超昂大戦 二次創作SS ありがとう、エスカ・ルビー! 星が導く四つの煌めき 作:環 藍河
上弦の里。
想破上弦衆が集い、育ち、鍛え合う隠れ里。
彼らの多大な尽力なくして、アルダークやオルタナスタインへの勝利はありえなかった。
…最終決戦から一夜明け、トキサダとユーノは里を訪れ、戦勝を上弦衆の支援者、とりわけ先代頭領の後継者を宿し育んでいる最中である、戦部ハルナに報告した。
折しも春、館の庭には様々な木々が芽吹き、蕾を膨らませ、花を咲かせていた。
「花や木々を愛でる心の平穏すら、私たちにはありませんでしたものね。…あら?」
見渡す木々の中、トキサダは一対の樹に何故か心惹かれ、根元にそっと立ち、その声を聞くかのように幹に手を遣っていた。
幹の上にそこかしこに咲き乱れる花は、桜に似た五枚の花びら。だが、桜とわずかに違い、花びらの先端に桜の尖りは無く、丸く、ほんのり朱く、そして優しい。
「トキサダさん、その樹がお気に召しましたか?」
「えっ…ああ、そうだな。何というか、この木は一生懸命、ひたむきに自分を輝かせている、そんな気がした。隣の大木が見守る下で、いつか自分もこうなるんだ、って」
…あっけにとられるハルナ。
「…どうか、なさいましたか?」
「ああ、失礼しました。実はその樹…トキサダさんが今撫でている樹は、この里でも百年に一度の腕と言われた庭師の棟梁が、そちらの桃の樹の下に移植したんです。『この子は、ここで自分を高めたがってる』って言って。トキサダさんがまるで、そのいきさつを知ってるかのようにおっしゃるので、びっくりしたんですよ」
「話を聞いたときは、出来すぎじゃないか、と私なんかは思ったんですけどね。なかなかどうして、本当に立派な樹に育って、里の衆はみんなで驚いたもんですよ」
ハルナに付きそう想破七閃の一位・炎のゴウカが言を添える。
「出来すぎ、とは?」
「ああ、さすがの頭領も、この世界の古典はご存知なかったですか。」
普段は塾講師として若い芽を育む、ゴウカの博識と教養には、幾度となく助けられてきた。
「桃の樹と、その樹…すももの樹には、言い伝えがあるんですよ」
…
里からの帰り道。
「桃に憧れて隣に根を張った、すももの樹…小さいけど、真っ赤で、かじると酸っぱくて、みんなを元気にしてくれる…そんな実をたわわに結ぶ、素敵な若い樹…。
ダイビートにも、そんな子がいたわね。」
「ああ、そして多くの仲間が、2つの樹の下に集まって、力をくれた。だから…俺達は、ダイビートは勝利した。」
ユーノの隠喩めいた言い回しに、隠喩で答えるトキサダ。
トキサダも、知識として桃とすももの言い伝えは知っていた。
ユーノがトキサダに課した、延べ1000時間分の教育プログラム・インストール。
伝承はそこで叩き込まれた、あくまで老獪な権力者に無学な若造と侮られないための、無味乾燥の教養の一つに過ぎなかった。
だが、その中の一節が今、鮮やかな彩りを込めて響き、トキサダとユーノの心を震わせる。
…
「私、エスカレイヤーさんみたいに、みんなを守る力がほしいんです!」
ほんの少し前の、入隊希望者面接。
共闘する戦士の公募。それは、優秀な戦士たちを、優秀がゆえに大衆から孤立させ、無援のまま十字架送りにしてしまった、悔恨の未来を繰り返さないための最重要命題だった。
だが、公募に応じた一人の少女は、戦闘経験ゼロ。あるのはADDD適性の他、運動神経と溢れる正義とガッツのみ。
一体、誰がこんなことを信じただろう。
この少女…園崎アカリがその後、様々な戦友を得て、ときに敵である幻魔とさえも心を通わせ、この大義を成し遂げる要となろうとは。
…
