ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ 作:難聴の村上さん
少女の元々の夢、つまり悪夢が入ってくる前まで見ていた、青空の広がる草原を舞台にした夢の隔離エリアでの事。アーニーが、クエストの内容に因んで、《悪夢の破片》と言う、某国際的にも有名な、例の真っ黒い球体の奴を大きくしたかのようなモンスターを、フィールド最後の一匹にとどめを刺した後の事。クエスト開始と同時に、別々に行動し散らばったモンスターを巡ったのだが、湧き場所と倒す順番の影響で、俺は一足お先に狩り終えた優越感に浸っていた。次のミッションの内容を思い出しつつも自分のアイテム窓をいじり、のんびりしている。同時に別タイトルではグループクエストはあまりやらなかったものの、数回参加した事のある時に漂っていた《役割を終えた後のあの時間》に懐かしさを感じていた。
アーニーはゆっくりとエリア移動のポータル目掛けて歩き、俺はまだかまだかと装備窓までいじり始める。そこでふと、アーニーが装備していたベルトのついた黒い半ズボンの、《レザーフォルテ》の入手場所を聞いておこうと思った。アーニーはそのままポータルに入りエリア移動をしてしまったが、次はモンスターが湧くようなミッションでは無いので安心して聞きだせる。急いで、俺もアーニーの後を追った。
次のエリアでは、アーニーがボロい紙切れに描かれたパズルのようなイラストに、首を傾げて悩んでいた。頭では分かっている、ただどうやったのかが思い出せない。と言いたそうな悩み方で、声をかけられるまでここは任せても大丈夫かな、と勝手に決め、夢の中にも意識の塊として、うなされている少女を具現化した、紙切れを渡したのであろう少女の前にしゃがみこんで話しかけた。NPCの少女は、一定の言葉しか喋れないが、クエストに関連する事はもちろん喋れるようだ。
「怖い夢を見ているのかい?お兄ちゃんたちが助けに来たよ。」
寂しそうな顔の少女、それは数秒のうちに存在を消し、すぐさま明るい笑顔が取り戻される。少女は本当?と力強く聞き、ニコニコとしながら問いた。
「ああ、もちろん。」
ニッと笑う少女。自然と自分も顔がニヤつき、暖かい気分で待っていると、アーニーはやはり自分だけに仕事を押し付けた事にご立腹なのか、俺を怒鳴って呼び出した。
「そこ!幼女をあやして浮かれない!!ロリコンかお前は。」
「ロリコンなんかじゃないって!でもほら、この子の笑顔すっごい可愛いだろ?そんなにピリピリしない方がいいって。」
「NPCなんかに構ってる暇あったらさっさとミッション終わらせるのが先。じゃないと無駄な時間食うじゃない。」
「その無駄な時間を作るくらい、ベータで散々解き明かされたパズルに苦戦してるのは誰かな?」
「うっさい!!」
ムキになったのか、俺から距離を取り、一人慌ただしくうろつきながら、頭を掻いて悩んでいる姿を、俺は転移結晶の恨みだと勝手に呟きながら倒れた丸太に少女と並んで座って眺めた。
「お姉ちゃん大変そうだね。」
「そうだねー、大変そうだね。あ、そうだ。」
一瞬思考が脱線しそうになったが、俺は前のエリアで思い出した、レザーフォルテの入手場所を聞き出そうとした。しかしアーニーは悩んでいて、聞き出そうとすれば必ず吠えて来そうで、聞き出せない。恨みよりも入手場所を聞き出す事を優先し、パズルの謎解きを手伝う事にしよう、そう思い、立ち上がってアーニーに近付いた。
「そんなに難しいパズルじゃなかっただろ、テトリスみたいなブロックを並べるだけで、結構簡単じゃなかった?」
言いながら紙を覗き込んだ。しかしその紙には、テトリスのような分かりやすいブロックが幾つかあるのではなく、絵柄の入った本格的なジグゾーパズルがあった。ざっと見て、100ピースはあるだろう、小さい頃100均の104ピースのジグゾーパズルを思い出しながらも、それにかかった時間を考えるとアーニーが悩んでいたのも容易に想像出来てしまった。正直、来れは骨が折れる。
「ほら、そんなに悩む物でもないんでしょう?やってみてよ。」
「…申し訳ありませんでした。」
「よろしい。」
返す言葉が無くなってしまったが、黙りこんだままと言うのも、味気がない。いや、普段の俺なら素直に待つか、始めから話しかけずに終わりを待っていた事だろう。しかし彼女は、予測ではあるが俺と同じコアなゲーマーで、久々に話の合う相手と会ってしまったので、今日はかなりおしゃべりになっているかもしれない。いや、彼女から見れば充分おしゃべりになっているだろうな。
しかしそんな事もお構いなし、今日の遠慮のない俺はすぐさまレザーフォルテの話を持ちかける。テンションの上がり下がりの激しい話題が、自分の所持金と感情を大いに刺激する事となった。
