論とはいえ、自身の『暗黒界』のモンスター達をパートナーが守ろうとしたが故に、『冥王結界波』を食らって逆転を許した事に罪の意識を感じていた。暗黒界とウィッチクラフトを安定して運用する為に、『手札抹殺』をいれてくれと頼んだのも彼女が原因であり、ただ運が悪かったと切り捨てる事はどうしても不可能であった。
「こっちこそ、ごめんねラビちゃん……でも、ラビちゃんなら」
そして、才賀はと言えばその心は自信のプレイイングミスが招いた結果ではないか?心優しい女の子に、こんな顔をさせるなんて男として情けないなど、既に心はぐちゃぐちゃだ。このタッグデュエルは恐らく苦い思い出として青春の1ページに刻まれるだろう。だが、少年の目には……諦めの色は、まだ刻まれてはいなかった。
「ラビちゃんなら、きっとやってくれると信じてるからっ!」
パートナーの何処までも、何処までも信頼を寄せてくれる眼差しを受けてラビは頬が少しだか赤く染まっていく。彼は出会った当初から同じ幻魔使いとして全幅の信頼を寄せてくれた、口も悪く、愛想がなく、孤立をしていた自身にいつもニコニコと話しかけてきてくれて……それが少しだけ、嬉しかったと彼女は自覚する。
勝ちたい。
彼女の胸の中に小さな闘志の炎が灯される。この愚直なまでの馬鹿な『友達』に報いる為に、そして同族であるハモンがこの少年に何故あんなに信頼を寄せるのかを確かめるが為に、世界を滅ぼす力を秘めた『幻魔』の一角ではなく、ただ一人の誇り高き決闘者として彼女もデッキの手を寄せた。
「あたしのターン!ドロー!」
そして、彼女は自身がドローをした手札を見てニヤッと笑いながら宣言をする。
「あたしはフィールド魔法『暗黒界の門』を発動!これよりあたしのフィールドのゴルドとシルバの攻撃力と守備力は300ポイントアップするが、同時にもう一つの効果を使わせてもらう!」
彼女がカードを発動した途端、フィールドには仰々しく不気味な紋様が描かれた巨大な門が出現する。そこから漏れる闇の力は金銀それぞれの色を持つ二体の悪魔達の力を増幅させたようで、ゴルドとシルバは心なしか張り切っているようにも見え、更に門がゆっくりと開かれるとその隙間から何かが這い出て来るのが見えてくる。
「『暗黒界の門』は1ターンに1度、墓地の悪魔族モンスターを1体除外する事で手札から悪魔族モンスターを1体選んで捨ててから、デッキの上からカードを一枚ドロー出来る。あたしは手札より『暗黒界の尖兵 ベージ』を墓地に送り1枚ドロー。そして『暗黒界の尖兵 ベージ』は手札から墓地に捨てられた時に特殊召喚が出来る」
やがて門から出現した槍を持った悪魔の兵士は、主の指示に従い槍を構えると敵モンスターを威嚇するかの様に構えをとる。
《暗黒界の尖兵 ベージ》攻撃表示
星4/闇属性/悪魔族/攻1600→1900/守1300→1600
「そして……私はベージを手札に戻し、墓地より1体のモンスターを特殊召喚する!深淵への扉を開くとき!漆黒に染まりし暴竜が今姿を表す!全てを闇に染め上げろ!降臨せよ!『暗黒界の龍神 グラファ』!」
暗黒界の門より溢れたエネルギーが尖兵を闇に包み込む。すると先程まで勇ましい雰囲気を纏っていたはずの兵士は瞬く間に禍々しい気を放ち始め、徐々にその姿が変わり果てて行く。
暴虐と殺戮の限りを尽くし破壊と混沌を招く漆黒の巨龍がその姿を表す。その荒々しい力は主と心優しき暗黒界の仲間達を守る為に、暗黒界の頂点たる力の象徴はそして敵対者に牙を向けるのであった。
《暗黒界の龍神 グラファ》攻撃表示
