ポケットモンスター 剣の救助隊   作:りてらしー

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ふしぎなあいつ

 ふしぎなやつだった。

 僕が知ってる人間は、もっとこう、僕らポケモンたちの都合なんか考えずに好き放題するようなやつらだった。

 

 友達と遊んでいるところに、モンスターボールを持った人間が来て、僕らは捕まえられた。

 でも、僕は逃がされた。なんでかって、僕は弱いらしい。

 友達はそのトレーナーに連れられて行ってしまった。彼を取り返そうと頑張ったけど、捕まえられたばっかりの彼にはたかれて、負けちゃった。僕はとても、悲しかった。

 

 しばらく時間がたって、ゲコガシラとなった彼とそのトレーナーを見つけた。

 スピアーの群れのオヤブンに襲われているところをだ。

 彼らは必死に戦っていたけど、最終的にバトルには負けていた。

 トレーナーは、瀕死になった彼を見捨てて、どこかへ逃げていった。

 オヤブンスピアーがどこかへ行ったあと、彼のもとに駆けていくと、死んでしまう寸前だった。

 オレンのみやオボンのみ、様々なきのみを彼に食べさせて、どうにか治療したが、彼は僕がずっと隠れていたことを察すると、僕に軽蔑の言葉を述べた。

 僕は、僕が憎い。それに、友達を見捨てた人間も憎い。

 

 けれど、シロとかいうトレーナーはそんなんじゃなかった。

 言葉は通じないはずなのに、僕の考えてることを言い当ててきたり、僕が一緒にいたくないと言えば本当に逃がしてくれたり、ふしぎなやつだった。

 

 

 

 僕はあいつに逃がされて、街から出て三日ぐらい歩いた。でも、僕の住処や、ゲッコウガたちも見つからない。しばらくご飯も食べれていない。

 とにかく、水辺に行きたい。

 そう思って草原を歩いていると、川を見つける。

 僕の住処には川があった。もしかしたら、これを辿って行けば僕の住処に辿り着けるんじゃないだろうか。

 

 川の水をいっぱい飲んで、川の上流を目指して歩く。

 水分を取ると、幾分か冷静になる。

 

 頭に浮かぶのはあいつの顔。

 考えれば考えるほどふしぎなやつだった。女のくせに、俺なんて言っていた。今思うと口調も基本的に男勝りだったような気もする。

 なぜあいつは、僕のことを逃がしたんだろうか。

 自分で言うのもなんだが、僕たちは珍しい部類に入る。僕の住んでいた辺りで、僕たちの種族の群れは一つしかなかった。

 価値を知らなかったのか、価値を知ったうえで逃がしたのか。

 

 どちらにせよ、僕の知っている人間とは少し違った気がする。

 

 

 

 

 歩いていると、森に辿り着く。僕の住処はこの森だったはずだ。

 いや、今はみんなに早く会いたいや。

 森に入って、歩いていると、

 見覚えがある。優しいミツハニーたちが住むそこそこ大きい樹木。コラッタたちが暮らす洞穴。

 ここだ。僕の住処に帰ってきた。

 ふと、お腹がすいていたのを思い出す。

 きのみを探し、適当にかじる。マトマのみだ。辛くておいしい。もう一つ。もう一つ。口治しにモモンのみを一つ。甘い。

 

 お腹を満たした後、森に流れる川を辿り、群れを探す。

 けれども、探せど探せどみんなはいない。もしかすると、最近この森に住みつくポケモンたちが多かったから、場所を移したのかもしれない。

 

 それだと困るなあと思いつつ歩いていると、激しい羽音と鳴き声が聞こえる。

 なんだと思い音の方へ様子を見に行く。

 草むらを掻き分け進んでいくと、そこにはスピアーとコラッタがいた。

 

 スピアーが怒鳴って、コラッタが怯えている。

 会話の内容を聞くと、どうやらスピアーの群れの生活している地帯のきのみを勝手に食べたやつがいて、その疑いをかけられているらしい。 

 コラッタはそれを否定している。

 

 ……僕だ。

 僕が食べた、マトマのみやモモンのみのことだ。

 どうやら、僕に疑いはかかっていないらしい。それなら、コラッタには悪いけれど退散させてもらおう。

 

 背を向けて、立ち去ろうとする。

 なんでだろう。

 体が動かない。目を背けられない。

 頭に浮かぶのは軽蔑の言葉を投げかけてきた友達の顔。

 

 気づいたときには、僕はスピアーとコラッタの間に立っていた。

 そして、僕が食べたんだと、僕がきのみを食べたんだ。だからコラッタは関係ないと、伝えていた。

 

