呪術高専京都校〜知られざるもう一人の一年〜   作:OSTO文明

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第五話 お仕事見学!のはずだったんだけど………

 人生ゲームの日曜日から数日後、僕は今、新田君とメカ丸先輩と共に町外れにある廃工場に来ている。

 理由は簡単。呪術師の仕事は呪いを祓うこと。その呪いが居座るこの場所で仕事をするために呼び出されたのだ。本来準一級のメカ丸先輩はそれと同等の相手を祓うのだが、僕たち一年の見学のために今日は二級の呪霊が相手らしい。皆で窓と言われる伝達役の人の説明を受けて中に入る準備をする。

 

「時任、ちゃんと武器は持ってきたカ?」

「はいっ、何かあった時の為に水の予備もあります!」

「良い心がけダ。新田は非戦闘員に近いがちゃんと準備はしてきたカ?」

「はい。念のための装備は」

「一応俺が任された任務だガ、何があるかわからない。心してかかレ」

「「はい!よろしくお願いします!」」

「ではお願いすル」

 

 窓の人に向かって何か言ったかと思うと窓の人はブツブツと何かを言い始めた。すると空が急に暗くなりまるで夜みたいになった。

 

「これって」

「帷だよ。一応町外れだけど、一般の人に見られないようにするためにこうやって隠すの」

「なるほど」

「二人とも、中に入るゾ」

 

 スタスタと入っていく先輩の後を追って僕たちも廃工場の中に入る。外から見た時も思ったが中はかなり広そうだ。ちゃんとついていかないと迷子になりそうだ。見た感じ部品工場のようだった。現れるのは二級呪霊。一体どういう形なのか妄想を膨らませているとペタペタと音が聞こえてくる。

 

「先輩、あれって」

 

 新田君が指さす方向を見ると、小さい犬くらいのサイズの紫色のトカゲが壁に張り付いていた。目がぎょろぎょろして気持ち悪い。

 

「四級ダナ。だが肩慣らしにはちょうどイイ。二人とも待ってロ」

 

 メカ丸先輩は右手からブレードを出してトカゲを斬り裂いた。そのまま壁を蹴ってこちらに戻ってくる。なんだか体操選手みたいだった。

 

「さすがです先輩」

「すごい身のこなしでしたね」

「二人とモ、油断はするナ。今回はちゃんと消滅してるから良いガ、消滅するのを見届けるまで気を抜かない事がこの仕事の要とも言えル」

「「はい!」」

 

 それからは工場の奥まで進んでいくのと一緒に呪霊退治を行った。四級などの雑魚は僕たちもやれる範囲でやった。ちゃんと訓練していたおかげかきちんと対峙することが出来た。地を歩いている呪霊は槍を使い、飛んだり跳ねたりしているものには術式で撃ち落とした。射撃精度も上がっていたのが嬉しかった。真依先輩たちに感謝しなくては。

 

「先輩、奥まであとどれくらいですか?」

「もう少しダ。あの先から気配を感じル」

「どんな形をしているんですかね」

「さぁナ。ただ単体じゃない可能性もあル。気配は一つだが雑魚どもを従えている可能性も否定できなイ。気を引き締めロ」

 

 僕たちは息を呑んで先輩についていく。流石に今日は普段みたいな雰囲気はなく緊張感に包まれている。念のため(残弾)の量を確認すると、持ってきたペットボトル3本中一本と半分だった。すぐに手をつけられるようにしている容器の中はすっからかんで急いで補給した。最初は結構合ったのだが雑魚退治の時に少し使いすぎたのだろう。もう少し相手に合わせて量を考えなきゃなと気を引き締める。

 

「この扉の先にいるナ。二人とも覚悟はイイカ?」

「いけます!」

「自分も大丈夫です!」

「よし、入るゾ」

 

 メカ丸先輩がゆっくり扉を開けると中から少量の光が見えた。やがてすべての扉が完全に開かれると天井から外の光が差し込んできているのがわかる。だが部屋の真ん中に大きな呪霊がいた。トラック二、三台くらいの大きさで犬のような見た目をしている。ただところどころが燃えているようで肌は紫色だった。

 

「デカくないっすか!?」

「狼狽えるナ。よくあることダ」

 

 新田君が驚いている中メカ丸先輩は右手から刃を出して足を切りに行こうとするが避けられてしまう。その動きは速く、追いかけっこしていたら先にはてるのはこちらだというのが目に見える。

 

「二人とモ、気をつけロ」

「は、はい!」

「待ってください、あいつなんかしようとしてます!」

 

 犬型呪霊は顔を上に向けて雄叫びを上げた。すると近くから出てきたのか普段見る小さいサイズの動物型呪霊がたくさん出てくる。

 