星8/闇属性/悪魔族/攻2700→3000/守1800→2100
「グラファか……最初のターンに落ちてた奴か」
「更にあたしは『暗黒界の尖兵 ベージ』を通常召喚し……さて、条件は整った」
ラビは再び『暗黒界の尖兵 ベージ』をフィールドに召喚すると自身のフィールドを見回すと、ふと傍らの少年が自身をこの決闘に誘った言葉を思い出す。忌むべき自身の力の象徴、多くの人を傷つけてきた邪悪なその力を今、彼女はただパートナーと勝利を掴む為に使おうとしている事に……何処か感慨深い気持ちを抱きながら、一枚のカードを発動する。
「ラビちゃん!」
「おうよ!あたしは『暗黒界の尖兵 ベージ』、『暗黒界の軍神 シルバ』、『暗黒界の武神 ゴルド』の三体の悪魔族モンスターをリリースする事でこのカードを発動する!」
「!?」
「闇より深き、深淵より出でし魔界の皇よ!万死一生!その拳を持って生ある者達を蹂躙せしめよ!現れ出でよ!我が半身よ!『幻魔皇 ラビエル』を特殊召喚!!」
三体の悪魔達が闇の力に包まれて地面の奥底に消えていく。地響きと共にラビの足下から巨大な轟音と鳴らし、地面を割り、そこから姿を現したのは……天に届く程の巨躯を誇る巨人だった。
その圧倒的なまでの闘気はまさに怪物。全身を覆う筋肉と岩の様な肉体、頭に生える鋭い角は見るもの全てを震え上がらせ恐怖を与える。筋骨隆々な肉体を誇示するかのように荒々しいポーズを取りながらラビの隣に堂々と君臨している。それは正に威風堂々たる王者の姿。暗黒界の龍神ですらこうべを垂れる悪魔族全ての頂点に君臨する三幻魔の一角が今、少女の切り札として召喚されたのだ。
《幻魔皇 ラビエル》攻撃表示
星10/闇属性/悪魔族/攻4000→4300/守4000→4300
清水と中村の二人は思わず無言で目を見合わせる。この瞬間二人の脳裏には『開闢の使者』と『カオス・ソーサラー』が失われた未来を幻視してしまう。圧倒的な攻撃力を誇る幻魔への対抗策として『カオス』モンスターによる除外戦術や『地砕き』などの汎用破壊魔法を幾つもデッキに組み込んでいるとは言え厄介な事には変わりない。
二人のライフが尽きるか、ラビエルをその前に倒せるか。それが勝負を決する事になりそうだ。
「なぁ、先輩コンビ」
だが、少女は静かに口を開く。まるで二人の思考を読むように、幻魔を目の前にしてもなお諦めない勇敢な二人へ告げるのだ。
「あたしが召喚する幻魔が1体だけだと、誰が決めたんだ?」
「……はっ?」
清水と中村は呆けたような声を漏らすが、次の瞬間最悪の事態を理解する事になる。
「まさか……君は……!?」
「あたしは更にフィールド上に存在する『暗黒界の門』『ウィッチクラフト・バイストリート』『ウィッチクラフト・スクロール』の3枚のカードを墓地に送り、このモンスターを特殊召喚する!」
あり得ない。そう二人の思考回路が叫んだが、そんな悲痛な叫びを嘲笑うかの様に『暗黒界の門』はメキメキと音を立ててひび割れていく。
(まさか、貴女が私を召喚するだなんて……ふふっ♪本当にマスターと出会ってから面白い毎日ですが、こんな日が来るだなんて予想も付きませんでしたよ♪)
瞬間、ラビの脳内に女性の声が響き渡り一瞬だけラビもニヤリと笑みを浮かべる。この決闘の直前に託された1枚のカード。それはラビという少女に対する『才賀 直』の信頼の証であり、同時に彼女自身は口に出さないが、いついかなる時も肩を並べて日々を過ごしてきた最も信頼する同胞の一人。
(うるせぇよ、今は黙ってあたし達に力を貸せ!)
(あたし達『に』ですね?ふふっ了解しましたっ!)