 スピアーの針に体を切り裂かれながら、考える。

 何をやっているんだろう。

 勝てるわけもない相手だ。僕は何もできないんだぞ。弱いんだぞ。

 ああ、友達も同じ状況だったな。

 絶対に敵わない相手と戦い、負ける。ああ、でも。

 唯一違うのは、人間がいないことだろうか。

 

 散々嬲られた後、スピアーのとどめばりが僕の身体へ向かって来る。

 やっと、終わりか。

 その攻撃を受け入れようとしたとき。

 

 カキン、という金属音がした。

 

 かすむ目で周りを見ると、そこにはあいつがいた。

 白い髪で、よく見る人間よりも少し小さいあいつ。

 

「ケロマツ、事情は大体わかってる。よく頑張ったね」

 

 今まで会った人間とは全く違う、ふしぎなあいつ。

 

 シロは、スピアーの攻撃を両手に持った剣で捌き続けている。

 人間が、ポケモンに勝てるわけはない。けれど、シロはスピアーにくらいついている。

 

「ケロマツ。コラッタから事情を聴いた。お前、コラッタを助けたんでしょ。 めちゃくちゃいいやつじゃん」

 

 シロが、スピアーを相手にしながら僕を見て来る。危なすぎる。前を見てほしい。

 

「なんだよ、そんな自分は弱いんですみたいな目して」

 

 まただ。また僕の心が見透かされたみたいに喋りかけてくる。

 そうだ。僕は弱い。だから、シロに助けられている。

 

「お前、かっこいいことしてるんだから。もっと自信もて」

 

 僕は、強いんだろうか。僕は、いいやつなんだろうか。

 僕は、友達を助けることができなかった弱い、悪いやつではないんだろうか。

 

 質問に答えてほしくて、シロを見る。

 瞬間、シロが僕の後ろへと吹っ飛んでいく。

 振り返ると、シロの命を表すあのバーが、赤色になっている。もう少しで死んでしまう。

 

「は、このレベルでダメおし覚えてるとか、このゲームのスピアーずるすぎ……」

 

 シロは今にも死んでしまいそうな状態で、立ち上がった。

 

「はー……こんなときに助けてくれるかっこいいケロマツがいてくれたらな」

 

 シロは、僕を見て来る。

 

 ああ、やってやるさ。

 任せてくれよ。やってやるよ。やってやる。

 

 シロに目を合わせて、頷く。

 

「じゃあ、決まり」

 

 シロは僅かに顔を綻ばせる。

 

「ケロマツ、首のケロムースをスピアーにできるだけ多く命中させて」

 

 わざではない指示。とにかくムースを投げまくる。

 投げたいくつかがスピアーの羽根に命中し、スピアーの機動力が一気に落ちる。

 

「ナイス。ケロマツ、あわを覚えてるはずでしょ。とどめはお前のあわで決める。できるだけ威力を溜め続けて。時間は私が稼ぐ」

 

 そう言って、シロはスピアーに斬りかかっていく。僕も体中の残された僅かなエネルギーを絞り出してあわを作っていく。

 しばらく、シロがスピアーと斬り合いが続き、スピアーの針が大きく跳ね上げられた瞬間。

 

「ケロマツ! 疑似バブルこうせん!」

 

 溜めに溜めたあわを、スピアーに向かって解き放つ。

 スピアーは僕の攻撃で大きく吹っ飛ばされて、木に激突する。

 土埃が舞い上がり、それが落ち着くと、スピアーはぐるぐると目を回しており、瀕死、だった。

 

「ふう……ケロマツ、大丈夫?」

 

 

 シロは僕の元へやってくる。そして、僕は考える。 

 シロは僕のことを、命を挺して守ってくれた。僕のことを、いいやつで、強いやつと言ってくれた。

 多分、こいつはいままでの人間とは、少し違うんだろうなと確信した。

 完全に信用できたわけじゃない。けれど、群れの仲間と会えるまでぐらいなら一緒にいてやってもいいかもしれないと、そう思った。

 

 ジャンプし、シロのベルトについていた、憎悪の対象だったそのボールのスイッチを叩く。

 シロは、ふしぎなやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 なんか森探索してたら逃がしたケロマツがスピアーにぼこぼこにされてたんだけど。やっぱり住んでたところ全然違ったか。悪いことしたな。

 

