もう燃え尽きそうだ。小説家ってすごいんだなー。
1話 水飴を作りましょう。お湯に砂糖でできるでしょ?
みんな捕まってしまった。今はひとり、黙って裁判を受ける。
私以外は、もうインペルダウン に収容され、数日たっている頃だろうか?私は、他のファミリーのみんなとは違い、ファミリーに入った時には若様が王下七武海になっていて、私には懸賞金が掛けられない状態だったし、表立って動かなかった。実際、私がどんな役割を担っていたのか知ってるものは少ないだろう。懸賞金がかかっていれば、直ぐにでもインペルダウン 行きだが、私の容姿もあってか裁判は少し、長引いている為、判決を受けるまで、どんな刑になるかわからない。そんな不安や心配をしているうちでも、周りは相も変わらず騒がしい。
もういい加減、うんざりしそうだ。恩知らず共が喚く声はとっても気分が悪い。それを長々と、何日も聞かされている。裁判を受け、拘留され、また裁判を受ける、これを繰り返している。まぁ茶番劇も良いところではあるが。証言台の後ろに設置されている木製の椅子や、移動する裁判所という通称で知られている船に入り切らずに、後ろの方から傍聴人のそれが聞こえてくる。これが若様と、ファミリーのみんなで頑張った結果なのだと思うと本当にうんざり。私が喋れば、爆発するかのように後ろがうるさくなる。今も煩いがこれでも静かになった方だと言うのだから、本当に...
「この悪魔っ、返しとくれー、私の息子を返とくれー‼︎」
何言ってんだか、ちょっと前まで、その息子とやらを忘れて呑気にお茶でも啜ってたんじゃないの?
「俺に殺させろ!俺は10年以上人形にされてたんだ!俺がやるべきだ!」
あんたはただ積荷を運んでただけじゃない!昼間は街中で楽しそうにしてたくせに。
「死刑だー!そいつを早く殺せ!いや、そうだ、俺らに殺させろー!」
本当にどうしてそんな事を言えるのか本当にわからないわ。
若様が即位してから、ドレスローザ は大きく発展し、昔より遥かに豊かな生活をできるようになった筈よ。なんであんた達が被害者面できるの?
私は両親を海賊に殺されてる。その海賊に、10年近く、子供の身で家畜以下の扱いを受け続けてきた。自分が世界で一番不幸だって面で、自分が世界で一番悲しいとかって面で、喚いてんじゃないわよ。
貴方達は十分幸せでしょ?ドレスローザ が豊かになったのは誰のお陰だと思ってるの?私達ファミリーのお陰でしょう?お金がいっぱいあって、食べ物があって、安全に街を歩ける。それに、コロシアムで戦いを鑑賞したり、オモチャと愉快に暮らせる。何が不満なの?そんな幸せを味わってたのに、それを自分たちで壊して、なんで、恨みがましく、騒いでんのよ。自分達が味わった幸せを私達ファミリーが味わっちゃだめって言うの?
どうして?私達はやっと幸せになれた所なのよ。綺麗で好きな服が着れて、お肉も果物も、お菓子も食べれて、好きな時に寝れる。私が欲しかったのはこれだけなんよ?当たり前の幸せでしょ?自分がイラついてるって理由で殴られる事も無くて、腐臭や硝煙が漂う所を掃除する必要が無くて、血濡れで死体が転がってる地面で寝なくて良い。当たり前のはずでしょ?なんでそれすらダメなの?
