ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ 作:難聴の村上さん
デュエルスタート!!
彼らの頭上に現れたカーソルに文字が刻まれ、同時に鳴り響いたブザーが一斉に2人を動かした。が、両方考えなしに突っ込む事はせず、横移動を入れたり、ステップを混ぜたりして相手の横側に攻撃を当てるようにしている。
速さは無論クラインが上、しかし、容易に背後や側面を晒してくれる甘い相手では無かった。自分の遅さを理解しているのか、大きな横移動はせず、自分の軸をしっかりと決めてクラインの動きに合わせていた。
そしてその戦いの中に、お互いに言葉を混ぜながら。
「ボスに少しでも都合のいい状態でバトンを渡せるよう、お前もここできえろおおぉ!!」
「一応負ける前提みてえな話だけど、それってルナにやられるって言いてえのかよっ!!」
大きく振りかぶられたハンマーが、衝撃波を発生させながら地面を叩いた。そのハンマーを交わし、ショックウェーブもバックステップで交わし、ギリギリで避けている。しかし、バックステップでは衝撃波から距離を取っただけで、もう一度交わす羽目になった事にクラインのしかめっ面は地面を見た。
「へぇ、一応遠距離攻撃があるんだな。俺なんてねえからなぁ…でもそれなら!!」
突進系SS、チャージスラッシュの初期モーションを作り、SSを立ち上げた。ハンマーを地面から引き抜いている相手は、やはり遅い。力良く持ち上げたはいいが勢い余って体制までも崩れていて、隙を晒しまくりだ。少しでも敏捷力を上げていれば、関節などにも補正がかかり、力任せの動きよりキレのある動きになるので、クラインもそうすればいいのにと頭の中で推奨しつつ、間合いを詰めた。
「しまった!」
ハンマーをもう一度振るおうとした時、クラインはもう目の前。案外ロタールより楽勝だったな、クラインは余裕の思考を巡らせながら、SSのシステムアシストに体を動かされていた。
「もらったぁ!!」
足がバネのように伸び、跳ね上がると同時にクラインの片手剣が水平状に放物線を描きながら、相手の横腹に食い込ませた。
クラインはそのまま押し倒すような勢いで相手にぶつかり、その衝撃のまま踏みとどまり、自慢げの表情で勝利のカーソルが出るのを待った。
「いや、クラインまだだよ!」
優男の声に、反応したクラインは再び相手に視点を戻す。防がれたか…未だ馴れないプレイヤーへの攻撃の感触は、ダメージの有無を濁らせた。当たったはず、しかし、防がれたかもしてない。その間に相手は立ち、上半身を攻撃を防いだ時の体制で維持しながら、その様を見せ付けた。
ハンマーの持ち手と持ち手の間の部分で刃を防ぎ、SSの威力も、なんとか武器の重さで耐え切っている。思わず口笛を吹いてしまったクラインも、感動のあまり名前を聞くことにした。
「あんた、名前は?」
「ルーグ…それが俺の名前だああ!!」
叫ぶなり、冷静さを失ったルーグは真っ向から殴りかかってくる。もちろんそれに付き合う義理もなく、冷静に回り込み、ソードスキルを立ち上げて切り捨てた。
勝者、クライン。デュエルメインアイスタントのNPCのアナウンスが鳴り響き、クラインは皆の元へと戻った。
「よーう、今回は圧勝だったな!次も俺一人でいけるんじゃ無いか?」
調子に乗ったクラインは皆に囲まれ褒められ、とてもいい気分になっていた事だろう。だがルナはその行為が気に入らず、口元の前で一本指を立ててシッと囁いた。
何事かとアホツラを下げて振り返るクライン、そしてルナの視線の先に、何があるのか確かめた。
そこには、悔しさのあまり四つん這いになり地面を殴るルーグの姿があった。
「くそうっ、くそうっ!!なんであんな若造なんかにぃ!!ぐうう…」
