呪術高専京都校〜知られざるもう一人の一年〜   作:OSTO文明

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第三話 楽しかった一週間、僕は心も身体も傷を負いました

 あれから1週間が経った。あの日は金曜日だったので土日は休みだった。もちろん土日は荷物整理とぐーたらしてるだけだった。日曜日に新田君が訪ねてきた時はびっくりしたけど寮内の案内と同時に少し話すこともできた。このまま仲良くなれるといいなとあの時は平和な時間に浸っていた。あ、当然ながら新田君とは良好な関係を保っています。その翌日、月曜からのことを日記っぽく紹介していこうと思います。

 

 

 

〜月曜日〜

 一年の先生はまだ戻らないということで朝から先輩たちと一緒に訓練になった。

 

「時任君、呪術師にとって呪力操作も必要だが当然のことながら体力も必要だ」

「はい!」

「いい返事だ。ではまず」

「体力なら任せとけ!まずは今から鬼ごっこだ!五分間俺から全力で逃げてみろ、マイ時任(スチューデント)!」

 

 いつから僕は東堂先輩の生徒になったのだろうか。それから学校の敷地を使った鬼ごっこが始まった。もちろん離れたところからの開始だったが、ルールとして最低でもジョギングレベルのスピードで移動することを強制された僕は周りに警戒心を持ちながらも移動していた。まぁすぐに来ることはないからついでに校内を覚えようと思った瞬間影が差した。頭上を見ると飛んでくる巨体の姿があった。

 

「見つけたぞ、時任!」

「嘘でしょぉぉぉぉぉぉ!!!???」

 

 全力でその場を離れると後ろから重たい音が聞こえてくる。とりあえず逃げなきゃやばい。捕まった時のどうこうは言っていなかったが絶対捕まっちゃいけないという生存本能が僕を駆り立てた。だがそんなものはすぐに無に帰った。突然体が進まなくなる。すると体が宙に上がっていく感覚に包まれた。

 

「遅いぞ時任。そんなんじゃ撤退の際にすぐにやられてしまう」

「いや先輩早いんですよ。多分始まって三十秒経ってませんよ」

 

 宙ぶらりんになりながらも先輩に抗議する。ただその話も届かず地面に落とされ腰に痛みを負う。しかし見た目にそぐわず速さもあるとは、さすがは一級術師だろうか。立ち上がろうとすると加茂先輩が手を差し伸ばしてくる。その手を取って立ち上がると加茂先輩は東堂先輩に抗議し始めた。

 

「やりすぎだ東堂」

「あ?何言ってんだお前。まずは限界を知ることが大事だろ」

「それはそうだが、お前が相手では知る前に終わるだろう」

「そんなことはない!時任ならそれくらいやってのけるさ」

 

 いや瞬殺されたら限界を知る以前の問題でしょ。メンタル的にはきついと思いますよ、瞬殺されるの。圧倒的力を見せつけられるとかトラウマになりかねないし。

 

「しかしなぁ」

「まぁまぁ、先輩方のおっしゃってることも事実ですし、とりあえず基礎訓練からお願いします」

「分かった。君がいうならそうしよう」

「よし、なら俺が鍛えてやる」

「待て、お前のメニューだと時任君が壊されかねない」

「時任ならやってのけるさ(2回目)」

「それとこれとは別だ」

 

 また先輩方が喧嘩し始めた。この人たち喧嘩しかしないのか?

 

「じゃ、じゃあとりあえず加茂先輩のメニューでやって、東堂先輩はトレーニングのポイントとか教えてください!」

「それでいいか東堂」

「不服だがやる気があるのはいい事だ。今回は時任の指示でやってやろう。ただし、お前からの指図は受けん、いいな!」

 

 仲良くしろよ先輩方。結局午前はそのまま基礎体力トレーニングになった。加茂先輩と東堂先輩の指導のもと、かなりハードなトレーニングをやった。

 午後は呪力操作の訓練になった。意識的に出せるよう昼間からずっとやり通していたがやっとできるようになったのは夕方だった。先週はまぐれだったのだろう。とりあえず一定の呪力を一定時間流せるようにこれからも努力しなければならないことがわかった。月曜からかなりハードだったがそれでも頑張ろうと自分を励ました。

