呪術高専京都校〜知られざるもう一人の一年〜 作:OSTO文明
今回は時任君についてのお話をちょっと入れてます。
「始まりました!第一回“呪術高専京都校 男どものファッション対決”!」
なんだよその大会。と思った皆さん正解です。何故こうなっているのか簡単に前回のあらすじを交えてやると、初給料が出たので皆でカラオケ行って楽しんだ後服屋さんに来たら先生のテンションが上がっちゃった。ということです。
どうやら男陣のファッションセンスを確認するとのことで審査員に女性陣がいます。
『俺もファッションは出来ないからこっち側ダ』
缶バッチメカ丸先輩も向こう側にいる。てかどっから椅子と机取ってきたんだ?
「制限時間は二十分、各自自分に似合う服の組み合わせを選んで採点するわ!出し惜しみは無しよ」
「見せて貰おうじゃないの」
「私の採点は厳しいわよ」
「皆どんな服着るのか楽しみですね!」
『応援はしておこう』
開始の声が掛かると同時に店内に散らばった僕たち。各々が目に入った服を手に取ってみる、というような行動はなく三十秒も経たぬうちに司会席の死角に集合する。
「困りましたね」
「まさかこんなことになるとはな」
「ファッションとかあまり気にしてなかったです……」
「俺はもう十分に服があるから買わなくていい」
「しかしこれ持っていかなかったら」
「ああ、確実に面倒なことになる」
「じゃあどうすんだ?」
「ここは一つ、ペアを作って服を選びましょう」
「それは名案だな」
確かにそうすれば自分で悩むことがないから事が進みやすい。さすがは新田君だこういう時の頭の回転はおそらく二人の先輩よりも頼りになるだろう。
「肝心のペアはどうするの?」
「じゃんけn」
「いくぞ時任」
「ちょまっ、あーーーーーーー」
すぐに襟を掴まれて引き摺られていく。あっという間に加茂先輩と新田君は見えなくなった。この服屋さん広すぎる。
「加茂先輩と組まないんですか?」
「性癖のつまらんやつよりお前の方がいいに決まってるだろ」
またその話か。
「安心しろ、お前のは選んでやる」
「う、うっす」
「さぁ俺に似合う服を選んでみろ」
とりあえず連れてこられたコーナーを見渡して適当に服を手に取る。でも東堂先輩だから真剣に考えないととんでもない目に合うのはこっちだと一度考え直す。手に取った服を戻しもう一度見渡すとピンときた服を取る。オレンジ色が基調に真ん中のギザギザ。さらにはジーンズのようなズボン。どこかで見たことあるような組み合わせだったがとりあえず先輩に渡してみた。
「ほう、これがお前の選んだ服か。来てくるぜ」
何故かウキウキして更衣室に入っていく先輩。すぐに着替え終わったのかカーテンは開かれたがその姿を見て言葉を失った。どうしても既視感があったのだ。
「どうかしたか?」
でも言えるわけがないと思った僕は目を逸らすと恐竜の被り物を見つける。それを手にとって渡した。
「これを被れば完成です」
「ふっ、皆の反応が楽しみだな」
「そ、そうですね」
「次は時任の番だ。教師として人肌脱いでやる」
教師をとった覚えはない。だが今機嫌を損ねるわけにはいかないので笑って誤魔化した。服を取りに行った先輩は時間もかからず戻ってきた。因みに今は隣で新田君が着替えている最中だ。コーナーがコーナーのせいで更衣室は隣になる。加茂先輩と火花を散らしているが敵はそこじゃない、司会席だ。戻ってきた先輩はジャケットとニット、パンツを持ってきた。意外と普通のを選ぶと思ったがすぐに着替えるように指示された。とりあえず着てみるとサイズがピッタリだった。一瞬怖くなったがカーテンを開けてみるとドヤ顔の東堂先輩が待っていた。
「どうですか?」
「さすがは俺の生徒だな」
「くっ、私ではこの服は選べなかっただろう」
「加茂先輩こっち戻ってきてください」
新田君は冷静に状況を対処している、というより半分呆れているのだろう。時間ギリギリまで加茂先輩と練り合っているようだ。これでいいかとなった僕達は司会席の方に顔を出した。
「最初に戻ってきたのは東堂と時任だ〜!」
「二人ともお疲れ様です」
『オツカレ』
「はは、ありがとうございます」
「御託はいいわ、早く始めましょう」
「真依ちゃん乗り気だね」
「では俺から行こう」
一歩前に出て近くにある更衣室に身を乗り出した東堂先輩。一瞬悪寒がしたが無視することにした。
「初っ端から東堂先輩ですけどどうなるんですかね」
「そうね、メカ丸はどう思う?」
