リバイスフォビドゥン 仮面ライダーデストル   作:再生ラッタ

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再生ラッタです。

今回はデストルがゲノミクスチェンジします!


第2話『When the Children Cry』

「……夢か?」

 

 樹が目を覚ますとそこは自分の部屋だった。辺りを見渡すと時刻は朝5時30分を指している。カーテンを開けると外はまだ薄暗く街灯の明かりだけが点々と続いていた。どうやらここはいつもの現実世界のようだ。少し安心するとふとあることに気づく。枕元を見ると昨日までなかったはずの一枚の紙が置かれていたのだ。そこには短くこう書かれていた。

 

『楽園からは逃げられない』

 

 楽園という文字を見た途端、思わず顔をしかめてしまう。あの奇妙な体験の後だ。当然の反応であると言えるだろう。しばらく考えてからその紙を丸めてゴミ箱に投げ捨てると制服に着替えるためベッドから起き上がった。

 身支度をしている途中、突然インターホンが鳴った。こんな朝早くに誰だろうか。不思議に思いながらもドアを開けると、そこにいたのはゆかりであった。彼女は制服姿で鞄を持っていることから登校前に寄ってくれたことがわかる。いつもと変わらない様子に安堵しながらもどこか違和感を覚えたがそれが何なのかわからずにいた。しかしそれもつかの間の出来事だった。彼女の顔を見た時、その正体に気づいたのだ。目が笑っていないのである。普段は優しい目をしているはずなのに今は冷たくこちらを睨みつけているように見える。その視線に耐えられず目を逸らそうとするが身体が思うように動かない。すると彼女が口を開いた。

 

「ねえ、イツキ君。昨日のことなんだけどさ……どうして楽園が嫌なの?」

 

 その質問に戸惑いながらもなんとか答える。

 

「え……?いやだって、あれが楽園と言えるわけないだろ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ゆかりの表情がみるみる変わっていくのがわかった。怒っているような悲しんでいるような複雑な表情だ。何かまずいことを言ってしまったのだろうか。樹が必死に弁解しようとするがその前に彼女に遮られてしまった。

 

「そんなことないよ!!あれは紛れもなく楽園だよ!!」

 

 ゆかりの叫びが玄関に響き渡る。だがそれでも納得しない様子の樹に苛立ちを覚えたのか彼女の口調はだんだんと荒くなっていく。

 

「ねえ、イツキは何を見てたの!?あれのどこが楽園じゃないって言うの!?」

 

「落ち着けって!ちゃんと話すから……」

 

 樹がなだめるように言うが、今の彼女には逆効果だったようだ。

 

「もういい!イツキなんて知らない!」

 

 そう言って踵を返し走り去ってしまう。慌てて追いかけようとするが、何故か足が全く動かなかった。その時、視界の端に誰かが映った気がした。そちらに目を向けるとそこに見えたのは、八神の姿だった。彼は不敵な笑みを浮かべながらこちらをじっと見つめていたのだった。

 

 

***

 

 

 その日の放課後のこと。樹は教室で一人、考え事をしていた。樹は悩んでいた。というのも今朝のことがずっと引っかかっていたのだ。

 

「何なんだよ、あいつ……」

 

 思い返す度に、怒りが込み上げてくる。確かに自分も悪かったかもしれないが、あそこまで怒ることはないだろう。そんなことを考えながら帰り支度を始める。

 すると教室に一人の女子生徒が入ってきた。見覚えのある顔だったが名前が思い出せない。名前を必死に思い出そうとしているうちに向こうから話しかけてきた。

 

「あっ、あのっ!志賀頼先輩ですよね?」

 

 急に声を掛けられて樹は驚くが、あくまで平静を装って返事をする。

 

「そうだけど……えっと確か、君は……そうだ!1年の夏川さん!」

 

「はい!覚えててくれたんですね!」

 

 1年生にしては大人びた雰囲気がある少女の名前は夏川純。先日の説明会の時に樹が助け出した生徒の一人だ。どうやらお礼に来たようだ。

 

「あの時は本当にすみませんでした!」

 

 深々とお辞儀をする純を見て樹は慌てて止めようとするが、逆に勢いに押されてしまう。

 

「ああ、うん。気にしなくていいよ」

 

「そんな……だってグズな私なんかのために志賀頼先輩は命をかけて戦ってくれましたし……」

 

 樹は気まずそうな表情を浮かべると頭を掻きながらこう言う。

 

「あー、もういいよそのことは。俺は当たり前のことをしただけだからさ」

 

「当たり前……?」

 

 首を傾げる純に対して樹は言う。

 

「困っている人がいたら助けるのは当然だろ?」

 