コンっコンっ 木槌を打ち鳴らす音で当たりが静かになる。
「静粛に、静粛に、主文、被告人シュガーを無期懲役に処する。」
高台に登った裁判長が判決を告げる。僅かな揺れを感じさせる船内で行われる裁判と言う名の茶番劇、とっても嫌な感じ!此れだから脳足りん共は、
私はただ、お姉ちゃんが居て、若様が居て、ファミリーのみんなが居る。楽しくみんなで食事して、ジュースを片手に乾杯。仕事に行くみんなを見送り、あの小汚いおじさんと幹部塔に行ってお仕事。この生活の何がいけないの?見下してんじゃないわよ。正義面した無能共、そもそも、私があんな地獄を味わったのも、あんた達海軍が海賊を減らせないからじゃない!あんた達は助けてもくれなかったじゃない!なのに今更、どの面さげて、言ってんだよ‼︎助けてくれたのはいつも若様だった。ファミリーのみんなだった。なのに...なのにーっ‼︎
「おい、さっさと連れて行け!」
両脇を抱えられ、子犬や猫のように連行される。もともと重かった手錠の重さが増し、手首が痛くなる。
周りから注がれる目線や態度に腹が立ち、この持たれ方にもまた、腹が立つ。何よりも床に足すら届かない位、ひ弱で何もできない自分に腹が立つ。私だって、若様達やお姉ちゃんと、海に出て、海賊ぶっ倒して、乾杯。お宝抱いて凱旋なんてして見たかったわよ。船が嫌いだったけど、海が嫌いだったけど、みんなとなら、楽しめそうな気がした。好きで、こんなちんちくりんでいたんじゃない!本当なら若様みたいに1人でも此処にいる奴ら殺して、お姉ちゃんやヴェルゴと合流して、ファミリーのみんなを助けに行けたら、どんなに良いか。でもそれができない。私が弱いから。こんな小さな体で、どうすればよかったの?今もみんなと笑い合える為にはどうすれば...。
思えばあの時、長鼻野郎をオモチャに変えちゃえば、上手くいってたんだ。私があの時気絶しなければ、反乱は直ぐに鎮圧できたんだ。長鼻野郎とその一味、そしてあの裏切り者、どうせ私の時みたいに、卑怯で、卑劣に若様を嵌めたに決まってる。じゃなきゃ若様が一対一で負けるわけない。それにあいつらが、あんなやり方をしてこなかったら、あの汚いおっさんがちゃんと守ってくれてたらこんなことにはなってなかったんだ。
悔しい、どうしてこうなったのか、解らない。どうして、私はあんな所で気絶しまったの?。私が弱いから?私が悪いこだから?お父さんとお母さんが殺されるのも、海賊に殴られ、蹴られ、脅されて、火薬運びや、甲板、死体の掃除、積荷運び、させられたのも、私が弱いから?みんなを失うのも私が弱いから?
もう、あの時には戻れないの?若様も、ファミリーも、大好きな人達との絆も、やっと掴んだ幸せも、全て失うの?嫌だっ‼︎私は幸せになるんだ!此処から、みんなを助けて、この恩知らず共と、無能共を蹴散らして、またみんなで、食事するんだ。いやもっと。更に、幸せになって、見返してやる。頭割り人形で一人一人、殺してやる!
長い廊下を連行されて、たどり着いたのは護送艦の前。無能共が能天気に兵隊ごっこしてる軍艦だ。左右を銃を持った海兵共が私を睨みつける。運ばれている目の前には、偉そうなハゲが手を後ろ手に組み、こちらを見ている。私は降ろされ、運んでた海兵が敬礼をし、目の前のハゲに話かける。
「大犯罪人シュガー、お引き渡しします。」
「ご苦労、確かに引き受けた、もう下がって良いぞ。」
「はっ、失礼いたします。」
「それでは、シュガー、ついて来い。」
「ふんっ」
偉そうなハゲは勝手に船に乗り込んで行く。それについて行かず、空を見上げた。今まで、床や証言台の木目ばかり見ていて、首も凝っていたし、何より空と海がとても青くて、その広さに気持ちよさを感じた。お姉ちゃんはよく、暇な時には空を飛んでいた。「とってもたのしいのよ。慣れてきたら乗せてあげるから、待ってて。これで、もっと若様のお役に立てるわ。」と嬉しそうに話していたのを思い出す。今頃、お姉ちゃんはどうしてるかしら?数ヶ月声も聞いてないから、何してるのかわからない。ファミリーが負けたって、知ってヴェルゴさんと一緒に、みんなを助ける作戦を練ってるのか...
