ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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苦手なあいつ

深い眠りについている中、ルナは夢を見た。ゲームの中なのになぜ?と始めは思っていたが、それは脳における何々が〜などと言う文系じみた言葉が帰って来そうなので、すぐさま思考転換する。

 

 

見ていた夢は、数日前の現実世界の自分の姿。毎日真面目に学校に通い、学校がおわれば家に帰り、ソファーに倒れこみ制服姿のまま昼寝をした。夕食の時間になれば姉が決まって揺すり起こし、制服のまま寝るのはみっともないと軽い説教をするか、ティッシュで優しく口元に垂れているよだれを拭いてくれるかのどちらかだ。家族は好きだが、たまに嫌気がさす友人付き合いにはうんざりしている、そんな中途半端な充実しかない世界に、同時に嫌気も感じていた。

 

 

そんな世界に別れを告げるかのように始まったSAO、私は内心喜んでいたのかもしれないが、ここまで必死に育ててくれた父や姉の事を思うととても胸がいたむ。そんな感情が入り来たるする心の中では、自分がSAOについてどう思っているのかと聞かれると、口ごもり黙りとなるだろう。そして思う、デスゲーム開始からはや数日、今だ状況を理解し切れていないゆとりプレイヤーも少なくはないはずだ。そこで彼女は目を覚まし、すぐさま着替え、店を開いた。

 

 

 

ルナは、顎に手を当て何かを悩んでいる様子で、装備欄を見つめていた。自分の装備の事で、しばし考察中。今後の装備にかかる費用、性能的問題からくる使用可能期間の計算だ。今まで気付かなかったが、なんと商人用衣装の強化可能回数が目を疑う程の数だからだ。

 

 

確かに通常の性能は初期装備の上位互換程度しかない、ただ、この強化回数さえあれば、戦闘に特化した防具の何十倍の性能を誇る事だってできる。これはオンラインゲームなら珍しい事ではなく、全職業装備可能の強化回数の多い防具は、かつてプレイしてきたMMORPGに山ほどあった。しかし、ジョブシステムの存在しないSAOにまさかこのような防具があるとは、思ってもいなかったので、驚きを隠せない。

 

 

運良く、戦いたくないはないが生活に必要なお金がいると相談をしに来た客の数名には、その付近の生産系または強化系の職を勧めている。もちろんパイプもあり、頼めばすぐにでも、それなりの性能の物が出来るであろう。

 

 

そうと決まればさっそく買い足しに、店を開く前にNPCの開いている防具屋に向かう事にした。強化用の商人用衣装を数個、買いに行くためだった。

 

 

それは何事も無く買い終え、すぐに店に戻ってこれた。後は、店で買取ったアイテムで、思う存分強化すればいい、1日の出だしは最高潮だ。そしてまた彼女は店を開く、新しい看板と、店長の気分はまさに新装開店、Lūnaの営業が、今始まろうとしていた。

 

 

 

「いらっしゃいませぇ!!」

 

今日も元気良く、お客に挨拶をする。客は昨日もドロップ品を売りに来た、とあるパーティーだ。

 

「また、買取頼むよ。」

 

「はい!!」

 

大きな声で応え、相手が提示してきたアイテムウィンドウを見る。売りに出しても全く売れないであろう物もしばしば、薬や強化用アイテムなども複数ある。それを見て、考えた。

 

 

そろそろ薬の在庫が貯まり、売り捌き切れなくなる。それに薬と言っても、スライム程度のモンスターが落とす下位クラスの回復アイテムだ、これから段々と被ダメが多くなっていき、こんな薬では満足に回復出来なくなる。故に、低レベルプレイヤー以外には必要の無い薬。売れなくなれば、店の利益にも繋がるので、慎重に考えるのは当然の事だった。

 

「こちらからのアイテムですと、申し訳ありませんが強化系のアイテムしか買い取る事が出来ません。ですが、強化系アイテム全て合わせて5000コルでなら買い取らせて頂きます。ご要望はございますか?」

 

パーティーの一名が、顔色を滲ませ微かに笑う。おそらく、予想していたのだろう。

 

「やっぱもう薬は売れねえよな〜、強化系アイテムは全部売るよ、NPCで売ると1000コルもいかないしな。」

 

「そうですね、NPCとプレイヤーの価値観はやはり違いますし。狩りのしない彼らにとって、強化アイテムなんて不必要以外の何物でもないのでしょう。」

 

「とにかく、買取り頼む。残りはNPCで売らせて貰うよ。」

 

