ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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黒いプレイヤー

11月13日、今日は現実世界では、日曜日に当たる。お構いなしに狩りに出る者もいるが、心なしか街にいる人も多く感じた。NPCの経営するレストランは朝から混雑しており、一度様子を伺いに行ったが、改めて出直した方がいいように思える。そしてLūnaも、週に一度にして、初の定休日を迎える事ができた。

 

 

ルナは…アーニーは久々に、息抜きが出来ると、心を落ち着かせていた。アンティーク・ブレイドの強化状態を見て、よくここまで強化出来たと感心している。速さ+5、中々の数値だ。これならボス戦でも使えると確信しつつ、鞘に収めてソムリエエプロンで覆うように隠した。

 

 

昨日買ってみたSAOで言う紅茶セットのような奇妙な飲み物を啜りつつ、アイテムウィンドウを弄っていると、店のオーナーが外出中や休店中に誰かが店に入ろうとした時に知らせてくれる便利システムから、メッセージが届いた。メッセージには、写真と正確な時間が書いてある以外何もないのだが、それでも誰が何時頃に来たかはすぐに分かる。知り合いではれば後でメッセージを送って連絡を取ればいいだけなのだから。

 

 

しかし、店に入ろうとしていたのは自分より少しばかり年下であろう男性プレイヤーが、休店とも知らずに入れず困っている。今日は休店だが、まあいいかと呟き、扉のロックを解除した。店はロックを解除しただけで、休店モードだと言う事には変わりないが。

 

 

灰色のコートを羽織る、いかにも女々しそうな黒いプレイヤーは、店を見回すと休店日の貼り紙を見つける。やばい、と思ったのか、恐る恐る目線を合わせて来たが、別に構わない。むしろ暇なので、とりあえず入れてあげたと言う感じではあった。

 

「いらっしゃい、定休日だけど、暇だし今だけお店開いてあげる。何かお探し?」

 

いつもより緩い接客が、彼の緊張を解いた。決して、年が近そうなので舐めていると言う訳ではなく、プライベートでの友人と喋るかのような口調は休みと言う気の安らぎからだろう。実際、アーニーは敬語はあまり使わず、商売以外では軽い口調がやや目立っていた。しかし、SAO始まって以来、商売以外であまり人と接していないので、礼儀正しい丁寧な女性キャラと言う設定は戒められなかったのだが。

 

 

お高そうなティーカップに注がれた謎の液体をもう一度啜り、彼が商品に睨みを付け始めたのを、後ろから眺めた。そして、彼は図々しくも言う、休店の所無理をして開いていると言う状況にも関わらず。

 

「転移結晶が安く売ってるかと聞けば、数は少ないのか。確かに半額って言うのは安いけど、この数じゃあな…もっと裏にない?」

 

眉毛をピクリと動かせる。何も知らない餓鬼が難癖付けやがってと言いそうになる口を堪えながら、椅子から立ち上がった。客はやばいと思ったのか、今更のように慌て始める。まるで、自分が怒らせてしまったのを今更気付いたかのように。しかし、アーニーは怒ってはいない、何も知らないなら、教えてやろうと意気込んでいた。

 

「転移結晶は元々、仕入れ値とほぼ変わらない値段で売ってる。でもその層でしか移動出来ない、NPCでも数個売ってるような粗悪品だけどね。それでも十分客引きよ。そんな物をある分全部を売りに出すと思う?そんな事したら、うちは間違いなく利益のない転移結晶ショップに成り下がるけれど。」

 

一日数個限定、の定理を知っているであろうか。一日数個という魅力的な文章で客を集め、いざ売り切れになったとしても買えずにいた客は、せっかくだと他の商品に目を向ける。そして、お目当て以外の商品でなくとも、いい物を見つければそれを買って行く。

商売の常識だ。

 

 

釣りで言えば、《コマセ釣り》のような物。細かい餌でおびき寄せ、本命である針付きの餌に食らいつかせる方法で、釣りをする人なら誰でも知っているであろう。つまり、そう言う事だ。断言しよう、商売においての目玉商品は、ただの取り巻きだと。

 

 

客は、コマセ釣りみたいな物か、と、見事に考えていた事と合致してくれて、説明が省けて助かった。

 

「そう言う事。」

 

再び椅子に座ってティーカップに手を伸ばした時、客はとんでもない事を言って来た。

 

「じゃあ、この値段の1、5倍の値段でいいから、ある分だけの転移結晶を売ってくれ。」

 

危うく吹き出しそうになった。数秒手の動くスピードが早ければ、お茶を啜っていて、間違いなく大惨事になっていただろう。

 