 

 

 

〜火曜日〜

 今日は三輪先輩と武具訓練だった。三輪先輩は話してて、というより見てわかるように常識的な先輩だったので優しく教えてくれた。槍の振り方とかは事前に動画を見たりしていたためある程度の知識は積んでおいた。午前中はとりあえず型をやってみたり動きやすい回し方とかをしていた。

 午後は簡単な組手をやった。午前はサポートの立ち位置だった三輪先輩と簡易的な実践形式で刃を交える。刃といってもあっちは竹刀、こっちは長い木の棒みたいなもので模擬戦闘だ。他の先輩たちにも見てもらいどういった場面で語気が悪かったとかの指導だった。メカ丸先輩が師範の元組手の準備が整えられる。

 

「時任君、遠慮しなくていいからね!でも無茶はしないで!」

「わかりました!やれるだけやってみます!」

「二人とも準備はイイカ?では、始メ」

 

 腕が振り上げられた瞬間三輪先輩に近づく。棒を勢いに任せて突き出すと竹刀でいなされて物打ちの部分が迫ってくる。すぐに腕を戻そうとするが間に合わず胴を撃たれる。

 

「ソコマデ」

「立てる?」

「あ、ありがとうございます」

「スピードは悪くなかったんだけど勢いに任せすぎ…かな?」

「そうね、時任はただ突っ込んだだけよ」

「ハハ、思いっきりやってみようと思ったらこうなっちゃいました」

「突っ込むのも悪くないガ、ある程度応用を効かせないとだナ」

「やってみます。というわけで三輪先輩、もう一本お願いします!」

「いいよ、やれるだけやってみよう!」

 

 それから先輩たちのアドバイスを聞きながら何戦か繰り返したが戦っている時間が延びただけで勝つことは一切なかった。そこに痺れを切らしたのか東堂先輩が俺がやるとかい言いだして急遽対戦相手変更になった。それでも三輪の時以上の敵意を持ってやってみろと言われたので言われた通りにやると開始十秒で瞬殺された。三輪先輩でも三分は戦えるようになったのに急にこれだと萎えそうで仕方ない。

 

やはり(・・・)な」

「…どういうことですか?」

「時任、お前やりたいようにやれていないんじゃないか?」

「どういう意味だ?」

「おそらくだが、コイツは型に嵌めすぎている。だからこそ自分の闘い方が見つからないんだ」

「そうなの時任君?」

「はい、実際僕は戦ったことなんかないですし、最初は言われた通りにやってたほうがいいのかなって」

「馬鹿野郎!」

 

 東堂先輩に不意にビンタされた僕は吹っ飛ぶ。ビンタされた頬があることを確認する。それを見た先輩たちは待て待てと声をあげるが当の本人はそれを無視している。

 

「時任、確かにスタンダードは大事だ。しかし!スタンダードがわかったなら次は応用にいかなきゃいけない!そしてスタンダードが嫌いなら自ら道を切り開くしかないんだ!」

「自ら、道を………」

「力を持ったんだ、変わらなくていいのか?」

 

 そうだ、僕はこの力を手に入れたんだ。望んで手にしたものではない。でも友達を守ろうとしたあの時に、もっと力があればって思ったんだ。なら答えは一つしかない。

 

「当たり前です。ご指導の続行、よろしくお願いします!」

「フッ、いい顔してるじゃねえか。三輪、相手してやれ」

「えっ、私!?」

「いいからやれ。ただし、気を抜いてるとやられるぞ」

 

 土埃を軽く払って初めの位置に戻る。構えをとって深呼吸する。メカ丸先輩の合図が聞こえた瞬間僕はまたまっすぐ突っ込んだ。

 

「(最初と同じ動き、でも速さが違うだけ。ならこうすれば!)」

「最初と何も変わってないじゃない!」

「真依、よく見てみろ」

 

 僕は突き出さずように見せかけて行けるギリギリまで接近して振り下ろされる竹刀めがけて振り上げる。そのまま足を引っ掛けて体制を崩した後、回転して蹴りを決める。

 