崩れ落ちていく『暗黒界の門』より溢れ出た光が、その主の想いに応える様にラビと才賀へと降り注ぐ。そして遂にその時が訪れる。『暗黒界の門』が完全に崩壊しその中から現れたのは……金色の悪魔であった。
「闇をも照らす、雷撃を纏いし黄金の閃光!電光雷轟!その雷をもって生ある者たちを浄化せしめよ!現れ出でよ!我が同胞よ───」
ラビエルの横に降り立つ翼を広げた金色に輝く悪魔の背より放たれる黄金の稲妻がフィールドを包み込む。暴虐的なまでの破壊力を誇る落雷の衝撃により大地が大きく震え上がり、金色の幻魔は悠然とその威容を顕にする。
「『真・降雷皇ハモン』を特殊召喚!!!」
《真・降雷皇ハモン》
星10/光属性/雷族/攻4000/守4000
「幻魔が……幻魔が二人並んでる!!もう最っっっ高だよラビちゃん!!」
悪魔を統べる皇と雷を統べる皇の共演に才賀は興奮を隠しきれず大声で叫んでしまう。ラビとタッグを組んでから一度でも良いから見たかったその光景は、それまでの罪悪感や憂鬱さを吹き飛ばし、一気にロマンを求める少年のテンションを上げていく。
「決闘前に『ハモン』を渡していただって…!?」
「あぁ……本当に、アイツはバカだよ。自分のターンだけじゃ『ハモン』は恐らく出しきれない。だからあたしにこのカードを託すってな……あたしがこのカードをパクったらどうすんだって言えば『ラビちゃんはそんな事絶対にしない、君を信じてるからこそ任せられるんだよ』だとさ……」
愕然とする対戦相手にラビは苦笑いを浮かべながら、興奮する大馬鹿野郎なパートナーに視線を移しつつ呆れたように告げる。だがその表情には確かな自信と、彼への信頼が感じとれ、そんな二人の姿を見た『ハモン』は楽しげに雷をバチバチと鳴らして感情を示していた。
「さぁバトルフェイズだ!『暗黒界の龍神 グラファ』で『カオス・ソーサラー』を攻撃!カラミティ・バースト!!」
『カオス・ソーサラー』に荒々しい息を吹きかせる暴龍。その口腔内が徐々に赤熱化し始め、やがて業火が吐き出され、厄災の炎が魔術師を飲み込んでいく。
カオス・ソーサラー 攻2300 VS暗黒界の龍神 グラファ 攻2700
戦闘結果:暗黒界の龍神 グラファ の勝利。LPが7600に。
「続いて『幻魔皇 ラビエル』で『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』を攻撃!天界蹂躙拳!」
光の龍は幻魔の威圧感に恐れを成したのか、まるで逃げようとするかの様に飛翔しようとする。だが、そんな逃亡を許すほど甘くはない。ラビエルが拳に闘気を纏わせ振り下ろせば、そこから生じた衝撃波が光の龍を貫き、一瞬にして絶命せしえた。
幻魔皇 ラビエル 攻4000 VSライトロード・ドラゴン グラゴニス 攻2600
戦闘結果:幻魔皇 ラビエルの勝利。LPが6200に。
「これで最後! 『真・降雷皇ハモン』で『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』を攻撃!失楽の霹靂!」
仲間達があっという間に破壊されたとしても、開闢の騎士の目からは闘志は失われなかった。流石は伝説の決闘者も使用したとされるモンスターではあるが、その覚悟も幻魔の圧倒的なまでの力の前には無力でしかなかった。ハモンが口元にエネルギーを収束させ解き放たれる黄金の稲妻が一瞬にして騎士を包み込み焼き焦がしていく。
真・降雷皇ハモン 攻4000 VSカオス・ソルジャー -開闢の使者- 攻3000
戦闘結果:真・降雷皇ハモンの勝利。LPが5200に。
「あっという間に全滅か…!」
「おっと、忘れるなよ。真・降雷皇ハモンは相手モンスターを戦闘破壊した時に相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える!地獄の贖罪!」
LP5200→4200
