ソードアート・オンライン ブレイクアンドリベッツ   作:難聴の村上さん

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看板娘とにらめっこ

 

休日明け、ルナは早速店に立ち、商品のアイテムウィンドウを何度も見返していた。在庫による値段の変更と、リッチに売りつけるアイテムの数を考えつつ、自然と顎に右手がまわった。何度も、うーん、うーんと唸り、店主らしい一面を見せ付けている。

 

 

そんな様子をかれこれ30分以上拝まされているリッチはとうとう痺れを切らし、ルナに対し自分の存在を知らしめた。

 

「おいおい…呼び出しておいて放置なんざ、いい度胸してるぜ。ほんと図々しい女だなお前は。」

 

「図々しい女じゃなくて、甘えられる人にはとことん甘える女の子って言ってください、あと仕事中なのでプライベートの事は無しで。」

 

冷たい応えが、リッチの耳を襲う。仕事であろうがプライベートであろうが、その人の性格は変わらないはずなのだがな、しかしそれに食い下がらず、呆れつつも本題を求めた。

 

「それで、なんで呼んだ訳さ。何も用がないなら帰るぜ?」

 

靴先をトントンと鳴らし、いささか急いでいるように見せかけた。しかし、ルナは反応する事もなく、マイペースに応える。

 

「理由は2つです、一つはディアベルとの打ち合わせで、今後の金回りを決めて行くんです。後もう一つは…もはやこちらが本題ですね、私のフレンドが、アーニーの働きっぷりを見にきたいと言いまして。分かっての通り私は商売名がありますので、私だけではしらを切らしアーニーはいないと言い切れないのです。もちろんフレンドなので位置も一目でわかりますし、変わりの人に演じて貰わなければなりません。」

 

「それで俺がアーニーに装って接するって訳か…せこい事してないで普通に名前を明かせばいいじゃないか。」

 

リッチの言葉の後、しばしの空白。

 

「それではダメなんです、いろいろと面倒ですし、何より…」

 

「君目当てのストーカーか…」

 

リッチが放った言葉に対し、ルナは、そうですと大きな声で言った。よほどストーカーが嫌なのか、それとも普通の女性としての意見なのか、リッチにはわからなかった。

 

その後ルナはトレードを開き、一部装備アイテムを送った、リッチは失敗してしまった薬(アイテムには汚染薬と表記)を幾つも突っ込み、トレードした。ルナの嫌そうな顔は放っておき、すぐさまその装備へと着替える事にする。

 

「奥の部屋借りるぜ。」

 

本来なら、その場で着替えてもいいのだが、図々しくともルナは女アバター。すぐさまセクシャルハラスメント扱いされ、金輪際関わる事を制限される事だろう。薬剤師といえど今だ客はルナのみで、縁を切られればリッチは破産してしまう。そのため、心遣いをしなければならないのは少し前から存在した交流時のルールがあるからで、営業の支障になりかねないリスクは負わないことにしよう。

 

 

ただ、今この場でこの女を落としてしまえば…などという願望混じりの思考は、すぐさま昔の記憶と共に正される。確かにリッチは小学生時代、たくさんの女子から人気を集めていた。

 

 

しかしそれは、少しばかり+点の振れる顔と、運動が出来たからに違いない、さらに恋愛感情など傍にもなさそうな小学生時代などの経験は、もはやただの自慢話レベルでしかなかった。

 

 

リッチはようやく身の丈を理解し、無茶願望の妄想を終了させた。まあまず無理なんだよな、だってこいつには________

 

 

カラン、と、店の扉が開く。それと同時にルナは、嬉しそうに入って来た人物を見つめていた。

 

「やあ、相談があるって言うから来たけど、何があるんだ?」

 

ルナの見つめる人物…ディアベルは、凛々しい目付きをリッチに向け、軽く首を頷いた。

 

 

そう、ルナには、ディアベルがいるのだから。

 

 

リッチの予測では、ルナの一方的な片思いだと思い込んでいるが、実際何度か、夜中にLūnaの扉からディアベルが出て行く姿を見た事もある。

これ以上の追求は野暮だと思い、それ以上は探らないリッチであるが、どうも2人の仲が気になってしまう。

 

 

だが一度決めた事は守るリッチは、気にする事をやめ、本題の話に集中しようとした。今回のお題は、プレイヤーに販売するアイテムの値段の相談だ。

 

