超昂大戦 二次創作SS ありがとう、エスカ・ルビー! 星が導く四つの煌めき 作:環 藍河
紅潮するルビーの頬。その背中に凛然と寄り添う、群青の輝き。
「あっ…この輝きは…ヒビキちゃん…!」
エスカ・サファイアこと、加古野ヒビキ。
忍の体術を備えた超昂戦士にして、ルビーの初めての相棒。
「アカリ…お前は本当に、とんでもない偉業を成し遂げてくれたな」
「うん、でもヒビキちゃんが…サファイアが私をもう一度空へ連れて行ってくれたから。やっぱり閃忍は…ヒビキちゃんは凄いよ」
体術と心眼を駆使し、全身を石化寸前まで蝕まれながら、決戦の地へルビーを届ける露払いを果たしたサファイアもまた、偉業の殊勲者であった。
「閃忍の真似ごとに過ぎなかったが…お前の役に立てて、修業の日々は無駄じゃなかった、今日のためにあったのだと、今は感謝しかない。そして…」
不意にアカリの耳元に顔を寄せるサファイア。
「ありがとう、ルビー。あの日、私を相棒に求めてくれて。」
…
「私、ヒビキちゃんと一緒に戦えたら、すごく心強いな」
アカリがダイビートに来て一週間ほどのその日、閃忍の素質なく道に迷うヒビキに、アカリは力強く呼びかけた。
それは閃忍となるために生きてきたヒビキにとって、別の大きな意味を持つ言葉だった。
共闘は、上弦衆の闘いでは忌避される。
各個が自立し、孤立無援でも戦闘継続できる想破七閃クラスともなれば、確かに連携はする。が、頭領の命を完遂するため、作戦行動では各個が常に仲間の失敗を織り込んで行動し、仲間の救出が使命の達成を脅かすならば、迷わず捨て置く。
友も、師も、肉親さえも、最後の一線で切る決断を躊躇わないこと。
…代々閃忍を務める加古野の家で、冷徹なまでの教えを幼少から叩き込まれたヒビキ。
「…アカリ。何故だ。私の弱さを知るお前が、何故私なんかを信じられる?」
アカリの誘いに、ヒビキは強い語調で問い返す。
お世辞や社交辞令とは思えない、アカリの真摯な眼差し。この子は本当に、自分を共闘者に相応しいと信じている。
だからこそ、アカリの言葉はヒビキの心の最も弱いところを穿つ。
その数日前のルビーの初陣。滅忍に苦戦するルビーに割って入ったヒビキは、逆襲に屈し膝をついた。
自分は、絶望的に、弱い。
たとえ自分に超昂戦士の適性が備わっていて、たまたま変身が成ろうとも、その力がルビーに並ぶかさえ疑わしい。
ましてや相手は多勢の滅忍衆、自分ごときの力が何倍になろうと、打ち払う力には及ばない。
あの場で共倒れになりかけたルビーには、なおさらそれがわかるはず。
なのに、何故。
「あはは…強さはあまり関係ないかな。私も新米超昂戦士だし」
「笑いごとじゃない。弱い相棒なんてただの足手まといだ。私ではお前を死なせかねない…!」
「飛行機のおもちゃをヒビキちゃんが取ってくれて、男の子に返したでしょ」
「…?」
「あのときのヒビキちゃん、すごく優しい、あの子を慈しむ顔をしてたんだ」
一週間前、おもちゃを高枝に引っ掛け、取ろうと登って降りられない子どもを救おうとしたアカリ。結局自分も落ちたところを、トキサダに救われたのだが。
「…若頭領の命だからな」
「ううん、あのとき感じたんだ。この人は強いだけじゃなく、私と同じものを大切にして、護ろうとしてくれる。」
「あっ…!」
「ヒビキちゃんなら、私の助けたい人達を、きっと一緒に護ってくれるって、あのとき感じたんだ。だから、ヒビキちゃんとなら、私、一緒に戦いたい!」
一緒に戦いたい。
生まれてから上弦の里の誰一人からも言われることの無かった、たった一言。
…
『うぐっ、くはあっ! ああああああっ!』
通信回線に飛び込む、苦戦し苦悶するルビーの悲鳴。
「…お願い、します…!」
「ヒビキ?」
「長官、お願いします! 私に、ADDDを下さい! 適性が無くたって構わない。今、私は、ルビーと共に戦う力が、心の底から欲しくてたまらないんだ!!」
アカリの思いは、ヒビキの魂を揺さぶり。
青嵐の超昂戦士・エスカ・サファイアを誕生させた。
首筋にADDDをインストールし、短時間ながらもDチャージを終え、ヒビキはバトルフォームに身を包む。
どこかセーラー服のカラーを思わせる、ストライプをあしらったショールと腰帯は鮮やかなスカイブルーをたたえ、鎖帷子の上に纏う和装の白は、至上の絹布にも勝る光沢を放つ。襷を思わせる両肩のベルトの無骨さは、ともすれば優雅なこの装束が、実は戦闘服であることを思い出させる。
絶対領域を強調するガーターベルトと、スカートのスリットから覗くVゾーンのコントラストが敵を惑わせ、すらっと伸びる手先に秘めたビームクナイで討ち滅ぼす。
いにしえの忍び装束と科学のパワーを織り交ぜた、サファイアの戦闘フォーム。
初出動、ルビーのピンチに急ぐサファイアは、高揚していた。
初めてのDチャージ。初めての変身。
だが、それだけでは説明のつかない、もう一つの感情。どこかあどけない、夕暮れまで野原を駆けた幼い日に感じたような…
(…そうか、私は…初めて、戦いを愉しみと感じているのか…!)
この戦場には、相棒が待っている。
私の持てる力で、あいつの背中を護り抜く。
今の私なら、それが…できる!
「青い光は勝利の狼煙! 青嵐の超昂戦士・エスカ・サファイア! 悪の現場に只今見参!」
…
「アカリの入隊を知ったとき、私は戦士の怖さを知らない無謀な愚か者だと思っていた」
「あはは…実際頭は良くないから、その分ガッツで」
「いや、愚か者は私の方だった。アカリに私は、戦士の喜びを教えられたからな。」
「…喜び?」
「背中を預け、互いの手落ちも補い合える相棒と共に戦うことが、今は誇らしく、何より嬉しい。」
「あっ…!」
サファイアの両腕が、ルビーを一層強く抱きしめる。
「ルビー…この背中、これからも私に預けてくれ。私もお前と共に、もっと先へ進みたい。」
「うん…んんっ、あ…熱っ…! くう…っ!」
いつも自分の無茶をたしなめ、呆れながらも庇い、手を貸してくれるヒビキからは想像もつかない、こんなにも熱い思い。
黎明の蒼空が燃える朝陽を際立たせるように、その情熱に抱擁され、ルビーは陶酔に包まれる。
こんばんは、作者の環です。
ヒビキは、エスカ・チームの中で、アカリとの出会いで一番変わった子なのかな、って思います。
閃忍への夢は叶わなくとも、違う道をアカリに導かれ、自分でチャンスをつかみ取ってエスカ・サファイアとして立派に開花させたヒビキ…ホント、よかったねぇ(潤)。
ヒビキとアカリの心の交流…たぶん、原作でクドクドやっていたら、テンポは悪いわ、Hはかすむわ、諸々でさっくり簡素化されているのかな。
そこを「もったいないなぁ…」と感じた環(作者)が、二次創作で勝手に解釈、アンプ増幅してクドクドお届けしております。
こんな感じで、あと3章、続きます。