「早く乗れ、撃たれたいのか?」
左右にいた海兵が後ろに着き、銃で私を突っついて先を急がせる。渋々乗り込み、甲板に向かう階段を登ると、そこには大勢の海兵達が整列している。
何やら、演説のようなことをやっているが、私には関係がない。後ろから銃を向けられたまま暗い船内に連れられ、突き当りの部屋に入る。倉庫を兼ねているのか、物資が入っていそうな木箱が置いてあり、その奥にある牢屋に入れられる。偉そうなハゲが警備の為に、兵士が2人を残して、他の兵とともに室内から出て行く。鉄格子越しに見えるのは、暗い部屋を薄っすらと照らす、蝋燭と木箱たちだけだ。
暫くすると外から話し声が聞こえてくる。どうやら、外の兵士と話しているようだ。
「……ああ、そうだ。この女が例の女か……。」
「黙っとけ、仕事中だぞ...。」
「構いやしねーさ。どーせ、何もできないだろ。海楼石の手錠をはめてるし、聞けば、幹部がわざわざ護衛するぐらい、弱いと言う話らしいじゃねーか。それに、裁判中も俯いて、何も発言しなかったってさ。」
どうやら、私の事を話してるみたいだけど、なんでこんな奴らに、馬鹿にされなくちゃいけないの?ムカつく。
私は、怒りに任せて、檻に手錠がくるように振るう。でも、振るい慣れていないため、当然の如く、自分の手が痛くなるだけ。
「そんなことしたって無駄だぜ、悪魔のお嬢ちゃん、海楼石ってものを親に教えられなかったか?こうなったら、こんな悪魔でも形無しだな。ははははっ」
「煩いし、汚い、口臭い、二度と口を開かないで。」
「んー?そんなに寂しいのか?仕方ねーなーじゃあ、俺のグッドスメルな口臭を嗅げるように近くに居てやるぜ?」
私は精一杯の強がりをするけど、あまり効いてなさそう。今も勝ち誇った様な顔で煽ってくる。心底ぶち殺してやりたいと思った。決めた、脱獄したら、こいつは足の先から、火炙りにしてやる。
そんな風に殺意を覚えながら過ごしていると、何回か兵士の交代があり、何時間いるのかがわからなくなった頃、足音が近づいてくる。
ガチャッ!! 扉が開かれ、ハゲが現れる。
兵士は敬礼をして、後ろに下がる。
ハゲは私を一睨みしてから、牢の鍵を開ける。
「出ろ、お前のこれから過ごす、家に着いた。」
私は言われるまま、立ち上がり、ハゲの後に続く。
軍艦を降りた先には硬い守りを誇る、世界一の監獄、インペルダウン が目の前にある。
少し前に大規模な脱獄があったようで、その脱獄犯共と戦った話を若様が前話してくれたのを思い出す。
そのせいなのかわからないけど、目の前には若様以上に大きく、筋骨隆々とした黒いコートの大男がと女性看守が立っており、目の前まで歩いてくる海兵達に連れられる私を見て、一瞬顔をしかめるが、すぐに元の顔に戻り、ハゲに向かって敬礼し、会話を始めた。
「護送、お疲れ様です。私はここ、インペルダウン の副署長、マゼランと申します。」
「これはこれは、マゼラン副署長、お噂はかねがね、貴殿に直接このシュガーを受け渡しできるのは、こちらとしては嬉しい限りだ。宜しく頼むよ。」
「はい、確かにお引き受けいたします。」
ハゲも敬礼し、少し話したら。軍艦に引き返して行った。大男は、私をジロリと見てから、「ついて来い」とだけ言ってくる歩き出す。私の後ろには女性看守が付く。
周りは海と出港しそうな護送船しかないため、諦め、私は無言で付いていく。
