ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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苦痛の心(中編)

SAO事件が起こる前日、青芝新那乃は家族との一家団欒を楽しんでいた。温厚な父、優しい姉、そして家族の癒し役であった新那乃。姉の作った手料理を頬張りながら、ちょうど新那乃がお得意の学園談に花を咲かせている頃だった。

 

「それで、それでね?春がその段差で転んで、結局帰るのが6時くらいになっちゃったんだ。春は歩けるから一人で帰れるって言ってたけど、あんな歩くスピードなら絶対に夜遅くになっちゃうでしょ?だから私が春の自転車をこいで、2人乗りして帰ってきたんだ。」

 

まるで幼い子供のように、主語や形容詞のはっきりしないありのままの言葉を、父と姉は笑ながら聞き入れた。高校生にもなる娘、妹が幼稚的な説明をしていても、決して話を止める事はなかった。

 

「そうか、それで今日は帰りが遅かったんだな。でも今度からは、遅くなる時はかならず連絡を入れるなり、迎えにくるよう頼むかにしなさい。」

 

「それにしても春ちゃん、ドジな所は昔から変わって無いのね。お姉ちゃんが知ってるのは小学生くらいの頃までだって言うのに。」

 

新那乃の友人、春は小学校からの長い付き合いがあり、家族も春の事はある程度知っている。それだからこそ成り立つ会話ではあるが、ある程度知っているが故にその会話はすぐに止まってしまう。少しばかりの空白を置いた後に父は箸を置き、思い出したかのように口にした。

 

「そう言えば、お父さん新那の先月のテスト結果見てないな。点数が良くなければ、あの頼み事は聞き入れられないぞ?」

 

あの頼み事とは、新那がテストの点数の良し悪しを賭けた青芝家恒例の行事であり、基準以上の点数をとっていれば好きな物を買ってもらえると言う、姉が小学一年の時から始まった伝統的なものだ。しかし新那は中学時代部活に明け暮れていたため、未だ数回しかプレゼントを貰ったことが無い。比較的優秀だった姉も、基準点以上の点数はとっていたが、遠慮がちな点があり実際に物をプレゼントした事は父親自体も少なかった。

 

 

そんな幻のような夢物語伝説はここ半年、新那にあっけなく利用されている。高校に入った途端勉強熱心になり、学年上位3名の中に入る程の成績を叩き出し、父親の財布の紐を顧みずかなり高価な物を買う羽目になっている。姉はもちろん父親の財布を気にして遠慮していたが、新那は容赦がない上、高価な物ときた。もはや父親の財布以上に、家庭のお金までにも手を出してしまいそうだが、IT企業の社長ともなればこの程度の豪遊は気晴らし程度に感じるのだろう。

無論姉は、ITだろうが何だろうが中小企業の社長が意地を貼っていることに、情けなくも感じつつ呆れていたのだが。

 

「お父さん、あれあれ。コルクボードの所。」

 

姉がリビングに掛けてあるコルクボードを指差し、その中に一際目立つようど真ん中に貼り出されているテストの結果が書かれた紙を父は見つけ、一息つく。やはりな、と言う思想が過り、細かな点数を見るまでもなく笑顔で新那に言った。

 

「ははは、またやってくれたか。全く参ったよ、でも約束は約束だから、明日買ってくるよ。それにしても新那はすごいな、お父さんもまさか新那がゲームと勉強を両立出来るなんて、高校生になった途端ゲームばかりで心配してたんだけどな。余計なお世話だったかな。」

 

「お父さん!買いにいくんじゃなくて受け取りに行くだけ!!お金はもう払ってあるよ。」

 

「予約してたのか?じゃあそこまで急がなくても大丈夫なのか。」

 

「お父さん、新那が欲しがってたゲームってここ一週間ニュースで引っ張り凧のアレだよ?まさか明日の朝、並びに行って都合良く買えれると思ったんじゃないでしょうね。そんなんじゃ1週間近くならんでるゲーマーや新那に笑われるよ?それにもし新那が予約してなかったらどうしてたの。」

 