鬼のような形相であったルーグから、涙が零れていた。それにはさすがにクラインも空気を読み、先程までの嬉しさを隠して見守った。
「いっつもそうだ…いっつも俺は、みんなやモーデンに迷惑ばっかりかけて!前の獲物だって俺がヘマしたせいで取り逃がしちまって…今回だってこうもやられちまった!だったら俺はどこで恩を返せばいいって言うんだよぉ!!」
泣きじゃくりながら、どんどんと地面を叩き、それを心配した相手方がルーグに慰めに駆け寄った。
「兄さん、兄さんは悪くないよ…普通の狩りだって、あんなにみんなを助けてたじゃないか!だからそんな事言うなって…」
「そうだぞルーグ!俺たちはお前に助けられた事もあるんだ!だから俺たちはお前の仲間だし、お前も俺たちの仲間。そうだろ!?」
「でも、その結果がこれじゃねえかよおお!!」
優しい仲間たちからの声、しかしそれは余計にルーグを苦しめているのだろう。ルナは等々ガマンが出来なくなり、敵ではあるが、背中を摩ってやった。
「さわんじゃねぇ!!敵なんに…敵なんかに慰められたくねえよ!!」
「敵なんかじゃないわ…私たちはデュエルを楽しむ、立派な試合相手よ…ほら、お仲間さんもこう言ってる事だし、ね?」
優しく声をかけたつもりだ、もちろんそれがルーグを悲しめる、ルナの自己満足かもしれない。しかしルーグには申し訳ないが、ルナの本当の狙いはそこでは無かった。モーデンの顔を探るのが、本来の目的。自分の仲間が相手に気遣いを受け、どう思いどんな顔をするのか。それが見たかった。
モーデンはルナの嫌な期待通り、鼻で笑い顔を背けた。あいつが全ての元凶か、こんないい人たちを集め、小汚い事に利用して!!ルナはもはやモーデンに期待せず、ルーグの背中を摩り続けた。
時期にルーグは落ち着き、ルナが摩るのを拒絶し、少しづつ立ち上がった。そして仲間の元へととぼとぼと戻っていく姿を、遠目から見守っている。どうしてこんな事を、彼らは始めたのだろう…元凶であろうモーデンを見つつ、考えていた。すると、その瞬間、威圧感のある太部としい声がルーグを叱りつけた。
「ルーグゥ!!」
「は、はぃっ!?」
叱ってどうする…?まさか蹴落とすのか?悪い予想が、幾つも思い浮かんだ。しかし、次に出た言葉はルナの想像をはるかに超える事を、まだこの時は知らない。
「ルーグ…お前はあの日、あの酒場でなんと言った!俺たちが出会ったあの場所で、なんと誓った!!足を引っ張って申し訳ない?ふざけるんじゃない!!お前が言ったんだろ?お前の弟の肩を掴みながら、こいつも含め今日から俺たちは兄弟だって!!兄弟は迷惑を掛け合うもんだって、言ったのはてめえじゃねえのかよ!?」
「…!!」
「その言葉に俺は救われたんだよ…嫁も…娘も…会社も金も、そして世界も…!全てを失った俺に、そう言ってくれたのはお前以外誰がいるって言うんだよ!えぇ!?」
「モーデン…」
「ルーグ…あの日お前が言っていたように、最後までやり遂げて見てくれよ…がむしゃらでいいから…頼むぜ、希望の星。」
「おう…おう!!」
熱い意志のやり取りを終え、ルーグは今までのような弱気を終わらせ、初めて出会った時のような威勢を取り戻した。そして、クラインの元まで走り、殴りかかるのかと思いきや、四つん這いになり、頭を下げ、土下座をしてまでクラインに頼み込んだ。
「お願いだ…もう一度、もう一度デュエルをしてくれ!勝敗には関係なく、もう一度だけ!今度はデュエルとか抜きの、そのままのバトルとして!先にイエローになった方の負けとして…もう一度だけ頼む!!いいや、お願いします!!」
クラインは、まいった。そして付け足す。
「いいけどよぉ…デュエルじゃなかったらお前がオレンジになっちまうぜ?それでもいいのかよ。」