道中では、囚人達の叫び声や悲鳴が至る所から聞こえてくる。その度に私の心臓が跳ねる。ここは世界中の悪意を詰め込んだ場所であり、日夜拷問や過酷な労働を強いられるという噂は何処に居ても聞く話だ。これから何をされるかわからない。勿論怖いが、ファミリーのみんながどこに収容され、どんな扱いを受けているのか、それがとても不安なのと同時に、誰かの近くに収容されたならとも考えてしまうから、少し、落ち着いていられる。
「シュガー、変な事は考えるなよ。ここでは、多くの犯罪者共が収監されている。それを捕まえておく為に、能力者や危険な猛獣などが見張っている。俺もその能力者の1人、一歩でも牢から出てみろ、お前は苦しみ抜いて死ぬことになる。」
「っ…。」
「……着いたぞ、入れ。」
脅されながら、歩いていると、一つの扉の前でマゼランは止まる。
扉があけられ、そこから熱気が一気に吹き荒れる。その中に入るように促される。
その熱気に嫌な予感を感じながら中に入ると、中央に煮えたぎってブクブクと沸き立つ音が聞こえる。
大人が何人も入れるぐらいの大きな鍋とそこに続く階段、下から覗く火に目が行き、戦慄する。
こんな所で何をするの?まさか…本当にっ…この監獄は……。噂以上なのかもしれない。
「脱げ。」
目の前の光景に嫌な予感と悪寒を感じ、肌をそばだてていると、そんな声が聞こえてくる。
「…はっ⁉︎」
「早くしろ、お前に割いてやる時間などない。洗礼を受けてもらう。そしてお前を牢に入れる。それだけだ。」
「…っ」
これが洗礼⁉︎囚人を殺すことが⁉︎私は牢屋に入れられる予定なんでしょ、なのにこんな鍋を使った洗礼って何よ‼︎。あれに、入れと言うの?無理よ、こんなの出来るわけがない。
しかし、後ろの扉から、通り過ぎるように大きな足音と、男の助けを求める声が聞こえ、言う通りにしなければ、もっと酷い事をされるかも知れない。そう考え、言う通り服を脱ぐ。羞恥の一つも覚える余裕すらない。今釘付けなのは部屋の中央の鍋、そして、何をされるのかという不安だけだ。すると、看守の女が命令してくる。
「階段を登りなさい。それとも、私が投げ込んであげましょうか?」
後ろから、看守の女に急かされながら、腕を抱いて、震えを抑えて進んでいく。一歩進むたびに、息が荒くなり、冷や汗が出る。鍋が近くなるたびにグツグツと言う音が大きくなっていき、裸足の為、足の裏、そして皮膚全体で感じる熱気も上がっていく。一段、また一段と登っていく。次第にその中身が露わになり、そこには、予想していた通りの沸き立つ液体。肌を焼くような熱と蒸気が立ち上るそれが見えてから、体の震えが増して、目眩がしてくる。
「こ、ここに入れっていうの⁉︎こんな、煮えきった鍋の中に‼︎…わたっ…キャァァァァァァ‼︎」
話しかけるも、無言で看守の女に押され、鍋の中に落とされる。咄嗟に目をつぶり、体が硬直する。今まで、暑かったのに一瞬、裸で冷凍庫に入ったんじゃないかってくらいの寒気を感じ、次の瞬間には、悪魔の実を食べて久しく入った事ない大量の液体の中に入る。
すぐに、感じるのは圧倒的な全身の肌を極太の針で刺されるような痛み、気絶してしまいそうだ。でも、痛すぎて、ダメだ。助けて、まだ生きていたい!そう思うのと反して力が抜けていく。海楼石以上の脱力感。痛い‼︎助けて‼︎誰か‼︎
どちらが上かなど気にせず、腕を伸ばして振り回す。兎に角痛くない場所に、酸素がある場所に、いかなきゃ。死んじゃう…
そこで、意識はなくなってしまった。