「畏まりました。それでは、トレードお願いいたします。」

 

「はい、これで完了。それじゃあまたよろしく。」

 

「またのお越し、お待ちしております!!」

 

今日もまた1組、商売ついでに交流を深めれただろう。それが、とにかく楽しい。商売の魅力は、これが一番だと言い切れる瞬間だ。

 

 

暇になると、ルナは必要なアイテムの買取り表を作り出した。薬の調合に必要なアイテムしかり、強化用アイテムしかり、性能の高い武器しかり。次々と妥当な数字を入れ、一部のお客にメッセージとして送った。もちろん、冒頭の挨拶も忘れないで。

 

 

メッセージを送って数分が経った時、店にお客が入って来た。そのお客はとてもテンションの高い…ルナの苦手な、クラインだった。

 

「おはよう!ルナちゃん。いやー、昨日教えて貰った狩場のドロップ品が必要だなんて、ルナちゃんも正直だなー!!まあ、俺は別にいいんだけどよ、ルナちゃんが困ってるって言うもんだから、売りに来たんだけどよー!!」

 

相変わらずのテンションは、ルナを圧倒し会話のタイミングを跳ね除けた。クラインは、回復薬生産に必要な《緑の体液》を落とす、《モスピッグ》話をしているのだろう。ベータテストの経験上、緑の体液は上位クラスの回復薬を作成するにも必要で、雑魚モンスターが落とすアイテムとしては、一番高価な物と言える。この緑の体液は、ルナが勧めて薬の生産職についたプレイヤーからの依頼で、なんとしてもオーダー以上の数を確保して信頼を得なければならない。でなければ、Lūnaの雑貨稼業は虚空をさまよう事になる、すぐさま他のプレイヤーが商売を始め、いずれこの店は消えてしまうだろう。

 

 

つまり、一番始めにやらなければならない、その始めのパイプを作るための、第一歩だ。うちが買取るという事前提で考えられたドロップ狙いの狩場は、教えてはいけない奴に情報を売ってしまったのかもしれない。だが、彼は急にキョロキョロし始める。やっぱり変な奴だ、と思いつつ聞いてみる。

 

「ところで…アーニーはいるか?一応ここにいるって位置情報では書いてあったんだけどよ。」

 

心の何処かに、杭のような物が刺さる。しかし、この男なら騙し切れるだろうと思い、誤魔化す事に決めた。

 

「アーニーくんは裏で休憩中です、彼は普通の狩りプレイヤーですので、いつもここにいるかは、保証出来ませんが。」

 

クラインは、ボソッと何かをいって崩れ落ちた。

 

「同居かぁ………」

 

「だ、大丈夫ですかっ!?」

 

ボソッと何かを言っていたが、まさか余計ややこしくなるような事は考えていないだろうか。それは置いておいて、とりあえずその場に崩れながら座ったクラインを立ち上がらせる。触れただけでクラインが立ち上がったような気もしたが、彼はしっかりとありがとうと言っていた。

 

「い、いえ…」

 

少しばかり恐縮してしまう。

彼はようやく本題に話を変え、アイテムウィンドウを見せて来た。

 

「ほら!緑の体液500個!!いくらくらいになる?」

 

「500!?たった1日で500って…いくら豚の経験値が少ないと言っても、2レベは上がりますよね…?」

 

「いいや、パーティーで狩ってるから実際は持っと低くてよお、実は1レベ上がったかどうかも怪しいんだ。」

 

「グループなら…80%と言ったところですか。」

 

「そうそう、それくらい。」

 

ルナは、先ほどメッセージにして送った値段表をもう一度確認した。緑の体液は…1個50コル、合計で25000コル。

相当な出費だ。

 

「500個全てで、25000コルとなります。トレードお願いいたしますね。」

 

だが、クラインはそこで止まろうとしなかった。そうそう、と言いつつ新しいアイテムウィンドウを提示してくる。

 

「それとミスリル鉱石の破片も、100個。」

 

「ミスリル2個分相当の破片ですか、ミスリルは1個2000コルですので、計29000コルとなりますね。」

 

もう、多少の事では驚かない。耐性が着いて来た。

 

「はいはい!それじゃあトレードをっと。」

 

二人が交換カーソルを押すと同時に、アイテムとコルの移動が一瞬で移動し、トレード画面は消えた。これで要件はないだろう、そう思っていた。

が、彼が最後にとんでもない爆弾を持ち込んでくる。

 