 その言葉を聞き、純の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。だがそれは決して悲しみからくる涙ではない。むしろ嬉しさや感動といった感情に近いものだった。そして涙を拭うと改めて樹に感謝の言葉を述べるのだった。

 

「……ありがとうございます! 私、志賀頼先輩を後悔させないためにも頑張ります!」

 

 決意に満ちた表情で語る純を、今度は樹の方が不思議そうに見つめていたのだった。

 

 

***

 

 

 それからしばらくして、樹はある神社へと足を運んでいた。そこは楽園で悪魔とはじめて戦った場所と同じ、現実世界にある林檎神社だ。林檎神社に来た理由はただ1つ。放課後トークアプリでゆかりとここで待ち合わせをしているからだ。

 なぜこの場所なのかは樹にもよく分からない。ただ単に待ち合わせなら学校でも構わないし、少し歩けば学生御用達の喫茶店だってある。それなのにわざわざ遠い場所で落ち合う理由とは一体何なのだろうか。そんなことを考えながら待っていると背後から声が掛けられた。

 

「おーい、イツキくーん!」

 

 振り返るとそこには待ち人であるゆかりの姿があった。手を振りながら駆け寄って来る姿を見ていると何だか微笑ましく思える。樹は思わず笑みを浮かべた。

 

「ごめん待った?」

 

 息を切らしながら謝るゆかりに対して樹は笑顔で首を横に振る。

 

「全然待ってないよ。そんなに急がなくてもよかったのに」

 

 その言葉に安堵の息を漏らすとゆかりはこう続けた。

 

「よかったぁ……イツキ君は覚えてる?ここのこと」

 

「……もちろん」

 

 2人はそのまま神社の鳥居をくぐり抜け階段を登り始める。しばらくすると開けた場所に出た。そこで目にしたのは一面に広がる緑豊かな自然である。2人はあまりの美しさに息を飲んだ。ここは彼らにとって特別な場所だ。

 樹がはじめてここを訪れた際、彼はまだ小学1年生だった。はじめての夏休みで虫取りに出かけた樹は、この広がる景色の中で偶然にもゆかりと出会ったのだ。そして一緒に遊んだり、宿題をしたりしているうちに樹はすっかりこの場所を気に入ってしまった。だからこうして今でも時折訪れているのだ。

 そんな樹とは対照的にゆかりはこの場所をあまり好きではなかった。彼女は昔ここで起きた出来事を忘れられずにいるのである。

 

「懐かしいね……」

 

 不意に呟くゆかりの方を樹が見ると、彼女はどこか悲しそうな表情を浮かべていた。そんな彼女の様子を見て、思わず声を掛けようとしたが次の瞬間にはいつもの笑顔に戻っていたため、結局何も言えずに終わってしまったのだった。

 

「秘密基地どうなってるかな?」

 

 そう問いかけてきたゆかりの言葉に対して樹は口ごもる。

 

「多分、もう……」

 

 言い淀む彼に対して疑問を投げかけるゆかりに対して、観念したかのように答えた。

 

「ゆかりがいなくなってすぐだ。ほら、俺からよく漫画パクッてた中学生たちいただろ?多分あいつらに壊されてさ」

 

 そう告げると、気まずそうに頬を掻く樹に対して同情するように頷くゆかり。

 

「そっか……残念だけど仕方ないよね」

 

「……なあ、ゆかりは本当に入部するのか?」

 

 恐る恐る尋ねる樹に対して彼女は首を縦に振った。そしてこう続ける。

 

「イツキ君。あそこではもう、何も失わなくて済むんだよ?友達も、秘密基地も……楽しかった時間も何もかも全部……それにきっと、悪魔がいなくなったら楽園も歓迎してくれるよ。ようこそって言ってくれるはずだよ!」

 

 そう言いながら目を輝かせているゆかりを見て樹は何も言えなかった。彼女は本気なのだ。本気で楽園倶楽部に入りたいと考えているのだ。

 それでも樹はどうしても納得できなかった。いくらゆかりが望んだとしても危険なことには変わりないのだから。しかし彼女は自分の意志を曲げようとはしなかった。

 

「そうか。変わったんだな、お前は」

 

「そういうイツキ君はどう?あれから一歩でも前に進めたの?」

 

 その問いかけに樹は言葉を詰まらせてしまう。その様子を見たゆかりは静かに言った。

 

「……やっぱり、変わってないんだね」

 

 

***

 

 

 その頃、楽園倶楽部には健貴と絵里、真の3人が集まっていた。彼らは部室に集まって何やら探し物をしているようである。すると突然絵里が叫びだした。

 

「あった! 部長が持ってたバイスタンプ! 向こうでめちゃくちゃスケボやってやる!!」

 