「あんた正気!?」

 

「もちろん。」

 

軽そうな口で言う、彼の気が知れなかった。そもそも、店頭には数個しかならんでいないものの、実際裏にある倉庫を含めれば軽く300個はある。Lūnaでの転移結晶の値段は500コルで、彼の場合は750コルになる計算。単純計算でも、軽く20万近くかかるのは明白だ。

それを彼は、ポンと買うと言うのだろうか。

 

「何個くらい用意出来る?」

 

「在庫合わせて…正確な数で言えば317個。」

 

「じゃあ…24万でいいかな?全部買うとして。」

 

確かに750コルで売ればかなりの儲けにはなるが、元々仕入れの数が限られているため、全てとは簡単に言い切れない。おそらく、この客は全て買わないと満足しそうにない顔をしていた。

 

 

しかし、現在SAOでは商人プレイヤーと狩りプレイヤーの間に、大きな金銭感覚差が生じている。市場に持ち出せば高価になり、狩りプレイヤー同士の取引なら安値で買える。10万単位や100万単位の数字をポンと手元から出せる商人プレイヤーに対し、狩りプレイヤーはその10分の1の資産しかないと言われている。もしかすると、この時点で攻略の手助けをすると言う建前は、財力の差と言う文字に隠されてしまったのだろう。

本当に狩りプレイヤーがそんな大金を持っているのか、と思いつつ、ルナは了承した。

 

「よし、いいわ。317個、1つ700コルで全部売ってあげる。その代わり、素材の転移石を取りに行くの手伝ってよね。」

 

「別にいいけど…あいつら手強いぞ?」

 

「舐めないで、これでも初日から迷宮区を走り抜けてきたプレイヤーだから。あんなのろまな亀一撃の攻撃もさせずに葬ってやるからね。」

 

「不安だなぁ…じゃあ早速、パーティーを組もう。」

 

ため息混じりの提案は、アーニーの商売精神を再び燃やす事となった。

 

「ええ、あ、もちろん君がゲットした転移石も貰うからね。」

 

「はいはい、分かりましたよ。」

 

送られてきたパーティー招待カーソルの、OKボタンを押す。それと同時に、目線の左上に、パーティーの体力バーが表示された。

 

「Kirito…キリトくんって言うんだ、よろしく。」

 

キリトも体力バーの横にある名前を読み、名前を言おうとしていた。だが、中々言わない。

 

「…まさか読めない?arnieでアーニー、全く、学生なら英語の教科書に出てきそうなくらいポピュラーな名前、読めてよ。」

 

「ごめん…」

 

はじめは冷たく見ていたが、時期におかしくなり笑ってしまう、遠慮気味な笑いだった。

 

「ふふっ…きみっておかしい人だね。」

 

「そんなにおかしいかな?」

 

「だいぶおかしいよ、強気でいると思ったら、いきなり日和ったりするし。」

 

「べ、別にいいだろそれくらい!!」

 

「はいはい、それくらいならね。ただ亀と戦ってる時だけは辞めてよ?」

 

小馬鹿にしつつ、キリトの手を引いた。

 

「ほら、早くしないとアイテムを落とす亀がいなくなっちゃうよ、早く早く!!」

 

「確立の問題なんだから、そんなわけないだろ…」

 

だがキリトは、彼女の服装を見るに、急に足を止めた。貧弱なイメージの強い商人用衣装がなびく。そして言う。

 

「まさか、そんな装備でいくつもりじゃないだろうな!!?」

 

それに対しては、鼻で笑う他無かった。見せびらかすため、装備を一時的に変え、アイテムウィンドウの設定を少しばかり変え、キリトに商人用衣装を見せた。

 

「敏捷力+12!?…恐れ入りました。」

 

「ふん、わかったでしょう?私はただのプレイヤーとは違うの。一流狩りプレイヤーでもあるんだから、あんまり舐めてると痛い目にあうよ?」

 

しかし、これは紙装甲だと言うことには何も変わりない。

普通の防具なら素ステータスで、必要最低限の防御力を誇る事が出来る。

だが、敏捷力上昇による攻撃速度上昇と回避率上昇の二種類のアッパー補正は、ゲーマーなら誰でも憧れるだろう。防御のはずの防具に、火力が伸びる強化をするなど別のゲームだと日常茶飯事の事だった。それを見るに、キリトは察したのだろう。アーニーも、相当コアなネットゲーマーだった事を。

 

 

