ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ 作:難聴の村上さん
夕暮れ頃、2人のプレイヤーは始まりの街の街路を通っていた。アーニーは慣れた足取りで細い道を縫うように進み、時々振り返り数歩遅れているキリトを手招いた。
「こっちこっち!もうすぐだから!!」
キリトは、自分の荷物が重いと感じている。アイテムウィンドウ内のアイテムは重量感覚は発生しないが、オブジェクト化された物はしっかりと重く感じる。…はずなのだが、キリトはアイテムウィンドウ内のみっちりと入れられた、アーニーの荷物が重く感じられていた。普通に考えればただの錯覚だが、荷物持ち、と言う仕事を課せられた彼には当然の事なのかもしれない。
なぜこんな事になったのだろう…発端はキリト自身なので何も言い返せないが、もしただの荷物持ちをやらされているだけなら、キリトは間違いなくオブジェクト化したアイテムをばら撒き逃げるように走り去っている事だろう。よぼよぼと一歩ずつ歩き、アーニーの指差す店の前へと着いた。
それを合図に、アーニーはトレード画面を開き、アーニーは転移結晶を、キリトは代金とアイテム多数をトレードに出し、交換した。ようやく終わった、キリトは深い息をついて、街路の石タイルに腰を下ろした。
「まったく、この程度でバテてどうする?男の子としての威厳がない。」
「そんな物はいいから休ませてくれ、朝から狩りっぱなしで、そっちこそよく体力が持つよ。」
不思議そうに語るキリトを横に、アーニーは更なる仕打ちをかけた。
「まあ、キリト君案外かわいい顔してるし、お子様には辛かったかな?」
クスクスと笑いながら言う台詞に、不貞腐れた。むすっとした顔はそう簡単には戻りそうもなく、そうかい、とだけ言い残し上の空で話しを聞いた。さすがにやりすぎたと反省するアーニー、何を思い立ったのかと思えば、キリトの手を引き再び店を指差す。
「それなら、ここで休ませてもらおうよ!街路で座ってるなんてみっともないし。頼めばお茶くらいだしてくれると思うからさ、ね?」
お茶、その言葉を聞くと、キリトはすぐさま立ち上がり、言った。
「よし、この店で休ませて貰おう。」
あまりの分かり易さに再び笑い、片手で店の扉を押し、中へと入って行った。
彼女が指差していた店…キリトにはこれが、果たして店と捉えられるのだろうか。フラスコや試験管が幾つも並び、大釜の横には比較的グロテスクな、モンスターのドロップアイテムをぶつ切りにされた物が転がっている。
本棚にしまわれている本も、しっかりと薬品が染み付き、本当にゲームか、と疑うような程正確に再現されていた。ちなみに本も見る限りは、1冊1冊がアイテムには違いなく、内装ではないであろう本は、今にでも手に取りページをめくれてしまいそうだ。
そんな客を招く気も無いような店の奥にアーニーは進んで行き、大きな声で叫んだ。
「リッチー、転移石とかとって来たよー。」
奥からガサゴソとボロ切れを羽織ったような男が出てくる。服装とは裏腹に、まだ若々しい、キリトと同い年付近であろう華奢な男は言った。
「うし、じゃあ早速トレード。話はそれからだ。」
「はいはい、分かってますって。」
目の前の2人は手元を動かし、トレードをやっているかのように見せた。実際、キリトには見えないだけでトレードは行われている。そして2人の手が止まると同時に、男はまいどと言い大釜の元へと歩いて行った。アーニーはそれが気に食わなかったのか、やや張り詰めた声で言う。
「せっかく新しいお客さん連れてきたんだから、挨拶くらいしたらどうなの?」
彼女の声に、ボロ切れの男は言った。
「ああ、ただの荷物持ちさんとは違うのか。また別の男かって言ったら、お前怒るからな。」
「当たり前でしょう?そんな変な言い方するんだから。」
ボロ切れの男は羽織っているボロ切れを投げ捨て、ようやく本来の姿を表す。その男は、初期装備を着こなす茶髪の、女の子の言うショートヘアーな感じで、まさに文系と言う顔をしている。
「俺はリッチ、薬剤師と錬金術師をやってる。よろしく。」
「よ、よろしく…」
差し伸べられた手に恐る恐る握手をし、軽く頭を下げた。予想では手を触れた瞬間ベトベトの液体が手の平に付くのを想定していたが、それはさすがに無かったようだ。
「それでこっちはキリト君、メッセージでも送ったけど転移結晶を全部買うって言い出した張本人。」
アーニーの紹介に、リッチは少し反応する。
「なんでお前が言ってるんだよ、普通本人が言うべきだろ。」
「だってキリト君、リッチに相当びびってるし。」
