ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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ディアベルへの恩

 

アルゴは、草原に所々ある岩山の、比較的座りやすい場所を選んで座り、メモに書き置き管理している情報を整理していた。売れ筋の情報、依頼で頼まれそうな情報、全く売れない公開してもいいような情報、そして、趣味として存在するおふざけノート。

 

 

その中に、昨日取引をしたルナが依頼しそうな、情報が一つある。おそらく、依頼を受け後々調べる羽目になるであろう情報だ。そのメモを開き、ついでに思い出しつつ追記した。そしてふと思う、この情報は、本当にルナに売っていいのだろうか。

 

 

経験上、商売相手に衝撃的な情報を売ってしまうと、ショックからか二度と情報を買おうとしなくなってしまう。一つの情報を売るか、今後幾つかの情報を売るかは人を見て決めるが、ルナは間違いなく今後も情報を買うだろう。情報屋の勘だ。

 

 

そう考え、この情報が必要かどうか悩んでいた。内容は簡単なものなので、データを消したとしても覚えているだろう。いざとなれば、口頭で言っても構わない。だとすれば、この情報はいらないだろうと考え、そのメモ自体を削除した。

 

 

もう何処に漏れることも無い、鋼の情報。しかしその鋼の情報は、ルナの心も砕いてしまうのではないかと、アルゴは密かに疑っていた。

 

 

 

 

 

時はしばし戻り、7日の事。路上で商売を始めたルナに初めて声をかけたのは、ディアベルだった。こんなところで何をしているんだい、NPCの店と間違えて、声をかけてくるプレイヤーもいるかもしれないよ。ディアベルの優しく言った言葉は、彼女の口元を動かす事になる。ルナは言った。

 

「それが目的です。でもプレイヤーが雑貨店を経営しようってのは、やっぱり無理なんでしょうか…」

 

ディアベルは彼女が成そうとしている事を理解した。プレイヤーが雑貨店をやれば、NPCより安く買える物がある。ドロップ品を買取り、それを売る立派な商売。

 

ディアベルがゲームに一人は必要であろうと考えていたプレイヤーは、今目の前で立ち止まっている。これは都合がいい、ディアベルは思った。そして考え、その提案を彼女に言う事にした。

 

「今ある商品は何があるんだい?」

 

「イノシシから落ちる薬と、あとはドロップ装備数品…」

 

「資金は?」

 

「残り1万コルもないです…」

 

確かに、1万コルも無ければ買取りは出来ないだろう。売り専門のプレイヤー雑貨屋は、なかなか難しいものだから。頭を拗らせ、考える。今後のゲーム攻略のため、彼女はプレイヤーの市場には必ず必要と感じたからだ。

 

「それなら、他に売れそうなものはないかい?」

 

「ベータの時の狩場情報なら…」

 

「それだ!!」

 

ディアベルは指を鳴らし、彼女の手を引いた。

 

「ちょ、ちょっと、なんですか!?」

 

「いいから来てみろ!面白いものがあるから!!」

 

手を引いたまま、ディアベルが来たのは噴水のある大きな広場だ。多くの狩りプレイヤーが待ち合わせ場所に使っている。

そこで、ディアベルは言った。

 

「ここにいるプレイヤーに、その狩場の情報を売るんだ!それなら損はないしゲーム攻略にも繋がる。だから、そうした方がいい!」

 

彼女は返事をする前に、ディアベルは他のプレイヤーの方を向き大声で叫ぶ。

 

「みんなー、聞いてくれ!!この子すごい狩場情報持ってるぞ!1フロア1000コルで情報を売ってくれたよ。安いだろう!?」

 

1000コル?まじかよ!!、狩場とか全然分からなかったから普通に助かる!、俺は5フロア、5フロア買うぞ!!

彼女の前にプレイヤーが殺到、ベーターに追いつこうと必死な者もいるし、ただ狩りをしたい者もいるように見えた。

 

「あ、あのそれは…ちょっと待ってください…」

 

他のプレイヤーを少し下がらせ、彼女の後ろに廻ったディアベルを見て、何かを言う直前にまでなった。

その時、ディアベルは言った。

 

「これでお客は来ただろ?」

 

ウィンクをして、右腕の親指を立てた。彼女はうっすらと笑い、プレイヤーの方を向き直した。

 

「はい、皆さん情報は逃げませんから!並んで順番になってください!!」

 

彼女が言うに、プレイヤーたちは列を作り前に前にと詰めた。同時にシステムのアシストだろうか、列の横には緑色に発光するラインが引かれ、順番が割り振らる。ベータ版ではなかった、混雑防止のためのシステムだろう、さすが製品版だ。

 

 

次々と注文に合った狩場情報をメッセージにして送り、最後に狩場情報はパーティー以外には漏らしてはいけないと告げ、満足そうなプレイヤーの背中を見送る。半分くらい捌いた、かと思えば、新たにプレイヤーが並びに来ていた。これは骨が折れそうだな、ディアベルは半分笑いながら言う。それに応える暇もなく、手を動かし続けた。

ディアベルは満足そうに息をつき、彼女の手を取った。

 

「っ!?何するんですか!!?」

 

「俺も手伝うよ、情報送ってもらえれば。」

 

「大丈夫です、私の仕事なんで!!」

 

ディアベルは、彼女が強い商売師になるだろうな、と確信した。その言葉を聞いた後は、噴水の近くに座り、彼女の仕事が終わるのを待った。等々列後半、ようやく終わるだろうと言う頃だった。

その中の、一人のプレイヤーが言った。

 

「こんな情報あるなんてすごいな、もしかしてベータテスターか?」

 

