遊んでたゲームキャラでオバロ似の世界へお出掛け中 作:アカヤシ
ギタンの周囲には騎士達の死体が転がる。血の臭いが濃厚に立ち込める中、神聖魔術を行使する。
「浄化系神聖魔術【陽光】」
ギタンの頭上に神々しく光輝く輪っかが出現する。すると周囲に立ち込める血の臭いが消え去り、まるで爽やかな高原の様に清潔な空気へと変化する。
【陽光】の効果は、周囲を照らし松明の代わりにもなり、毒沼や腐海等の地形や空間から受けるダメージを無力化、毒や腐食や疲労等の状態異常を癒す。
「浄化系神聖魔術【聖光】」
【聖光】の効果は、死亡したプレーヤーの復活を阻止する。蘇生アイテムや魔法では蘇らせる事ができなくなる。悪魔や不死者や霊体のモンスターに特効。
【聖光】を受けた騎士達の死体は光となって瞬時に消えてなくなった。肉体だけでなく、彼等の着ていた全身鎧や持っていた剣までも一瞬に消えていった。
「具現化系神聖魔術【光鷹翼】」
ギタンの背中から、圧倒的な存在感を放つ大きな翼が美しく広がり、その翼が羽ばたくと同時に舞う羽根は村人触れた瞬間に傷を一瞬で癒した。
【光鷹翼】の効果は、飛行能力獲得や治癒効果上昇等様々。
ギタンは村人の方へ歩き出す。
ギタンはある程度の距離を置いて立ち止まり、親しみを込めた優しい口調で話しかける。
「さて、あなた達はもう安全です。安心してください」
村人達の反応→全員が指を組んで祈りを捧げるような格好で跪く。
「あ、あなた、あなた様は・・・」
村の代表者らしき人物が口を開く。その最中も祈る姿勢を崩さず、頭を下げている。
「この村の者が襲われていたのを助けましてね。その娘に村を助けてと乞われたものでね」
「おお・・・」
ざわめきが上がり、安堵の色が浮かぶ。
「ここに来る前、姉妹を見つけて助けました。その二人を連れてくるので少々時間をいただきますよ」
村人の反応を待たずにギタンは神聖魔術を全て解除してゆっくりと歩き出した。
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村長の家は広場からすぐのところにあり、入ると土間のような場所が広がっていた。作業場としても十分な広さを持ち、隣接して炊事場が作られている。そんな土間の真ん中にみすぼらしいテーブルと数脚の椅子が置かれていた。
ギタンは室内を観察する。炊事場や室内に置かれている農具などだ。何処を見渡しても機械製品などの姿は見受けられない。
『科学技術はさほどこの世界では発展していないのか?それとも魔法のある世界なら、ラノベとかである魔石を利用した魔道具とかなのか?』
ギタンは粗末な作りのテーブルの上に置いた腕を軽く動かす。腕を軽く動かしただけなのに、作りの悪いテーブルはガタガタと揺れ、ギタンの体重の動きに鋭敏に反応し、ミシリミシリと嫌な音を立てる。貧しいという言葉が相応しい。
村長の家に招かれ、俺はこの世界の情報と村を助けた報酬金銅貨3000枚を手に入れた。
まず周辺の国家である、リ・エスティーゼ王国、バハルス帝国、スレイン法国。そんな国は俺のやっていたゲームでは聞いたことがない。まるで知らない世界に来てしまったようだ。
つまりゲーム知識は役立たずワロスwww。
この世界には、ドワーフやエルフなどの人間種、ゴブリンやオークやオーガに代表される亜人種がおり、亜人達が国家を作っている場合もあるらしい。
そして、ラノベ定番の報酬次第でモンスターを退治する冒険者も存在している。
俺のやっていたゲームにもゴブリン等は出てくるが、話を聞くに名前が同じだけで姿やステータスは別物だろうと予測がつく。
またしてもゲーム知識は役立ちそうにないwww。
村長との話を終えた後は、葬儀が行われた。