「大丈夫です…それが俺の意志です!初めに軽く攻撃を当て、先に俺をオレンジにしておけば、あなたがオレンジになることは無いでしょう。万一頭に血が上って、イエローになっても攻撃を止めなかった場合、みなさんで俺を殺して貰っても結構です。ですから…お願いします!!」
「クライン、やってやれよ。」
「でもよお…」
そこで、ルナが助け舟。
「あーあ、クラインって、あまりに理不尽な決闘以外はかならず受けるかっこいい男性だと思ってたのに。それってただの私の理想論?ちょっと、いやかなりがっかりだなー。」
「はっはっは!女の子までにも言われちゃ、やるしかないよな、クラインさん?」
挙句の果て、モーデンにも言われる始末。クラインは味方と対戦相手一味に吊るし上げられた気分で、後に引けなくなってしまった。ここで断れば男の恥、おまけにルナちゃんにまで嫌われてしまう。それに仲間にも顔が立たないし仲良くなれそうな相手にも軽蔑されてしまう。ここはひとつ…仕方なく、買うことにする。
「わーたよやるよ!ただし勝敗もデュエルとは関係ないし、バトルは片方がイエローとなった時点で終了、バトルの開始の合図は、お前が最初に俺を殴ってそのダメージが回復し切ったらな!わかったな!?」
「おう、分かったよ!!」
「じゃあ、かるーくだからな?かるーく殴れよ!?」
「はいはい、かるーくな。おるぁ!!」
クラインの顔は歪み、数メートル先まで吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がりながら徐々に威力を弱めていった。ダメージ的にもHPがかすかに残ったモンスターを倒すには申し分ない程のダメージが入り、クラインのHPが10分の1も削られた。結構な事だ。
「いってーな!!痛くするなっていっただろ!?」
「ははは、すまんすまん!」
「はい、クラインこれ薬。」
「たっくよー…全くルナちゃんの薬が無かったら、全く不利な状況から始まる所だったぜってまっず!!?」
「ざんねーん、これリッチから買い取った失敗作〜」
「んなっ!?ダメージ入ったらどうしてたんだよ!?」
一同は笑いに包まれ、腹を抱えて地面を叩いた。しかしHPは確かに回復しているので、バトルには支障がない。クラインは、回復し切ったと同時に立ち上がり、ルーグに合図を送った。
「もういいぜ、好きな時にかかってきてもよ。」
「おう!じゃあ行かせて貰うぜ、クライン!!」
その後…結果は変わらず、クラインが見事勝利した。しかしHPも削られていて、攻撃を食らってもいいので攻撃を当て返すと言う彼のスタンスは、相当な苦戦を強いられてしまっていた。イエローゾーンに突入するや否や倒れこんだルーグの隣に座り、クラインは話しかけた。
「いいのかよ…?オレンジプレイヤーになっちゃっても。」
「いい訳あるか、でも…気分はいい。」
「…そうか。」
「クライン。」
「なんだ?」
「俺はこのデュエルが終わったら、グリーンプレイヤーに戻るためのクエストをやんなきゃいけないんだ。お前も…手伝ってくれるか?」
「あたぼうよ!!」
二人は笑い、お互いの拳を差し出して、その拳を、同時に合わせた。
どうも〜むらぽんです。
今回は会話多めにしてみたのですが、どうも説明文をどこに入れればいいのかがわからねぇ…
不慣れな点がありまして、多少読みにくいかと思います。(元から読みにくい作品ではありますが。)
もし、本気で読みにくいと感じた方は申し訳ありません、むらぽんの技術不足です。でも今回いい話でしょ!?番長と番長の喧嘩みたいな!!結構プレイヤー個々の事情も書けたとも思うので、個人的には満足しています。でも強いて言うなら、やはり会話がダメダメですかね…