「そうだ、ルナちゃんともフレンド登録いいかな?」

 

何かを飲んでいた訳では無いが、吹き出しそうになってしまった。だが、ここはあえて落ち着いて。取り乱し威厳が壊れるほど、私は安い人間じゃないのだから。

ゆっくりと口を開いた。

 

「申し訳ありませんが…お客様とのフレンド登録はお断りしております。ゲーム内といえど、今私は仕事中ですので。」

 

今日はクラインの口調がやけにおしとやかかと思えば、やはりそう言う事か。残念ながらすでにフレンド登録はしてあるのだが、彼はまだまだ先まで気付かないだろう。

 

「そっかぁ…そうだよな!俺みてえな薄汚い客より、あんな若者を絵で書いたような茶髪の、アーニーの方がいいに決まってるってな!」

 

ナニヲイッテイルノダロウコイツハ

やはり嘘のままでいいかもしれない。仕方なく、今は曖昧な解答だけしておく。

 

「は、はぁ…」

 

内心では、その茶髪は私だと叫んでいるが、心の中だけにとどめておきたい。そしてクラインが意気揚々と狩りの自慢話を始めると、新たに1人のお客が入って来た。

 

 

気の弱そうな、1人の男性。誰かに紹介されて来ましたと言わんばかりの困り顔は、ルナにすぐさま平常心を取り戻させた。

ルナは言う。

 

「クラインさん…先客がいたのを、すっかり忘れておりました。申し訳ありませんが…本日はここで店仕舞いとさせて頂きます。」

 

「えっ?そうなのか!?すまねえ、邪魔したみてえだな。」

 

「いいえ、私は全然構いません。またのご来店お待ちしております。」

 

「お、おう…」

 

クラインは、初めてルナが真剣な顔をしているのを見た。いつもは丸く大きな目は、一瞬のうちに細くなり、並びに鋭い目付きと変わる。そして虚度っている男性に、どうぞ、と一言だけ声をかけ、クラインが出た扉を閉めた。この時感じた、自分よりはるかに年下の女の子に、まさか仕事について教わるとは。クラインは、自分のおちゃらけた態度を思い出し、もう当分この店には来ない方がいいと、胸に刻み込んだ。

 

 

3、5話 猛威の短剣

 

「アンティーク・ブレイドですか!!?」

 

速さ、正確さ、丈夫さのパラメータが著しく高い、ダガーの名前を、ルナは叫んだ。アンティーク・ブレイドとは、ベータテスト時、ベータ1番のダガー使いが愛用していた武器で、あまりのドロップ率の低さから、彼専用の武器とまで言われた代物だ。そんな超高価武器が、何の接点もない羊型モンスターからドロップするなんて。

 

 

震えた手でオブジェクト化されたアンティーク・ブレイドに触れ、初めてその感覚を知る。

 

「あの…これってそんなに凄い物なんでしょうか?試しに使って見たんですけど、全然火力出ないし怯みも取れないし、全く使えなかったんですけど。」

 

「そんな事無いです!一発が弱く、怯ませる事の出来ないこの武器でも、最大の特徴があったんです!それが圧倒的な連撃、何よりもテクニックの生きる完全上級者向け装備ですよ!!」

 

ルナはその男性プレイヤーの手を取り、握りしめた。男性は頬を赤く染め照れた。

 

「はっ…?も、申し訳ありませんっ!!ついアンティーク・ブレイドを前にして興奮してしまい…」

 

「いえ、僕は別に…」

 

一息つき、本題に移ろうとする。

 

「さて…本題なんですが、今回はこの武器の使い方のアドバイスですか?それとも、売却でも。」

 

男性はすぐには答えず、もごもごと口を動かす。ルナは、男性が喋るのを待つ事にした。数秒の沈黙後、男性は言う。

 

「この武器を…信頼出来る人に託してください!」

 

ルナはぽかんと丸い口を開け、しばし沈黙した。だが、すぐに気を直し、商談に向かう。

 

「それはつまり…売却、と言う事ですか?」

 

「いいえ、信頼できる方に譲って欲しいんです。」

 

ルナは理解に苦しんだ。なぜゲーム序盤では猛威を振るうような性能の武器を、使わないのか。

使っている武器が違ったり、うまく自分には使いこなせないと感じたのならまだ分かる、実際、この男性は自分で使ってみて、使いこなせない様子であった。ただ、なぜ売却ではなく譲るのだろう、そこがわからなかった。

思い切り、聞いてみる。

 