堪忍したキリトは、ついでに武器も聞こうとした。だが、ソムリエエプロンから一瞬ちらつかせる、木彫りの彫刻の柄を見ると、言葉を失ったかのように動きが止まった。この武器の強さが理解出来るのだろう、おまけに、強化回数を利用した防具を使った火力の底上げをするようなプレイヤーの事だ。性質を理解した上で、的確な強化をしているに違いない。おそらく、速さ+4くらいはやっているであろう。

 

 

その速さ+4という数字は、アンティーク・ブレイドの真骨頂と言える、絶妙な数字で、まさにベータ時代猛威を振るったあのプレイヤーと同じ事になる。さらに速さに+がつくと…もはや想像もしたくもない、モンスターに同情するレベルだ。キリトは今更思う、とんでもない奴とパーティーを組んでしまったと。

 

 

そのまま、されるがままにキリトは引きずられながら連れて行かれた。店から飛び出し、迷宮区へと向かった。その時にはさすがにキリトも自分の足で歩いていたが、その姿は、楽しそうに狩りに出掛ける、二人のプレイヤーに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

一方、クラインは再びLūnaに足を運んでいた。定休日と言う事はあらかじめ知っていたので、一緒に狩りに行かないかと誘いに来たのだ。

 

 

あくまで自分たちは、ドロップ品を売却する名目で、ルナの一番欲しがっているアイテムが落ちる狩場で狩る。そしてルナが拾ったアイテムはもちろん、自分たちが拾ったアイテムも全て売却しようと考えている。そうすれば、少しくらいは親近感を抱いてくれるだろうと思い、クラインは張り切っていた。

花束を持ってくるのは、少しばかり状況違いだとは思うが、本人が男性としての気遣いだと言っているのでそこは触れないでおこう。

 

 

何度も街の所々にある鏡変わりになりそうな場所で、髪を直し、その度にきめ顔をする。周りにはただの変人に見えたか、素直に告白しにいくプレイヤーと捉えてくれたかの2択だが、クラインにはそんな選択は関係ない。自分の信じる、ルナと一緒に狩りに出掛けると言う目的1択だったのだから。

 

 

等々、Lūnaのある通りまで来て、髪を確認する回数が増えた。一歩一歩ではあるが、少しづつ店に近付いてくる。最後の一件、その家の隣にはLūnaがあると言う家の前で、深呼吸をした。自分は紳士的な、商売の手伝いをする気の利くプレイヤー、やましい心など一つもない、健全なプレイヤー。大丈夫、絶対に成功するはずだ。

意を決し、大きく踏み出した。

 

 

それと同時に、Lūnaから2人のプレイヤーが走って出掛けて行った。間違いなく、クラインの言うルナと、1週間ほど前に出会った年の離れた友人、キリトだった…

思わず、花束を落とし、絶句した。

 

 

いや、絶句だけではなく、腕をだらしなくさげ、股は何の意味があるのかもわからないガニ股で、顎を外したかのような大口を開けていた。クラインには、その二人が楽しそうに狩りに出掛けているようにしか見えなかった。

ルナは嬉しそうに、キリトは愛嬌笑いを。少なくともクラインにはそう見えた。二人が角を曲がるまで、まったくビクとも動かなかったクラインが、姿が見えなくなったと同時に叫ぶ。

 

「キリトのやろおぉぉぉ!!」

 

クラインは右足で大きく足踏みをし、鬱憤を地面に晴らしていた。

 

 

 

 

狩りに行くのは、迷宮区の比較的浅い所にいる、クリスタートルと言う亀を模した鋼系のモンスターだ。《クリスタル》と、《タートル》をかけているのだろう、通称亀は、予告通り転移結晶を作成するための、転移石と言うアイテムを落とす。このアイテムと、その他関連するアイテムを、《錬金術》と呼ばれる職業のプレイヤーに依頼すれば、転移結晶は完成する。

 

 

他の素材は店で買取りが捗っているため、自ら取りに行く必要がないが、迷宮区内のメインモンスターとも言える亀は、今だ狩りを出来るプレイヤーが少ない。そのため、3日に1度、自分で取りに行かなければならない訳だ。

 

 

さて、狩り馴れたアーニーを眺める、キリトの反応はどうだろうか。

それは、口をポカンと開け、ただ突っ立っているだけの情けない様子が伺えた。それを見るに、アーニーは釘を刺した。

 

「君が買うって言い出したんだから、ちゃんと集めてよ。目標個数、一人50個ね。」

 

「あ、ああ。」

 