村外れの墓地で葬儀が始まる。墓地はみすぼらしい柵に囲まれた場所で、墓石となる丸石に名を刻んだものがポツポツ点在している。その中で鎮魂の言葉を述べている。ゲームでは聞いたことのない神の名を告げ、その魂に安息が訪れるようにと。
集まった村民の中に助けた姉妹、名は姉のエンリと妹のネム。二人の姿があった。両親を助けて欲しいと頼まれていたのだが・・・。彼女達の両親も今回埋葬されるそうだ。
両親の墓穴に土をかけるところで、二人の少女が泣き崩れた。
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葬儀も見届け本格的にやることがなくなったギタンは村長に別れを告げて村を出た。
目指すは最寄りの城塞都市、『エ・ランテル』。
人口などの詳しいことは村長も知らないようだったが、周辺では最も大きな都市だという話だ。村を出る頃には夕日がはっきりと空に浮かんでいた。
綺麗な夕日をぼんやり眺めながら歩いていると、突然馬に乗った戦士風の者たち20人に囲まれた。
村を襲った連中の仲間と思ったが違うようで。村を襲撃した騎士達は帝国の紋章を入れて完全に統一された重装備であった。それに対してギタンを包囲する騎兵たちは、確かに鎧を着てはいるが、各自使いやすいように何らかのアレンジが施されている。
ギタンの第一印象は、武装のまとまりがない傭兵集団である。
同じ造りの剣は下げているものの、それ以外に弓、片手槍、メイスといった様々な予備武器まで準備している。
その集団から馬に乗ったまま、一人の男が進み出た。
男の視線はギタンの頭頂から足元にゆっくり射抜くような鋭い視線で観察する。
暴力を生業とする空気に満ちた、そんな男の一瞥を受けても平然とギタンは立つ。
ギタンの心中では、『まだこの世界に来て1日すら経ってない。つまり序盤に出てくる雑魚クラスでしょ?』である。
その程度の敵だと思っているギタンの心に波紋は生じない。
「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長『ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒しまっている帝国の騎士達を討伐するために王の御命令を受け、村々を回っているものである」
「王国戦士長・・・」
やべえ!王国最強クラスだったよ!
村長の話によると、かつて御前試合で優勝を果たした人物で、平民でありながら王直属の精鋭兵士を指揮する者で、王国最強の戦士と呼ばれている男。
確かに騎兵は皆、リ・エスティーゼ王国の紋章を刻んでいる。
「貴殿は何者だ?ここで何をしている?」
ギタンの格好は明らかに村民ではない。加えて黒ずくめの格好・・・どう考えても怪しい。疑われる格好をしているのが悪いかギタンも諦め、職質気分で答えていった。
名前はゲームキャラの名前、生まれはゲーム内の主人公の所属する国を答え、エ・ランテルを目指していることも、目的も少し濁しながらも答えたし、カルネ村を救ったことも話した。
それに対してガゼフは馬から飛び降りた。着ていた金属鎧がガシャリと音を立て、大地に立ったガゼフは重々しく頭を下げた。
「村を救っていただき、感謝の言葉もない」
身分も明らかではないギタンに敬意を示している。特権階級の人物がわざわざ馬を下り、ギタンに頭を下げた。その事がガゼフの人柄を雄弁に語っている。
王国戦士長というのも偽りではないのだろう。ギタンはそう判断した。
「できれば詳しい話を聞かせてもらいたい。時間も時間なので、一度カルネ村に」
「・・・わかりま、」
ギタンが答えかけたその時だった。一人の騎兵がコチラに駆け込んできた。息は大きく乱れ、運んできた情報の重要さを感じさせる。
騎兵は大声で緊急事態を告げる。
「戦士長!周囲に複数の人影あり!我々を囲うような形で接近中!」