「早速本題で申し訳ありませんが。私は思うんですよ。もう少し物価を下げて、一般プレイヤーの方でも手が出せるような、そんな市場にしたいと。」

 

「けどそれは、下手に流出させてしまい、紛失につながりかねない。貴重なアイテムは価値の分かる人流れるような相場なら、より効率的に攻略が捗るはずだ。」

 

「ですが、かと言って相場ばかりをあげる事も出来ません、もはやどの手を使っても、一般プレイヤーのサイフから、我々のいる市場に金を流すのが困難な状況に陥っています、ですから、全ての物価を下げ、狩りでの結果的収入を上げるというのも良いのではないでしょうか。」

 

薬屋のリッチとは無縁の会話が、二人の間に並べられていた。その時間に着替えてしまおうと、メインメニューを動かしつつもとなりの部屋へと移動する。しかし、リッチは先ほどの話の続きがどうも気になる、会えば毎日のようにこのお題を口論している彼らが、なぜ好意を抱けるのか、考えるかでの頭脳がなかった。

 

 

仕方なく、着替え終わったリッチは椅子に座り、薬の回復量や回復速度の計算をすることにした。いつもなら大騒ぎする程の薬の合成方法も発見するが、今は、おっ、と言うだけたっだ。

 

 

口論は続き、リッチの暇な時間が増えてきた。次第に薬の回復速度計算も終了し始め、彼は確信する。暇だ。

アーニーから借りた防具は見事男性用のテクスチャに変更されているが、鏡を見るにあまり変化は見られない。元々図太い体格をしたアバターではない彼は、さらに男としては幼さを彷彿とさせる童顔があり、少し装備に細工をすれば女アバターだと勘違いされるレベルだ。

 

 

しかし先日会ったキリトの事を思い出して見ると、装備さえ細工しなければ男アバターとして見てもらえるだろうと微かに救われていた。

もちろん、アーニーがリッチに頼んだ理由は、アーニーと似たような骨格だと言う事は、彼自身も理解しているようだった。

 

 

時期に口論が聞こえなくなり、店の扉が開く音と同時にルナが裏に戻ってくる。

今日はやけに短かったなと思いつつ、テーブルに伏せていた顔をあげてルナを見る。

そしてルナは言っていた。

 

「あーあ、ようやく指定アイテムのみ相場を下げるという事で話は落ち着いたって言うのに、友達と狩りするからーって言ってすぐ帰っちゃったよ。」

 

「ディアベルも忙しいんだろ?それにしてもお前は毎回のように、お互い顔見知りでしかないのに顔を合わせなきゃいけない俺とディアベルの関係くらいどうにかしろよ。」

 

「えー…だってリッチだとディアベルの事取りそうだし。」

 

光の速さで言った。

 

「俺は男アバターだぞ!?」

 

それを聞くなりルナは、あーそっか、と言い、椅子に座った。

同時に扉が開く音が聞こえる、カラコロとなる音はいつもより大きい、勢い良く開けた証拠。

ルナにとっては聞き慣れている…クラインのご来店だ。

 

「よう!お二人さん。なんだかんだ言って二人ならんでいるのを見るのは初めてt…あれ?」

 

独り言のように、景気のいい声が聞こえてくる。間違いなくクラインだ、ルナとリッチはすぐさま表の店へと出た。

 

「ど、どうもー。」

 

「そ、そういやクラインに仕事姿見せるのって始めてだったな。」

 

ぎこちない口調でも、彼は顔色一つ変えない。本当にクラインの想像するアーニーとの区別を分かっていないのだろう。

 

しかし今日のクラインは少しばかり状況が違った。普段なら狩りに疲れたから休憩などと最もらしい理由をたて、さらに疲れるような話を永遠と続けるはずなのだが、今日ばかりはそう言う訳にも行かないようだ。

 

 

現に、普段クラインが勝手に腰掛けている柱の出っ張りには近付いていない、これから狩りにでも行くかのように、現段階での最上級の回復薬を見ている。回復量と回復速度の詳細も確認し、まるでボスにでも挑むような顔をしていた。ルナは引っかかり、聞いてみる。

 

「ボス部屋、もう見つかったんですか?まだ迷宮区にすら潜っているプレイヤーは少ないと聞いていますが。」

 

