ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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濡れ衣被りの悪名人
魔性な層


丸い、奇妙な形の葉を付けた奇妙な植物を掻き分け、俺こと、キリトはようやく背丈の長い雑草群から抜け出した。悪臭の臭った植物とは裏腹、第1層にあったような緑の草原が広がり、心地よい風が吹き、俺のやや長い髪を柔らかくなびかせる。第8層を攻略し、いつものように一足お先と新しい街に歩を進めていたのだが、いきなり出くわした奇妙な草々とは当分の間はおさらばとして頂きたい。先程抜けた雑草群がその奇妙な草々と言う訳だったのだが、今はその事を忘れ、はるか遠い草原に見える、黒ずんだ建物が目立つ街を目指した。

 

 

この層は異様な雰囲気と奇妙な植物が特徴の、プレイヤーとは無縁な魔法をテーマとして作成されたフロアがこの第9層だ。ベータ時代の経験から言えば、モンスターは、数タイトルにも及ぶ某ファンタジーゲームに出てきそうなオーソドックスなモンスターが多く、初見プレイヤーであろうと大体の攻撃は読めてしまうような難易度の低めに設定された、いわば第10層までの最後の休憩地点と言う訳だ。

無論、俺は第10層の事も数多く知っているし、第9層も通常モンスターとはちがってエリアボスやフィールドボスは異様に強かったのを覚えている。さらに今までの経験上、ボス部屋には必ずベータからの変更点があった。その変更点は多種多様ではあったものの、必ずしも比較的楽になりそうな変更点は一つもなかった。その事を考えると、この第9層も、どんなえげつない変更点があるかは、わかったものでは無かった。

 

 

しかし、そんなボスしか目立たないような第9層にも、もちろん取り柄はある。なんとこの層9層では、生産系スキルの上位互換が初の解放を果たす場所であるからだ。上位スキルの解放は簡単、街に住む魔女の「究極の魔法」と言うクエストを受け、魔法の森にポップする「黒魔女」を10体ほど倒し、その黒魔女からドロップする「落ちぶれた禁書」を5個ほど入手すれば終わる、お手軽クエストなのだ。しかし相手はモンスターと言えど魔女、遠距離からの魔法攻撃は、ソロである上突拍子のある長物の武器を持っていない俺にはとても辛いモンスターではあるのだが。

 

 

それと個人的なこと以外にも、問題は一つある。このSAO正式サービスが始まって、1週間としないうちに(&俺の知らないうちに)、生産職のプレイヤーはゴロゴロと増えていったそうだ。中にはどこぞの不景気でもあるまいし、店で生計が立てられず、やむなしに狩りに出る事となったプレイヤーも後を絶たない。それほどまでに生産職プレイヤーがいると言うのに、はたして現トッププレイヤー集団だけで、1000といる生産プレイヤーのクエストを終わらせられるのだろうか。

 

 

その件につき、リンド率いるギルド《ドラゴンナイツ・ブリゲード》や、キバオウ率いる《アインクラッド解放軍》はそれぞれ一定の条件を設け、低ランクプレイヤーのクエスト援助を約束していた。

リンドの提案により、DKBは実績や売れ筋などの、スキル強化により攻略に効率的なプレイヤーのみを対象とし、無償のクエスト援助を了解した。一方キバオウ率いるALSは、生産職全プレイヤーを対象とし、一定量のコルを支払った場合クエスト援助をすると言う体制を取った。

どちらも攻略に必要だ、と言い切れるのだが、両方不あり有ありと言った感じで、プレイヤーとしてはどちらも良心的と言えるような対策ではなかった。

質を求めるDKBは、高レベルのメンバーを総動員し、レベリングも兼ねてのクエスト援助を行う。ALSより少人数のDKBとしては、質で攻めるしか無いのだ。

それに打って変わりALSは、現在でも流れている、第1層の《貢献しないならALSに入る》と言う謎の風習により拡大した規模で、無理矢理クエスト援助をしようとしているのだ。最もALSには、最近入軍したばかりの低ランカーも多く、生産一つで経験値が貰えていたプレイヤーよりはるかに弱いプレイヤーが、クエスト援助と言われても無謀にしか感じられないのだが。

 

 

