ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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午後2時辺り、八王子市にある、青柴家の玄関に駆け込む学生の姿があった。
青柴 新那乃のご帰宅だ。
新那乃は家に帰るなり、2階の自室に駆け上がり、ある機材を弄り始め、机の上にトンと置くと、ようやく一階のリビングに顔を出した。
「お父さん、ただいま。」
「……………ああ、新那か。お帰り。」
ぎこちない会話は、扉を閉める音で終了となる。
その後、新那乃は自室に戻り、ある機材を再び弄り始めた。
その機材の一番重要なヘルメットを、大切そうに撫でながら、椅子に座り、ヘルメットを被った。
ゲームハードやコントローラー、無数にあるソフトやゲーム雑誌のある部屋を眺めつつ、一息着く。
新那乃は最後に、古い家族写真を見つめ、何かを感じ終えたように目線を変えた。
その後、彼は「リンクスタート」とだけいい残し、重い瞼がゆっくりとしまっていった。


輝いた古風のリベット
始まりの街には


洋風の街づくりの、石タイルを蹴り飛ばし、いち早くと狩りに出かけたのは一人の白髪の男だった。

そのプレイヤーには、多くのプレイヤーと同様、自分又は自分の考えたキャラをとことん美化した物で、一つ街に出れば何回も異性に絡まれるような顔つき。MMORPGならこの程度常識、ゲームの醍醐味の一つに、ファッションを楽しむと言う項目を入れてもおかしくはないだろう。故に女性ゲーマーも多く、それからリアルでお付き合いを始めたなど、数こそは少ないが多少は耳にする。ただ、衣装のバリエーションの多さから、意図的に女性キャラを作る人物ももちろんいる。言わばネカマには、充分注意しなければならない。ただほとんどのネカマプレイヤーの一人称は俺、もしくは僕など、男だと気付くように振舞っている。もちろん、女性のように振る舞うイタいネカマプレイヤーも多くいるのを忘れないで頂きたい。

 

 

さて、オンラインゲームについて熱く語るのはこれまでにしておいて。白髪の男キャラクター、アーニーが威勢良く狩りに出た。初期装備のダガーを握りしめ、湧いて出るモンスターに狙いを定める。

数秒の硬直の後、ダガーを青く光らせつつも、素早い突きがイノシシのようなモンスターの頭に刺した。

モンスターは結晶のようなエフェクトを纏い、砕け散る。そしてアーニーの目線の前に、取得アイテムと経験値が表示され、息をついた。

 

「最初だし薬の泥率がいいな、ベータ版より経験値の入りも多い、さすが製品版ってとこかな。」

 

次の獲物次の獲物と足を進めて、合計5体のモンスターを狩った。薬の数、合計12個。彼は最初、薬の転売が捗るなと思った。

 

 

急に体の向きを変えるに、始まりの街へと戻る。これから本命、転売師となりゲーム内で金を荒稼ぎし、ゲームがある程度攻略された後、効率のいい狩場で一気にレベルを上げ、高ランカーに追いつく。それが、彼の考えたこのゲームのシナリオだった。そう、これは彼がこのゲームの発売1月前から、いいや、ベータテスト終了後からずっと考えて来た事だ。この<ソードアート・オンライン>というゲームの中で、自分はどんなプレイヤーとしてネットライフをおくるのだろうと。

 

 

ただこの転売師と言う選択肢を選ぶのに、時間がかかっていない訳がない。なぜわざわざ転売師からなのか、それは、彼がこのゲームのシステム、フルダイブシステムに興味を持った事に理由がある。MMORPGによく有ることの中で、サービス開始直後はプレイヤーがマナーも分からず失敗をしてしまうなどよくある。素人プレイヤーではなくプロプレイヤーだったとしても、狩場の取り合いが発生したりもする。つまり、彼が言うには他のプレイヤーと同じタイミングで狩り始めても、全く特がないと言う事だ。

 

 

その点もあり、他の人と同時に狩り始めるのは不可能と予想していた。しかし、他のプレイヤーがレベルを上げるのを待っている間でも、何かをしていなければゲームの意味が無い。ゲームは暇を潰す物であって、暇を作るための物でもない。なので、低レベルで待っている意味もなくなってしまうのだ。

 

 