桃李、物言わざれど、下、自ずから蹊を成す。
優れた人物の周りには、その憧れから自然と人が集まるという、昔の教えである。
神気をまとう伝説の大樹に導かれた若木は、そのあふれる情熱で幹を、枝を伸ばし、時に自分の非力にくじけつつも、あきらめずまなざしを上に向け続けた。
その姿に心打たれて集った戦士たちも、また若木に日射しを与え、水を注いだ。
新たな伝承に残るであろう昨夜の大勝利は、一年にわたる戦士達の心の往来の結んだ、果実なのである。
具象化しよう。
超昂天使・エスカレイヤーに憧れたアカリは、自らを戦地に投じ、紅蓮の超昂戦士・エスカ・ルビーとして歩みを始めた。
その決意は、決して他の誰をも求めない、自分だけの誓いに過ぎなかったはず。
だが、その輝きは、一人、また一人と戦士を呼び醒まし、やがてチームとなり、宿敵を、真の敵を討伐する、大きな力を生んだのである。
…
語り尽くせない一年の歩みであるが、折に触れ、また別の形で語られる時を待とう。
初めはたった一人の少女が放った紅い輝きが、一色、また一色と煌めきを重ね、遂には人類に平和の未来をもたらす輝星となった、奇跡の物語。
小さないくつかの奇跡を呼び起こし、またそれに応えた、5人の少女たちの心の記録を、ここに残す。
そして…今また、二人の少女が、大樹の下へ…。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。作者・環より御礼申し上げます。
真っ赤なルビーがすももで、ピンクのエスカレイヤーが桃…桃李成蹊の四字熟語にピタッとハマるんじゃね? とひらめいて、そこから一気に書き上げたものの、最初は理屈っぽくてわざとらしくて読者の鼻につくキザっちい表現ばかりで、とても読めたもんじゃなく…、かなりアク抜きしたんですが、いかがでしたでしょうか?(まだクサい?)
あ、この前、すもものジェラートを食す機会がありました。花は春が盛りですが、実(プラムorプルーン)は7月の今が旬。青空の下でドライブの途中、目が覚める酸っぱさは元気印100%でした。
#コラボカフェのルビードリンクは、クランベリーだったそうですね。
いかんせん、ダイビート東北支部辺境出張所の新人トキサダ(=環)に訪問のすべは無かったのですが…。
エスカ・ルビーに元気をもらったこの1年半、恩返しのアンサーSSとして上梓いたします。
…え? おまえ超昂大戦始めて3ヶ月やろ、って?
…ええ、ローンチからのベテラントキサダ様方がうらやましいですよーだ!
(リアルタイムで新章公開に胸躍らせた経験は尊い…! 後追っかけでイッキ読みした環も楽しかったですが。
まあ、今は第2部でリアタイドキドキできてるのでオッケー、と。更新される水曜日は、帰宅が早くなりました!)
さて、次回の環さんは?
完成品(熟成中)のSSネタストックが、遂に底を突きました。
ここまで、2週間でSS5話投稿…速筆なのか遅筆なのかわかりませんが、現状、今週末3連休に出せるネタはありません。出しても生煮えっス!
コンセプトだけ固まっているのがシリアス2本、さらに粗筋だけ文章化できているのがシリアス1本、他にプロットを模索中のギャグ新シリーズが1本…計4シリーズを孵化させようと必死です。
次回作までちょっと1週間くらい、お時間いただくかもしれません。
原作「エスカレーションヒロインズ」を楽しむ合間、スタミナ回復待ちの暇つぶしに、ジェネリック・キャラクター・ストーリー程度にお楽しみいただければ幸いです。
環藍河の超昂大戦SSシリーズ、愛読者さまに感謝しつつ、次回作でまたお目見えできますれば幸いです。いつもありがとうございます!