呪術高専京都校〜知られざるもう一人の一年〜 作:OSTO文明
先輩たちに連れられ練習場に来た。僕自身術式をまだ理解しきってるわけじゃないのでちょうどいい機会かもしれないと気を引き締める。
「時任君、準備はいいかい?」
「加茂先輩、術式ってどう使うんですか?」
「……仕方ないか。おそらく術式のイメージは頭の中にあるはずだ。そのイメージを大事にすれば出来るはずだ」
「わかりましたやってみます!」
頭の中にあるイメージを明確化させる。液体に触れる。液体を体の一部と考える。螺旋状にする。それを飛ばす………あれ待てよ?
「加茂先輩!」
「今度はどうした?」
「術式に必要な液体がありません!」
「なん………だと………?」
糸目の加茂先輩が片目をめっちゃ開いている。すっごい卍解しやすそうなリアクションだ。
そういやあの時夢中すぎて忘れてたけど確か水溜りに触れてたっけかな。
禪院先輩と西宮先輩はため息ついてるしメカ丸先輩と新田君は動かなくなった。けど三輪先輩はすっごい慌ててる。こういう時自分より慌ててる人見ると冷静に判断できるよね。あ、そういうことか。
「新田君、自販機ってどこだっけ!?」
「え、そこにありますよ」
「ありがとう!」
急いで自販機のもとに向かいお金を投入する。100円ワンコインお水ナイス。出てきたい○はす片手に元の位置に戻る。
「お待たせしました!これでいけるはずです!」
「いろ○すなんか買ってどうしたの?」
「あぁ、そういうことね」
「いきます!」
○ろはすの蓋を開けて人差し指を突っ込みイメージを固定させて人差し指をゆっくり抜く。すると中の水が人差し指に引っ張られるように出てくる。ある程度出したところでペットボトルの口の部分で切ってペットボトルを地面に置く。取り出した水で宙に円を描くように人差し指と中指を揃えてを動かす。ぐるぐると渦巻きを描いて中心に着いたときに指を構えたまま動作を止める。水は宙に浮いたままゆっくり軌道を描いている。
「なかなかやるじゃない」
「なんか神秘的な術式ですね!」
「ありがとうございます」
「螺旋と言っていたガ、いろんな応用が効きそうだナ」
「その状態で止めてられるんですか?」
「おそらく彼は今呪力を一定で流し続けているんだろう。初心者にしては随分意識が回っているな」
「え?呪力って一定で流せるんですか?」
また加茂先輩の片目が開く。正直イメージ的にはゆっくり軌道を描くように回しているイメージだけどこれが一定に回すってことなのかな。
「そこはおいおい教えていくことにしよう。その後はどうするんだ?」
「そうですね………どうしましょう全く考えてませんでした」
「バーンって飛ばしてみるのどうでしょうか」
「三輪にしてはいい提案じゃない」
「にしては!?」
「わかりました!やってみます!」
三輪先輩の言う通り射出するイメージを作る。今大きく回している状態だからこれをもっと狭い感覚にして、先を尖らせるようにして………よし、準備オーケー!発射カウント取ってみよ。三、二、一、────
「そうだ、呪力の出力は抑えておくように。いきなり大技みたいに出せるわけではないはずだから問題ないと思うが」
「えっ、何か言いましたか?」バシュッ
加茂先輩の言うことを聞こうとしたら意識が逸れて発射してしまった。まぁ問題ないだろうと油断した瞬間少し離れたところにあった校舎(?)の方から轟音が聞こえた。音の方向を見ると土煙が立っている。先輩方の方を見直すと皆顔色が少し悪くなっている。
「と、時任君、呪力出力はどれくらいでやったんだい?」
「えっとぉ……すみません最後まで集中できていなかったのでわからないです!」
皆より一層顔色が悪くなっている。メカ丸先輩でさえ顔色が変わらないのに青ざめているのを感じさせる。とりあえず現場に向かってみると蔵が貫通されていた。天井や床は残っているが小窓1個分くらいの大きさで穴が空いていた。ただ貫通していたのは蔵だけでなく中にあった飾りの石まで貫通していた。しかも要の部分が貫通したことによりバランスを崩して石像が崩壊したらしい。通りであの轟音が聞こえてきたわけだ。
「多分呪力出力ミスったナ」
「上がったと考えるべきだろうな。貫通力と破壊力が上がったか」
「だとしてもおかしいでしょこの威力」
「新田君これ直せる?」
「無茶言わんといてください。僕の術式は傷口の悪化を止めるだけですから」
再生ではなくて停止なんだと感心していたが今はそんな場合じゃないことを思い出す。
「あの、これどれくらいの金額でしょうか?」
「さぁ?」
「えっ」
「でも大丈夫だよ。どうせ飾りだったし」
「そうだな。蔵の物出すときに邪魔だったし問題ない」
「むしろよくやっタ」
そんなんでいいのか先輩方。とりあえず散らばったカケラを集めていると庵先生が到着。出来事を説明すると納得したように親指をサムズアップしてくる。どれだけこの石像嫌われてたんだろう。あとは係の人がやるから元の場所に戻っていいと言われ皆戻っていく。最後に残った僕は石像の方を向いて一応謝罪して皆のいる方に走っていく。名も知らない石像さんごめんなさい。皆のもとに戻る寸前また庵先生の叫びが聞こえたがスルーした。