「かはっ(どういうこと!?さっきと全然違う。動きも気配も何もかも!)」

「ハアアア!」

 

 そのまま槍を振り回しながら先輩を牽制していく。攻撃の主導権は僕にあり、一切攻撃させないようにしていた。隙ができた瞬間を狙い、竹刀を手放させて首に棒をかける。メカ丸先輩からソコマデという声が聞こえて礼をすると三輪先輩は膝から崩れ落ちてしまった。

 

「だ、大丈夫ですか!?すみません遠慮するなって言ってたんで」

「だとしても急に変わりすぎだよ!怖かった〜」

「え、怖い………」

「結構怖かったですよ、数日しか見てませんけど普段の時任君とは思えないオーラでしたもん」

「そんなですか」

「「「「「「うん」」」」」」

 

 先輩方がタイミング合わせて頷いている。三輪先輩に関しては半泣きだ。一体どうすればいいのだろうと試行錯誤していると東堂先輩が肩に手を置いてきた。

 

「コングラッチレーション、時任。これでお前も一歩前進だ」

「ありがとうございます…」

「なんだ、嬉しくないのか?」

「いえ、三輪先輩に申し訳ないことをしたなって」

「仕方ないわよ。気を抜いてたら誰でもこうなるわ。まぁ泣くのは三輪だけでしょうけど」

「泣いてないもん!」

「三輪、諦めロ」

「メカ丸ぅ〜」

 

 時間も時間だったので今日はここで解散。今日の感覚を忘れないようにしようと軽く体を動かしてから寮に戻った。

 

 

 

~水曜日~

 午前中は体力トレーニングと呪力操作の訓練、午後は術式の理解だった。同席してるのは仲の悪い二人とメカ丸先輩、三輪先輩の四人。昨日は申し訳ないと互いに謝罪して頑張っていこうと意気投合した。

 螺旋とはいえまだ応用が出来るはずだといろんなものを試してみる。とりあえず最初に作った大きめの渦巻きっぽいのを作ってみた。

 

「平たく出来たりするのかね」

「多分出来ると思います」

 

 どうすれば平たくできるかイメージを作ってから呪力を動かすと真っ平らな円盤になる。

 

「なかなかだナ」

「なんか蚊取り線香思い浮かんだらスーって」

「そんなんで出来たの!?」

「よし、じゃあ次々やってみよう」

 

 指示通りいろんな形を作ってみた。使い方によっては臨機応変に回せることが分かったのでこれからもバリエーションを増やしていくことで今日の訓練は終わった。

 

 

 

〜木曜日〜

 この日は朝から担任が全治三ヶ月の怪我を負った話を受けて始まった。ただ顔を見たことないのでとりあえずお大事にと心のうちにしまって訓練を始めた。

 午前のトレーニングは体力的に地獄だったが午後は別の意味で地獄だった。初日にやった射出する術式をモノにするために射撃訓練を行った。右側で禪院先輩がやっているのを見てやってみようとするとなかなか当たらない。左側では加茂先輩が弓を射ているがこっちの命中率も凄かった。こう、上手い人に挟まれるとすごいプレッシャーに包まれるよね。

 

「時任君、もっと集中したまえ」

「はっ、はい!」

「震えちゃダメよ、もっと安定させないと」

 

 言葉はやって来るもののそれでも的を撃っている。聞き手である右手で指を構えて撃っているが真ん中に当たる気配はない。少量の呪力とはいえちゃんとまっすぐ飛べるようにはしてあるはずなのだが。

 

「ねぇ、もしかしてアンタ利き手じゃない方でやってる?」

「いえ、利き手です」

「じゃあ一度左で撃ってみなさい」

「なんでですか?」

「いいからやりなさい」

 

 返事をして恐る恐る左手で構えると今度は手が震えることなく射出すると真ん中に近いところに当たった。

 

「やっぱりね」

「どういうことですか?」

「アンタ元は左利きだったりしない?あとは左目の方が狙いが定まりやすいとか」

「あー、そういえば小さい頃に直されたらしいです。僕自身は記憶がありませんけど」

「つまり元々の感覚が残ってるというわけだな」

 

