遊んでたゲームキャラでオバロ似の世界へお出掛け中   作:アカヤシ

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二章
第1話


騒音が彼の耳に飛び込んできた。与えられた個室で武器の手入れをしていた手を止め、耳をそばだてる。

 

喧騒、複数の人間が走るどたどたという音。微かな悲鳴。

 

襲撃されたのは確実だ。しかし、敵の数や腕前がまるで掴めない。通常、襲撃時はそういった情報は大声でさけぶよう、訓練されているにもかかわらず。

 

音が聞こえないということはない。個室といっても洞窟内だ。ドアの代わりに、横穴に入り口にカーテンで仕切りを作っただけのもの。厚手とはいえ布を通して、声は十分聞こえる。

 

傭兵団、死を撒く剣団の総員は『百人を越える』。中には彼ほどの腕は持たないまでも、戦場を駆け生き残ってきた古強者もいる。

 

そんな男達が奇襲程度で、これほど混乱するとは思えない。とすると、それなりの数がいると考えられるが、しかしそれだと、大勢の敵が動く音が聞こえず、気配も乏しいことの説明がつかない。

 

「ならば・・・冒険者か」

 

極少数かつ戦闘力のある存在だとしたら、この違和感にも納得がいく。

 

彼はゆっくりと立ち上がり、武器を腰に下げる。鎧は鎖着(チェインシャツ)。着るのに時間は必要ない。次に陶器でできた数本のポーション瓶が入った皮のポーチをベルトに引っ掛け、紐で固定する。防御魔法の込められたネックレスと指輪は既にしているので、これで準備は終わりだ。

 

カーテンを引きちぎるような勢いで捲り、洞窟の本道ともいうべき場所に出る。

 

奪ってきた《永続光(コンティニュアル・ライト)》が掛けられたランタンが、幾つも壁に一定の間隔で吊るされ、洞窟内とは思えない明るさを生み出していた。

 

光が彼の体躯であるが、痩せているのではない。服の下の肉体は鋼鉄のごとく引き締まり、筋肉トレーニングではなく実戦で鍛えられた体をしている。

 

髪は適当に切られているために長さは揃っていず、ぼさぼさに四方に伸びていた。茶色の目は鋭く前を睨み、口元は冷笑のようなものを浮かべている。顎には無精髭がカビのように生えていた。

 

だらしない雰囲気を醸し出していたが、歩く姿は滑らかかつ優雅であり、野生を彷彿とさせた。

 

そんな彼が襲撃を受けた入り口に向かって歩き出すと、逆にこちらに駆けてくる男がいる。

 

見知った顔であり、傭兵の一人だ。

 

「何事だよ」

 

「敵襲です!ブレインさん!早く逃げないと!」

 

苦笑して、彼、ブレインは口を開く。

 

「そいつは分かるさ。人数は?どんな奴らなんだ?」

 

「はい!敵は二人、修道服を着た男女です」

 

「修道服?しかも二人?法国・・・なはずないか」

 

「あの、女の方はわかりませんが、男の方はガゼフ・ストロノーフでした!!!」

 

「・・・は?」

 

彼、ブレイン・アングラウスの脳内にその男の姿が過った。

 

ブレインは剣の才と生まれながらの異能(タレント)を持った戦闘の才人だった。

 

武器を取って不敗、戦場においてかすり傷以上は受けない、常勝の道を突き進んでいた。

 

そんなブレインに初めての敗北を与えた男、それがガゼフ・ストロノーフだ。

 

目を閉ざせば、ブレインはいつでも瞼に浮かべることが出来た。

 

かの試合で見たガゼフの美麗な戦いを。避けた者がいなかった己の一撃を、すりぬけるように回避する、あの男の姿を。同時に放たれた四の斬撃を。

 

自らが敗北した姿は思い出せない。ただ、ひたすらに自分を倒した男の姿のみが焼き付いていた。

 

洞窟入り口に歩を進めるブレイン。既に悲鳴は聞こえないということは、入り口付近に詰めていたはずの者達は皆殺しにあったということだ。時間的に二、三分。最低でも十人以上の傭兵に与えられた命令は、防御に徹し、後ろが準備を整える為の時間を稼ぐことだ。そんな彼等を短時間で殺すとなると。

 

「本当に侵入者が二人なら、俺なみの強さは持っているっていうこと、か」

 

ブレインはニヤリと笑う。

 

ベルトポーチから取り出した三本のポーションをぐいっと呷り、己の武器を抜き放ち刀身に魔法薬を垂らし武器強化を施す。次に指輪とネックレスに込められた魔法を発動させる。

 

準備は全て終わり。

 

現在のブレインは肉体強化も相まって、恐らくは人間としては最高峰の剣士だろう。自らの能力に絶対の自信を持つ人間特有の、獰猛なものを浮かべる。

 

ブレインは侵入が本物のガゼフ・ストロノーフとは思っていない。現王国戦士長にして、周辺国家に最強の戦士としてその名を知られる男が、王の側を離れ部下も連れずに、ほぼ単身で傭兵団を討伐しに来るとは思えない。

 

たっぷり楽しませてもらおう。

 

「俺の前でもガゼフ・ストロノーフと騙れるかな?」

 

歩を進めると、そこに二人の人影があった。

 

侵入者の姿を確認したブレインは目を見開いた。

 

一人は修道服を着た栗毛色の髪の小娘。信仰系魔法詠唱者も様々なタイプがいるが、娘の体躯を見るかぎり、肉弾戦に長ける神官(クレリック)ではなく、魔法行使能力に長けた女司教(プリーステス)か、魔法行使能力に特化した司祭(ビショップ)だろうか?

 

問題はもう一人、ガゼフ・ストロノーフの方だ。

 

まさか本物のガゼフ・ストロノーフか!

 

しかもガゼフと少女の頭の上に、天使の輪のような物が浮かんでいてその輪の放つ輝きが周囲を照らしていた。

 

「見たこともない魔法のようだが、そっちの娘は魔法詠唱者か?ガゼフ・ストロノーフ?」

 

両者共に修道服という場違いな格好であったが、片方が魔法詠唱者であれば、鎧を着用しない理由は理解できた。

 

「刀使い?・・・いや、もしかして、アングラシウスか?」

 

ブレインは刀を強く握り締める。

 

「まぁいい。こっちの準備は終わってるぜ。そっちがまだなら時間をやるけど、どうする?」

 

ブレインの目的はガゼフに勝つことだ。かつての敗北を勝利で塗り替えること。

 

そのガゼフ・ストロノーフと戦える絶好の機会。

 

「戦う前に一つ・・・俺が勝ったら仲間になってもらおうか」

 

「仲間?」

 

「知らないのか?俺は王国戦士長を辞して冒険者をやっている」

 

「冒険者?お前がか?」

 

「ああ、これでも『神兵のガゼフ』と、彼女は『神盾のエンリ』と呼ばれて期待させているんだぞ」

 

そりゃそうだろ!王国最強の戦士が冒険者になったんだから!

 

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