 少し俺がケロマツを逃がした後の話をしようと思う。

 あの後、とりあえず装備だ! とNPCショップに駆けていき、片手剣と短剣を購入した。

 原作だとスキルスロット制だったし、スキルスロットに片手剣も短剣もセットしておけばワンチャン疑似二刀流できんじゃね? と思ったことが始まりだ。

 結果として、ほぼ成功した。ほぼ、というのはソードスキルを同時に使用するのは不可能だったのだ。

 しかも、装備する分にはスキルスロットに武器スキルをセットするのは必要ない始末。

 俺は泣く泣く短剣スキルをスキルスロットから外した。

 

 片手剣と短剣を携え、三日間ほどレベリングとマップの探索をしていると、ポケモンが住み着いている森があるではないか。

 これは行くしかない! と森に入っていくと、やけに慌てたコラッタがいるので、どうしたのか事情を聴いてみた。

 どうしたんだ、と聞くと俺に驚いた後、それどころじゃないと言わんばかりに森の奥の方を指差した。

 ふむ? 森の奥がどうしたんだ、と聞くとコラッタは自分を指差した後、地面に+を書いて、それを足でけり始めた。

 は? どういうことやねん。たすをける? ん? たす、ける? 

 

 なるほどな! 完璧に理解したぜ! 

 

 森の奥の方にお前を助けたやつがなんかすごいことになってんだな? と聞くと頷きまくる。

 なんかのクエストか? まあ、楽しそうだし見に行くか、とその場に行き、現在に至る。

 ポケモン相手に人間が敵うわけないだろ! いい加減にしろ! と思っていたら意外と戦えた。

 けど、レベルが違うようで防戦一方となっている。まあ、スピアーって最低でも10レベルだし。俺今7レベルだし……。

 ポケモンとプレイヤーのステータス計算式が一緒なのかはわからんが。

 とにかくケロマツは助けないとな。この世界にわざわざダイブしたの一応ハッピーエンドを目指すためだからな。俺が知り合いになったやつは全員助ける。たすをける! 

 

 しょうもないことを考えつつ、スピアーの攻撃を捌く。

 なんか落ち込んでるぽかったケロマツに声をかけながら戦ってると、油断でダメおしとかいうチートを使われてぶっとばされる。あぶねえ、よく耐えたな俺。

 うわ、HP赤じゃん。流石にこれでスピアーぶっとばすのは無理がある。

 助けがないと……助けがないとな。せや、ケロマツ。お前も戦え。

 ダメもとの提案だったが、なんかめちゃくちゃ好意的っぽい。どうしたんだ、三日前と比べてどういう心変わりだよ。

 とりあえずケロムース投げとけ、それで素早さ下げろ。

 お、羽根に当たってんじゃん。ラッキー。

 うわ、めちゃくちゃ楽じゃんこれ。さっきまでのスピアーがレジエレキ並だとしたら今のスピアーはナマコブシ、ツボツボ級である。ウスノロ……。

 

 なんかポケモンを斬りつけるのそんないい気分はしないけど、俺もケロマツも、生き残るためだから許してくれ。そい、そい、そいせやせやせや。

 いい感じにダメージ入ったな。よしいけ、ケロマツ。パリィしたタイミングで疑似バブルこうせん。相手は死ぬゥ! あれ、ホントに倒れてる。

 うーん、最低でも40レベル相当のスピアー倒しちゃった。これが転生チートか? 

 

 まあ、それは今はいい。ケロマツ、調子はどうなんだい、と聞くと答えがない。どうしたんだ。戦友じゃないか。もっと話そうぜ。へいへいへい。などとダルがらみをしていると、ケロマツが急に動き出す。

 急にジャンプして、俺の腰のベルトのモンスターボールのスイッチを叩き、中に入っていく。

 

 え、なんかゲットしちゃったんだけど。

 俺、友情ゲットフラグ建てたっけ? 

 

 えーと、まあ。うん。

 

ケロマツ! ゲットだぜ! 




作中で書くことがないであろう設定

ポケモンには一匹一匹にバックストーリーが設定されている。バックストーリーを紐解いていくと、様々なメリットが生じる。シロはバックストーリーを無意識に解きまくっている。バックストーリー攻略には難易度が設定されている。ケロマツの攻略難易度は最大を超えた最大。カーディナルシステムのいたずらごころ。ひどい!

最初のポケモン
プレイヤーが最初に受け取るポケモンは本来は茅場の大演説の際に配布される。
シロは特例オブザイヤー。
最初のポケモンにはそれぞれ野生の頃の記憶があり、その時の記憶によってはトレーナーに反抗的な態度をとることがある。バックストーリーもこの際関わってくることがある。
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