「それでさ、そのレザーフォルテ、どこで手に入れた?」
今更ではあるが、レザーフォルテとは黒い半ズボンに、ベルトを2本垂らした物、つまり俺好みの装備であることしかり、記憶の中では重量の割に防御力が高かったベータ時代お気に入りだった装備だ。ベータでは知り合いから買い取ったのだが、その際買い取っただけで満足した自分は入手場所を聞いておらず、今だに後悔し続けている。
そこに、アーニーは期待と正反対の言葉を答えた。
「あー、これ私も買取した物だから詳しくはわからない。ごめんね。」
機嫌が悪い時に話しかけた割には、商売、つまり仕事の話との事もあって割と普通の口調であった。しかし今の俺には、その衝撃はどっちの口調で言われても同じ事であっただろう、さすがに、ショックが大きかった。
「マジかぁ〜…」
「あ、でも。」
アーニーは、続きを言った。
「うちの店にまだ1つ残ってるから、キリト君になら1kで売ってもいいよ。」
「マジ!?やったぁ。」
この時の俺は大いに喜んでいたが、後々アーニーがアルゴのアドバイスで、キリ坊が買い取りそうな装備リストを元に仕組まれていた事だったと知った。これも後日談なのだが、アルゴのアドバイスと言う装備リストを見せて貰うと、本当に自分の欲しい装備と全く同じ物がびっしりと書かれていたのだから驚きだ。今後も俺は、アルゴと口論や揉め事になってしまった場合、どう考えてもいい負けるか様々な方法で鎮圧されるが落ちになってしまうだろうと悲観を浴びつつも、一枚二枚上手にいるおひげのはやした友人の顔を思い浮かべた。
しかし、言っては難なのだが、レザーフォルテは元々高性能とは言い切れず、少し重量がかさばるが1、5倍ほどの防御力を誇る装備や、もっと軽いAGIのオプション付きの装備の中間ポジションで、理想の装備が揃えられない場合の応急処置程度にしか使われていない半ば残念な装備なのだ。それを考えると、自分がいかに黒にこだわっているのかが、しみじみと感じ取れてしまう。だが、誰がどう言おうと、俺は黒のコーディネートセンスを変えるつもりもなく、SAO終了までずっと、いや、SAOから解放され、現実世界に至っても、黒い服を好むだろうと断言しても良かった。だがさすがに、《大人になっても》とまでは断言出来ないのだが。
それはそうと、クエスト後にはレザーフォルテが待っていると考えつつ、クエストを進める事にする。いざ手伝おうと再び紙を覗き込むが、そこにはバラバラのピースの柄では無く、びっしりと綺麗に組まれたパズルがあった。
最後の数ピースの絵柄をタッチし、指でそのままドラックし、ピースの合う場所で指を離すと、ピースとピースが合致して、ピースとピースの間の線が消え、綺麗な模様が浮かび上がる。その模様は、おそらく少女の描いた、悪夢に襲われている絵であった。
「ようやく完成ね…」
「この子が絵を通して訴えようとしてるって事か。」
次のエリアへと繋がるポータルが出現し、少女はスゥっと姿を消した。次は確か、草原から代わり、あの母魔女と少女の住む小屋の、台所に当たる場所に移動するはずだ。その台所から《手編みのぬいぐるみ》と言うアイテムを探し出せば次のエリア、最後のボス戦へといける。ボスを倒した後は、少女に手編みのぬいぐるみを渡せばクエスト終了、グルクエの受けられるあの小屋(正確にはまだ隔離エリアだが)に戻り、報酬を受け取って小屋から出れば、元通りの自由行動ができる。すぐさま自由行動に戻りたいものだ。
次のエリアでも、ぬいぐるみの場所はベータ時代と変わらない、ピクニックなどでよく使うバスケットの中に入っていて、すぐに見つけた。さて等々ボス戦だ、俺は意気込んで構え、ポータルを移動しようとしたその時。
「2人でボス戦に行くなんて、いつぶりかなぁ…しっかり頼むよ?キリト君。」
「もちろん、そっちこそヘマするなよ?」
「誰に言ってるのよ、じゃあ、これが終わったら初撃決着モードでデュエルして決めよ。」
「そうだな、それがいい。」
「ダメージ、しっかりとってよね!!」
一斉にポータルに入り、ボス戦前の会話シーンと突入した。人語を喋る大きな悪霊のような、フードを被ったモンスターが、ベットでわんわん泣いている少女のそばで大きく吠えた。大きな鎌を引き抜いたと同時に、アーニーがその鎌を弾き、一番使い慣れたソードスキルを、悪霊にお見舞した。
どうも、村上さんです。
第2章2話目でーす、思い浮かぶ限りグルクエあるあるを入れてみたのですが、読み返すとあんまない気もして来ました…まあ次回もグルクエの続きなので多少は出せるでしょう。
さてさて、次回は村上さんの苦手なバトルとなります。もう一回、SAO読んでおさらいしておきますね。出来れば自分で満足出来るくらいまで。まあ自分で満足出来るレベルって言ったら、もうちょっと文字数増やしたいんですけどね…