そんな時、MMORPGには低レベルでも可能な事が一つだけ有ることに気付いた。それは数多くの名声を集め、転売師として活躍する事だ。始めは転売と言うより、NPCよりお得な雑貨屋程度にしかならないかもしれない。ただ続けていれば、序盤では余る程の金額くらいすぐに生まれるだろう。そうすれば、その転売で得た金を使い急速にレベルを上げる事が可能になり、さらに金をもった高ランカーとなれる訳だ。うまく行けば今後も転売しつつ、ゲームが楽しめるだろう。

 

 

彼はそんな夢を膨らませつつ、街を徘徊していた。どこで転売をしようか、頭金は初期所持のお金だけで足りるのだろうか、もっと別の物も売った方がいいのではないだろうか。最悪、ベータ版テスターの彼なら序盤の情報を売る事だって出来る。だがそれだけは最終手段としたい、なぜなら、ベータテスターと言っただけで、僻むような奴らもいるから。

 

 

腕を組み、悩む。その矢先に、鐘の音が大きく鳴り響いた。始まりの街中央広場にいたアーニーは、周りに次々とテレポートして来るプレイヤーの数に、驚きを隠せなかった。

 

「な、なんだよ。いきなり」

 

思わず声が漏れる。無論周りも、なんだなんだと声を上げていた。状況が全く理解出来ず、メニュー画面の、GMコールのコマンドを選ぼうとしていた直後だった。

 

「これでログアウト出来るのか?」

 

その言葉を聞くなり、彼は納得する。現在SAOでは、システムのトラブルにより、ログアウトする事が出来ません。プレイヤーの皆様には大変迷惑をおかけしますが、今しばらく、システムの復旧をお待ちください。と、これに似たようなアナウンスが流れるため、この中央広場に強制的に集められたのだろうと考える。

 

 

待っていると、空が突然…正確にはアインクラッドの第2層の底だが、上空が赤く染まっていった。警告の赤か、数秒後までは、そう思っていた。だが、明らかに対応が違う。空から流れて来るのは、警告のサイレンでもなく臨時のアナウンスでもない、真っ赤なフォントとフォントの間から滲み出る、血のような赤黒い液体が、ドロリと垂れて来ているだけだ。

 

 

何かがおかしい、彼はようやく気付く。これはログアウト不可に関する謝罪ではない、何かのパフォーマンスか、或は演出を納得せざるを得ない、大切な何かか…

目つきをしびらせ、液体を見る。液体は垂れ落ちる事なく、空中で形を変えた。

ローブを着た巨大な亡霊…とでも言っておこうか、顔のない、ベータ版の時にGMが羽織っていた真紅のローブによく似ている物を着て、彼らの上に優雅に浮いて見せている。

 

 

そしてこれから何があるであろうか、アーニーは、何の根拠も無しに、察しているような顔をした。腕を組み、いつでも話せと言わんばかりに、耳を傾ける。それに応えるかのように、ローブの亡霊は話し始めた。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

なるほどな、アーニーは頷いた。

やはり、茅場晶彦か、確かナーヴギアの開発にどうとか言われてた奴が、何かをしようと言う訳だ。耳を傾けるのをやめず、言葉を待つ。

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない、繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の使用である。』

 

言葉は続いた。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることができない。』

さらに続く。

『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合_____』

 

嫌な予感が、心臓の動きを止めていた。その次の言葉は、だいぶ後に発せられたように感じる程だった。

 

『_____ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。』

 

「んなっ…!!?」

 

アーニーには、それがどう言う事かすぐに分かった。この前、あるネット掲示板でこんなスレを読んでいた。

子猫を洗ってあげると、とても寒そうにしていたので、電子レンジで温めてあげたと。当然猫は死亡し、飼い主が電機メーカーに賠償金を請求すると言う事件のスレ。

 

 

ナーヴギアの構造はある程度勉強したので、言われてみれば電子レンジだなと、すぐに納得する。さらに予備バッテリーも入っており、停電にも安心だと自分で唱えていた事もあった。

やられた、それしか言いようが無い。

 

『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク切断、ナーヴギアのロック解除または分解または破壊の試み___以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例がづくなからずあり、その結果』

『___残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

アーニーは、他のプレイヤーの嘆きを聞き流し、次のアナウンスだけを待った。

 

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ている事も含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい』

 

ここまで来ると、アーニーの頭には、その壮大な演説しかない。それ以外の言葉は全く入っていかず、重ねて関心なども全くなく、一瞬にしかすぎなかった。

 