幻魔達が暴虐な限り全てを破壊し尽くした結果、清水と中村のフィールドには何も残らない。だが、まだ勝ち目はある。最後の最後まで決闘者の吟味を忘れないラーイエローの二人を見て、少女は彼らの評価を上方修正しながらも、口を開くのであった。
「あたしはこれでターンエンド。さぁ、アンタ達のターンだよ。全てをかけてかかってきな!」
それぞれの生徒達がタッグデュエルを進める中、2体の幻魔を一気に召喚したペア二人に注目が集まる決闘会場。それを眺める二人の教員はそれぞれ相反する感情で幼い少年達に目を向ける。
「きゃはっ☆懐かしいなぁ……ハモンとラビエルを同時に使いこなすなんてね!先生も久々にこのデッキで戦いたくなっちゃった!」
褐色で幼い赤髪少女は満面の笑みを浮かべながら、目の前にいる少年達をじっくり観察する。出来ればあのフィールドに『自身』を召喚させたい。しかし、赤髪の少女はその見た目に似合わず成人はとうの昔に迎えており、教員としてこの学園に在籍している身であった。故に、その欲望を必死に抑えながらも二人の生徒が相手のライフポイントを削り切る様子に興奮を隠しきれない。
「まぁ、無関係の生徒にこのカードを使うと下手するとクロノスせんせーに目をつけられかねないからなぁ……やっと教師になれたんだから我慢しないとっ!」
万雷の拍手と共に対戦相手同士がまた再戦しようと握手をする中、彼女は一枚のカードをデッキから取り出すとマジマジと眺める。そのカードを名残惜しげにデッキに戻しつつ、今度あの二人の生徒に話しかけようかな?と密かに彼女は……宇里亜先生は勝利掴んだ二人に軽く拍手を贈りながら思うのだった。
「うぅ…トラウマが刺激されるノーネ……あのラビエルはレプリカだと分かっていても胃がイタタ……今度の休みに南の島にバカンスでも行くしかないノーネ……」
一方、観戦席の片隅で青ざめた表情をしたクロノス教諭はがそんな事を呟き、胃薬を片手に大会の進行を進めていくのであった。
清水・中村ペアのデッキ
清水は光と闇属性の汎用カードを中心にいれつつも、墓地から除外して強力なモンスターを召喚する『カオス』。中村は墓地に高速でカードを肥やしつつデッキ切れの恐れがあるものの強力な効果ばかりを持つ『ライトロード』を使用。また対戦相手の幻魔使い二人に対抗するために『地砕き』などの汎用破壊系魔法を多めに入れたデッキとなっていました。
作中での清水の言う通り、もしも『カオス・ソーサラーではなくカオス・ダイダロス』を召喚できていれば。もしもライトロードが揃って次のターン『裁きの龍』を召喚できていれば幻魔ペアに勝利をした可能性もありましたが今回はそのまま押し切られるように敗北。とはいえ彼らとの決闘はタッグデュエルの難しさと楽しさを新入生二人にきっと痛いほどに味合わせた事でしょう。実はラビエルではなく。
ゴルドでソーサラーで相打ち
ハモンでカオソル
グラファでグラゴニス
シルバでダイレクトアタック
なんて、攻撃していたほうがゴルドは犠牲になりますが、合計ダメージは大きかったのは秘密。
名前の由来はタッグフォース3におけるラーイエロー組の二人。
・ハモンの内心
基本マスター以外の人間はどうでもいいと思っており、他の人間には自身のカードを触れられる事すら嫌がりますが、同じ三幻魔であるラビちゃんが自分を扱う事に関しては案外嬉しく思っていたり。ノリノリで即興の召喚口上まで考えた自身の同胞を微笑ましく思っていたそうな。その日のタッグデュエルデーではマスターとラビちゃんのデッキに交互に入れられており、幻魔ではなく普通のデュエルモンスターズの精霊の一人として楽しい一日を過ごせたようです。
本格的な決闘は恐らく当分ないでしょうが、次回はラブコメパート。タッグフォース経験者には懐かしい『アレ』が登場します。
コメント、感想、評価をお待ちしております。
デュエル回は
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もう少しだけ見てみたい
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ラブコメメインでイチャラブ優先