そして俺は、ソロではあるにしれど、トッププレイヤーの一員として「1人くらいはクエストを手伝う」と決意し、現在絶賛クエスト同行者募集中と言う事な訳だ。しかし知り合いに生産職はいたとしても、そのプレイヤーは俺が狩りに復帰させてしまったプレイヤーだ。あいつが今更上位互換など、と言うより、あいつはまだ続けているのかな。とな感じに、とてつも無く無責任で曖昧な思考に至っていた。

 

 

そんな事を考えている内に、頭の中にある大切な事が俺の体を右折させた。道もないと言うのに、ただ丘の向こうへと目指して夢中になって進む。そう、第9層は、クエストの報酬として補助効果の強い防具が貰える物が多い。現在向かっているのは、敏捷力+14と脅威の性能を誇る、《リーフ・レッグフライ》と言う靴の装備が貰えるクエスト、《悪夢の草縫い少女》と言うクエストが受けられる小屋がある。そのクエスト内容は、小屋で眠っている少女が、突然うなされ始め、母親の魔女が心配して、プレイヤーが少女の夢の中に入り悪夢であるモンスターを倒す…と言うシナリオのクエスト。しかしプレイヤーから言わせて見れば、ただNPCの魔女に話しかけると、ほぼ強引に閉鎖エリアに飛ばされ、数々の試練を乗り越えて強敵のモンスターと戦うと言うとんでも無い。しかし夢から覚めた少女が、自分の縫った靴をプレゼントしてくれると言うサプライズがあるのだから仕方ない。おまけに、ベータ時代はその少女が繰り出す笑顔の愛苦しさから、何度もクエストをやるプレイヤーが続出していたとかしていないとか、かなりの人気クエストだった。

 

 

ともあれ俺は草原の中にポツンと立っている小屋に、入り口のドアを開けて入った。ドアを閉めたと同時に、ここは草原とは別エリアとなり、クエストが開始されるはずだ。そして複数のモンスター討伐、毎回違う暗号を解き明かし、所々のポイントからアイテムを見つけ出し、最後にボス戦に突入。ボスを倒した暁には、夢から覚め、愛くるしい笑顔の少女が手渡しでリーフ・レッグフライを渡してくれる事だろう。

美人な母魔女に見とれながらも、ゆっくりと少女の眠っているベッドへと近付いた。予告通り少女は突然唸り始め、側で本を読んでいた母魔女がすぐさま駆け付け、頭を撫でてあやしていた。ここで俺が、クエスト開始のキーワードとなる、心配そうな声を上げると、母魔女が振り向きクエスト開始、となると、直前までは俺も思っていた。

 

「あなたどなたです?ですが今はどうでもいいです、私の力で、あなたをこの子の夢の中に送ります、そしてどうか、この子を苦しめる悪魔を倒して来て下さい!!」

 

MMORPGにありがちな、人の話を聞けだとか、強引すぎるとか、少しは動揺しろだとかツッコミどころ満載のセリフが、辺りに響く。もちろん俺は、クールに「いいぜ。」とだけ決め、クエスト開始を待った。

しかし

 

「ですがあなただけでは心配です。どなたか別の方がいれば心強いのですが…」

 

はぁ!?俺は一瞬にして驚きを剥き出しにしてしまった。自分が弱い、と言われたようでもあり、娘さんが心配なら一人でも行かせろだとか、やっぱりグルクエになってたか…と。

 

 

グルクエとは、グループクエストの略称で、数名のプレイヤーがパーティーを組み、特殊エリアで数段階のミッションをクリアする、と言う、このクエストに妙に手順が合致しているクエストの事を刺す。現に、俺はベータ時代にこのクエストがなぜグルクエでは無いのか、人の少ないベータ版での心許ないサービスなのだろうか、正式版では間違いなくグルクエになるだろうなと確信していた。つまり、簡単に言えば予想が当たり正式版からグルクエに変更されたと言う訳だ。

 

 

ソロである俺に、打つ手はない。アイテムを持ち込むクエストならまだしも、システム的に保護されている隔離エリアに一人で行こうなど、絶対に出来ない。堪忍した俺は、渋々とあの方に頼もうと、窓を開き、フレンドのコマンドからメッセージ作成の窓と指を動かした。やはりあのコンビは鉄板になってしまうのかと思いつつも、メッセージの内容を考えていたその時。

何者かのプレイヤーによって、小屋のドアが開かれた。そこに立っていたのは、俺が今ちょうど頼もうとしていたレイピア使いさん…ではなく、見たこともない。金髪の女性片手剣使いだった。

 

「キリト…くん!!?」

 

名前を呼ばれ、少し動揺した。俺を知っているのか?