気の抜けた返事に、キリトは狩りを始めた。自前のソードスキルを振るい、亀の弱点の頭を集中的に狙いを定め、攻撃する。亀は一定の時間の間に、一定の数値以上の攻撃を食らうと、甲羅の中に避難する特性がある。その上亀自体の湧き率はお世辞にもいいとは言い切れず、おまけに移動速度も遅い。複数湧いて出て来てしまっても、数秒走ればそれだけで体制が立て直せてしまうのだ。

 

 

それが、レベル1でも迷宮区内で狩りが出来る理由。キリトは亀の無敵時間の全てを、アーニーの狩り風景を見る事に費やした。

 

 

彼女はダガーの最弱スキルと言われる、《クオータースイング》を何度も振るっていた。

 

 

クオータースイングは文字通り、攻撃力を4つに分けて素早い攻撃をするスキルだ。しかし、攻撃力を4つに分けると言っても、ソードスキルの補助火力を4つに分けたダメージではない。通常攻撃のダメージを4分の1にしたダメージ。この事から、このスキルがいかに使えないか、分かってもらえたと思う。

 

 

そんな最弱スキルのクオータースイングは、低リスク低コスト高スピードの3点セットが揃っているのだが、この高スピードと言う文字に注目してみよう。高スピードと言われるのは、一回の通常攻撃にかかる時間と、このソードスキルにかかる時間が全く同じと言う事。さらに振り終わりのモーションと、振り始めのモーションが全く同じで、様々なゲームに存在する、いわば《キャンセル》のような動きになり、通常より素早く通常攻撃と同党のダメージを与える事が出来る訳だ。

 

 

実際、このスキルはプロプレイヤーでもミリ殺しに使っている所をキリトは何度か見たことがある。ダガーで言う通常攻撃は、もはやクオータースイングだ。

 

 

そして本題、速さと丈夫さと正確さが売りのアンティーク・ブレイドと、強化され尽くした+の数と、防具や基礎ステータスによる敏捷力を合わせると、どうなるか。それはもはや腕の挙動が見えた物ではない。鋭い閃光がモンスターを斬りつけ、見えぬ腕が瞬間的に相手のHPバーを削り取る。このコンボは、SAOに存在するある使用によって価値が底上げされていた。

 

 

なんと、モンスターは一度攻撃を食らうと、ほんの一瞬だが硬直する時間があり、その硬直時間を1回の攻撃速度が上回った瞬間、相手はヒットした瞬間に死が確定する。ソードスキル本体の突進範囲や速度も地味に優秀なので、ソードスキルさえ発動し続ければ次々と別のモンスターへと移り、倒し、また次へと。

 

 

ただ、問題が一つ、低コストといえど、連続でソードスキルを使うのはパラメーター上の体力に限界がある。いつかはかならず止まってしまう、さらに止まった時のリスクは馬鹿には出来ない。

 

 

スタミナ切れ、それはつまり、死。

そのリスクを背負い、限られたパラメーターの中で立ち回り、当然ながらモンスターと戦わなければならない。モンスターの攻撃時の硬直と言えど、モンスターによっては硬直が短かったり一定ダメージ以下では硬直時間すら無かったり、結果的にはハイリスクハイリターンの武装となってしまう訳だ。

 

 

そんな装備で、いつ何があるかもわからない迷宮区で、手慣れた狩りをしている彼女がキリトにとっては信じられなかった。

 

 

こいつは、助かる気がないのか、身を滅ぼしてでも救いたい物があるのだろうか。そんな混乱に思考は誘惑され、頭が痛くなってくる。キリトは考えるのを辞め、頭を出しかけた亀を突き刺した。




どうも、むらぽんです!!

今回、ようやくキー坊が出て来ましたよ!キー坊待ちの人は多かったんじゃないんですかぁ?まあ、原作重視ですので今後キー坊との関わりは少ないとは思いますが。でも次回にもキー坊は出て来ますよ!!

さてさて、前回触れていなかった+表記の件について。
本来SAOでは、速さ+5の表記はS5(間違ってるかもしれません)と表記するそうですね。ですが、+表記でも間違ってはいないようなのでこのままで行かせて貰います。

それと、この第6話は未完成です。次回の投稿の時に追記を入れておきますね。狩り(と言うなのアンティーク・ブレイドの性能実況)風景を。

それでは、次回をおたのしみに!金曜日まで、またね!!



7月5日に、追記しました。原作重視といいつつも早速バランスブレイカーしてますねwこれは荒れる荒れる。
ですがこれだけはひとつ…やりたかったんです!!ごめんなさい!!ですが速攻消えそうなネタではありますけどね。実際ルナの武器は片手剣と盾にしようと思っていますし。
とまあ、色々と語りたい事はありますが続きは活動報告にて。それではアディオス
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