『仮にも一級呪術師、それなりの実力はあるだろウ』
そんなことに使われる称号じゃないでしょ。
「葵は意外な所でセンスあるのよね。そこに注目していきたいわね」
「どうでもいいけどあまりに酷いものだったら手直しするわよ」
「オッケー真依ちゃん」
なんで実況やる気満々なんだこの人たち。更衣室から用意が出来たとのことで審査が始まった。
「ではではエントリーNo.1東堂葵、どうぞ!」
「ふんっ!」
勢いよくカーテンが開かれると皆爆笑している。実際僕もお腹を抑えて東堂先輩を見ることなどできなかった。
形は違えどほぼジャ○アンなのだ。その上に可愛さを付け足したような恐竜の被り物。駄目だ、お腹痛い。
「何よアンタ、その格好www」
「www」
「時透が選んだ。似合っているだろう」
「アンタとんでも無いもの生み出してんじゃないわよwww」
『これが一級の破壊力………www』
「駄目だよみんな、笑っちゃ……www」
「ふっ、皆センスがないな」
いやこれは仕方なかったんだ。もう、どうにもできないwwwww
「それでは気を取り直して、フフw、点数をつけます。皆さんどうぞ!」
出された点数は40点中30点だった。てかメカ丸先輩まで採点するのか。
「面白いのだけど少し違うのよ。まぁ、このゴリラに興味ないけど」
「もう少し体つきを活かしたほうがいいかな」
「私は面白かったので…w」
『東堂ならもう少し暗い色の方がいいんじゃないカ?』
皆意外と真剣に点数つけるんだな。その点数を見た先輩は納得がいかない様子だったがどこか諦めがついたのかすぐに持ち場に戻った。続いて僕の採点になるとすぐに更衣室に入って着替えた。呼び声に応じて出ると皆してテーブルを叩く。
「コイツの服選んだのは誰よ!」
「すごい、ちゃんと本人を活かしきってる」
「とんでもない才能を持ってる……」
『似合っているぞ時任』
「すごいじゃない!」
皆がキャイキャイ騒いでいるところ衝撃の真実が放たれる。正直ここまでは予想していなかったがここから先は予想通りになりそうだ。
「俺が選んだ」
「「「「『………え?』」」」」
「これは俺の作品だ」
「あ、アンタがこれやったの!?」
「やっぱり葵は変なところで器用よね…」
「東堂君のいいところって戦う以外であったんだ………」
「ほへ……」
『三輪、固まっている場合じゃないゾ』
そんなこんなで意見が飛び交っている。正直東堂先輩にこういうセンスがあったのは驚きだがパイナップルジャイアンにも他に特技があって安心している自分がいる。訓練の時本当に殴る蹴るしか特技ないんじゃないかと疑ったほどだったから。
だが笑っていられる時間もすぐに終わった。視界にある人たちが入ってきたのだ。当然それに目を奪われた僕はその人たちと目があう。店に入ってテーブルを越えて近づいてくる。
「桜戲、桜戲なのか?」
「嘘、本当なの?」
「誰よ、この子に手を出そうとしてるのは」
「真依ちゃんなんでそんな攻撃的なの」
「あなたこそ誰よ。私の可愛い可愛い桜戲ちゃんに手を出すつもり?」
「落ち着け
「何言ってるのよ
「まだそうと決まったわけじゃないしこの人たちに失礼だろ」
「兄さん、姉さん……」
その場にいた全員が顔をこっちに向けてくる。京都校の人はは?という目で兄さんたちは嬉しそうな目で見てくる。
「元気にしてた?桜戲ちゃん」
「う、うん」
「こんなところで何をしているんだ」
「そ、その……」
「失礼します。時任君のご兄姉の方でいらっしゃいますか?」
「はいそうですが」
「私、時任君の担任の庵歌姫と申します」
「申し遅れました。桜戲の兄の時任和月と申します」
「姉の時任舞雪です」
「それで今は何をしていらしたんですか?」
「それも含めて少しお時間をいただけますか?」
「私は構いませんが……」
「私も構いません。立ち話もなんですし下のカフェでよろしいですか?」
了承した先生は僕に会計を済ませるように指示して皆に別の指示を促す。
「桜戲ちゃん、その服すごく似合ってるわ!お姉ちゃんが買ってあげようか?」
「い、いいよ。自分で買うから」
「この服誰が選んだの?」
「せ、先輩……」
「へ〜どの先輩なのかな?」
「俺ですお姉さん」
「あなたが………?」
「弟さんの面倒を見てます、東堂葵です。好きな女の好みは」
「あー先輩言わなくていいですから!姉さん会計済ませてくるから大人しくしてて!」
