遊んでたゲームキャラでオバロ似の世界へお出掛け中   作:アカヤシ

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第4話

「ひゃあああああああああああ!!!」

 

箍が外れたような甲高い悲鳴が辺りに響く。円陣を形成していた仲間の一人が圧倒的恐怖に耐えかね、声を上げながら背中を見せて逃げ出す。

この極限状態で微妙なバランスを維持している線が一本でも切れれば、限界まで絞られた緊張感は一気に崩壊する。だが円陣を構成する仲間の中に、追従して逃走しようとする者は誰一人としていなかった。

 

その理由は瞬く間に証明される。

 

逃げ出した仲間が許された距離はたったの三歩。

 

四歩目を駆けようとしたとき、黄金の輝きが両足を容易く切断。さらに飛来した無数の光剣により身体を貫かれ絶命した。

 

「弱い・・・こんなに簡単に死んでしまうとは」

 

謎の老人が発する落胆の声。

 

剣を構えながらも、誰一人として斬りかかる者はいない。

 

攻撃は無駄、攻撃しようとした者は武器を持っている腕を飛来した光剣により斬り飛ばされた。

逃走も無駄、例え装備を脱ぎ捨て全力で駆けようと飛来した光剣により両足を斬り飛ばされた。

命乞いも無駄、武器を捨て『助けてくれ』と声を発した仲間の首が飛来した光剣により斬り飛ばされた。

 

面頬付きの下に隠れて見えないが、皆、自らの運命を悟っているのだろう。辺りに響くすすり泣く声。成人した男達が子供のように泣いているのだ。強者として弱者の命を奪ってきたからこそ、それに慣れ、自らもそうなる覚悟が無かった。

 

「神よ、お助けください・・・」

 

「神よ・・・」

 

幾人かから嗚咽に混じって呟くように聞こえてきた。

 

「俺は、こんなところで死んでいい人間じゃない!」

 

そんな己の運命を悟った者達が哀願する中、音程の狂った賛美歌のような耳障りな声が響く。

 

国ではある程度の資産家で、この部隊にも箔を付ける為に参加した男、隊長のベリュースである。

 

「お前ら、時間を稼げ!俺の盾になるんだよおおおおおおおおお!!!」

 

誰も動くわけがない。このベリュースという男は人望が欠片もない男だ。今回の作戦の最中に、下種な欲望で村娘に襲いかかり、父親に殺されそうになり部下に助けを求める。引き離してみれば、死なないよう抵抗できない程度に四肢を傷付け、父親の前で娘を陵辱した後に娘だけを殺す。そんな愚図のために、命を掛けるはずがない。

 

唯一、老人が大声に反応し、ゆっくりとベリュースに向き直る。

 

「ひいいいいい!そ、そうだ!か、かね、かねだ、かねをやる!200金貨!いや、500金貨だ!!!」

 

提示したのはかなりの額だが、絶壁から飛び降りた後に金をやると言っているのと同じで、誰一人として動く者がいない。

 

「【光武】《ホーリージャッジメント》』

 

老人の右手の光剣に光の燐光が集まり、剣の輝きが増していく。目も眩むような閃光を発する剣を、今度は剣を地面に突き立てる。

 

瞬間、ベリュースの足下の地面に魔法陣が展開すると同時に、そこから巨大な光の剣が天に向かって聳立する。

 

「かねえっ!」

 

魔法陣から突き出した光の剣は、全身鎧を着ているベリュースを腹からあっさり貫き、その切っ先は背中を突き破って6mも伸びた。そして空間にまるで金属をぶつけた音叉のような響きが鳴り、震え出した光の剣がまるで硝子が砕けるようにその形を崩す。

 

上半身と下半身が分かれて大地にベリュースの死体が転がった。酸っぱいような臭いが周囲に広がり、ピンク色の内臓がどろりと断面からこぼれ落ちた。

 

「落ち着け!!撤退だ!!合図を出して馬と弓騎兵を呼べ!!残りの人間は笛を吹くまでの時間をなんとか稼げ!!俺は死にたくない!!相手の魔力切れは期待できない!!行動開始!!!」

 

全員が一斉に、弾かれたように動き出した。先ほどまでの硬直が嘘のような息の合った動き。流れ落ちる滝のような勢いがあった。命令に機械的に従うことで、思考が停止し奇跡の技を生んだ。これほどの一糸乱れぬ動きは二度とできないだろう。

 

騎士達は互いにしなくてはならないことを確認しあう。連絡を取り合うために笛を持つ騎士は一人。その人間を守らなければならない。数歩下がった騎士が剣を放り捨て、背負い袋から笛を取り出し始める。

 

「おおおおおおおお!!」

 

勝算は無くとも、それをむざむざ受け入れるつもりはない。副隊長ロンデスは声を上げ『死』めがけ、全力で剣を振るう。

 

ロンデスの人生最高の一閃だった。

 

しかし、ロンデスの剣はかすりもせず、何もない空間を薙いでいた。

 

「・・・デズン・・・モーレット・・・」

 

後ろを振り返ると、自分以外の騎士達は地面に倒れており、笛も砕かれて残骸が地面に散らばっていた。

 

その光景が目に焼き付いたと同じくして、ロンデスの視界がくるくると回る。

 

眼下に頭を失い、崩れ落ちる自らの体がある。

 

角笛の音が鳴り響くことはなかった。

 

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