 絵里が見つけたものは楽園への扉を開くためのアイテムだった。それを手にすると天面のスイッチを押し、自分の左胸に押印する。その瞬間、彼女の身体に変化が現れた。全身が淡い光に包まれたかと思うと瞬く間に姿を消してしまったのだ。その光景を見ていた健貴は呆然と立ち尽くしていたが、ふと我に帰ると慌てて彼女を追いかけようとする。絵里のいた場所には同じバイスタンプがもう1つ落ちており、それを手にして後を追うように楽園へと足を踏み入れた。

 取り残された真はまだ何かを探しているようだった。彼は部屋の奥にあった棚を調べていたが、後ろから八神に声をかけられて驚いた拍子に足を滑らせてしまう。バランスを崩した彼は床に落ちていたものに気づかず踏んでしまい転倒してしまうのだった。

 

「君は姫路君だったね?何をしているんだい?」

 

 八神は倒れ込んでいる真に手を差し伸べると問いかける。だが彼は答えようとせず無言のままであった。八神は少し考えた後に鼻息交じりにこう言った。

 

「ああ、もしかして君も仮面ライダーになりたいのかい?」

 

 その言葉に目を見開く真だったが、すぐに目を逸らしてしまった。どうやら図星のようだ。

 

「俺もライダーになって、樹みたいに戦えたらって思って……」

 

「なるほど……残念ながら今は在庫が切れてしまっていてね……悪いけれど君に渡すことはできないんだ」

 

「そうですか……わかりました。失礼します」

 

 そう言うと踵を返し出て行こうとする真だったが、その前に八神が呼び止めた。

 

「待ちたまえ。実はさっき楽園に行ったあの2人、少々トラブルにあっていてね。君から彼に伝えておいてくれないか?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、真は再び目を見開いた。先輩2人に何かあったのだろうか。不安を抱きながらも真は頷き了承の意を示すのだった。

 

 

***

 

 

 楽園で健貴と絵里を襲っているのは異形の悪魔だった。山羊のような角を生やした悪魔は、手にした大鎌を振りかざして2人を追い詰めていく。絵里は無我夢中で拾ったスケートボードや化粧品が入ったバッグなどを投げるが、どれも真っ二つに切り裂かれてしまう。

 

「健貴、どうしょ!?」

 

「くそっ!なんなんだこいつは!」

 

 逃げ惑う健貴たちを追って来る悪魔の姿はまるで死神のようだった。時折悪魔は大鎌を投擲して攻撃してくる。その攻撃を間一髪で躱しながら、ひたすらに逃げていると健貴は前にバイスタンプが落ちているのを発見した。レリーフとなっている生物はホワイトライオンだろうか。だがそんなことを気にしている場合ではない。

 悪魔の狙いはあくまで健貴達らしく、このままではいつかやられてしまうだろう。意を決してバイスタンプを拾い上げようとしたが時すでに遅し。悪魔はもう目の前に迫っていた。

 その時である。突如背後から何者かが現れ悪魔の身体を蹴り飛ばしたのだった。驚きのあまり声も出ない健貴をよそにその人物は言う。

 

「あんたらも物好きだな。ここのどこに魅力があるっていうんだ」

 

 そう言って樹は自らの腰にデモンズドライバーを巻き付けると、手に持っていたヒューマンバイスタンプを起動させる。

 

【ヒューマン!】

 

 そのままバイスタンプをドライバーの上部に押印すると待機音が鳴り響き始めた。

 

【DEAL!】

 

 巨大な骸骨が目の前の悪魔を蹴散らし、周囲に発生する炎と共に樹の周りを遊泳する。樹はバイスタンプを持ち替えると、祈るように両手で握りしめた。

 

「変身!」

 

 そしてバイスタンプを正面のモニターに再度押印した。

 

【DECIDE UP!】

 

 骸骨を模した装甲が樹の身体を覆い尽くすと、そこから現れたのは白い戦士・デストルの姿だった。

 

【RISE.(昇る) RAGE.(怒り) REQUIEM.(悲しみ) 仮面ライダー!】

 

 悪魔は突然の乱入者に戸惑いつつも戦闘態勢に入る。武器の大鎌を振り上げ襲いかかるが、デストルはその攻撃を受け止め弾き返すと反撃に転じた。拳による強烈な一撃を浴びせられよろめく悪魔であったが、負けじと再び襲いかかってくる。しかし今度は先ほどよりも速く鋭い動きに翻弄されてしまい、一方的に打ちのめされてしまうのだった。

 劣勢に追い込まれた悪魔は一旦距離を取ると、今度は無数の羽虫を放った。虫の群れに襲われたことで視界を奪われたデストルは一瞬怯んでしまうが、何とか冷静さを保ちつつ迫り来る虫の大群に立ち向かう。デストルは右サイドに備えていたヒューマンバイスタンプを外すと、左胸に勢いよく押印する。すると全身から赤黒い液体が噴出され、周りの虫たちを殲滅させたデストルはとどめの一撃で勝負を決めようとした。