暴走する先輩を止めて急いで会計を済ませる。走って兄さんたちのもとに戻るいつも以上に真剣な空気が張り詰めていた。そのまま僕たち四人は下のカフェに移動した。全員アイスコーヒーを頼んで運ばれるのを待っている。その間も空気が張り詰めているように感じた。それも仕方ないのだ。姉さんはふわふわした感じがあるものの兄さんは堅物のような雰囲気を持っている。
「あの人たち誰ですか?」ヒソヒソ
「どうやら時任君のお兄さんとお姉さんみたいだよ」ヒソヒソ
「なに?本当か」ヒソヒソ
「それにしても随分かっこいいですね」ヒソヒソ
『姉の方も美人だな』ヒソヒソ
少し離れたところから小さい声で話しているようだがバレてるんだよな。あれで隠しているつもりなのだろうか。その中を待っているとコーヒーが届き面談(?)が始まった。
「では改めましてお聞きしたいのですが、弟は一体何をしているんですか?」
「桜戲君は京都府立呪術高等専門学校、通称呪術高専にて授業を受けています」
「呪術というのは?」
しばらく学校の説明と呪術に関する説明が行われた。姉は時々よくわからないような顔をしていたが先生が改めて説明してくれたおかげで納得がいく様子だった。
「大体のことはわかりました。それで今日は何を?」
「本日は」
「失礼、先生のお気持ちは嬉しいのですが、私は弟の口から聞きたい所存です」
「それは失礼しました。時任君」
「は、はい」
兄の目を見ようとするが怖くて見れなかった。別に兄自体が怖いわけじゃない。けれど外にいるときはあまり兄の目を見ることはできない。
「きょ、今日はこの間お仕事があって…そのお給料が出た……ので、先輩方と遊びに来ていました」
「なるほど。先生、質問よろしいですか?」
「構いませんが」
「弟は危険な場所に自ら赴いたのですか?それとも誰かが連れて行ったのですか?」
睨むような目が強くなった。そう、僕は兄のこの目が苦手だ。小さい頃から見ているがこの目だけは一向に慣れない。そして言い方も強くなる。他の人からすれば優しい兄ではないかと言うだろう。されど僕にはあまりそうは思えない。言っていることはそうなのだろうが、僕にとって兄はかけ離れた存在だ。だからその目は過保護にする為、目を離さないぞというサインにしか思えなかった。
「いえ、その際は一学年上の者の任務について行きました。なので安全の保証は」
「そういうことを聞いているのはありません。それは桜戲の意思なのか、ということです」
僕を見るように視線を向けた。その時目があった。数年ぶりだった。けど咄嗟のことで反らせはしなかったが恐怖心はなかった。
「それは」
「僕が行くって言っ…いました」
恐怖心が戻ってきたのか咄嗟に出た言葉を引っ込めるように言った。
「それは本当か?」
「無理しなくてもいいのよ桜戲ちゃん」
「違う、僕は自分の意志で行ったんだ。先生はまだ最初だから行かなくてもいいって言ってくれたけど、僕も早く力になりたいから見学させて欲しいって言った」
今度はちゃんと兄の目を見てハッキリ言えた。兄は口元を片手で押さえつつ考える様子を見せるとこっちから視線を外す。
「桜戲は、他の人と打ち解けていますか?」
「え?」
「え、ええ。自ら率先していく態度は素晴らしいものだと思います」
「それなら良かったです。この後お時間いただけますか?」
「はい。戻るまでお時間ありますので大丈夫です。時任君、帰る頃になったら連絡するわ。それまでは久しぶりにお兄さんとお姉さんとゆっくりしなさい」
「は、はい」
先生は席を立つと手を鳴らす。その手に反応したのか先輩方は席を立って店を出て行った。
「気配でわかってはいたが本当にいたとはな……」
「そ、そうだね……」
「桜戲、こっちを見なさい」
兄さんの言われた通りにすると数秒ほど怖い顔をされたがすぐに柔らかい顔つきになった。
「今の学校は楽しいか?」
「う、うん」
「良かった。心配してたんだぞ?家に帰ってきたらお前の姿はないわ親父たちは怒っているわ」
「本当よ〜お姉ちゃん寂しかったんだからね」
「姉さんは元気にしてたでしょ」
「いや、一緒に帰ってきたがコイツは三日くらい部屋で泣いてたぞ」
マジかよ姉さん、そこまでのブラコンだとは思っていなかったわ。
「本当よっ!せめてお姉ちゃんには一言言いなさいよ!」
「こっち来ないでよ」
姉さんは僕の隣の席に来て抱き着いてくる。公共の場だから辞めてもらいたい。周りに変な誤解をされかねないし。
「しかし成長したな。お前が外で、いや他の人の前で俺の目を見ることが出来るとはな」
「僕もびっくりだよ。なんで出来たのか不思議でしょうがない」