「これって!」

「アア、おそらくアイツの子分ダナ。術式の気配はないかラ、多分アイツが親玉ってやつだろウ。二人トモ、申し訳ないが雑魚の相手を頼めるカ?」

「は、はい!任せてください!」

「先輩、気をつけてください!」

「分かった。お前らもナ」

 

 メカ丸先輩は右肘からブースターみたいなのを出して飛んでいってしまった。本当にメカなんだなと思いつつも僕たちは身構える。

 

「時任君わかってるよね?」

「うん、新田君は極力動かないで。ただ迫ってきたらその時は自己防衛して」

「わかった。時任君は?」

「僕は前に出てコイツらを薙ぎ払う。大丈夫、先輩たちのいう通りにちゃんとやればできるって信じてるから!」

「うん。じゃあ気をつけてね!」

「ありがとう!それじゃあ、行ってきます!」

 

 僕は槍を構えて呪霊を睨む。子犬や鳥、狸に猿なんていろんな種類がいる。唯一救われたのは猫がいなかったことだ。猫が相手なのはちょっと気が引ける。一度息を吸って吐いて心を落ち着かせる。もう一度呪霊達を睨むと真ん中にいた子犬が噛みつこうと跳んできた。

 

「せいっ!」

 

 槍で薙ぎ払って犬を消滅させる。やった…のだろうか?とりあえずそのままやってくる呪霊たちを槍で倒していく。ある程度倒すと体が慣れてくる。

 

「時任君上!」

 

 新田君の声が聞こえて上を見ると鳥型が一直線に向かってきていた。ただこの距離なら間に合うと容器に指を突っ込んで水を取り出す。それの形を整えながら一歩引いて狙いを定めて打ち込む。

 

「“輪舞(ロンド)”」

 

 撃ち込んだ螺旋は鳥型呪霊の腹を貫いて消滅させた。

 

「え?今のって……」

「最初に見せた僕の術式。さっきも使ってたけど見てなかった?」

「う、うん。でも名前ついてたんだね」

「あー、最初はつけなくていいかなって思ったんだけど、東堂先輩と加茂先輩があった方がイメージしやすいから付けとけって」

「あ〜……」

 

 新田君はなんとなく察したような顔をしている。“螺旋操術(ラセンソウジュツ)”、これは加茂先輩が名付けたが輪舞の方は僕が名付けた。名前の由来とかは特に考えてない。適当に思いついたのをそれに当て嵌めているだけだ。最近ハマっているDJのゲームから少し借りたとかではない。

 

「新田君、さっきみたいな感じで油断してたり見えてなかったら教えてくれると助かる!」

「わかった!任せてください!」

「新田君自身の方も警戒はしてね!」

 

 呪霊たちはキャンキャン吠えている。槍を振り回して構える。

 

「さて、お仕事を始めるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はあれからずっと二級呪霊の相手をしている。速すぎるせいで刀源解放(ソードオプション)で斬ることが叶わない状況になっていた。推力加算(ブーストオン)しているからまだ追いつけるものの絶技抉剔(ウルトラスピン)で当たることはない。これじゃあ大祓砲(ウルトラキャノン)で狙い撃つことも難しいだろう。幸いにも二人の元に行ってないのがマシなところだ。おそらくアイツ自身の攻撃力はそんなにない。さっき一度剣山盾(ウルトラシールド)で防いだ時に噛みつこうとした牙が数本折れた。ただそれ以来スピードで翻弄されている。

 

「チッ、めんどくさいヤツだナ」

「オオオオオオ!!」

 

 今度は突っ込んでくるが牙ではなく爪で引っ掻こうとしている。剣山盾で防ぐと爪は折れることはなかった。それどころか剣山によるダメージも入っていない。どうするべきか考えた時にふと気付いた。奴は工場の機械を足場にしている。それのせいで狙いをつけることが難しかった。だから先を狙って足場を無くしていくのが攻略法だ。

 しかしこれだけでは決め手に欠ける。これだけ速い相手だ。すぐに他の足場を見つけるに違いない。すべて落としたとして向かってくのはこっちだ。これだけ大きな呪霊、決めるなら絶技抉剔ではなく砲呪強化形態(モード・アルバトロス)で決めるべきだ。けど砲呪強化形態になるには少し溜めが必要だ。ここを解決しないと俺がやられてしまう。

 

「メカ丸先輩!」

「時任、新田!ソッチは終わったのカ?」

「はい、時任君がやってくれました」

「でも新田君の援護がなきゃやられてましたけどね」

「終わったのならイイ。……そうだな、時任、少し手伝ってくレ」

「僕ですか?」

 

 時任に作戦内容を伝えると納得して了承してくれる。破壊する場所を伝えて配置についてもらう。新田には被害に遭わないよう少し離れていてもらう。呪霊が引っ掻いてくるタイミングを見越してまた剣山盾で弾き返すと誘導した方向へ跳んでいく。