「どうして、お金も取らず譲ろうと思ったのですか?」

 

男性は顔を下げたかと思うと、突然大声で怒鳴り散らす。

 

「こんな物…僕なんかが持ってるより強い人が持ってた方が攻略が捗るからに決まってるじゃないか!!」

 

黙る。男性は続けた。

 

「そうだ…あんたはいろんな相手に言ってきただろ!狩りが怖いなら、生産系の職に逃げればいいって!!でもダメなんだよ…人が多すぎるから!!」

 

実際、生産系職に逃げたプレイヤーは少なくは無かった。しかし職に逃げても、二流三流はもちろんある、二流は売上が伸びず、三流は生活のために狩りに出る事を余儀無くされていた。

 

 

それは、ルナの生産職の万能性に依存し、過小評価し過ぎたのかもしれない。なぜここまで職に着くプレイヤーが多いかと言うと、それは無論ルナのアドバイスの元である。成功したプレイヤーは耳にするが、そう言った商売競争に負けたプレイヤーなど、気にもしていない。失態だった。

だが、彼の気の狂いようも異常な事は確かだ、必要ならば探り、もしくは黙っているか。しかしそんな思考を、男性はよんでいたかのようにいい並べた。

 

「俺の友達は…あんたに言われた通り生産職についた!けどまったくもうからなかった…そしてお金が尽き、やむ負えず狩りに出たよ!!一緒に狩りに行った…それでも彼は死んでしまった!あんたが始めから狩りのアドバイスさえしておけば、あんな事にならなかったんだ!!」

 

言いたいように言いやがって、ただ、何も言い返せない。客1人1人にはいい顔をして、その場凌ぎのように職を勧め、その結果がこれだ。詫びても詫び切れないだろう。

 

 

申し訳なさと目の前のアイテムに、ルナは困惑した。彼は、この武器を持って、私にも戦えと言っているのだろうか?そこは、聞かなければ分からない、だが、聞けるはず無いのだ。唾を飲み、ルナは決心した。

 

「分かりました、信頼の出来るプレイヤーに、私がお譲り致します。ご利用、ありがとうございます。またのお越しをお待ちしておりますので。」

冷酷なセリフだ。客を上舞う気など更々ない。

ルナはアンティーク・ブレイドを、自分の右腿にある鞘に収め、店の扉を開けて帰るように、手で指示をした。

男性は睨み付けながらいう。

 

「責任を取るって意味か。」

 

その言葉を聞かず、最後に言った。

 

「只今、私の方にボスの部屋までのマッピングデータが届きました。明日までには、攻略会議が開かれる事でしょう。2日ほど店を閉めます、今後のご利用は、2日以降でお願い致します。」

 

無視されているだろうが、続ける。

 

「必ず突破しますから。」

 

睨みを切らしていた男性が、ようやく優しそうな顔に戻る。元は優しい人なのだろうが、一度気が狂えばこうもなる。すると男性は、今までの自分の発狂する姿を思い出すや、申し訳なさそうではあるが、流れで言い切る。

 

「絶対…一層目を突破してください…!」

 

はい、ルナは答えた。

男性が店から早足で出て行く、ルナはその扉を閉め、自分のマッピングデータをメッセージに折り込む。宛先はディアベル、ルナと同じ、プレイヤーに好感的な評価を受けている、後に初代攻略組と言われるようになったプレイヤーだ。その男に、メッセージを送った。ただ、名前は一切記入していない。

ルナは出掛けるため、紺色のローブを羽織り、有名な鍛冶屋へと装備強化に向かった。

 




どうもー、むらぽんです。今回から高すぎるテンションは慎むことにしました。本当は騒ぎたいんですけどぇ…(真顔)
さて、今回大急ぎで作ってしまったので、誤字など目立つかもしれませんが、その点はご理解していただければ、と思いつつもコメントで場所を教えてくださいといったコメ稼ぎを少々。
さらに、作中において金額の桁が原作と違いすぎると思うかもしれませんが、そこは現オンラインプレイヤーとして譲れない部分があったりするのが原因です。
最後に、次回の投稿のお話をしてしめたいと思います。次回は今回同様、2日か3日後とさせていただきます。早くて金曜、遅くて土曜ですね。
そうそう、投稿する時間についてなのですが、夜8時から11時の間とかんがえてもらえればありがたいです。今後とも、むらぽんの作品におつきあいください。


6月27日に追記しました!そのおかげでかなりのボリュームにw(自分的には、ですが)
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