「さて、どんなものか大体分かったところだが」
「あの威力ヤバいよね」
「…すみません」
「なに、誰にでも失敗はあるものさ。使い方とかをこれから学んでいけばいい。でも今日はもう術式は辞めておこう」
「うっ……はい……」
「でもやってみてわかったことはあるんじゃないの」
「わかったこと…ですか?」
「ええ。そうね、例えば近接に向いていないとか」
言われてみればそうだ。どちらかというと飛ばしたりするイメージの方が強い。となるともしかして……。
「遠距離型になるんですかね」
「イヤ、中距離型だろウ。さっきのやつがどこまで飛べるかはまだ分からなイ」
「それもそうですね。あれ、じゃあ近接に持ち込まれたらどうすれば……?」
「そこは迎え撃つしかないから鍛えるしかないな」
「呪術師って近接どうしてるんですか?」
「そこは三輪に聞くと良い。私も近接は出来るが基本弓だからな」
弓ってことは加茂先輩の方が遠距離型だったんだ。そして何故か三輪先輩が少し嬉しそうな顔で前に出て来る。
「近接についてですよね。それなら任せてください!」
「先輩はどんな術式なんですか?」
「私術式は持ってないよ」
「え?」
「だから刀に呪力を込めて戦ってるの。シン・陰流っていう流派なんだけどね」
シン・陰流……新陰流かな?聞いたことある。やってるゲームで星四なのにセイバー最強クラスの人が使ってたはず。
「例えばだけど、抜刀前の刀に呪力を通して、引き抜く瞬間に鞘から抜くスピードを上げて切り落とす!みたいな感じかな」
「単に武器に呪力を通すんじゃなくて色々と応用を利かすってことですか?」
「そうそう!時任君理解が早いね!」
「ハハ、そんなこと無いですよ。武器って近接だと他に何があるんですか?」
「えっとね、私が使ってる刀と薙刀、槍、短刀、ハンマー」
「ハンマー!?」
「あと素手かな?」
なんか途中恐ろしいものがあったけど結構種類あるな。素手は多分必修科目だと思うけど。と考えるとあることに気付く。
「質問です!」
「どうぞ!」
「東堂先輩は何で戦ってるんですか?」
「「「「「は?」」」」」
皆口を開けてポカンとしてしまった。唯一新田君は呆れたようにため息を吐いていたが最初に正気に戻ったのは禪院先輩だった。
「どうしてここであの男の名前が出てきたのかしら。というよりなんであの男を知っているのかしら」
「それはその……」
「新田、どういうこと?」
「さっき自己紹介の時に教室に乗り込んできはったんですよ」
「さっき急にいなくなったのはそういうことだったのか」
「変なことされなかった?」
「あ、はい。特には」
「でも時任君東堂先輩を撃退してましたよ」
また静寂が作られる。おかしい。なぜこうまでして一回一回に沈黙が訪れるんだ!?そして東堂先輩の名前を出した時の先輩方の顔よ。なんで皆してそんな嫌そうな顔をするんだ。
「あの化け物をどうやって撃退したんだ」
「(化け物…?)なんか好きな女性のタイプを聞かれて素直に答えたら帰っていきましたけど」
「おん?呼んだか?」
隣を見ると上半身裸の東堂先輩の姿があった。なんでこの人は半裸になっているんだと驚愕していると先輩方はやれやれという顔になった。何がどうなっているのかもう理解が追いつかない。
「お、時任じゃねぇか。こんなところで何やってんだ?」
「術式の使い方を先輩方に教えてもらってて、今は近接戦闘の勉強中です」
「なんだ水臭いことをするな。戦い方を学ぶんだったら俺のところに来い」
「えっ、一級の東堂先輩から直々に教えてもらえるんですか!?」
「やめるんだ時任君!その男から離れろ!」
他の人の等級は聞いてないため東堂先輩が一番上なのだろうと思い込んでる僕は教えて貰いたいと伝えようとすると、加茂先輩が躍起になって僕の前に背を向けて立ち塞がる。なんでこんなに顔色変わってるんだこの人は。
「そこを退け加茂、俺がそいつを鍛える」
「いくらお前でもこれは譲れない。こんなに純粋な子をお前なんかの下で育てさせてたまるか」
「どけぇ!お前らみたいなつまらない性癖の奴らにこそ預けられねえ!」
「時任君こっち来て」
「すみません、あの人たちなんで喧嘩してるんですか?」
「あんたみたいな子供の教育方針で相談してるのよ」
「へ?」
「そういえばなんてなんて答えたの?」
「何をです?」
「女性のタイプ」
「えっと……背の高い女の人、とだけ答えました。なんか尻はどうだとか聞かれましたがこれから考えますと言ったらいい顔をして帰りましたけど」
あー、と納得した様子の皆さん。そういえばあの人の性癖は聞いていないような気がする。
「お前は背が高い女が好みなのカ」
「まぁ見た目だけで言うなら。でもやっぱり中身の方が大事だと思いますよ……ってあの人の近くで大きな声で言えないような気もしますけど」
「懸命だナ」
丁度話し合いが終わったのか二人して振り向いてこっちに向かってくる。後ろに下がると誰もいないことに気づく。逃げたなこれ、これが新人いじめというやつなのか!?