 

「行ったゾ時任!」

「はい!任せてください!」

 

 時任は術式を撃ち込んでオブジェクトを破壊していく。行き先を破壊された呪霊は足をつけた瞬間体制を崩すがすぐに別の場所へと飛んでいった。その後も交互に足場を破壊していく。

 やげて最後の一つになった時、俺は時任にタイミングを譲渡する。

 

「準備をスル、タイミングは任せたゾ!」

「了解です!」

「砲呪強化形態!」

 

 誘い出す場所に向けて砲撃の準備をする。上手くやればこの一撃で仕留められるはずだ。充填開始をして半分が過ぎた時、異変は起きた。

 

「先輩、前来てます!」

 

 実際新田に言われる前に気づいていた。大犬が俺めがけて走っていたのだ。最後のオブジェクトはすでに破壊されているが奴の慣れの方が早かったのだろう。それを飛び越えてこっちに向かってくる。まだフルチャージが終わっていないこの状況で撃っても完全に祓うことはできないだろう。鋭い爪が迫ってくる。

 ──大丈夫だ。怯ませるくらいは出来る。そしたら刀源解放で祓えば良い。もう撃ってしまおうかと考えた瞬間だった。

 二本の槍のようなものが迫っていたヤツの手を貫く。槍の伸びる先を見ると時任が立っていた。

 

「先輩今です!思いっきりやっちゃってください!」

「アア、任せロ!」

 

 この一瞬でチャージは全て溜まった。そして奴の動きは今止まっている。狙いは十分。イケる!

 

三重大祓砲(アルティメットキャノン)!!!」

 

 最大火力を持った砲撃は大型呪霊を包み込んでいく。五秒ほど照射を続けてると砲撃は自然と弱まっていった。その場に呪霊の姿はなく代わりに紫色の煙が立っていた。

 

「やったカ?」

「はい、確実にくらっていました。でもあの呪力出力すごいですね」

「マァナ………」

「と、時任君」

 

 何々と新田に少し離れたところに連れて行かれる。小声で話しているようだがバッチリ聞こえてしまった。気づいた時任はデリカシーのない話をしてしまったと俺に謝罪してくる。

 

「すみませんでした、僕何も知らずに」

「イヤ、話していなかった俺も悪イ。それよりも助かっタ。礼を言ウ」

「いえ、力になれてよかったです!」

「最後のやつはなんだったの?あれも見たことないけど」

 

 うーん、と少し考えるようにしてから思いついたかのように話す。

 

「パッと思いついたからやってみたんだけど意外とできちゃったんだよね」

「思いつきでやったのカ」

「はい」

「なかなかすごいね……」

「最初のやつは輪舞と名付けていたがそっちのやつはあるのか?」

「そうですね………連弾(レンダン)とかどうでしょうか、ピアノみたいな感じで」

「いいかもしれないナ。その調子でバリエーションを増やセ。それじゃあ奥に行くゾ」

「奥ですか?」

「ほら、まだ何かあるかもしれないじゃん?」

「なるほど」

 

 納得した二人は後を追いかけてくる。色々と破壊したが道は残っていた。一番奥のところに来ると何やら横たわっているものがあった。よくみるとそれはさっきの大型呪霊に似た犬の死骸だった。

 

「これって…」

「おそらくさっきのヤツダ。死んで呪霊になったんだナ」

 

 時任は死骸に近づいてしゃがみ込むと手を合わせた。

 

「何をシテイル?」

「……かわいそうだなって思って。少しでも楽に成仏してもらえたらなって思いまして」

「ソウカ………」

 

 俺は周りに何か異変がないかだけ探って何もないことを確認すると振り返って戻ろうとする。二人は走って追いかけてくるが出口まで何も話すことは無かった。外に出るとすでに帳は解除されていた。車に乗り込んで学校に戻る最中。時任がもう一度謝ってきた。気にするなとだけ告げて大丈夫だということを促す。

 ────大丈夫だ。いつか、お前たち、皆の元に本当の俺が行けるようにしてみせるから。もう少しだけ、待っていてくれ。




 時任桜戲の術式情報 その一

螺旋操術 らせんそうじゅつ
 触れた液体を螺旋状に操作し、様々な形を作る。液体ならなんでも可能であるが、逆に液体がなければ使用は出来ない。技は全部で七種類。うち五種類が通常の攻撃技であり一種が防御技。最後の一種は最終奥義である。
連弾 れんだん
 伸ばして槍状にして串刺す技。隣り合ってないゆびならどの指同士でも可能。ただし片手ずつになり最大四本。串刺し以外にも足止めに使える。
輪舞 ろんど
 時任が使う基本技。狙い撃つ鉄砲のような貫通弾。人差し指か二本指で狙えて片手につき一発ずつ。最大二発を同時に撃てる。
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