そう言われた瞬間、背中がゾッとした。背中を大きな舌にまるごと舐められるような、そんな気分がした。しかし、リッチは思いのほかフレンドリーな話し方で笑いながら語る。
「なに?俺がこわいだって?まあそりゃそうか、こんな店で一人で居るんだもんな。そりゃ誤解くらいされるか、はははは。」
キリトはアーニーの無茶苦茶さも言おうとしたが、完全にタイミングを失い、何も言えず仕舞いだった。すると2人の会話は再び始まる。
「そうそう、せっかくだしお茶でもご馳走になろうと思って来たんだけど、なにか用意出来る?」
図々しいその言葉は、ため息と同時にリッチを動かせた。
「はいはい、分かりましたよ。」
「出来れば付け合わせも。」
「まったく…本当に図々しいな。うちは喫茶店じゃないんだぜ?」
キリトはリッチが手早くアイテムウィンドウから取り出されたお茶を遠慮がちに啜り、2人を眺めた。とても仲のいい、自分にもこれくらい仲のいいプレイヤーが1人や2人はいてもいいのではないかと思いつつ、再びティーカップを傾ける。
そんなリッチは、会話にまったく参加し切れないキリトに気を使うように、声をかけた。
「なあ、あんたもこいつの図々しさには驚いただろ?」
「そうだね、俺も随分と振り回されたよ。」
それを聞くに、気に食わぬ顔をしたアーニーが割り込んだ。
「元はと言えばキリト君が原因でこんな事になったんだけどー?」
「いつまでもその言葉に頭を下げてられないよ、こっちだって条件はこなしたんだし。」
「それきた、やっぱりお前のわがままじゃないか。」
アーニーは頬を膨らませ、目線を逸らした。キリトにはそれが、照れ隠しと言う事は理解出来なかったのだが。
「あ、そうだ!今日お客さんから注文入ってたんだった、在庫確認しに行かなきゃ。」
そそくさと帰ろうとするアーニーにつられ、キリトも立ち上がる。いつ座ったのかは覚えていないが、吸い寄せられるように座った椅子には少なからず感謝が込み上げる。ありがとう、椅子。さて、馬鹿げた事もしてないて帰るとしよう。
だが、キリトの帰りをリッチが拒んだ。
「まあまあ、キリトはもうちょっとゆっくりして行けよ。」
一瞬顔に出かけた。危ない所だった、もし嫌そうな顔をすれば何をされるかわからない。圏内でのダメージは一切入らないが、この異常なまでのリアリティに再現された実験室らしき物を見てしまえば、嫌でもこうなる。
しかしキリトは、勇気を振り絞り、自然な言葉でリッチの腕を振り払う。
「いや、俺もこれから用事があるんだ。今日の目標レベルにまだ達していないから。」
リッチは素早く手を放す、まずい、といったような顔をしているが、キリト自身は何も抵抗はない。
しかし他のプレイヤーにとって、レベリングや強化といった攻略に関連する言葉はブロックワードになりかね無い。
それを焦って、リッチは修正しようとしていたのだ。
「そう言うことなら、うん。すまなかったな、引き止めて。」
「いいよ、お茶もご馳走になったし。クッキー?もせっかく用意してくれたのに手付けられなくてごめん。」
いやそれは俺が食べるから大丈夫、その言葉ばかりは即答される。
「それじゃあ、俺も行くよ。」
「っとその前に、キリト!!」
振り返ると、彼からした投げで何かを渡された。美しい放物線を描いたそれを、キリトは優しくキャッチする。
「回復結晶だ、フロア内のパーティーメンバー全員のHPを全回復してくてる。困った時に使いな。」
オブジェクトは、今だ見たこともないアイテムだ、桃色に染められた転移結晶とでも言えば伝わりやすいのか、多少の装飾が異なるがさほど変わりはない。
「サンキュー、ありがたく使わせてもらうよ!」
パーティーを組むなんて、ボス攻略の時くらいしか無いだろうな、と内心笑い、キリトは駆け足になる。店から出ても、リッチはかなりの間手を振り続けてくれた。それを背に、キリトの歩幅は次第に大きくなり、先ほど座り込んでいた石タイルを強く蹴り飛ばした。
どうもー、むらぽんでーす。いやぁ…作りが雑な上投稿日数が1日も遅れてしまって申し訳ない、結構テスト忙しかったんだよ…?
さて、自分で作品をdisってる所はありましたが、いかがだったでしょう?今回は新キャラとしてリッチがでてきました。一応、Lūnaを共同で経営しているって設定のアルバイト君です。リアルでも知り合いって設定にしますし、そこの所全然記載出来ませんでしたね。やっぱり、自分の頭の中でストーリーを進めすぎているというのは否めません。
そうそう、むらぽんはようやくSAOアニメ全話見終わりました。以前全部見た、と言っていたかもしれませんが、あれはアインクラッドを全部、とのことでした。紛らわしい事申し訳ありません。
さて、少しはなしすぎたのでよろしければ続きは活動報告にて。それではみなさん、アディオス