そのプレイヤーが言うに、周りのプレイヤー全員が彼女とそのプレイヤーの方を見た。まさか、と言う顔のプレイヤーが大半だ。ディアベルはすぐさま立ち上がり、正直に答えようとする彼女を止める。

 

 

ディアベルより少しばかり低い位置にある両肩で手を叩き、彼女が怯んだ間に言った。

 

「俺たち、実は前に別のゲームでギルドを組んでてな、それですぐに話しが付いて、初日からずっと狩場情報を集めて、こうして売ってるって訳なんだ!!」

 

「なるほど、ご苦労様。俺たちもベータテスターに負けないよう頑張ろうな、お前たちを見れば勇気が湧いてくるよ。」

 

他のプレイヤーも、なんだ、そういう事か、俺たちも負けてられないななどと呟き、個々に散らばっていく。

 

「あの…」

 

彼女はディアベルの顔を見上げたが、真剣な顔は彼女を黙らせる。その後全てのプレイヤーが列から外れるまで、ディアベルが手を離す事は無かった。

 

「あのっ!」

 

ディアベルは我に帰り、ようやく返事をした。

 

「ん、どうかした?」

 

「どうかしたじゃないです!なんでさっき肩思いっきり叩いて来たんですか!!」

 

「ああ…ちょっと、ついてきてくれ。」

 

ディアベルはまた手を引き、今度は人目の少ない路地裏に彼女を誘導する。場所が場所なので、彼女も少し警戒していた。重い口を開き、言った。

 

「ベータテスターだった事は…言わない方がいい。俺もそうだけど、他のプレイヤーはベータテスターの事を悪く思っている。そんな事じゃ商売にならない。」

 

しかし真剣な口調は、彼女に簡単に打ち砕かれる。

 

「…だめでしょうか?ベータテスターが商売をしても。だって皆さん、ベータテスターが一般プレイヤーを見捨てて狩りに出ているのが許せないんですよね?それなら、皆さんの味方をするベータテスターがいても、いいと私は思うんです。むしろ、その方が自信が持てるんじゃないですか?ベータテスターが言ってた事だから、大丈夫だろうって。そんな勇気に繋がる気がするんです。それでも…あなたたちはベータテスターを嫌いますか?」

 

返す言葉もない、それは紛れもなく、自分の考えていた事と全く同じ事なのだから…

 

そこでディアベルの口から出てきたのは、反論の言葉ではなく、自己紹介。彼女は驚いた顔をしていた。

 

「俺の名前はディアベル、職業は、気分的にはナイトをやってる。よろしく。」

 

差し伸べた手に、彼女は強く握手をした。

 

「アーニーです、一応商売名もありますが、ここはあえて普通のプレイヤーネームで。よろしくお願いします。」

 

「うん、アーニー。良かったら、今度俺のパーティーと一緒に狩りに行かないか?あいつらも、きっと歓迎してくれる。」

 

「申し訳ですが…私はもう少し商売を続けます。では、私はこれで…」

 

細い路地に、ディアベルが取り残されて行く、彼女がいなくなる前に、これだけは言った。

 

「いい商売師になれよ!!」

 

振り返り、彼女も応えてくれた。

 

「もちろん、この恩はいつかきっと返しますから!気分的なナイトさん!!」

 

こうして、彼女とディアベルは、お互いの背を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

こうして…あの日から数日。彼女は店を持って立派な商売師になっていた。もう口出ししなくてもいいくらいの、立派な商売師に。挙句の果て俺にお使いを頼む程の図々しさにまで成長して。

 

 

お使いから戻り、ルナに頼まれていたアイテムを渡した。

 

「ご苦労様、お礼としてそこにある回復薬でもつまんでいってください。」

 

「お菓子みたいな感覚か、全く。まあ回復薬はありがたくもらって行くよ。」

 

商品の回復薬をつまみ、懐にしまう。ルナの手元に万引きの警報が出たが、それを消した。

 

「毎度あり、万引きナイトさん。」

 

「その言い方は辞めてくれ。」

 

ドアノブに手をかけた、その時。

 

「そうそう、実はもうひとつあるんです。トレードしますよ。」

 

「?あ、ああ。」

 

トレード画面が開き、ルナからは装備が送られてくるようになっていた。ディアベルは先ほどの回復薬を送り返し、トレードを成立させる。詳しく装備を見てみると、十字のロゴの入った、小ぶりの盾。名称は…ナイトシールドと、書かれていた。

 

「っ!これは?」

 

驚くディアベルに、ルナは優しく応える。

 

「今までのお礼です。…お世話になりました!!」

 

いつも以上に深々と頭を下げ、ディアベルを見送る。

 

「またのご来店、お待ちしてるんだろ?」

 

「はい!!」

 

そう言い残したディアベルの足音は、大雨の音に紛れ、消えていった。

 




さーて連続投稿ですよぉ…どうも、むらぽんです!!いろいろ報告していなくてやばい感が半端ないですw
まず、3話に新しく追記しました。4話にルナが言っていた、男性プレイヤーの話ですね。5話のあとがきに書くとかどんなバカだよとは思われそうですが…(やばいバカがバレる)
そしてもう一つ…学期末ですよ学期末!!テストの時期ですよ学生のみなさん!!
むらぽんもがんばってテスト勉強してました!
え?むらぽんはテスト好きかって?やだなーそんなの嫌いに決まってるじゃないですか
まあ自演もサムいだけなのでここまでにしておきます。
と言う訳でありまして、投稿ペースを3日後固定とさせて頂きます。連続投稿はそのお詫びという事で。
この話をストックして2日1話でも良かったのですが、この3日後という数字がテストの日数とちょうどいい感じでありまして、ええ。
だいぶ長くなりましたが、今回もここまでです。読む気も失せるような長文あとがき、読んでくれた人ありがとう!!
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