 なるほど納得。だから一気に落ち着く感覚があったわけだ。禪院先輩に感謝しなきゃ。

 

「禪院先輩ありがとうございます!」

「いいわよ礼なんて。あと、私のことは下の名前で呼んでちょうだい」

「え、いいんですか?」

「いいわ。そもそも私、家の名前嫌いなの」

「彼女は相伝を引き継げなかったからね。そういったところだろう」

 

 加茂先輩の言葉に舌打ちする禪院先輩。実際呼んでいいのかわからなくなったが勇気を出して呼んでみることに。

 

「ま、真依先輩、射撃のご指導よろしくお願いします」

「ええ、いいわよ桜戲」

「え(名前で呼んだ…?)」

「私もアンタのこと名前で呼ばせてもらうからよろしくね。桜戲」

「りょ、了解です!」

 

 そのまま真依先輩の指導のもと射撃訓練が行われた。射撃の命中率や正確性が上がったことも良かったが先輩との距離が少し縮まった気がする。この調子で他の先輩たちとも仲かよくなれたらいいなと思った。

 

 

 

〜金曜日〜

 午前中は慣れてきた体力トレーニングと呪力のトレーニングだ。しかし午後はトーナメント式の組手。練習用の武器と素手のみで戦う組手だった。庵先生が審判を務め、僕たちはくじで当たった相手と組み手をすることになった。

 最初の相手は新田君。いくら支援型の術式とはいえ護身術レベルは身に付けているから問題なくやっていいとのことだった。この数日別行動だったためどんな訓練をしていたかは知らないが実力を知らない点ではいい相手なのではとお互い気張って位置につく。やがて勝負は始まり接戦を繰り返していった結果僕が勝利を収めた。互いに頑張ったと笑っていると次に邪魔になるから退くよう促された。

 勿論女子も参加していたが僕に当たることはなく次々と敗れていった。原因はもちろん東堂先輩だ。(本人曰く)手加減しているらしいが呪力でガードしているとはいえボコボコにされている三輪先輩が可哀想だった。対戦後皆で同情していると次は僕と加茂先輩が呼び出された。

 

「時任君、私は手加減はしないぞ」

「大丈夫です!東堂先輩みたいにされなければ!」

「普通はあそこまでやらないからな」

 

 呼吸を落ち着かせて体制が整うと試合開始する。加茂先輩は自分が動きやすいように体を動かしてくる。正直防ぐので手一杯だった。さすがは準一級の先輩だ。完全にペースを持っていかれた。隙が見えたと思った瞬間棒を打ち込もうとすると持ち上げられて首元に手刀を添えられる。

 

「参りました」

「ああ、だがよくついてこれた」

「いえいえ、防ぐので手一杯なだけですよ」

「よく頑張ったな」

 

 褒められて少し嬉しくなってしまった。そのまま加茂先輩は決勝戦に入った。なお勝っていた真依先輩は東堂先輩と戦う前に棄権したらしい。二人が向かい合っている姿を見ると明らか体格差があるのがはっきりわかる。

 

「加茂、お前は手加減が必要ないよな」

「東堂、さっきのはやりすぎだろう」

「知るか!練習も本気でやるもんだろ!」

「それで時任君()が怖がったらどうするつもりだ!」

「これしきでマイ時任(スチューデント)が怖がるわけないだろ!」

 

 いや怖かったよ。

 

「やはりお前に彼は任せられない」

「ならこの勝負で決着をつけるか」

 

 試合開始の合図とともに二人の姿は消えた。こうして見てみるとサ◯ヤ人同士の戦いみたいだ。戦いは長く続いていたが圧倒的に加茂先輩が押されていた。日が沈みだし、夕焼けになるころに戦闘は終わったらしいが審判である先生も含めて観客は皆寮に戻って反省会をしていた。

 

 

 

 こうして1週間のハードな訓練は終わった。ちなみに反省会が終わった後からさっきまで東堂先輩に呼び出されて稽古をつけてもらっていたがフルボッコにされて身体中が痛いので明日は安静にしていようと心に誓った。あと東堂先輩は無茶なことを強いてくるので呼び出されたら腹を括ることも忘れないようにする。

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