「お、おおう…茅乃、お父さんを虐めないでくれ。これでも仕事帰りなんだから。」

 

「こっちだって家事学校で疲れてるよ、仕事仕事って都合のいい時だけ逃げないで。いつも早上がりのくせにさ。」

 

「まーまー、喧嘩しない喧嘩しない。ここは笑に免じてさ、ね?」

 

「新那は優しいなぁ…それに比べ茅乃は、お父さんの事いっつも虐めてくる。」

 

「あのねぇ私は二度と新那の悲しむ顔が見たくないから結構心配して言ったんだよ!?」

 

「茅乃、新那だってバカじゃ無いんだ、一週間も並んで手に入れる代物なら、テスト結構が出たその日にお父さんに見せているよ。」

 

そう言い、父は箸を進め、坦庵の汁を米に染み込ませた。それを援護するように、新那も首をコクコクと下げる。姉も不機嫌そうに顔をそらしてアジの塩焼きをつまみ、味噌汁で流し込んだ。

 

「それにな、茅乃。」

 

「なにさ。」

 

「お母さんがいない今、6つも年の離れた新那をここまで育ててくれたのは、お父さんは茅乃だと思ってる。でもお父さんだって新那の親だし、同時に茅乃の親でもある。お前たちの悲しむ顔なんて、誰よりもお父さんが見たくないさ。」

 

姉は、箸を置いた。

 

「…なに無理にまとめようとしてるの?気持ち悪い。」

 

「今のしっくりくる所だろ普通!?気持ち悪いって酷いよ茅乃!!」

 

「ところで、その話は置いて、結局新那は欲しい物無いの?せっかく欲しい物買ってもらえるんだから素直に言えばいいのに。取りに行って貰うだけなんて安過ぎるでしょ。」

 

「いいや、いいの。」

 

「学校から帰ったらすぐやりたいから?」

 

「そう!!」

 

「全く、新那は…じゃあ明日ケーキ買って来ても、全部お姉ちゃんが食べちゃうね。」

 

「!!それはだめ!」

 

「なあ、そのケーキお父さんにも一個。」

 

「冗談で言ったんだから釣られないでよお父さん。」

 

「ははは…申し訳ない。」

 

「とまあ、明日は部活無しにして速攻帰ってくるつもり!春も先行販売何とか権?持ってるらしいから、一緒にやるんだ。」

 

「春ちゃんと一緒にゲームねぇ…あんまり付き合わせすぎて、春ちゃんの迷惑にならないようにね。」

 

「わーかってるって。」

 

「あと気を付けなさいよ?ネットって結構恐いんだから。変な男の人に絡まれても絶対断るんだからね?」

 

「お父さんはグループ狩りくらい一緒にやってもいいと思うんだけどなぁ。」

 

「そういう意味じゃなくて!もし手を出されそうになったら、すぐにログアウトすること。いい?」

 

「わかってるよ。そこらへんは気をつけるから。」

 

「お姉ちゃん嫌よ?変な事件に巻き込まれて、ニュースにうちの名前が使われるなんて。」

 

「はいはい、もうしつこいよぉ。」

 

「絶対…絶対だからね。」

 

「あー、お父さんが思うに、一番新那離れ出来ないのはお父さんじゃなくて茅乃だと思うな、うん。」

 

「お父さんは黙ってて。」

 

「はい…」

 

 

その後、家族でテレビを見て、明日発売となる某オンラインゲームの特集を、発売日となる夜の0時まで、ずっと眺めていた。

 




どうも、村上さんです。
今回SSみたいだなぁ…やっぱり創作してないとたった3日のブランクでも恐いね、結構SSとしては気に入ってるけど。
さーて今回も短いです、これなら全部まとめていいんじゃないかと思ったのですが、結果中編となってしまったので後編も合わせれば結構な長さになり、それだったら分けれしまえと思ってしまいますね。

あ、忘れた人&名前が合致しなかった人のために、

新那(青芝新那乃)=ルナ

茅乃=姉

父は名前未定

です、決して父親が名前未定と言う名前ではないのであしからず
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