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。』

 

とうとう、頭が真っ白になった。

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

 

その言葉で、アーニーは正気に戻った。クリアすればいい、ただ簡単な事じゃないか…

しかし、彼は完全に忘れていた。

学校から帰り、時間の許す限りすべての時間をベータ版のプレイにつぎ込んだ関わらず、寝る間も惜しんで授業中を睡眠時間にもしたはずなのに、目の色を変える程はまっていたはずの時に進んだ層の数を。彼がボス戦に参加出来たのは…せいぜい四層まで。そこから二層上がるのがやっとで、実際クリアなんて出来ないだろうと、やり込み満点のゲームだなと思っていた自分がいた。

茅場の話は、まだ続いていた。

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

言われるがまま、メニューを開き、アイテム欄のタブを叩き、文字を読む。

 

「手鏡…?顔でも見て現実だって思えってか。そんなの美化され尽くした自分の顔なんて見ても何も実感なんてわく訳…」

 

鏡をオブジェクト化する時に放った言葉の途中、彼を白い光が彼を包んだ。おそらく周りのプレイヤーも、同じ現象になっているだろう。ニ、三秒で光は消え、瞬いた。

手鏡を見直してみると、自分がキャラメイクしたアーニーの顔姿ではない。青柴 新那乃、本人…そう言ってもいい程の再現度のアバター、おそらく、この新那乃もアーニーで間違いないだろう。

それと同時に、ゲーム開始時には感じられなかった、腕組みの時に生じる、胸元の妙な密着感も戻って来ていた。周りでも、驚きの声が次々と聞こえる。しかし、先ほどの声とは全く違う、図太い汚らわしい声が多く感じられた。

そう、この時彼…彼女も、自分の声すらも変わっている事に気付く。間違いなく…自分の声だ。

体格も全く同じ、身長やおそらく体重も。腕の細さや指の形状まで、どこからどう見ても自分そのものだ。

もはや疑う余地はない、つまり、これが彼の言う現象だと言う事だ。

 

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は___SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦がこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と。私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた。…以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤーの諸君の___健闘を祈る』

 

そう言い、消えた。徐々に上に上がり、肩から消えて行く姿を、彼女は確認すらしなかった。ただ、走り出して狩りに出る。

転売など、後ででも出来る、普通のオンラインゲームとは競争率が違いすぎる、まずは自分を強くしよう。

ベータテストで手に入れた情報を元に、かつて狩りに出掛けた狩場へと向かう。

慣れた手つきで薬を揃え、武器の予備も買い揃え、残り少なくなった金…コルを抱えて、狩りに出た。

ベータプレイヤーなら誰もが行くであろう超人気狩場、それをいち早く抑える為だ。NPCの歩く通路を走り抜け、草原を駆け抜け、全力で走る。間違いなく、迷宮区に向かっていた。

 

 

1レベでも倒せない事はないが、相当な技量と、立ち向かう勇気。死にかけても諦めない鋼のメンタルを持ってこそ出来る格上狩りは、道中で狩るより桁違いに早くレベルを上げられる。

まったりやるなどもう関係ない、ゲーム遊びだったら転売から先にやっていた。しかしもう、現実となった。

彼も言っていた、これはゲームであっても、遊びではない、まさにその通り。

ゲームと言う名の現実に囚われた彼女に、戦わない意味はもうない。

全てを捨てるような覚悟で、アーニーは、ダガーを引き抜いた。




みなさま初めまして!!難聴の村上さんです。お気軽にむらぽんってよんでください!
さて、自己満足のため書いていた二次創作を投稿する日が来るなんて、思ってもいませんでした。
書こうとおもった理由なのですが、今更ながらSAO2期が始まると聞き、大急ぎで1期を見たところドハマリしてしまいにわかながら頑張って書いてみました。
一応、原作本も読みつつ書いていますので、ぶっ飛んだほどのおかしい点はないと思いたいです。
ですが、むらぽんの自己満足のためのオンラインゲーあるあるを多々入れているため、おかしくなってしまう点もあるかとはおもいますが。
それと、むらぽんは二次創作を書くことはおろか、ハーメルンなどのネット小説サイトに投稿したこともないので、改行や表現なども分からないことだらけです。
こんなダメダメなむらぽんですが、みなさまの期待になれるようがんばりますので、今後ともよろしくお願いします!!
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