「和月の目が怖いっていつも外で目を合わせなかったもんね」
「それも元は姉さんのせいでしょ」
そう、それは紛れもない事実だったのだ。僕と兄たちは十歳も離れている。その上兄はライフル射撃の日本チャンピオン、姉は元全国大会優勝者の剣道女子で現在は有名モデル。二人は僕が物心ついた時には仕事が入り始めていてなかなか一緒にいる機会が無かった。その分甘えさせてはくれるのだが過保護にすることも多かった。
そしてある日、迷子になりかけた時に姉が“目を離すと悪い人に連れていかれるかもね“なんてふざけたことを言ったせいで兄は外での警戒心を強めた。そのせいで外では怖い顔をしている。僕のためだけでなく自分達の身を守るため、とも言っているがその目が小さい頃からのトラウマになるくらい怖かったのだ。
「悪いとは思ってるんだけど和月が普段から警戒することは必要でもあるとか言って聞かないのよ」
「間違ったことは言っていないと思うが?」
「お陰で桜戲ちゃんは怖い思いしてるんだからね!?」
「それは姉さんのせいでもあるんだけどね!?」
「さて、冗談はさておき」
「冗談で済まされないと思うけど」
「お前が元気でよかったよ」
急に真面目な話に入ると反応を取りづらい。昔からこれには慣れない。
「うん……兄さんたちは今何してるの?」
「ああ、スポンサーに招待されて次は世界大会だ」
「凄いね、もうそんなところまで」
「そろそろ終わりにしようと思ったんだがな。この道が性分らしい」
「そっか、兄さんらしいね」
「お姉ちゃんのことは気にならないの?」
正直どうでもいいと持っている自分がいる。けどこの姉はかなりしつこいので否定するようなことを言うのは諦めつつある。
「はいはい、何してるの?」
「ふふん、実はお姉ちゃん近所の道場を継ぎました!」
流石に驚いた。てっきりモデルを続けてお金稼いでるだけだと思っていた。しかし家では弛んでる姉がそういうことをするのだろうか。
「兄さんこの人本当に姉さん?」
「気持ちは分かるが本人だ。試しに両肩を掴んでみろ」
「わかった」
「そ、そんな桜戲ちゃん。だめよ、姉弟でそんな///」
「兄さん本物だよ。この気持ち悪い反応」
指示通りに肩を掴むと色っぽく仕草をしてくることで分かった。僕に対してこんな反応、もとい実の弟にこんな変態反応見せるのは僕の姉でしかない。癪だけど。
「さっきから私の扱い酷くない!?」
「それがお前だからだろう」
「姉さん、そういう反応するの良くないよ」
「酷いわ」
「でも姉さん剣道して大丈夫?仕事に響くんじゃ」
「大丈夫よ、お姉ちゃん剣道で相手の竹刀に当たったことないもの」
そうだった。この変態はそんなキモいことまでやってたんだった。これで普通の女剣士だったら憧れだったんだろうけどこんなんだから少し距離を置きたくもなる。
「いくら桜戲ちゃんでもお姉ちゃん泣いちゃうわよ!?」
「とりあえずそこの変態は置いておいて、桜戲」
「は、はい」
「父さんたちにはちゃんと話せよ。俺らからは元気だった、とだけ伝えておくから」
素直に返事をすると二人は笑って席を立った。どうしたのかと聞くといつまでもここにいては味気ないから遊びに行くぞとのことだった。会計は既に姉が済ませており僕たちは店を出てショッピングモールの中を遊びまわった。
帰る時間になると二人はまた今度と言って駐車場の方へ行った。僕も先生たちに合流するといろんなことを聞かれたがその時は兄たちに久しぶりに会った瞬間よりも幸福で満たされていた。
時任桜戲【トキトウオウギ】 年齢 十五歳 性別 男
誕生日 3月31日 血液型 A型
好きなもの ジャガイモ料理 兄姉 ゲーム
嫌いなもの(苦手なもの) Gやムカデといった虫 兄の怖い顔 姉の変態性 父母
術式 螺旋操術
液体を螺旋状にすることによって操作を可能とする術式。触れられる液体ならなんでも良い。
家族構成 父母兄姉
時任家の末っ子として生まれる。兄と姉は十歳上の双子である。本人は才能に秀でた兄姉を見て育った。しかし本人に目立った才能は見られず普通の生活を過ごしていた。
ある日友人と廃墟に赴き呪霊と遭遇する。その際に眠っていた術式が覚醒し呪術高専に転学する。そのことを父母に伝えると猛反対されるもその日の深夜に家を出る(もとい脱走する)。
その後高専に入学し二年三年、そして同学年の新田新と共に日々勤しんでいる。
本人の先輩方に対するイメージはそれぞれが見せる一部を除いて尊敬しているとのこと。東堂には勝手に生徒扱いされている。