遊んでたゲームキャラでオバロ似の世界へお出掛け中   作:アカヤシ

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第8話

そんなはずない!

 

ニグンは浮かんだ言葉を追い払い、必死に自分に言い聞かせる。

 

「う、うわぁあああああ!」

 

「なんだ、そりゃあああ!」

 

「化け物がああああああ!」

 

天使が意味をなさないと知り、部下達が悲鳴のような声を上げながら、自らの信じる魔法を立て続けに詠唱し始めた。

 

《人間種魅力(チャームパーソン)》《正義の鉄槌(アイアンハンマー・オブ・ライチヤスネス》《束縛(ホールド》《炎の雨(フアイヤーレイン)》《緑玉の石棺(エメラルド・サルコフアガス)》《聖なる光線(ホーリーレイ)》《衝撃波(ショックウエーブ)》《混乱(コンフユージヨン)》《傷開き(オープン・ウーンズ)》《毒(ポイズン)》《恐怖(フィアー)》《呪詛(ワード・オブ・カース)》・・・・・・

 

多種多様な魔法がギタンに打ち付けられる。

 

魔法の雨あられの中、ギタンは気楽な態度を崩さない。

 

「知らない魔法ばかりですね。同じ名前の魔法もあるようですが威力や範囲がお粗末過ぎます。それでは私の体力を削る事はできませんよ」

 

召喚した天使を一瞬で殺し、魔法でも痛みすら与える事ができない存在。

 

「あ、あ、ありえるかああああああああ!!!」

 

ニグンの怒鳴り声が響く。

 

ニグンは己が大声を上げている事は理解していなかった。

 

「生き残りたい者は時間を稼げ!!!」

 

ニグンは震える手で懐からクリスタルを取り出す。

 

このクリスタルに封印されているのは、都市規模の破壊すら容易とされる最高位の天使、200年前、魔神と呼ばれる存在が大陸中を荒らし回った際に、魔神の1体を単騎で滅ぼした天使を召喚する魔法だ。

 

「最高位天使を召喚する!時間を稼げ!!!」

 

ニグンの言葉を聞き、ガゼフは召喚を阻止すべく動こうとするがギタンにまたしても制止させられる。

 

「最高位天使という存在に少し興味がありましてね。彼等の好きにさせてあげてください」

 

ニグンの手の中で規定の使用方法に従いクリスタルが破壊され、光が輝く。

 

それは光り輝く翼の集合体だ。翼の塊の中から、王権の象徴である笏を持つ手こそ生えているものの、それ以外の足や頭というものは一切ない異様な外見ではあるが、聖なるものであるのは誰もが感じる。姿を見せた瞬間から、周囲の空気が清浄なものへと変化していったために。

 

至高善の存在。それを前に喝采が炸裂するような勢いで上がる。部下達が感情を爆発させていた。

 

「最高位?この世界の最高位の天使がコレですか?それとも貴方が無知なだけですか?」

 

ただ、そんな至高の存在を前にするギタンの態度は変わらない。ギタンの側にいるガゼフは驚愕しているというのに。

 

人では勝てない最高位天使を前にした供物に過ぎないはず。にもかかわらずギタンはその態度は余裕を持ちすぎている。

 

召喚された天使はニグンの恐怖の感情を読み取り、敵対者の完全消滅すべく、初手から最大全力での攻撃を開始する。天使の持っていた笏が砕け、破片が天使の周囲をゆっくりと旋回し始めた。

 

《善なる極撃(ホーリースマイト)》

 

魔法の発動。そして光の柱が落ちてきた。そうとしか思えなかった。清浄な青白い光によって、回避も防御もしない、その場から立ったまま動かないギタンの体が包み込まれる。

 

第七位階魔法、人間では決して到達し得ない極限級の領域。悪しき存在は絶対なる清浄の力の前に消滅する。善なる存在であっても同じこと。

 

しかし、ギタンは健在!!!

 

ギタンという得体の知れない化け物は、消し飛ぶ事も、地に伏す事も、燃え尽きる事も、何もなく、大地に両の足で立っていた。しかも口元は軽く笑みを作っていた。

 

この時、ギタンは自分が経験した事がないあるはずのない『ギタン』の記憶が視ていた。

 

妻と娘を亡くして、神聖魔術への希望を失い、絶望し、家族の思い出の詰まった家に引きこもっていた。

 

数日後、教会の者が家を訪れた。

 

『辛い時に申し訳ない。だが、我々はやはり貴方こそが次期【教皇】に相応しいと考えている・・・【教皇】となる為の儀式を受けてくれ・・・ギタン』

 

【教皇】となる為の儀式とは、教会本部を統括する『十二神官』から、使える者も限られる上位の神聖魔術《聖光(セイコウ)》を受けるというもの。

 

『これからキミには我々の《聖光》を受けてもらう』

 

『それを受けてもなお陰りなき御心であるならば、キミは間違いなく聖人・・・・・・【教皇】の器だ!!』

 

「我が、魂に陰りなし・・・何一つ懺悔はございません」

 

『おおおおおおおおお!』

 

『素晴らしい!!』

 

『なんて御方だ!』

 

『微塵も変化を見せないとは!』

 

『欠片も悪の心が存在しないなんて!!』

 

『あんな事があったばかりだというのに!!』

 

ギタンはこの儀式で確信を得た。

 

我が身に芽生えたこのどす黒く渦巻くモノが神が定めた悪の定義を凌駕した事・・・

 

どれ程の閃光も決して届かぬ事を・・・

 

我が信念(深淵)に陰りなし

 

「眩しい・・・《黒死玉(コクシダマ)》」

 

天使の光り輝く体のどてっぱらに開く、黒い穴。それは見る見るうちに巨大で空虚な穴へと変わり、全てを吸い込む。

 

呆気にとらわれるほど、笑ってしまうほど簡単に、そこには何もいなくなる。

 

天使という光輝の存在を失い、周囲の光量が一気に落ち込んだ。

 

「お前は何者なん、」

 

「貴方が知る必要はありません。神聖魔術《極聖光》」

 

ギタンの神聖魔術が発動した瞬間、ガゼフ・ストロノーフは生涯の中で一度も目にしたことがない光の柱を目撃した。

 

先ほどの天使の放った魔法《善なる極撃》とは比較するのも烏滸がましいと思えるほどの光の大柱。

凄まじい力の波動と幻想的な光景。雲を突き破り、地をも揺るがす魔法。

英雄譚やお伽噺に綴られる精霊達の聖歌か、あるいは地を揺るがす怪物の咆哮か。恐らくはそれらに類する光の壮観がガゼフの心に焼き付けられた。

 

そして、この神々しい光景は多くの者が目撃する。

 

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