「ん、おお、ボス部屋を見つけたって訳じゃないんだけどな。でもちょっと似てるか?ちょうど仲間と狩りに行った時クエスト見つけたんだよ、それも狩場の真っ只中のな。それでやる事もないってんでいざクエストを受けてみると、なかなか強力な中ボス討伐クエストだったんだよ。」

 

なるほど、首を軽く頷く。確かにベータ時代にも、多くの中ボス討伐クエストは存在していた。長期期限の製品版と言う事もあってか、クエストの数は減少、または上層のクエストに変更された物が多かった。どれも中クラスの防具やアクセサリーを落とし、特に装備欄に被りにくいアクセサリーは高く売れた。プレイヤー1回限りのクエストばかりであったが、性能次第ではぜひ商品にしたい。そんなルナの願望が、脳内に構成され、自然と言葉に変換された。

 

「そのクエストってまだやってませんよね!?」

 

突然の大声に、クラインは怯んだ。だがすぐに思考を切り替え、以前失敗していたルナと狩りに行く手段が完成したため、即答に近い早さで答えた。

 

「おう!ルナも行くか?うちのパーティーは華がねえから、あいつらも喜ぶと思うぜ?」

 

「いきますいきます絶対いきます!じゃあどのアイテムが必要ですか?どれくらい持って行けばいいてすか!?パーティーメンバー全員分の転移結晶はもちろん回復結晶もカンスト数値まで持っていきますよー!?」

 

焦りふためくルナは商品カゴを次々と漁り、自分のアイテムウィンドウ欄に収め始めていった。どう見ても気が早いし、本当なら共に大はしゃぎしたいクラインはあえて、冷静に対処しようとする。

 

「おいおいテンパりすぎじゃないか!?そもそも行くのは明日だ!だからそんなに急がなくても、今日中にゆっくり準備してくれよな?」

 

「そうですかぁ…わかりました。」

 

しゅんとしたまま商品をカゴに戻し、改めてカウンターへと戻って行った。その時の顔を、クラインが直視していたのはリッチが見逃さない。

 

 

しかしその視線に気付いたのか、クラインはリッチにも声をかけて来た。

 

「アーニーも行くか?パーティーは2分割になるだろうけど俺は全然構わないぜ。」

 

「いいや、俺はいい。店もあるから。」

 

店と言うよりも、わざわざパーティーを2分割にするのが申し訳ないと言うのが一番の理由だが、おまけにパーティーを分けたせいで死人が出てしまったなどと言う最悪の想定を想像してしまったためでもあった。

しかし、せっかくの誘いを断る申し訳なさも少しばかりはあった。クラインが目をつけている(?)ルナと狩りに行けると言うのに、リッチのようなとりまきを誘うのは彼の本心を見たような気がする。

やはり、悪い奴ではないのだから。

 

 

もちろんクラインは残念がり、純粋に狩りを楽しみたかったようにも見えた。だがこれ以上深読みしようとすると、クラインが帰るまででは収まり切らないと思ったリッチは、考えるのをやめた。

 

「ねえねえクラインさん、せっかくだしお茶でも飲まない?」

 

「いいのか!?へへっ、じゃあ頂くぜ。」

 

「ちょっと待っててね!!」

 

ルナは裏の自宅へと戻り、キッチンでカチャカチャと小洒落たティーセットを持ち出して来た。リッチも始めてみる物で、あのディアベルにすら以前からあるティーカップを渡していた程。純粋に最近買ったばかりで、ディアベルには今だこのティーカップでお茶を渡していないだけかもしれないが、クラインに新品のティーカップを渡すのかと、リッチは少しばかり感心した。

 

さらに、普段との違いにも目を向けた。いつも以上の気の使い用に、リッチは小声で呟く。

 

「態度変わりすぎだろこの女…」

 

深読みするリッチに比べ、クラインは陽気にお茶を待つ。普段より明らか機嫌が良く、鼻歌まで混じっていた。

しかしその後、ルナが熱々のお茶を仕込むといういたずらをして来たのは、言うまでもない。




どうも、むらぽんです!!
さて次回は狩り&中ボス戦です。戦闘も書くのは苦手なので練習しなきゃですね…
おそらく、お粗末な仕上がりになってしまうかもしれませんが暖かい目で見てやってください。
ではでは、次回の投稿は水曜日です。今回もまとまりのない話でしたが、お粗末さまでした。
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