金髪のカールのかかったセミロング、金属製のカチューシャ形の防具、青いコートのような戦闘服の上にはプレートアーマーと、心許なしかスパイクが幾つか付いているガントレット、それと俺が喉から手が出てしまう、今一番欲しい装備の、レザーフォルテ(ズボンのような黒い装備)。うーむ、見たことない…

 

 

ここで、市場でしか見たことのないレザーフォルテについてどこで入手可能か情報を聞きたい衝動にかられたが、しばしの我慢。あくまでクールなキリトくんでいるために、俺はまずどうするべきか。そして頭に思い浮かび、思わずこれだ、と呟いた。

 

「俺を知っているようだけど、君は誰?俺の経験から、ここはまだ君が来るような層ではないだろうけど。」

 

自分的には、決めてみたつもりだ。言い訳になるが、だって層攻略でも見たことないし、攻略以外にもトッププレイヤー集団は一応顔は覚えているつもりだし、完全に初見の人だし。そのくらいの事はして当然だと思っている。しかしその片手剣使いはポカンとした後、突然腹を抱えて笑い出す。そしてその笑い方と、次に発せられた彼女の喋り方で、ようやく理解した。

 

「キリトくんそれってカッコつけてるつもり?めっちゃうけるちょっと笑わせないでよ〜。」

 

「お前ってまさか…アーニーか!?」

 

アーニーと言えば、頭の中には商人用衣装を着て有名なプレイヤー雑貨屋を開いているイメージしかなかった。もっとも自分は、転移結晶(弱)と命名し、使用した所から一番近い安全地帯にワープする劣化版転移結晶を大量に買わされたインチキ商人としか思っていないが、普段ならあれでも充分使えるし、数の大さで休憩の時なども気軽に使えて、かなりの愛用品にもなってしまっていることもあり、あの時よくもまああんな大金を投げ捨てたなと言いたくなるのを必死に堪えてアーニーに接した。それに元はと言えば、全部買い取ると言い出したのは俺の方だしな。

 

「いやぁ…そのこれはだな!うん、クエストでこの少女を元気付けるだめであって、演技に熱が張りすぎたって言うかなんと言うか…」

 

見苦しい言い訳をしていると、アーニーは口を挟んだ。

 

「あ、そういう面倒な言い訳いいから。」

 

はっきりと、冷たく冷静に突っ込まれた。ごもっともではございます。

 

「で、あんた。このクエスト受けに来たんでしょ?私もだよ。一緒にやらない?」

 

もしクラスの女子相手であったら、3ヶ月は学校を無断欠席するであろう出来事をなかったかのように、アーニーは言った。無論俺は願ってもいない、最高の出来事へと変わった。

 

 

しかし、この時俺は確信してしまう。第9層の、開幕と同時にこのクエストに来るなんて。ベーターでしか考えられないか、それともアルゴから情報を買ったのか。しかしその2択は9体1の割合、いや、9割9分の割合と言っていいだろう。実際に口にするわけもないが、アーニー。お前もやはり、ベータテスターだったんだな。

パーティー認証の窓を送った後、俺の探りを入れようとする顔に首を傾げるアーニーに気付き、俺はパーティー認証をOKと押す。しかし、前回組んで…いや2層、実質1層から組っぱなしのパーティーが既に存在したため、パーティー認証窓は一時弾かれアーニーは困惑した。

 

「ほ、ほら。さっきボス攻略だったからさ。」

 

「あー、さっきだったよね。私もリンドに次回は参加するって約束したから、あのボスフロアを通されてもらったんだけどね。」

 

お互いの言葉に突っかかりながらも、俺はパーティーを解散し、新たにアーニーのパーティーに入り、1月とちょっとぶりの、パーティー編成を成した。




どうも、村上さんです。
今回からは、第2章の始まりと言う事で、トップバッターはキリトくん視点とさせて頂きました。トップバッターと言うより、前回も言いました通り2章からが本番ですので、今後もキリトくんの出番多くなるかなぁって思ってます。
ここからは私のリアルでの出来事なのですが、この3日間昼寝中、店長から時間だよって電話がかかってくる夢をみたり、友人宅でお絵かきをしていたらルナやモーデンを描いているつもりがフルメタのガウルンだとかこれゾンのユークリウッドだとか言われました。これゾンしらねぇよ…
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