「「君(お前)はどっちを選ぶ(んだ)!?」」
両方から手を差し出されるが正直どっちを選ぶべきなのか分からなかった。先輩方の方を伺ってみると皆サムズアップしてる。だめだこれオワコンだ。
「選びたまえ」
「これでお前が強くなれるかどうかわかる」
何この嬉しくない選択。ポ○モンでもこんなのないと思う。しかも相手が女子ならまだ何かあったような気がするけど両方男なんだよな。絵面的にきっとおかしい。いや絶対おかしい。後々恨まれるだろうがこうなったら仕方ない。
「り、両方受けさせてもらっていいですか?」
「ふっ、欲張りなやつだな」
「君がいいならそれでいいが………」
「最初は勿論俺だよな?」
「先輩方でジャンケンして決めてください」
すでにここも予想済みだったので回答をすぐに提示した。これで最悪のケースは免れた。周りからは変な目で見られたがこれくらいならなんともない。うん、なんともない………。一旦さっき買ったいろは○を飲み込んで落ち着く。
「そういえば時任君は武術の経験とかは?」
「全くないです。授業で剣道やったくらいしか」
「じゃあ最初は刀の方がいいのかな」
「イヤ、適当に本人に触らせテ、選んでもらった方が良いだろウ」
それもそうだと皆でさっきの蔵の方へ向かう。皆にどんなものを使ってるかを聞くと禪院先輩はリボルバー、加茂先輩は弓、三輪先輩は刀、メカ丸先輩は己(ロボットだから)、東堂先輩は素手らしい。西宮先輩や新田君は索敵や治療といった非戦闘系なのであまり戦うことはないらしい。蔵に着くと作業員らしき人が破片や塊の片付けをしていた。申し訳ないという気持ちを抱きつつも横を素通りしてたくさん武器がある場所に着く。
「とりあえず使ってみたいと思うものを手に取ってみるといい。それで手当たり次第やってみよう」
言われた通りにざっと目を通すと一本の長い槍が目に入る。古風な感じの槍だった。それをぼーっと眺めていると禪院先輩から声をかけられる。
「それがいいの?」
「え、ああ、なんか目に留まっちゃって」
「長物ねぇ」
「槍か、悪くないかもしれないな。よしやってみよう」
「そんなノリでいいんですか?」
「呪術師なんてそんなものだよ。他にやってみたいのはあるかい?」
「い、いいえ。とりあえずこの槍で」
取ることを許可されて手に取ってみる。何故だか不思議と馴染む感覚があった。それを持って練習場に戻ろうとすると老人が出入り口に立っていた。
「楽厳寺学長。おはようございます」
「加茂、これはどういうことじゃ」
学長は作業員の方を指さして訪ねてくる。学長とは先日一度会っていたので顔は知っていたが今日は目を合わせずらかった。
「時任君の術式実験をしていた際に不祥事で壊れました」
「ほぅ………お主がやったのか」
「はい……」
学長はこっちまで歩を寄せてくる。どんな処罰が来るかと震えていると目の前に着いた途端笑い出した。
「ほっほっほ、よくやった」
「…え?」
「実際わしもこれを邪魔だと思っててのぉ。処分に困ってたんじゃ。新入生なのによぉやってくれるわい」
「は、はぁ」
「礼と言ってはなんじゃが好きなのを持ってけ」
そう言って学長はご機嫌な様子で蔵を出て行った。どんだけあの石像君嫌われてたんだよと思いつつも会釈だけして僕たちも蔵を出ていく。その後槍を思い切り振り回してみると使いやすさを感じたので自分の武器をこの槍にすることにした。斯くして今日は解散となり明日から訓練の日々が始まる。
時任桜戲 京都校の生徒の第一印象
東堂葵 →あー、強そうな先輩だ。でもなんで髪型パイナップル?
加茂憲紀 →すっごい落ち着いてそうだけどあの目見えてんのかな?
西宮桃 →箒持ってる!魔女っ子かな?
禪院真依 →女性にしては背が高いなぁ。美容とかすごいやってそう
究極メカ丸→え、ロボ!?ロボなの!?いや被り物か?でもなんかカッコイイ!
三輪霞 →なんかちゃんと常識持ってそう
新田新 →しっかりしてそうだな。事務系の仕事とか得意そう