 しかし次の瞬間、虫たちの死骸の中からゾンビのような悪魔・ギフジュニアが大量に出現し、デストルの周囲を取り囲んだ。予想外の事態に動揺し隙を見せてしまったところで、背後から現れた悪魔が奇襲を仕掛ける。背後からの不意打ちで体勢を崩したところに、さらにギフジュニアが前後左右から同時に攻撃を仕掛けてきた。絶体絶命の危機に陥ったその時である。

 

「志賀頼! これを使え!」

 

 少し離れたところから様子を伺っていた健貴が、デストルに向かってホワイトレオバイスタンプを投げ渡した。追い詰められながらもデストルは悪魔たちをいなし、何とか健貴の投げたバイスタンプを回収することができた。すると健貴と絵里の元に、後を追ってやってきたゆかりと真が駆けつける。ゆかりは口に手を添えてデストルに呼びかける。

 

「ベルトの両サイドを押し込んでから、変身の時と同じようにやってみて!」

 

 その声に応えるようにしてデストルは頷くと、言われた通りに両手で撫でるようにベルトの両サイドを押し込んだ。すると音声が流れ始める。

 

【ADD】

 

 そして右手に持ったバイスタンプを起動させると、上部にあるスロット部分に押印した。

 

【ホワイトレオ!】

 

 直後、バイスタンプを両手に持ち替えてモニターに再度押印する。

 

【DOMINATE UP!】

 

【ホワイトレオ! ゲノミクス!】

 

 機械的な音声とともにデストルの両腕に装備された爪が展開されると、自身を囲んでいたギフジュニア達を一瞬にして切り裂いた。ギフジュニアは断末魔の叫びを上げながら消滅していく。

 デストルはゆっくりと立ち上がると、目の前で腰を抜かしている悪魔に言った。

 

「覚悟決めろよ」

 

 そう告げると悪魔に向かって突進していき、目にも留まらぬ速さで次々と爪による連撃を叩き込んでいく。たじろぐ悪魔に間髪入れず、デストルが最後に放った回し蹴りによって悪魔は大きく吹き飛ばされた。

 

「必殺技はベルトの両サイド3回押し込んで!」

 

 ゆかりの助言を聞き入れたデストルはもう二度撫でるように両サイドを押し込み、両腕の爪を研ぐような動作をすると敵目掛けて勢いよく駆け出した。

 

【MORE】

 

 勢いのまま飛び上がり敵の頭上を飛び越えたと同時に、一回転してからもう一度、今度は強く両サイドを押し込んだ。

 

【ホワイトレオ! デモンズレクイエム!】

 

 空中で悪魔の頭部めがけて右足を突き出し、必殺技を使った反動を利用して一気に急降下する。地面に着地する直前に両脚を広げ前方に突き出した状態で停止したデストルは、ホワイトライオンのオーラを纏ってそのまま悪魔の身体をかみ砕いき、地面へと降り立った。

 デストルの必殺キックを受けた悪魔は、絶叫しながら爆散していった。

 

 

***

 

 

 戦いを終えたデストルのもとに健貴たちが駆け寄る。ドライバーを外して変身を解いた樹は、彼らにこう告げた。

 

「俺はやっぱり、入部しない。認めたくない。でも……」

 

 そこまで言うと樹は拳を握り締めて続けた。

 

「お前らがここにいたいのなら止めないし、悪魔からは絶対に守ってやるつもりだ。危なくなったらいつでも呼んでくれ」

 

 樹はそう言ってスマートフォンを取り出し、トークアプリのグループ作成の画面を見せる。グループ名には『楽園倶楽部』と書かれていた。ゆかりたちはそれぞれ自分たちの連絡先を交換してグループに参加すると、ゆかりが八神に託された人数分のバイスタンプを使用して解散したのだった。その一部始終を遠くから見ていた八神はどこか満足そうに微笑んでいるように見えた。

 

「これで2人。これからが楽しみだ」




台紙にホワイトレオバイスタンプが押されて終わりです。
はたしてどこまでバイスタンプは増えるのか……?

新しい力を手に入れて、デストルの戦いの幅が広がりました。デザインとしては仮面ライダー亡のクローみたいな感じです。

感想等貰えればうれしいですし、続きを爆速で書けるかもしれません!

それでは次回もよろしくお願いします!!





次回 仮面ライダーデストル

「んだよ、制限ありかよ」

デストル大ピンチ

「新しくドライバーを用意したよ」

「使わせてくれるんすか!?」

ピンチを救うのは、新たなライダー!

「仮面ライダー……だと?」
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